プレイレポート
本日配信開始,「魔法使いの夜」の体験版インプレッション。2022年においても色あせない映像表現とボイス演出に注目
「Fate」シリーズや「月姫」などを生み出したTYPE-MOON作品の原点となった,奈須きのこ氏の未発表小説をベースにし,2012年にPC向けに発売されたオリジナル版「魔法使いの夜」から約10年。キャラクターボイスの追加や高解像度化といったブラッシュアップが施された移植版が,ついにコンシューマゲーム機に登場することとなる。
製品版に先駆けて配信される今回の体験版は,PC版発売時に配布された体験版と同等の内容であり,本編から切り取られたいくつかのシーンが体験できる。蒼崎青子や久遠寺有珠,静希草十郎,久万梨金鹿ら主要キャラクターの会話シーンや,物語序盤の久遠寺有珠の戦闘シーン,そして本編のオープンニングシーンを収録し,フルボイス化された台詞をじっくり聞きながらプレイしておよそ1時間ほど,「魔法使いの夜」の世界に浸れるものとなっている。
本稿ではそんな体験版から垣間見える,「魔法使いの夜」が持つ変わらぬ魅力,オリジナル版から進化したポイントを紹介していきたい。
※掲載しているスクリーンショットはすべてPS4版のものです。
「魔法使いの夜」公式サイト
2022年にしてなお”最先端”のビジュアルノベル
本作の舞台は,1980年代後半の日本の地方都市・三咲町。その町の高校・三咲高校に通う高校生・蒼崎青子は,現代を生きる魔女・久遠寺有珠の住む屋敷で,魔術師としての修行に明け暮れる日々を送っていた。そしてそんな二人の共同生活に,ある偶然から上がり込むことになった世間知らずの青年・静希草十郎。そしてこの3人を中心として事件は起こり――「月姫」へとつながるTYPE-MOON伝奇の根幹の一つ,“魔法”にまつわる物語が展開していく。
蒼崎青子 |
久遠寺有珠 |
静希草十郎 |
PC版「魔法使いの夜」を未プレイの人が体験版に触れてまず驚くのは,その映像表現の巧みさだろう。テキストを読み進めていく中,要所要所に差し挟まれるスクリプト演出は,「Fate/stay night」以降のTYPE-MOON作品の“お家芸”といえる手法だが,本作はその密度(質と量)がとんでもない。バトルシーンはもちろんのこと,日常的な会話シーンにおいても高度な演出がほどこされており,これは昨年,2021年8月に発売された最新作「月姫 -A piece of blue glass moon-」(PS4 / Switch,以下,月姫R)をも凌駕するほどだ。
キャラクターの立ち絵や表情差分も数多く,ページをめくる(画面に表示されるテキストが入れ替わる)たび画面に何かしらの変化が現れる。セリフを発した側のキャラクターがアップになったり,会話の内容に合わせて表情が変化したりするのはもちろんのこと,背景までもが制御され,高度にレイアウトされたシーンが画面に映し出される。
ノベルゲームにありがちな“正面を向いた登場人物の立ち絵が,ただ並んで表示される”といった画面が現れることは一度たりともなく,そこに音楽やSEによる演出が合わさって,まるで映画やアニメのワンシーンかのようなカットが終始展開される。
かつ,こうしたスクリプトによる演出は,プレイヤーの読む速度に左右されないのが素晴らしい。どんなスピードで読み進めても,作り手が意図したとおりの“間とタイミング”で破綻なく再生される。
本作は選択肢のない純粋な“ビジュアルノベル”でありながら,こうした文章表現と映像表現の融合は,ほかのメディアでは決して実現できないものだろう。いわんやそれが奈須きのこ氏のテキストとこやまひろかず氏のイラスト,つくりものじ氏のスクリプトであるならなおのこと。小説媒体が持つノンリニアな物語体験と,映像媒体がもつリッチな情景描写の両輪によって紡がれる本作のゲーム体験は,もしかすると今この時代でしか実現し得ない,稀有なメディア芸術と呼べるものかもしれない。
ボイス追加と高解像度化で甦る,二人の魔女の物語
2012年のPC版と比べたとき,やはり最も大きな変化はキャラクターにボイスがついたことだろう。体験版では,すでにキャストとして発表されている蒼崎青子(CV:戸松遥さん),久遠寺有珠(CV:花澤香菜さん),静希草十郎(CV:小林裕介さん),久万梨金鹿(CV:安済知佳さん)に加え,静希草十郎のクラスの担任教師を務める山城和樹や,久遠寺有珠が使役するプロイキッシャー“おしゃべり双子”らにもボイスが用意されているのが確認できる。
キャスト陣の熱演によって増したバトルシーンの臨場感,そして日常の会話から感じ取れるニュアンスの増加などは,今回の家庭用移植版ならではといえる。
キャラクターボイスの追加や,映像の高解像度化(PS4版はフルHD対応,Switch版はTVモードがフルHD,携帯モードがHD対応)に比べるとやや地味ではあるが,フォントの可読性向上も見逃せない変更点だ。
PC版とはもちろんのこと,「月姫R」と比べてもフォントがやや太くなっており,これにより文章の読みやすさが向上している。もちろん好みはあるだろうが,筆者はとくに違和感は感じなかった。また文字の縁取りの有無や,ウインドウ透過率の変更,また海外ファンに向けた多言語対応など,オプションも充実している。加えてバックログからのシーン戻しなど,インタフェース面の改良も確認できたので,演出を含めた読み直しなども捗ることだろう。
オリジナル版から10年が経過しても色あせない,リッチかつ先鋭的な映像演出に,2022年のタイトルに相応しい,快適なプレイ環境が整備されたPS4 / Switch版「魔法使いの夜」。TYPE-MOON作品を愛し,信頼を寄せるファンはもちろんのこと,「Fate/Grand Order」(iOS / Android)や「月姫R」でノベルゲームの楽しさを知った人,そしてコンシューマゲーム機で楽しめるノベルゲームを探している人は,さっそく体験版をダウンロードし,その片鱗を味わってみてほしい。
商品概要 | |
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タイトル | 魔法使いの夜 |
ジャンル | ビジュアルノベル |
対応プラットフォーム | PlayStation 4・Nintendo Switch |
対応言語 | 日本語/英語/中国語簡体字/中国語繁体字 |
プレイ人数 | 1人 |
発売日 | 2022年12月8日 |
希望小売価格 | <パッケージ版> 1. 初回限定版:7,700円(税込) 特典:こやまひろかず描き下ろし特装化粧箱/設定資料集「魔法使いの基礎音律」 2. 通常版:6,600円(税込) <DL版> 1. デジタルデラックス版(PS4のみ):7,150円(税込) 特典:設定資料集「魔法使いの基礎音律」デジタル版 2. デジタル版:6,600円(税込) |
公式サイト | http://typemoon.com/products/mahoyo/ |
公式Twitter | https://twitter.com/mahoyo_game |
CERO | C(15才以上対象) |
権利表記 | (C)TYPE-MOON |
発売 | TYPE-MOON |
販売 | 株式会社アニプレックス |
※“PlayStation”および“PS4”は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
※Nintendo Switchは任天堂の商標です。
「魔法使いの夜」公式サイト
キーワード
(C)TYPE-MOON
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