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低消費電力時に速い「Zen 4c」コア採用のノートPC向け「Ryzen 5 7545U」をAMDが発表。エントリー市場向けPCに切り込む
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印刷2023/11/02 22:00

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低消費電力時に速い「Zen 4c」コア採用のノートPC向け「Ryzen 5 7545U」をAMDが発表。エントリー市場向けPCに切り込む

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 2023年11月2日,AMDは,Zen 4世代の薄型軽量ノートPC向けAPU「Ryzen 7040U」シリーズのうち,低消費電力向けに最適化した「Zen 4c」と呼ばれるZen 4ベースの新型CPUコアを採用する新CPU「Ryzen 5 7545U」など計2製品を発表した。
 AMDでは,Zen 4cコアを一般消費者向けのCPUやAPU製品に投入することで,従来のZen 4コアではカバーしにくかったエントリー市場向けPCを実現できるとしている。同社の発表内容をざっくりとまとめてみよう。


CPUコア+L2キャッシュのダイサイズを35%削減したZen 4c


 Zen 4cコアを採用した新CPUは,Zen 4コア×2+Zen 4cコア×4で6コア12スレッド仕様のRyzen 5 7545Uと,Zen 4コア×1+Zen 4cコア×3で4コア8スレッド仕様の「Ryzen 3 7440U」がある。Ryzen 5 7545Uは新製品だが,Ryzen 3 7440Uは,型番はそのまま中身がZen 4cモデルへ移行する。

 なお,既存の6コアモデル「Ryzen 5 7540U」はそのまま併売となる。

Zen 4cベースのRyzen 5 7545Uが追加された。キャッシュサイズや動作クロック,Ryzen AIを搭載しない点や統合GPUなど,CPUコア以外の仕様はRyzen 5 7540Uと変わらない
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 Zen 4cコアは,エンタープライズ市場向けのCPU「EPYC」プロセッサですでに採用済みであるが,一般消費者向け製品で使うのは,今回の2製品が初めてだ。
 AMDによると,Zen 4cコアは,クロックあたりの命令実行数(Instruction per Clock:IPC)を維持しつつ,Zen 4コアよりもダイ面積を35%減らした新設計のCPUコアだという。なお,35%の削減は,CPUコア+L2キャッシュの面積で,L3キャッシュ部分は含まない。

Zen 4に比べZen 4cはコア+L2キャッシュの面積が35%小さくなっているという
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 EPYCに採用されているZen 4cコアは,Zen 4に比べてL3キャッシュメモリ容量が半分に減っているという明確な違いがある。しかし,新しいRyzen 5 7545UやRyzen 3 7440Uでは,L3キャッシュメモリ容量を含めて,従来のZen 4コア製品と変わりがない。AMDによれば,新しいRyzen 5/3に採用されたZen 4cコアは,すべてのスペックがZen 4と変わらないのだそうだ。

Zen 4とZen 4cの仕様を比較したスライド。違いがまったくないとAMDは強調する
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 なぜZen 4cコアは,35%ものダイ面積の削減が可能になったのか。AMDによると,Zen 4cコアは,「低消費電力域において高い性能が得られるように,最適化を行った」からとのこと。その代償として,高い消費電力域での処理性能は,従来のZen 4コアに届かず,ブースト時の性能が控えめになるのだそうだ。その代わり,20Wを下回る消費電力でなら,Zen 4cコアはZen 4コアよりも処理性能が高くなるのだそうだ。

 それだけの違いで35%も面積を削減できるのか? とは思えるが,たとえば高クロック動作を前提に複数のブロックに分けていた回路をひとつのブロックにまとめてしまうなど,設計上想定するクロック域を変えて設計し直すことで,ある程度の削減は可能だろう。

縦軸がCINEBENCH R23マルチコアのスコア。Zen 4cは20W以下の消費電力域ならZen 4よりも性能が高いが,20Wを超えるとZen 4に届かない
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 したがって,「Zen 4cコアはノートPCのうち,ピーク時に高い性能が求められない低価格帯のノートPCに最適である」というのがAMDの言い分だ。「Zen 4cコアを使った新しい2製品と,従来の製品の性能差はユーザーには分からないだろう」とも述べている。性能差がほぼなく,ダイ面積の削減による低コスト化が可能となれば,AMDにとっての利点は大きい。

 なお,AMDは詳細に説明していないので推測だが,Ryzen 5 7545UのためにAMDは,Zen 4×2+Zen 4c×4という新しいダイを設計したはずだ。下位モデルのためにダイのバリエーションを増やすことは考えにくいので,Ryzen 3 7440Uは,Ryzen 5 7545Uと同じダイで,Zen 4とZen 4cを1基ずつ無効化したものではなかろうか。


Zen 4cはE-coreにあらず


 AMDが今回の事前説明で繰り返し強調していたのは,Intelが第12〜14世代のCoreプロセッサで採用した「ハイブリッドアーキテクチャ」におけるE-coreとZen 4cは,まったく別物ということだ。
 Zen 4cコアは,Zen 4アーキテクチャに基づいて設計された新しいCPUコアだが,違いは先述のダイ面積と消費電力あたりの性能のみ。それ以外のスペックはZen 4と変わらない。設計から何からP-coreとは異なるE-coreとは,まったく違うというわけだ。

IntelのE-coreは,アーキテクチャから実行できる命令セットまで,多くの点がP-coreと異なるのに対して,Zen 4cコアはZen 4のバリエーションに過ぎないとAMDは強調
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 したがって,Ryzen 5 7545UであってもOSのスケジューラが優先順位を微調整するだけで対応が可能で,「Thread Director」のようなハードウェア支援による対応は不要だとAMDは強調している。

 AMDは,Zen 4cという新しいCPUコアがZen 4ファミリに加わることによって,これまでRyzenシリーズが進出しづらかった領域にZen 4アーキテクチャを広げることができるとも述べている。
 たとえば,エントリー市場向けノートPCは,Core i3クラス以下のCPUを展開するIntel一強といっていい状況だ。AMDは,Zen 4cを武器に,そうした製品ジャンルにも採用を勝ち取れると踏んでいるのだろう。「現時点でアナウンスできるほかの製品はない」と念押ししつつ,AMDは,Zen 4c搭載の製品を一般向けノートPC市場に投入することを匂わせていた。これらのCPUは,エントリー市場向けノートPCのゲーム性能を底上げする可能性があるので,ゲーマーも期待しておく価値はあるだろう。

AMDのノートPC向けRyzen製品情報ページ


  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen 4)

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