レビュー
ミドルクラスGPUの大本命「GeForce RTX 4060」の実力をチェック
MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC
古くは「GeForce GTX 460」や「GeForce GTX 760」など,末尾が「60」のNVIDIA製GPUは,ミドルクラス市場で常に高い注目を集めてきた。その例に倣うと,RTX 4060にも期待が高まる。では,はたしてRTX 4060のゲームパフォーマンスはどの程度なのだろうか。今回,RTX 4060を搭載したMSI製グラフィックスカード「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」(以下,MSI RTX 4060 VENTUS OC)を試用する機会を得たので,その実力を確かめてみたい。RTX 4060は,ゲーマーにとって福音になり得るのだろうか。
GPUコアにはAD107を採用
コンパクトにまとめて消費電力を抑えたGPU
型番からも分かるとおり,RTX 4060は,「GeForce RTX 4060 Ti」(以下,RTX 4060 Ti)の下位に位置するGPUだ。RTX 4060 Tiなどと同様に,Ada Lovelaceアーキテクチャを採用しており,TSMCのNVIDIA向けにカスタマイズされた4Nプロセスで製造されている。
GPUコアには「AD107」を採用しているが,RTX 4060 Tiで使われた「AD106」コアの一部省略版でなく,新規に設計している点は興味深い。ダイサイズは146mm2と言われており,これはAD106と比べて77%弱のサイズにあたる。トランジスタ数は約189億個で,AD106と比べて約83%ほどの規模だ。
AD107は,そのSMを8基束ねたGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を3基備えている。RTX 4060 TiのAD106コアや,「GeForce RTX 4070 Ti」の「AD104」コアでは,GPC 1基が12基のSMで構成されていたのに対して,AD107では8基に減っている点は重要なポイントだ。したがって,AD107のSM総数は8×3で24基となり,CUDA Core総数は24×128で3072基という計算になる。ちなみに,RTX 4060はAD107のフルスペック仕様であるそうだ。
ほかのGeForce RTX 40シリーズと同じく,RTX 4060のRT Coreは第3世代に,Tensor Coreは第4世代にそれぞれ進化した。RTX 4060では,24基のRT Coreを備えており,その公称スループットは35 RT-FLOPSという。この数値は,RTX 4060 Tiの51 RT-FLOPSと比べて約69%にあたり,RTX 3060の24.9 RT-FLOPSからは1.4倍ほど向上している。
一方,Tensor Coreは96基を有しており,その公称スループットは242 Tensor-TFLOPSとなっている。こちらはRTX 4060 Tiの約69%であるが,RTX 3060比では約2.4倍ほどで,前世代から大幅に性能が向上した。RTX 40シリーズでは現時点で最下位となるRTX 4060だが,リアルタイムレイトレーシング性能にメスが入り,DLSS 3が利用できる点に関心を持つ人も少なくないのではなかろうか。
動作クロックは,ベースクロックが1830MHzで,ブーストクロックが2460MHzとなっており,RTX 4060 Tiに比べると抑えられてはいるものの,RTX 3060からは大幅に引き上げられた。後述するテスト環境において,負荷をかけた状態のコアクロックを「GPU-Z」(Version 2.54.0)で追ってみたところ,2745MHzまで上昇しているのを確認した。同様のテストでは,RTX 4060 Tiも2745MHzまで上昇していたので,NVIDIA製のFounders Editionとカードメーカー独自デザインカードの違いはあるものの,動作クロックの上昇の幅は,上位モデルと大きな差はなさそうだ。
RTX 4060はグラフィックスメモリとして,容量8GBのGDDR6メモリを組み合わせている。メモリインタフェースは,RTX 4060 Tiと同じ128bitだが,メモリクロックは17GHz相当と,RTX 4060 Tiから若干低くなった。そのため,メモリバス帯域幅は272GB/sとなり,これはRTX 3060と比べて約76%の規模しかない。
それを補うためか,RTX 4060では24MBと大容量のL2キャッシュを搭載している。L2キャッシュ込みでのメモリバス帯域幅は453GB/sとなり,RTX 3060を約26%上回っている,というのがNVIDIAの主張だ。
RTX 4060のTGP(Total Graphics Power)は115Wで,RTX 4060 Tiから45Wも低くなり,RTX 3060比で68%ほどに収まっている。NVIDIAいわく,「ゲームプレイ時の平均的な消費電力は110Wで,定格出力550Wの電源ユニットの使用を推奨する」そうで,電源周りに関するハードルはかなり低めだ。PCI Express(以下,PCIe)補助電源コネクタも8ピンがひとつで,消費電力的にはかなり扱いやすそうだ。
そんなRTX 4060の主なスペックを,RTX 4060 TiとRTX 3060,それに「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3060 Ti)のスペックとともにまとめたものが表1となる。
カード長は200mm以下と短め。ブーストクロックを引き上げたクロックアップモデル
それでは,MSI RTX 4060 VENTUS OCのカードそのものについて見ていこう。
カード長は実測で約197mm(※突起部除く)。RTX 4060 Ti Founders Editionが同244mmであったのと比べると,50mm近くも短い。さらに,基板自体は160mmほどの長さしかなく,RTX 4060を採用した短尺カードの登場も期待できそうだ。
重量は実測で約544gしかなく,RTX 4060 Ti Founders Editionの半分くらいと,かなり軽い。
GPUクーラーは2スロット占有タイプで,100mm径相当のファンを2基搭載する。これらのファンは,一対のファンブレードを外輪部で結合した「TORX FAN 4.0」仕様で,MSIによると,これによりエアフローを集中させることができるという。また,アイドル時にファンの回転を停止する「Zero Frozr」機能も備えている。
GPUクーラーには,6mm径のヒートパイプが2本用いられ,前面から裏面へとエアフローが抜ける構造も健在だ。
さらに,お馴染みのMSI製オーバークロックソフトウェア「Afterburner」(Version 4.6.5)を使用すると,ブーストクロックを−502〜+1000MHzの範囲で1MHz刻みに増減できるほか,メモリクロックを−1004〜+4000MHzの範囲で2MHz刻みに変えることも可能だ。
GPUコア電圧も,現在の値に対する%表記(=100%だと2倍)で,0〜100%まで1%刻みで増やせる。
PCIe補助電源コネクタは,8ピンを1基装備。映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a出力を3つと,HDMI 2.1aをひとつ備えており,このあたりはRTX 4060 Founders Editionと変わらない。
ブーストクロックを下げ,DLSSは有効にしてテストを実施
それでは,RTX 4060のテスト環境に話を移そう。今回,比較対象には上位モデルのRTX 4060 Tiと,移行対象であるRTX 3060,さらに,その上位モデルとなるRTX 3060 Tiを用意した。つまり,上位モデルとの差を確認しつつ,前世代と比較しての立ち位置を明確にしようというわけだ。
ただ,RTX 4060搭載カードとして使用したMSI RTX 4060 VENTUS OCは,先述のとおり,クロックアップモデルであるため,Afterburnerでブーストクロックをリファンレスにまで下げて利用している。
使用したグラフィックスドライバは「GeForce 536.20 Driver」で,これはNVIDIAがRTX 4060のレビュワー向けに配布したものだ。原稿執筆時点での,NVIDIAが配布している一般向けの最新バージョンは「GeForce 536.23 Driver」なので,今回のドライバは,公開中のものと同世代で,RTX 4060に対応させたものという理解でよさそうだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
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マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC (GeForce RTX 4060,グラフィックスメモリ容量8GB) |
GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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ZOTAC Technology ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC (GeForce RTX 3060,グラフィックスメモリ容量12GB) |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | Windows 11 Pro 22H2(Build 22621.1848) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 5.05 |
グラフィックスドライバ | GeForce |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション26.1に準拠。NVIDIAは,RTX 4060で1920×1080ドット以下の解像度でのゲームプレイを想定しているため,テスト解像度には1920×1080ドットと2560×1440ドット,それに高負荷を承知で3840×2160ドットの3つを選択している。
3DMarkにおいては,レイトレーシングの性能を見る「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」も実施している。なお,DLSS適用時の性能をチェックするため,テスト内容を以下のように変更している。
- 3DMark(Version 2.26.8098):「DLSS feature test」を,解像度3840×2160ドットと2560×1440ドットで実施。DLSS modeは「Quality」で実行するが,RTX 4060とRTX 4060 Tiは「DLSS 3」を,RTX 3060 TiとRTX 3060は「DLSS 2」を用いている
- Call of Duty: Modern Warfare II(以下,CoD: MW2):オプションのグラフィックにある品質タブで,「アップスケーリング/シャープニング」から「NVIDIA DLSS」を選択。さらに「NVIDIA DLSS」プリセットには「クオリティ」を指定している。テスト方法はレギュレーションと同じだ
- Fortnite:「設定」の「映像」で,「レンダリングモード」からグラフィックスAPIを「DirectX 12」に変更。さらに「アンチエイリアス&スーパー解像度」を「NVIDIA DLSS」に指定。さらに,「NVIDIA DLSS」を「品質」に変更している。テスト方法はレギュレーションと同じ
- God of War:「Settings」の「ディスプレイ」にある「DLSS」を「画質優先」に変更。テスト方法はレギュレーションと同じだ
- F1 22:「ゲームオプション」の「設定」にある「グラフィック設定」から,「ビデオモード」にある「アンチエイリアス」を「NVIDIA DLSS」に変更。さらに,「DLSS超解像度モード」を「クオリティ」に設定している。なお,RTX 4060とRTX 4060 Tiに関しては,「DLSSフレーム生成」も「オン」にしている
「Marvel's Spider-Man Miles Morales」は,フレーム生成を有効にすると「CapFrameX」では正確に測定できないことに加えて,「FrameView」(Version 1.4.8323.32104943)が正常に動作しなかったため,今回のテストでは割愛した。
RTX 4060 Tiの8割前後の性能。RTX 3060 TiとRTX 3060のほぼ中間
それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。
RTX 4060のスコアは,RTX 4060 Tiの79〜84%程度といったところで,RTX 3060を12〜21%程度上回るものの,RTX 3060 Tiには9〜29%程度届いていない。やはりメモリバス帯域幅の狭さから,RTX 4060は3840×2160ドットでのスコアの落ち込みが目立つものの,1080pでのゲームプレイを想定したRTX 4060にとっては,3840×2160ドットは高負荷過ぎる状況ということなのだろう。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。
このテストではCPU性能の影響がなくなるが,RTX 4060の立ち位置は,RTX 4060 Tiの78〜82%程度と,おおむね総合スコアを踏襲した形となった。RTX 4060は,RTX 3060に11〜24%程度の差を付けるものの,RTX 3060 Tiには9〜31%程度の差を付けられるあたりも,総合スコアと似た傾向だ。
グラフ3は,GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。
このテストでは,CPU性能の影響が加味されるほか,描画負荷も高く,それゆえRTX 4060とRTX 4060 Tiの差は,26〜31%程度まで広がっている。それはRTX 3060との差も同様で,スコア差は18〜24%にまで広がった。ただ,やはりRTX 3060 Tiには19〜26%程度届いていない。
次に,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ4は総合スコアをまとめたものだ。
RTX 4060は,RTX 4060 Ti比で80〜81%程度のスコアを記録し,RTX 3060には16〜18%程度の差を付けた。RTX 3060 Tiとは11〜14%程度の差があるところを見ても,Fire Strike Extremeの結果と似た傾向だ。
続くグラフ5は,Time SpyのGPUテスト結果となる。
Fire Strikeがそうであったように,ここでも総合スコアとほぼ同じ傾向が表れている。RTX 4060のスコアはRTX 4060 Tiの76〜79%程度で,RTX 3060に18〜20%程度の差を付けるも,RTX 3060 Tiには14〜16%程度届いていない。
もうひとつのDirectX 12のテストであるSpeed Wayの結果を,グラフ6に示す。
RTX 4060とRTX 4060 Tiの差は約30%ほどあり,RTX 3060を約14%上回るものの,RTX 3060 Tiには約19%ほど差を付けられている。ちょうどRTX 3060 TiとRTX 3060の中間と言っていい位置付けだ。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果が,グラフ7だ。
RTX 4060のスコアは,RTX 4060 Tiの約73%ほどで差が広がった。ただ,RTX 4060におけるRT Coreの公称スループットは,RTX 4060 Tiの69%ほどであったことを考慮すると,RTX 4060は,それよりも若干高いスコアを記録したと言えよう。
なお,RTX 4060はRTX 3060に約16%の差を付け,一方でRTX 3060 Tiには約13%差まで近づいているあたりは,RT Coreの世代の進歩を感じられる。
もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing Feature testの結果が,グラフ8となる。
Port Royalで見られた傾向が,より顕著となっている。RTX 4060は,RTX 4060 Tiの約70%ほどに留まるものの,RTX 3060は約34%も引き離し,RTX 3060 Tiの約4%にまで迫っている。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ9となる。
DLSS On時のフレームレートを見ると,RTX 4060はRTX 4060 Tiの74〜83%程度だが,RTX 3060には82〜89%程度の大差を付けるばかりか,RTX 3060 Tiを20〜36%程度も離す結果となった。先述したように,RTX 4060とRTX 4060 Tiは,ここではDLSS 3を使用しており,フレーム生成の恩恵がより明らかになったわけだ。
では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ10〜12は,「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の結果となる。
RTX 4060の平均フレームレートは,RTX 4060 Tiの82〜94%程度と,3DMarkよりも上位モデルに迫る勢いを見せている。ただ,RTX 3060との差は6〜8%程度に留まり,RTX 3060 Tiには7〜30%程度も引き離されてしまっている。1パーセンタイルフレームレートを見ても,その傾向は変わっておらず,RTX 3060からの上積みはあまり大きくない印象だ。
次に,CoD: MW2の結果がグラフ13〜15だ。
RTX 4060の平均フレームレートは,RTX 4060 Tiの75〜80%程度に留まり,最小フレームレートもRTX 4060 Tiの70〜76%程度と上位モデルとの格差が明確である。ただ,RTX 3060には平均フレームレートで12〜21%程度の差を付け,1920×1080ドットで100fpsを上回っている点は立派だ。最小フレームレートも,RTX 3060から約21%も伸びている点は,ゲームの快適さから見ても評価できよう。
「Fortnite」の結果をグラフ16〜18に示す。
RTX 4060の平均フレームレートは,RTX 4060 Tiの73〜75%程度なのだが,RTX 3060には,明確な差を付けられないでいる。1パーセンタイルフレームレートで,ようやくRTX 3060に4〜5%程度の差を付けるのだが,芳しくない結果と言えよう。このあたりは,テストでは描画負荷を大きくしているため,L2キャッシュ増量の利点があまり効かず,逆にメモリバス帯域幅の狭さが露呈してしまったのではないだろうか。
グラフ19〜21は,「God of War」の結果だ。
RTX 4060の平均フレームレートは,RTX 4060 Tiの76〜83%程度なのだが,1パーセンタイルフレームレートは約94%まで迫っている点は好印象である。RTX 3060に対しても,平均フレームレートで9〜22%程度,1パーセンタイルフレームレートでも8〜25%程度の差を付けており,世代更新による性能の向上を実感できる。なお,3840×2160ドットでRTX 3060との差が詰まっているのは,メモリバス帯域幅の狭さによるものだろう。
グラフ22は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
スクウェア・エニックスの指標によると,スコア1万5000以上が最高評価になるが,RTX 4060は2560×1440ドットでそれを満たす性能を発揮した。RTX 3060は1万5000に届いていないあたりを見ても,RTX 4060の優位性は明らかだ。
なお,RTX 4060の総合スコアは,RTX 4060 Tiの84〜92%程度ほどで,RTX 3060 Tiとの差は6〜27%程度と,解像度が低いほど迫る勢いを見せている。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ23〜25だ。
平均フレームレートは総合スコアを踏襲したものとなっているが,ここでは最小フレームレートに着目したい。同ベンチマークにおける最小フレームレートは,CPU性能の影響を色濃く受けるのだが,それでも2560×1440ドットで,RTX 3060が60fpsに達していないのに比べて,RTX 4060は60fpsを超えている点は評価できる。
グラフ26〜28には,「F1 22」の結果をまとめている。
RTX 4060の平均フレームレートは,RTX 4060 Tiに24〜40%程度離されるのだが,3840×2160ドット以外の解像度では,RTX 3060に35〜42%程度の,RTX 3060 Tiにも5〜11%程度の差を付けた。このあたりは,DLSS 3によるフレーム生成が奏功したわけだ。最小フレームレートを見ても,DLSS 3の恩恵は大きく,とくに1920×1080ドットでRTX 3060に40fps以上も差を付けている点は称賛できよう。
一方で,3840×2160ドットになるとRTX 4060のフレームレートは大きく低下しており,RTX 3060を下回ってしまっている。やはり高解像度において,メモリバス帯域幅の狭さは影響が大きいようだ。
消費電力は120Wとかなり低め。発熱量も少なく静音性も良好
先述したとおり,RTX 4060のTGPは115Wと消費電力を抑えているが,はたして実際がどの程度なのかは気になるところだ。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,テストは,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中に行っている。その結果をグラフ29に示そう。
このグラフを見ると,RTX 4060が最も低い位置で推移しているのが分かる。最も高いRTX 3060 Tiが220W程度であるのに対して,RTX 4060はその半分程度であり,消費電力はかなり抑えられていそうだ。
グラフ29の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ30となる。
RTX 4060の中央値は122Wほどしかなく,これはRTX 3060から50W以上も低い。今回最も消費電力の多いRTX 3060 Tiとは,90W近くも差が付いている。とくに,RTX 4060は約145Wまでしか上がっておらず,瞬間的にも消費電力が上がっていない点は評価できる。
ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ31だ。
ピーク値をスコアとして採用するため,どうしても差が広がる傾向が出るのだが,それでもRTX 4060は,各アプリケーション実行時で,RTX 3060から44〜102W程度低く,RTX 3060 Tiとは95〜141W程度も差が付いた。やはり,RTX 4060の消費電力の低さは,このテストでもより明確に分かる。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ32のとおり。
今回使用したMSI RTX 4060 VENTUS OCは,コンパクトなGPUクーラーを採用しながらも,GPUの温度が高負荷時でも80℃を超えることはなく,71℃までしか上がらなかった。RTX 4060の消費電力が低いため,それだけ発熱量も少ないということなのだろう。なお,アイドル時にRTX 4060の温度が高めなのは,ファンの回転が停止するためだ。
最後に,筆者の主観であることを断ったうえで,MSI RTX 4060 VENTUS OCの動作音について触れておくと,非常に静かな印象を受けた。MSI RTX 4060 VENTUS OCは,静音に特化したモデルではないものの,これだけ消費電力が低い点を見ても,中には優れた静音性を誇るモデルも登場するのではないかと思う。
価格的には微妙な位置付け。RTX 3060 Tiの存在がネックか
RTX 4060の米国における価格は299ドル(税別)となっており,日本市場では5万円台前半で販売される見込みだ。ただ,えり好みしなければRTX 4060 Ti搭載カードでも6万円前後で購入できるので,RTX 4060の立ち位置は価格的にかなり微妙だ。同じ5万円台前半を出すのであれば,DLSS 3に対応せず,レイトレーシング性能が劣るという不利があるものの,RTX 3060 Ti搭載モデルを購入するほうが,性能面でお得感は高い。
ただ,RTX 4060の低消費電力は秀逸であり,コンパクトなPCケースに組み込みたいという場合や,600W未満で古めの電源ユニットをそのまま流用したい場合などで,RTX 4060は重宝する存在になるのは確かだろう。
NVIDIAのGeForce RTX 4060/4060 Ti製品情報ページ
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