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NHK「ゲームゲノム」Season2「ストリートファイター」視聴レポート。根底にあるのはライバルの存在,その真髄に迫る
番組のMCを務めるのはダンサー/歌手の三浦大知さん,今回の放送では,ゲストに歌手・俳優として活躍する横山 裕さんと,カプコンの中山貴之氏を迎え,ライバルをテーマに「ストリートファイター」の歴史や最新作「ストリートファイター6」(以下,スト6)に受け継がれる想いが語られた。
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ストリートファイターシリーズとは
ストリートファイターシリーズは,1987年にカプコンが稼働したストリートファイターを第1作とする,対戦格闘ゲームの歴史を築いてきた人気シリーズだ。
ストリートファイターシリーズがメジャーになったのは,1991年に稼働した「ストリートファイターII」(以下,ストII)がきっかけとなる。社会現象とも言える大ブームを日本中で巻き起こし,以降のシリーズ作品だけではなく,格闘ゲーム作品全般に大きな影響を与えた。また,シリーズ作品は現在98作にも及び,トータルで5200万本超の売り上げを記録しているという。
2023年6月に発売されたシリーズ最新作スト6は,eスポーツブームと共に大きな盛り上がりを見せ,単なる遊びとしてのゲームだけでなく,他者と競い合う競技としての側面も持つ。2024年現在,カプコンが主催する世界大会の優勝賞金は100万ドル(約1億4000万円)にもなり,さらにオリンピック種目の候補にも挙がるなど,世界中から注目を集めている。
しかし,アーケードの片隅で対戦を楽しんでいたストIIから,eスポーツとして競技性の高いものと捉えられるようになったスト6まで,作品は見た目も中身も大きく変わったが,根底にあるものは30年前から変わらない「ライバルに勝ちたい」という想いだという。
番組では,ストリートファイターがもたらすライバルという存在をテーマに,その真髄に迫っていった。
拳で語る 刹那の攻防
番組では初めに,格闘ゲームをあまり知らない人に向けて,簡単にゲーム内容の解説が行われた。
対戦ゲームと言うと,勝利条件はさまざまでゲームによっては複雑なものもあるが,ほとんどの格闘ゲームはシンプルで,「攻撃し,画面上部にある体力ゲージを先に削ったほうが勝利」となる。もちろん,ストリートファイターも同じで,このシンプルさ,分かりやすさがeスポーツにおける観戦のしやすさにもつながっている。
攻撃には,パンチボタンとキックボタンがそれぞれ3つずつ用意されており,弱中強パンチ,弱中強キックを使い分けて,相手の体力を削っていく。攻撃アクションにはそれぞれ特徴があり,基本的に弱攻撃は威力もリーチも短いが,隙が少なく,強攻撃はその逆に威力とリーチに優れるが,隙が大きい。
「攻撃」をして,相手の体力を先に削れば勝ちとだけ考えると簡単だが,ここに攻撃を防ぐ「ガード」,ガードを崩せる「投げ」が加わることで,3すくみのじゃんけんが生まれることになる。もちろん,それぞれの要素には奥深い駆け引きがあり,単純なものではないが,根底にあるのはシンプルな読み合いで,原始的がゆえにプレイヤーに愛される要素になっているとも言えるだろう。
そしてストリートファイターの奥深さを支えるのが,それぞれに特色を持った個性豊かなキャラクターたちの存在だ。見た目はもちろん,攻撃アクション,技性能がすべて異なるため,プレイヤーは自分好みのキャラクターを選び,自分だけの戦略を持って対戦を楽しめる。
実際にゲームセンターでストIIを遊んでいたという横山さんは,対戦中は頭脳をフル回転で使っていたそうで,飛び道具合戦の駆け引きなどプレイヤーならではの思い出を語っていた。また,中山氏はその読み合いこそが一番楽しいと話す。相手がどんなことをしてくるか,それにどう対応するか,心理戦がもたらすヒリつきこそがストリートファイターの魅力だと話していた。
“自分より強い奴に会う”ために
ストリートファイターシリーズのブームは1991年に登場したストIIがきっかけではあるが,稼働していたゲームセンターの“とある仕掛け”も理由の1つだという。
その仕掛けとは,「対面式対戦筐体」の登場だ。稼働よりしばらくは1つの画面を2人で見て対戦する「横並び対戦」が普通だったが,向かい合わせに配置する筐体が登場したことで,見知らぬ対戦相手にも気軽に乱入できるようになり,ライバルと巡り会う文化が形成されていった。そしてライバルと切磋琢磨するようになったことで,対戦はより奥深いものに進化していく。
番組には,ストII時代から今日にいたるまで,格闘ゲームシーンの最前線で活躍を続ける日本初のプロ格闘ゲーマー,梅原大吾さんもVTRで出演した。
梅原さんは当時,年末年始の2日間以外の363日はゲームセンターにいたそうで,「どこにどんな強い人がいるか分からないワクワクがあった」「ゲームセンターを見かけたらかならず入っていた」と当時の思い出を語っていた。
1991年に始まったストIIブームは,1992年に家庭用が発売されたことでさらに激化していく。1994年には,両国国技館での全国大会(参加者は7000〜8000人とも言われる)が開かれるなど,その勢いはとどまることを知らず隆盛を極めていった。
そして,それから30年が過ぎた現在,格闘ゲームブーム自体はとうに過ぎ去ったが,当時作り出された大会文化は今でも根付いており,世界規模の大会が毎年開かれている。
また,スト6の開発を務める中山氏曰く,ストIIのキャッチコピー「俺より強い奴に会いに行く」というマインドはずっと根底に残り続けているという。そして,スト6開発時にライバル視していたのは,ストIIであり,ストIIブームを体験した身として,それを超えたいし,今のプレイヤーに近い体験を与えたいと考えながら開発していたそうだ。
ライバル探しに踏み出す旅路
おいしい弁当に箸がついていなかった
中山氏は,ゲーム体験をとおして格闘ゲームを理解できるモードが用意されていなかったことを問題視していたそうで,スト6では,遊びながら学べるゲームモードをたくさん用意したという。
その代表的なモードの1つがワールドツアーだ。自由にアバターを作成し,そのキャラクターで世界中を旅するRPGのようなモードで,ワールドツアーに登場するメインキャラクターに弟子入りすることで,そのキャラクターのバトルスタイルや必殺技を習得できる。少しずつ格闘ゲームの基礎を学び,ライバルを探すための第一歩を踏み出せるのだ。
そして,ゲームセンター文化を色濃く踏襲したのがバトルハブで,筐体が立ち並ぶ巨大空間に世界中のプレイヤーが集まり,自由に対戦や交流を楽しめる。バトルハブには先ほど紹介した対面筐体が配置されているし,自分以外のプレイヤーの試合も自由に観戦できる。
初心者に対して丁寧な導線を用意するのは,競技人口の増加にも間違いなくつながる。30年以上トッププレイヤーとして君臨し続ける梅原さんは,「自分の好きな世界で未知の強豪と出会えることがうれしい」と話す。また,「自分と楽しく対戦できる人が増えるほど人生が幸せになる」としており,まだ見ぬ強豪が生まれやすくなる環境整備はトッププレイヤーにとっても喜ばしいことのようだ。
中山氏はバトルハブについて,連絡手段が少なかった当時のゲームセンター体験の再現を目指したという。約束をせずともゲームセンターに行けば知り合いがいて,対戦や雑談を楽しめる。さらにバトルハブでは利便性を上げ,現代向けに作り上げていったそうだ。
ライバルがいないと強くなれない
世界中の誰しもがライバルになる
番組の最後に中山氏は,対戦格闘ゲームについて,言葉が通じないプレイヤー同士でも対戦をとおして,コミュニケーションできるツールであり,自分が成長できるきっかけにもなるとまとめる。
歴史を振り返ると格闘ゲームはしばしば,「衰退した」「参入するまでのハードルが高い」と言われてきた。事実として,シンプルなアクションゲームと比べると覚えることは多いし,1対1で腕前を競い合う精神的な辛さもあるのが確かだろう。言葉を選ばずに言えば,もっと簡単に楽しめるゲームは山ほどある。
しかし,ストリートファイターシリーズの根底にあるマインドは「俺より強い奴に会いに行く」であり,プロゲーマーの梅原さんは「自分の好きな世界で未知の強豪と出会えることがうれしい」と話している。自分よりも強いプレイヤーがわんさかいるほうが楽しい! そんな考えで格闘ゲームの世界に飛び込んでみても面白いのではないだろうか。
2024年1月10日 放送開始(全10回)
毎週水曜日 23:00〜23:29/NHK 総合(予定)
※「NHK プラス」で1週間見逃し配信あり
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