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Ryzen 7000の新要素と見どころは? エントリー向け新CPU「Mendocino」とは? AMDの基調講演を振り返る
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印刷2022/05/24 21:12

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Ryzen 7000の新要素と見どころは? エントリー向け新CPU「Mendocino」とは? AMDの基調講演を振り返る

Ryzen 7000を紹介するLisa Su氏(CEO,AMD)
画像集#002のサムネイル/Ryzen 7000の新要素と見どころは? エントリー向け新CPU「Mendocino」とは? AMDの基調講演を振り返る
 既報のとおり,2022年5月23日,AMDは,台湾・台北市で行われる大規模展示会COMPUTEX 2022の基調講演をオンラインで開催した。講演における重要なポイントは,2022年秋に市場投入予定のデスクトップPC向け次世代プロセッサ「Ryzen 7000」シリーズと,一般消費者向けノートPC用の新型APU「Mendocino」(メンドシノ)の2点だった。
 本稿では,速報ではカバーしきれなかった部分や,講演後に明らかとなった要素をまとめてみたい。


ハイエンドデスクトップPC向けRyzenでは初めてGPUを統合


画像集#003のサムネイル/Ryzen 7000の新要素と見どころは? エントリー向け新CPU「Mendocino」とは? AMDの基調講演を振り返る
 まずは,多くのゲーマーにとって注目度が高いであろうRyzen 7000について,どのようなことが語られたかまとめていこう。

 Ryzen 7000は,現行のRyzen 5000シリーズで使われた「Zen 3」の後継となる,「Zen 4」アーキテクチャベースのプロセッサだ。AMDによると,Zen 4コアは,L2キャッシュ容量をZen 3のコアあたり512KBから1MBへと倍増させたのに加えて,マイクロアーキテクチャの改良によって,クロックあたりの命令実行数(IPC:Instructions Per Cycle)が,Zen 3から15%もの向上をはたしているという。

Ryzen 7000のZen 4コアは,コアあたりのL2キャッシュを倍増してIPCが15%以上向上,5GHzを超える動作クロックと,新しいAI対応命令セットをサポートする
画像集#004のサムネイル/Ryzen 7000の新要素と見どころは? エントリー向け新CPU「Mendocino」とは? AMDの基調講演を振り返る

 また,極めて高い動作クロックを実現しているのも特徴だ。AMDによると,「5GHzを大幅に超える」動作を実現したとのこと。
 講演では,オープンソースの3D CG制作ソフト「Blender」を使って,Intelの「Core i9-12900K」と16コアのRyzen 7000で性能を比較。レンダリング性能で,Core i9-12900Kを圧倒しているところを披露している。BlenderでのCGレンダリングはCPU性能がものを言う処理なので,Ryzen 7000の性能がかなり高いことは,このデモからも見て取れる。

Blenderを使ったCGレンダリングの性能比較。Core i9-12900Kと比べて最大31%高速とアピールしていた
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 少し興味深いのは,Zen 4では,新たにAI処理を高速化する命令セットを追加していると,AMDが説明していた点だ。この新しい命令セットが,AMD独自のものなのか,それともIntelの「AVX512-VNNI」などと互換性を持つのかは不明だが,AIのワークロードをハードウェア支援により高速化できると説明していた。

 これまでのRyzenシリーズと同様に,Ryzen 7000は,複数のシリコンダイ(チップレット)を1つのパッケージ上に搭載するチップレットアーキテクチャを継承している。Ryzen 7000のCPUチップレットは,1基あたり最大8基のCPUコアを集積しており,台湾TSMCの「ハイパフォーマンス5nmプロセス」を使って製造されるとのことだ。
 一方,I/Oダイは,TSMCの6nmプロセスを使って製造され,PCI Express(以下,PCIe)5.0インタフェースや,DDR5メモリコントローラを搭載する。さらに,Ryzen 7000のI/Oダイには,Ryzenシリーズの高性能デスクトップPC向けCPUとしては初めて,RDNA 2ベースの統合型グラフィックス機能(以下,統合GPU)を集積しているという。つまりRyzen 7000は,マザーボード側に適切な映像出力があれば,単体GPUなしにディスプレイ出力が可能なわけだ。

Ryzen 7000もチップレットアーキテクチャを採用。CPUダイはひとつあたり8基のCPUコアを集積。I/OダイにはPCIe 5.0やDDR5メモリコントローラのほか,RDNA 2ベースのGPUを統合している
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 講演中では,RDNA 2ベースということが明らかにされただけで,統合GPUの規模や性能については触れられなかった。Su氏は,Ryzen 7000の開発途中版で「Ghostwire: Tokyo」を動作させたデモを披露しているが,このデモに単体GPUが使用されているかどうかも不明だ。

Ryzen 7000によるGhostwire: Tokyoのプレイデモが公開されたが,動作クロックが5.5GHzに達することのアピールがメインで,I/Oダイの統合GPUを使用したデモなのかは言及がなかった
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 そんなわけで,I/Oダイの統合GPUに,ゲームを快適にプレイできるだけの性能があるのかは,現時点でなんとも言えない。とはいえ,単体GPUなしに映像出力ができるのは利点と言えるので,歓迎するPCメーカーは多いだろう。Ryzenシリーズの市場拡大に一役買うかもしれないと,筆者は予想している。

 なお,CPU直下のPCIe 5.0は,計24レーンあるとのこと。24レーンをPCユーザーが利用できるというニュアンスだったので,チップセットの接続用は含まない数と考えてよさそうだ。GPUに16レーンを使用しても,ストレージに8レーンが使えることになるのは利点だろう。

CPU直下のPCIe 5.0は24レーン分ある
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 また,やや地味な話題になるが,講演ではRyzen 7000の電源インフラが,現在の「AMD SVI2」(SVI:Serial VID Interface)から,「SVI3」に切り替わることも明らかとなった。SVI3は,Ryzen 7000から対応するDDR5メモリやPCIe 5.0といった新しいI/Oに対応するほか,Ryzen 7000の最大TDPである170Wに対応する電源インフラであるそうだ。
 それにともない,マザーボードの電源管理ICもSVI3対応に変わるのだが,マザーボードメーカー各社がRyzen 7000対応製品を発表しているということは,その供給もすでに始まっているようである。


CPUクーラーはSocket AM4互換を維持


 高い性能を持つとAMDがアピールするRyzen 7000は,5年間続いたSocket AM4から,新しい「Socket AM5」へとプラットフォームが刷新される。
 それにともない,CPUソケットは従来のPGAタイプから,IntelのCoreプロセッサ類似のLGAタイプへと切り替わるそうだ。1717ピンLGAの採用により,DDR5メモリやPCIe 5.0といった高速I/Oへの対応が容易になったほか,最大170WというTDPが可能になったと,AMDは説明していた。

LGAソケットの採用により,高速なI/Oや170WのTDPに対応できたとのこと
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 CPUソケットが変わると同時に,CPUパッケージの外見も大きく変わることになるが,今回の講演でAMDが,Socket AM5でもSocket AM4対応のCPUクーラーが利用できると明言した。これはSocket AM4ユーザーにとって朗報だろう。AMDに限らず,今どきのCPUにおける上位モデルは,簡易水冷クーラーの利用が推奨されているので,CPUクーラーの買い替えはユーザーにとっての金銭的負担が大きいからだ。

 Socket AM4対応のCPUクーラーがそのまま使えるだけでは地味に思えるかもしれないが,CPUパッケージの設計にあたっては,ヒートスプレッダの高さをSocket AM4と揃えたり,Socket AM4対応のCPUクーラーでも十分なテンションや接触面積が確保できたりすることを保証しなければならない。それだけ設計の自由度が減るわけで,多少の手間をかけてでも,AMDがユーザーの負担を軽減したことは評価していいのではないかと思う。

 一方,講演で分かりにくかったのが,Socket AM5に対応する「AMD 600」シリーズチップセットだ。「X670 Extreme」(X670E)と「X670」,「B650」という3種類が発表となったが,それぞれの違いが不明確だ。
 AMDは,講演後にリリースを出しているので,チップセットの特徴をまとめておこう。

3種類のチップセットが発表となったが,違いが分かりにくい
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 まず,最上位モデルのX670Eは,「エンスージアストがPCIe 5.0に望むすべての面において,最高のものを提供すると同時に,高度なオーバークロックに対応する電源部を提供するチップセット」であるという。また,講演後のリリースによると,単体GPU用のPCIeスロットと,少なくとも1基のM.2スロットがPCIe 5.0をサポートするそうだ。

 一方のX670は,「大部分のRyzenユーザーが望むであろうM.2スロットでPCIe 5.0をサポートしつつ,メモリのオーバークロックにも対応する強力な電源部を備える」という。少なくとも1基のM.2スロットでPCIe 5.0をサポートするが,単体GPUのサポートはオプションである。つまり,単体GPU向けのPCIeスロットがPCIe 5.0に対応しない構成があり得るようだ。

 最後のB650は,パフォーマンスユーザー向け(≒ミドルクラス市場向け)にベストな価格対性能のバランスを提供するチップセットで,Xシリーズのチップセットほどの余裕はないもののオーバークロックにも対応しており,少なくとも1基のM.2スロットがPCIe 5.0対応である。
 なお,リリースでも明記されていなかったので推測になるが,単体GPUへの言及がないことから,B660搭載マザーボードの単体GPU向けPCIeスロットは,PCIe 5.0に対応しない可能性がある。

 したがって,単体GPU用スロットのPCIe 5.0対応を除むゲーマーは,X670Eか,X670搭載マザーボードが必要になるだろう。一方,M.2スロットはどのチップセットでも,PCIe 5.0が利用できるようだ。
 AMDは,PCIe 5.0対応のストレージに非常に力を入れているようである。講演でも,多数のパートナー企業と協力して,PCIe 5.0対応ストレージの開発を進めていると述べていたほどだ。

AMDとPCIe 5.0対応ストレージの開発で協業しているパートナー企業
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 ストレージに関連する話題としては,MicrosoftがWindows 11で実装した,M.2ストレージからGPUがデータを読み取る技術「Direct Storage」のAMD版となる「AMD Smart Access Storage」も発表となった。Smart Access Storageは,ノートPC向けRyzen 6000シリーズで利用できるそうだが,Ryzen 7000でも対応するはずだ。
 講演では技術の詳細に踏み込んでいないが,データ圧縮および展開の技術を使って,GPUが必要とするテクスチャなどのアセットにおけるロード時間やストリーミングの性能を改善する技術であるとのこと。その詳細については,近日中に明らかにするそうだ。


エントリー市場を狙うノートPC向けプロセッサ「Mendocino」


 今回の講演で,ノートPC向け製品として新たに発表となったのが,冒頭でも触れた開発コードネーム「Mendocino」と呼ばれるエントリーノートPC向けAPU製品だ。

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 Zen 2世代に属するMendocinoは,価格帯にして399〜599ドル程度のノートPC向けに開発された製品で,Windows 11およびChromebookに対して,快適な動作と上位モデルと同じフル機能を提供すると,AMDはアピールしていた。

 Mendocinoは,TSMCの6nmプロセスで製造され,4コア8スレッドに対応するZen 2世代のCPUコアを採用する。そこに,RDNA 2ベースの統合GPUとDDR5メモリコントローラを組み合わせるとのこと。ゲーム用途に適したAPUではなさそうに思えるが,安価なサブマシンがほしいという人のニーズに応える製品になりそうだ。

 かなり余談気味だが,Mendocinoという開発コードネームは,20年以上前にIntelが,デスクトップPC向けCeleronで使用していたりする。意図的に同じ開発コードネームを使ったのか,たまたま同じになってしまったのかは不明だが,エントリー市場向けCPUという共通点があるのは面白い。

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 2022年5月23日,AMDは,COMPUTEX 2022に合わせて行った基調講演で,Zen 4アーキテクチャベースのデスクトップPC向け新型CPU「Ryzen 7000」シリーズや,対応チップセットの「AMD 600」シリーズを2022年秋に投入すると発表した。

[2022/05/23 15:56]

AMDのCOMPUTEX 2022特設Webページ(英語)

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