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[GDC 2023]協力型FPS「Deep Rock Galactic」はどのようにプレイヤーの声をゲームに組み込んだのか? 開発サイクルが示された講演をレポート
だが本作のような,超長時間プレイを前提とした運営型オンラインゲームを,ゲームサーバまでは持たないとはいえ,インディーズゲーム開発会社が運営,維持していくにあたっては並々ならぬ苦労があったようだ。
GDC 2023の初日となる北米時間2023年3月20日,Independent Games Summitで行われた講演「Developing Live Game that Never Truly Left Early Access」では,DRGがどのようにコミュニティと協力しながら運営,開発を続けてきたのかが語られた。DRGのLead DesignerであるMikhail Akopyan氏による講演から最も重要な部分をお伝えしたい。
アバターアイテムに助けられたDRG
DRGは,協力型オンラインゲームであることがその魅力の中核となる。これはつまり,一定数の愛好者がDRGをプレイし続けてくれる(=アクティブプレイヤー数が多い)ことが非常に重要だということだ。
このためDRGでは,ほかのインディーズゲームでしばしば見られるように,頻繁なアップデートを繰り返し,新規ユーザー獲得と既存ユーザーの維持を図っていった。アップデートが頻繁に行われ,DLCも発表され続ける状況は,ユーザーにとってみると,このゲームを安心して遊び続けられる(開発側がゲームをサポートし続ける)ことの証拠となるからだ。
実際,この方針をDRGのファンコミュニティは好ましいものとして受け入れ,プレイ人口は着実に増加していった。
一方,頻繁にアップデートするということは,ある程度まで頻繁にコンテンツを追加していくということでもある。もちろんバグフィックスやバランス調整といったアップデートもあり得るが,プレイヤーに最もアピールしやすいのが新規コンテンツ追加であるのは論をまたない。
だが,頻繁に新規コンテンツを追加するには,それにふさわしいマンパワーが必要になる。これは6人で開発を始めたDRGにとって,そう簡単なことではなかった。
ここにおいてDRGを大いに助けたのは,アバターアイテムの存在だった。DRGに登場するキャラクターは全員がドワーフだが,プレイヤーは彼らドワーフを個性づけるさまざまなアバターアイテムをとりわけ好んだのだ。このことは「プレイヤーにとって意味のあるコンテンツを作るにあたって,開発チームの大いなる助けになった」とAkopyan氏は語っている。
ユーザーからのフィードバックをどう受け止めるのか
このような頻繁なアップデートにあたって開発チームが重視したのは,ユーザーからのフィードバックを取り入れていくことだ。これもまた,インディーズゲームに限らず,オンラインゲームの開発,運営においては一般的な方針と言える。
だがDRGの場合,ユーザーコミュニティには3つのチャンネル(Discord,Steamフォーラム,Reddit)が存在する。これらの場所でユーザーが提案するフィードバックは膨大な数と種類(バグ報告からバランス調整の希望まで)にわたることもあり,「どのようにしてコミュニティからの要望を開発中のDRGに取り入れるか」をシステムとして確立する必要があった。
下の写真に示すサイクルが,α版における「コミュニティからの要望を取り入れるループ」だ
外側の緑色で示された開発,リリースのサイクルに対し,内側に示された水色の矢印が「どんなフィードバックを,どの開発段階で取り入れるか」を示している。
例えばプロトタイプが完成し,具体的な実装作業に入ったところで,実装途中のものをコミュニティのテスターがプレイする。そしてそのテスターからのフィードバックはプロトタイプに反映され,再び実装作業に入っていく……といった形になる。
このサイクルは2か月で1周するペースで運用され,開発は順調に進んでいった。
サイクルを改良し続ける
このようにα版の段階ではうまく機能していたループは,アーリーアクセスが始まると破綻してしまうことになる。アーリーアクセス開始以降は,1周あたり1〜2週間というペースで,これまでよりもずっと早く回転させなくてはならなかったからだ。
そこで開発チームはゲームの「アーリーアクセス版」(ある意味で「製品版」)とは別に,「実験版(Experimental Branch)」を制作し,こちらも一般ユーザーがプレイ可能にした。
実験版のローンチ後,開発ループは下の写真のようになった。
これまでプロトタイプ作成→実装作業の流れの中で行われていたプレイテストは排除され,代わりプロトタイプの実装は実験版に対してまず行われ,実験版をプレイしたユーザーから出てきたフィードバックを元に,アーリーアクセス版への実装内容を調整し直す(同時にその調整内容は実験版に実装する)という形になっている。
この「来るべき次のバージョン(未完成版)」をユーザーに先行してプレイしてもらい,そこで寄せられたフィードバックをもとに次のバージョンを調整して,正式なアップデートとしてリリースするという流れは,うまく機能したとAkopyan氏は語った。
その後,Discordを中心とした最もコアなコミュニティでは,α版同様に「プロトタイプ→実装」の過程で実装版をテストする「コミュニティテスター」(最大で20名程度)を置く形になった。基本はあくまでアーリーアクセス期間に設計されたサイクルがベースになっている。
あたかもずっとアーリーアクセスかのように運営する
このようにしてコミュニティと協力しながら開発を進めていったDRGだが,その過程においては,成功したオンラインゲーム特有の苦難もあったという。
最も大きな問題は,新規ユーザーとベテランユーザーの間に生まれるギャップだ。
ベテランユーザーが「もっと深いコンテンツ」を要求するのは,いたって当然のことだ。彼らはDRGを愛しており,それゆえにプレイ時間も長く,既存のコンテンツはほとんど遊び尽くしてしまっているのだから。
だが新規ユーザーにとってみると「数百時間遊んだ先でアクセスできるコンテンツ」が増えたところで,ほとんどメリットはない。
この問題に対しAkopyan氏は「全員にとって理想のアップデートを行うことは不可能だ」と語った。その上で,ただ不可能だというだけでなく,コミュニティと一緒に開発を進めていく中で,それが不可能だということをコミュニティにも理解してもらうことが大切だと指摘した。
DRGは正式リリース後も,コミュニティと一緒にゲームを作っていくサイクルは維持している。またシーズン制やバトルパスの導入についても,1シーズンの長さや報酬のペースなどはコミュニティの意見を聞きながら調整を行っているという。
「コミュニティからのフィードバックを重視して開発していく」という言葉は,最近ではどんなゲームでも頻繁に耳にする方針だ。だがコミュニティから出てきたフィードバックをどう実際のゲームに活かしていくのかに関するグランドデザインがなければ,実装作業が混乱してしまいかねない。
DRGが採用したシステムは斬新なものではないが,最大で30名程度のチームでも運用可能なシステムであることを実証したという点において,非常に重要な知見だと言えるだろう。
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