インタビュー
「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」は原作のエピソードのみをベースに物語を作っている。制作者に聞く,開発の経緯と“ムーミンの世界への思い”
日本でも人気の高い「ムーミン」シリーズのゲームということで,どのような作品か気になっている人は多いだろう。本作が試遊出展されていた東京ゲームショウ2022のNorwegian Gamesブースにて,開発を手がけるHyper GamesのCEOであり,ゲームクリエイターのAre Sundnes(アーレ スンネス)氏にインタビューを行ったので,その模様をお届けしよう。
「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」公式サイト
[TGS2022]「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」試遊レポート。ほのぼのだけじゃない,やり応えのあるムーミン世界の音楽アドベンチャー
TGS 2022に試遊出展されていた,ムーミンの世界を舞台とした音楽アドベンチャー「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」のプレイレポートをお届け。絵本のような温かみのあるアートが特徴的で「ほのぼの楽しめそうだ」と思ってプレイしてみると,しっかりやり応えのあるゲームだった。
4Gamer:
よろしくお願いします。まずはHyper Gamesについて聞かせてください。これまでどのような作品を制作してきたのでしょうか。
Are Sundnes氏:
代表的な作品を挙げると,光と影のバランスをテーマにしたパズルゲーム「Morkredd」でしょうか。BitSummit 7 Spiritsで,インターナショナルアワード賞をいただいたゲームです。
もう一つ,「Eggggg」という作品もあります。嘔吐のスーパー・パワーを使ってステージを進むという,見た目はカラフルでキャッチーですが,なかなかクレイジーなプラットフォームランナーゲームです。
4Gamer:
得意とするゲームのジャンルや,ゲーム制作の際に大事にしているものは何でしょうか。
Are Sundnes氏:
これが得意というものはとくになく,それよりも自分たちの作りたいものに合った,いろいろなジャンルの作品に挑戦したいと考えています。
大事にしているものは,視覚的な部分ですね。絵から入ってくる情報やその効果を意識して作品を制作していて,それが持ち味にもなっていると思います。
4Gamer:
Hyper Gamesの新作「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」ですが,そもそもなぜムーミンのゲームを制作しようと思ったのでしょう。
Are Sundnes氏:
きっかけは,子どもに「さびしがりやのクニット」の絵本を読み聞かせしていたことにあります。一緒に読んでいて,本のデザインやイラスト,物語が本当に素晴らしくて感動したんですね。
それで,この魅力的なトーベ・ヤンソンの世界を丁寧に落とし込んで,ゲームという形で表現できないかと考えるようになったんです。
そうしてコンセプトアートを制作し,すぐにフィンランドに飛んでムーミンキャラクターズ(ムーミンシリーズの権利元)にプレゼンしたんですが,原作の持っている雰囲気にとても近いと喜んでいただけて,すぐに契約の話になりました。それはとても嬉しかったですね。
4Gamer:
主人公をスナフキンにした理由を教えてください。
Are Sundnes氏:
スタジオのみんなが,スナフキンのことが大好きだったんです(笑)。
私の思い付いたアイデアをスタジオの仲間たちに話したところ,「それならスナフキンを主人公にしよう」「彼のパーソナリティを生かすなら,どんなゲームになるだろう」と,自然な流れでゲームのジャンルもアドベンチャーに決まっていきました。
4Gamer:
音楽がキーとなるゲームシステムも,その流れから決まっていったのですね。
Are Sundnes氏:
はい。スナフキンと言えば,愛用のハーモニカを吹いて,詩や曲を作りながら自由に旅をするイメージですよね。なので,音楽の力で謎を解いたり,クエストをクリアしたりするというゲーム進行になることも自然な流れでした。
4Gamer:
原作のムーミンシリーズは,一見ほのぼのとした印象がありながら,その物語は深くシリアスな一面があり,彗星の襲来や自然災害,北欧の冬の怖さといったシビアな表現があります。このあたりはどのように考え,ゲームを制作されたのでしょう。
Are Sundnes氏:
おっしゃるとおりですね。原作を読んだことがある人はご存じのように,全体的にかわいらしい雰囲気がありますが,その物語はダークな面,メランコリックな面がとても重要で,作品の大きな魅力になっています。
それは絶対に無くさないよう,原作が持っているものはとても大事にしてゲームを制作しました。例えば彼らは,穏やかな印象のある絵ではありますが,とても強い意志や感情をもって動いているんですよね。そういった面はゲームにしっかり反映させています。
4Gamer:
なるほど。先ほど試遊をしてきましたが,スナフキンが悪趣味な公園を攻略するときに,看板を引き抜いて燃やすという目標を見て,「ああ,看板と言えば,“禁止”や“決めつけ”が嫌なスナフキンの嫌いなものだ!」と嬉しくなりました。
Are Sundnes氏:
はい。そういった登場人物の行動はもちろんですが,実は物語自体,原作にあるエピソードのみをベースにしているんです。いまお話にあった公園や公園番も,原作を知っている人ならピンときますよね。
先ほどのダークな面,メランコリックな面になりますが,ゲーム進行や物語は「人生と同じように,すべてがうまくいくものではない」といった,原作と同じ雰囲気を持ったものとなっています。
4Gamer:
そのほか,制作時に大変だったこと,心掛けていたことはありますか。
Are Sundnes氏:
大変だった部分でいうと,やはり絵本のような手描き風のアナログな2Dの世界でキャラクターを動かすところですね。これはシンプルに,技術的に困難な部分が大きかったです。
心掛けたところでいうと,広い層が楽しめるよう,昔からある,多くの人が親しみのあるアドベンチャーのスタイルにすることです。
ここで重要だったのが,暴力的な表現にならないこと。世界の厳しさを伝える要素のある作品ですが,武器や道具で叩いたり攻撃したりするのはムーミンの世界の物語とは相容れません。そういった意味でも,音楽の力で解決していくという仕組みは必然だったと思います。
4Gamer:
ゲーム全体のボリュームはどれくらいになる想定ですか?
Are Sundnes氏:
まだ制作途中なので答えるのは難しいですね。大作や日本のRPGのような40時間を超える作品ではありませんが,謎解きやパズル要素といったさまざまな体験ができるコンテンツを今も追加しているので,十分楽しんでもらえるボリュームになると思います。
4Gamer:
TGS 2022の4日間,出展してみてどのような反応がありましたか?
Are Sundnes氏:
決して大きなブースではないですし,まだ私たち自体が知られているスタジオではないのに,試遊のために1時間待ちの列ができていたことは驚きで,すごく嬉しかったです。
日本の皆さんのムーミン好きにも驚きましたね(笑)。私たちのゲームを知らなくても,通りすがりに「ムーミンだ」「スナフキンだ」と興味を持ってくれました。私たちのゲームをして,涙を流してくれる方もいました。これには感動しました。
4Gamer:
日本のムーミンファンにメッセージをいただけますか。
Are Sundnes氏:
日本のすべてのムーミンファンに挨拶したいです。そんな皆さんに「このゲームが出てくれてよかった」と言ってもらえる作品にしたいと思います。
これは目標というか野望……と言うのもちょっと違うかもしれないですが,「トーベ・ヤンソンがゲームを作ったら,きっとこんな作品になるんじゃないか」と思ってもらえる作品にしたいと思っています。日本のムーミンファン,ゲームファンの皆さんに注目してもらえると嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
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(C)Snufkin: Melody of Moominvalley. Developed by Hyper Games. Published by Raw Fury AB.(C)Moomin Characters