プレイレポート
テンポの良さとシビアさが同居する都市開発シム「東方・平野孤鴻」先行テストレポート。古代中国で理想の都市を作り上げよう
プレイヤーは都市開発の責任者である“長官”となり,吹けば飛ぶような寒村を立派な都市に作り替えるべく,資源を管理し,さまざまな課題やトラブルを解決しながら,土地の運営と管理を担うことになる。
今回,アルファテストの直前に実施された先行テストに参加できたのでレポートしてみよう。古代中国を再現した美しいグラフィックスが目を引く本作は,かなりテンポの良いゲーム進行と,なかなかにシビアなリソース管理が求められるバランス調整が印象的な一作だ。
思い通りの街作り……の前に,生活基盤となるリソースを確保しよう。季節が都市設計に大きな影響を与える
本作の舞台は古代中国。鴻野県と呼ばれる地方で,都市開発の責任者たる“長官”の立場にありながら,長年結果を残せていなかった「丁鴻」がプレイヤーの分身だ。お前が作ったのは棺おけ屋ぐらい,と身内にも散々な評価をされる丁鴻だったが,朝廷からの資金提供をきっかけに,「天下で一番裕福な場所」を目指すべく長老衆と活動を開始する……というのが導入部の物語である。
本作は,「シムシティ」などに代表される都市開発シムだ。プレイヤーは資金や食料,木材や衣服といった有限の資源(リソース)を適切に管理しながら,基本となる住民の家,畑や果樹園といった農作地,八百屋や肉屋といった商店,そして貯水池や見張り台といった治安(行政)の建物をバランスよく建築していき,今よりも大きな都市を目指していく。
舞台が古代なので,電力網や鉄道といった現代的なインフラは存在しない。各資源は住民の生活と直結しており,衣服の備蓄が少なくなれば街の幸福度は下がり,食糧が尽きれば餓死者が大量に発生して,瞬く間に都市は死者と墓地で溢れてしまう。資源は住民の数や建築物の構成によって毎日増減していくので,日々の収支がマイナスのまま放置しておくと,すぐに運営は行き詰まる。
労働者となる住民を増やすために民家を増やしていたら,彼らの食い扶持をまったく計算していなかったため,あっさり飢饉を引き起こしてしまった。この場合に優先するのは民家ではなく,まずは畑などを作って,食料生産に余裕を持たせることだったのだ。
画面上部のUIに表示される数値を睨みながら,とにかくリソースの収支を安定させること。これが本作では非常に重要だ。
また,“四季”(季節)の存在も非常に重要だ。現代のようにインフラが整っていないことを反映してか,資源の消費量はもちろんのこと,各施設の資源生産量も四季によって大きく変動する仕組みとなっている。農地は実りの季節である秋には,毎日多くの食料を生み出してくれるが,夏や冬は生産量が一気に減少する。
つまり,秋のうちに食料を大量に備蓄しておく,あるいは他の季節でも十分に生産できる体制を整えておかないと,たとえ人口を増やさなくても飢饉が発生する可能性が出てくるのだ。これは食料に限った話ではなく,衣服や資金なども同様で,一年を通じて季節的な変動がないものはほとんどない。
これは裏を返せば,「それぞれの季節に特化した施設をまんべんなく建てる」という方法で窮地を回避できるということだ。とくに娯楽施設などは特定の季節に特化したものが多く,自然が豊かになる夏は公園関係が強いといったように個性的なものが用意されている。通常,都市開発系のシムで効率的なプレイを目指すと,同じ建物が大量に並んで味気なくなる……ということが珍しくないが,本作では四季を考慮することによって,バラエティに富んだ街並みを作り出せるだろう。
また本作には,それぞれの施設がリンクして生産量が増える「産業チェーン」という仕組みがあり,これをアンロックしていくのも面白い。例えば野菜畑の場合,貯水池と八百屋をセットで作ることで,生産から販売までをカバーして,収益が上がるという塩梅だ。
季節の特色と産業チェーンを駆使することによって,さらに豊かで見応えのある都市が生み出せるのだろう。
UIやシステム面などの気になる点はあるが,新たな都市開発シムに期待したい
本作の舞台,鴻野県に最初に設置されているのは,いくつかの住宅と農地程度。まごうことなき寒村だ。朝廷から与えられた資源はそれなりにあるものの,土地は狭く,建てられる建物の種類も非常に少ないので,このままでは発展とはほど遠い状態である。
そこで発展のキーとなるのが,「挑戦」という仕組みだ。これは一定の資金などを権利費として投入すると,別の地域(県)の開発に取り組むことができ,与えられる課題を達成するとその地域が鴻野県に合併されるというもの。通常の開発とは区別されており,失敗すれば権利費や建築した建物,生産したリソースはすべて没収。逆に成功すれば,その土地と建物,そして建物の設計図などが手に入り,街の開発が一気に進む。前述のとおり,初期状態の鴻野県はできることが非常に限られているので,この挑戦をクリアすることが目標達成の第一歩と言える。
とはいえ,最初のチュートリアル風の挑戦を除くと,むやみにプレイしてもクリアできるほど甘くない。例えば「人口を○○人に増やす」という課題があるが,それ自体は民家を建てれば達成できても,住民を養えるだけの食料などがなければ飢餓地獄にまっしぐらだ。
また,条件を達成しただけではクリアにならない。挑戦は「1年間の期限内に3段階の目標を達成」が目的だが,各条件を満たした状況を最後まで維持する必要がある。無理やり目標を達成しても意味がなく,しっかりと地に足を付けて都市運営に取り組まなくてはならない。
ここで注目してほしいのが,「策士」の存在だ。これは土地を管理する役人や官僚のようなもので,それぞれの土地に最低1人任命する必要がある。その能力によって資源の生産量を高めたり,建物の建設費や維持費を低減させたりといった恩恵をプレイヤーに与えてくれる。一部の策士はアクティブスキルを持っており,それを任意のタイミングで発動することで,突発的な災害などを乗り切ったりもできる。
策士にはちゃんと賃金を支払い続ける必要があり,有能だが高給取りの策士を複数抱えるほどに財政負担は増える。雇用し続けると経験値が溜まり,レベルが上がって能力も向上していくが,賃金が据え置きだとやる気が失われたり,引き抜きに心が揺れたりといったことも。
また,複数の策士を雇うことが前提となるが,個人の能力を把握したり,個別に管理したりするのは少々面倒に感じた。自動的に管理してくれる仕組みがあれば,より快適にプレイできそうだが……。
さらに,リソースを消費して建物やスキルを解除していく「才能」(スキルツリー)や,リソースを投入して博打的に大きめのメリットが享受できる「商業施策」を活用すれば,開発の加速化が見込めるだろう。ただ,いずれにせよ先立つ物が必要になる。今すぐに投資すべきか,ここは我慢して街作りを優先するか。こうした判断を常に求められるのだ。
本作はオーソドックスな都市開発シムであるが,街を大きくしていくには挑戦への参加が欠かせない。それが,ゲームのメリハリを生んでいる。挑戦は「毎回ゼロからのスタート。短期間で課題のクリアを目指す」という仕組みになっているため,「開発シムのフリーモードに,シナリオモードが組み込まれている」という雰囲気に近い。
都市開発シムでは「することがなくなったので,時間を速めてしばらく放置」といった場面も珍しくないが,本作では挑戦に参加していれば空白の時間が生まれにくい。もし挑戦に失敗しても,(払った権利費は戻ってこないが)ゲームオーバーになることはなく,鴻野県に戻ってくるだけで済む。もちろん成功すれば,その地域が丸ごと街に組み込まれ,一気に都市が成長するのは痛快だ。
また,挑戦そのものは,正否に関係なく30分程度で決着が付くので,上手くいけばサクサクとテンポ良く拡張していける。逆に失敗しても比較的気軽に仕切り直せるのは好印象だ。
本作はアルファテストの段階ということもあってか,急に画面がフリーズしたり,ゲームデータのロードがうまく実行できなかったりして不安定な場面はある。また,UIの文字が全体的に小さくて読みづらいといった気になる部分も散見された。
今回はごく序盤をプレイしているので,ゲーム全体を判断するのは難しいが,都市開発シムファンに“刺さる”可能性は高いと感じた。若干気になる部分はあるものの,日本語化のクオリティも好印象だ。今後のブラッシュアップによって,完成度を高めてくれることを期待しつつ,6月に予定されているアーリーアクセス開始を待ちたい。
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東方:平野孤鴻
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