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印刷2022/12/21 16:29

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[インタビュー]電撃発表された新作「アスタータタリクス」「サクライグノラムス」の狙いとは。今泉Pに聞く,その全貌とFgGが目指す次のステージ

 2022年11月5日に東京・TFTホールで開催されたスタジオFgGのオフラインイベント「FgG 感謝祭2022 〜For your Future〜」。その会場で公開配信が行われたYouTube番組「FgG新作2タイトル合同発表会」で発表された2本の新作「アスタータタリクス」iOS / Android「サクライグノラムス」iOS / Android)については,イベント同日に掲載した記事ですでにお伝えしているが,会場ではこのほかにもFgG関連のさまざまな展示・物販が行われていた。

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 本稿では,そんな会場内の様子を写真で紹介すると共に,発表されたばかりの新作で,プロデューサーを務める今泉 潤氏のインタビューをお届けする。発表会の直後に,両作のコンセプトや開発状況,また将来の展望などを聞いてみたので,新作に期待する人はぜひご一読いただきたい。

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発表会が行われた会場に併設されたブースでは,FgG制作のオリジナルタイトル3作品のイラストや衣装が展示されていた
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会場で販売されていた物販の一部
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 FgGは2022年11月5日,オフラインイベント「FgG 感謝祭2022 〜For your Future〜」の模様を配信する番組“FgG新作2タイトル合同発表会”を実施した。新作タイトル「Aster Tatariqus」「サクライグノラムス」が共に2023年にリリース予定であることが明らかにされ,それぞれのストーリーやコンセプトが発表された。

[2022/11/05 23:14]

Twitter「アスタータタリクス」公式アカウント

Twitter「サクライグノラムス」公式アカウント



スマホゲームの物語の在り方に一石を投じる「アスタータタリクス」


4Gamer:
 本日はお時間をいただきありがとうございます。まず発表を終えた今の感想をお聞かせください。

今泉 潤氏
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今泉 潤氏(以下,今泉氏):
 新作発表会は「ファントム オブ キル」をゲームショウのステージで発表して以来なので,初心に戻ったような気持ちです。久しぶりのリアルイベントでしたし,ちゃんと人が来てくれるか不安もありましたが,FgGのタイトルを好きでいてくれる人が,こんなにもいるというのを間近で実感できて,とても嬉しく思います。

4Gamer:
 早速ですが,先ほどの発表内容について質問させてください。まず「アスタータタリクス」ですが,物語には大きく3つの分岐ルートがあり,さらにエンディングは数パターン用意されるとのこと。となると,別のルートの物語を見たいと思ったら,またいちからプレイする必要があるのでしょうか。

今泉氏:
 基本的にはそうなります。3つのルートは「恋人」「親友」「家族」の誰をアロンダイトとするか(存在を武器に変化させるか)で分岐するのですが,その選択をしてしまうと後には戻れません。ただ,どこかにセーブポイント的なものは設けたいと思っているので,本当に“一番最初から”とはならないはずです。

4Gamer:
 分岐の直前に戻れるような?

今泉氏:
 そうですね。ただ初回プレイ時は,自分の人生のように選んだ道を,エンドロールまでまっすぐ進んでほしいと思っています。その後であれば,再プレイしやすい環境を作れたらと思っています。

4Gamer:
 なるほど。しかしメインストーリーが完結まで,しかも3ルートの分岐まで備えた状態でローンチするというのは,とくにスマホ向けタイトルとしては珍しいと思います。なぜこのような形式を選ばれたのでしょうか。

今泉氏:
 やっぱりゲームって,エンディングテーマが流れるエンドロールで終わるのがいいと思うんです。それを見ながらゲームに費やした時間を思い出しながら,スタッフの名前を見て「誰だこいつ?」なんて思ったりもする。そんなカタルシスをスマホゲームでも生み出せないかと,以前からずっと考えていたんです。


4Gamer:
 分かります。

今泉氏:
 個人的にスマホゲームで良くないなあ,と思っているのが,季節ごとのイベントやキャラクターイベントを,本編が終わっていない状態でプレイしなくちゃならないことなんです。メインのお話が終わっていないのに,それとは別の時間軸のイベントを足していくっていうのはキレイじゃない。それに期間限定イベントで実装されたキャラクターが物語で活躍しても,自分の手元にはいない,もう手には入らないってなると,がっかりじゃないですか。

4Gamer:
 「アスタータタリクス」では,そうはならないと?

今泉氏:
 期間限定イベントをどう扱うかは検討中ではありますが,完結しているメインストーリーの空白期間を埋めるような形でイベントを追加していけば,プレイヤーさんがどんなタイミングでゲームを始めたとしても,新鮮な気持ちで楽しんでもらえるのではと思っているんです。

4Gamer:
 確かにその形なら,シナリオとしての整合性は保たれそうです。

今泉氏:
 今のスマホゲームのシナリオは,イベントが多すぎて話がごちゃごちゃになってしまっています。プレイヤーによって,これは知ってるけどこっちは知らない,みたいなことが起こりやすくなっていて,それが原因で新規の人が入りにくかったり,離脱した人が戻って来づらい要因になってしまっている。なので「アスタータタリクス」では,まず1本の幹(メインストーリー)を作って,どんどん太くしていくやり方にしたいと考えています。

4Gamer:
 では,「アスタータタリクス」には期間限定イベントがないということですか。

今泉氏:
 その辺りをどう扱うかはまだ決まっていませんが,メインストーリーで語られるゲーム内の1年間に,イベントを追加していく形式になるのは決定しています。世界線が複数あるのではなく,1本の軸となる世界に肉付けをしてくような,今回はそういう作り方に挑戦してみようということなんです。

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4Gamer:
 分かりました。ではキャラクターについて聞きたいのですが,これを集めるのはやはりガチャに頼ることになるわけですよね。物語が分岐するとなると,ガチャの内容もそれに応じて変わるのでしょうか。

今泉氏:
 そのつもりです。ただ分岐時に選んだパートナーは無料でもらえるので,まずはそのキャラクターを鍛える流れになります。でもパートナーを性能で選ばれるのはイヤなので……能力差をどうするかは悩みどころですね(苦笑)

4Gamer:
 公開されたスクリーンショットを見ると,マスターとアロンダイト以外にも味方ユニットが登場しています。これがガチャで入手できるキラーズ(武器)だと思っていいでしょうか。つまり,主人公は複数のキラーズと契約できる?

今泉氏:
 はい。主人公であるノワールは継承者という能力を持っていて,その能力で過去の記憶を武器庫のように蓄え,そこからキラーズが呼び出せる。これが「アスタータタリクス」におけるガチャの位置づけです。キラーズと契約してバイブス持ちになったら戦える設定なので,戦闘には主人公も参加できる。
 今作で描かれるのは,そうしたキラーズのうちの一つであるアロンダイトの物語ですが,ほかのキラーズにはまた別の物語がある。キラーズの数だけで世界があるということですね。基本的に,一つの命に一つの銘しか持てないんですけど。

4Gamer:
 マスターたる継承者の能力というのは,ノワールだけが持っているでしょうか。

今泉氏:
 厳密な話をするなら,プレイヤーはマスターであり主人公ですが,ノワールとプレイヤーはイコールではありません。現代にいる僕達がノワールの意識の中に潜って,彼の物語や戦いを体験しているというイメージです。

4Gamer:
 うむむ……その記憶から引き出す=ガチャで手に入るキラーズが,「ファントム オブ キル」のキャラクターだったりするわけですか。

今泉氏:
 ええ。「ファントム オブ キル」と同じデザインのキラーズがたくさん登場しますし,もちろん完全な新キャラクターも登場します。そうしてキャラクターが新たに実装されると,本編にも登場するようになり,そのキャラクターの個別ストーリーも解放されるという感じです。

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「ファントム オブ キル」展示ブースの一部
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4Gamer:
 分かりました。発表会ではガチャ……というかキャラクターの追加が難しそうだなと感じたんですが,ゲームとリンクさせた設定がいろいろと盛り込まれているわけですね。

今泉氏:
 基本的にはガチャを回しまくらないと話が進められないようなゲームにしない,つまり無課金であっても十分に遊べるゲームにしたいと思っています。そのうえで,メインストーリーはコンシューマゲームとそん色がないものを提供する。
 もちろんスマホゲームならではの楽しさ――いろいろなキャラクターを使いたいとか,キャラクターを強化したいといった要望にも答えられると思いますし,2周目以降も遊んでくれる人に向けては,より高難度のモードなんかも用意したいと思っています。その辺りのノウハウは,これまでのタイトルで培われていますので,安心して遊んでいただければと。

4Gamer:
 メインストーリーは完結していても,長期的な運営も視野に入れているということでしょうか。

今泉氏:
 一歩の軸をどれだけ膨らませられるか,だと思います。従来のスマホゲームって漫画の連載なんかといっしょで,ゲームの寿命が続く限り,物語も続いていくものじゃないですか。「アスタータタリクス」の場合は,それが時間軸に対し縦ではなく,横に伸びていく感じだと思っていただければと。
 「シノビナイトメア」もそうですが,何があろうとシナリオは最後まできっちり終わらせるのがFgGですので。ただ無理矢理続けるよりかは,惜しまれながら終わるタイトルがあってもいいかな,とは思っています(笑)。

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「誰ガ為ノアルケミスト」展示ブースの一部
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「アスタータタリクス」ティザーサイト



盤石な体制でリブートを仕掛ける「サクライグノラムス」


4Gamer:
 「シノビナイトメア」の話が出たので,次は「サクライグノラムス」について聞かせてください。同作は「シノビナイトメア」と世界観を共有したタイトルとのことですが,一度サービス終了に至ったIPを継続させるというのは開発的にも,またビジネス的にもエネルギーが必要な試みなのではないかと思います。あえて「シノビナイトメア」とのつながりを明確に打ち出したことには,何か理由があるのでしょうか。

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今泉氏:
 エネルギーはだいぶ必要でした(笑)。でも,復活させることはずっと言い続けたことですから。僕自身,クリエイターとしてやりたいことが何個もあるタイプではないので,そういう意味ではせっかく作ったものをバッサリ切り捨てることはしたくなかった。
 プレイヤーの皆さんからは「シノビナイトメア」が終了してしまって寂しいという声を聞いていましたし,外野からは「シノビナイトメア,サ終www」なんて言われることもありました。それを聞いて,「ふざけんなよ! 俺はあきらめねえ男だからな!」ってずっと思ってましたから。「コケても作り直すから!」って(笑)。

4Gamer:
 なるほど(苦笑)。

来場者向けの寄せ書きスペース
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今泉氏:
 「シノビナイトメア」は,ゲームシステムの部分で冒険をしすぎて,それでうまくいかなかった部分がありました。そこを自分が得意なシミュレーションRPG(以下,SRPG)に置き換え,物語的にもリブートさせて……という具合に手を加えていったら「サクライグノラムス」になった感じです。

4Gamer:
 ジャンルからして,まったく別なんですね。

今泉氏:
 はい。身の丈を知るじゃないですけど,自分は“堅く”作っていくのに向いていると思うんです。「ファントム オブ キル」からの8年間で,「スマホのSRPGといえばFgG」というくらいにはブランドイメージができあがっていると思うので,新しい遊びも取り入れつつも,コアなSRPGファンに喜んでもらえるものにできるのではないかと。
 ……以前はそんな風にイメージが固まるのがちょっと嫌で,それで冒険したんですが,むしろ今はこっちかなと。グラフィックスもSDキャラを多用したキャッチーな感じにして,運用しやすくしたいと思っています。

4Gamer:
 となると,ゲーム画面だけみても「シノビナイトメア」の続編だとは分からない?

今泉氏:
 そうかもしれません。でも両作のつながりを感じさせる仕組みは,色々と考えています。例えば「シノビナイトメア」のシナリオは「サクライグノラムス」の中ですべて読めますし,あの戦いをSRPGで再現したモードも用意しているくらいです。……ホントはそっちがメインだったんですけどね。欲目が出ちゃって「サクライグノラムス」の方が膨らんじゃいました。

4Gamer:
 えっ。そうなんですか?

今泉氏:
 そうなんです(笑)。「シノビナイトメア」のリブート部分だけなら,当初考えていた予算内で収まったんですけど,あれよあれよと膨らんじゃって。うまいくいかないものです(笑)。

「シノビナイトメア」展示ブースの一部
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4Gamer:
 そうだったんですね。ところで「サクライグノラムス」のガチャは,前作同様「サムライ」を入手するために回すわけですよね。そうして入手したサムライを,4人のクノイチに憑依させて戦う,というような。

今泉氏:
 はい。サムライと呼ばれるユニットを召喚して戦うのですが,サムライの中にもいろいろなスタイルがあり,育成や修行をすることでパラメータを伸ばすことができます。そのうえでパーティを編成してバトルに送り出す。なので,FgGのほかのタイトルとは,また違ったプレイフィールになるんじゃないかと。

4Gamer:
 育成だけで,そんなに変わるものですか?

今泉氏:
 かなり違うと思いますよ。とくにスマホゲームのSRPGは後から能力を調整したり,新たな成長軸を追加したりせざるを得なくて,ユニットごとのパラメータが多くなりがちなんです。でも本作では,育成によって何らかのパラメータに特化させられるので,SRPGとしての戦略の幅が広げられます。

4Gamer:
 分かりました。一方,世界観の面は広井王子氏が担当されるとのことですが,なぜ氏に白羽の矢を立てたのでしょうか。

今泉氏:
 ゲームってゲームシステムと世界観をうまく結びつけることが重要なんです。僕の場合,どちらかというとゲームシステムから考えることが多くて,それに合わせて世界観やキャラクターを用意するタイプなんですが,広井さんにはそこを助けてもらっています。

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4Gamer:
 ゲームシステムと世界観の結びつき,ですか。

今泉氏:
 ええ。システムと世界観が合ってないと,なんというか色気がないゲームになっちゃうんですよね。普段はうんうん唸りながら自分で考えているところを,広井さんに振るとすぐにベストなものを用意してくれるので,正直めちゃくちゃ助かってます(笑)。

4Gamer:
 分業するメリット,あるいはデメリットのようなものは感じていますか。

今泉氏:
 「アスタータタリクス」は世界観まで含めて僕のカラーですけど,「サクライグノラムス」は広井さんとの共同作業なので,そこがゲームとしての個性になっていると思います。僕としても勉強になってますし,作っていて楽しいところです。

4Gamer:
 とはいえ,「アスタータタリクス」と同時進行での制作は大変だと思うのですが。

今泉氏:
 発表会でも少し触れましたけど,「アスタータタリクス」と「サクライグノラムス」では制作体制が違うんですよ。前者はFgGが開発し,gumiが配信を行うタイトルですが,後者は外部の会社が中心です。もちろんFgGの僕のチームも関わっていますが,基本的に別のラインなので安心してください。

※「サクライグノラムス」のパブリッシングはマーベラスが担当することが,後日(12月5日)発表された(関連記事)。

4Gamer:
 なるほど。まだまだ聞きたいことは尽きないのですが,そろそろお時間のようです。最後に新発表の両作に期待を寄せているファンに,メッセージをいただけますか。

今泉氏:
 オリジナル作品を作るスタジオとしてFgGを立ち上げてから8年,がむしゃらにゲームを作ってきましたが,ここからがスタジオとしての2周目だと思っています。両作とも,これまでのタイトルで学んだことを引き継ぎつつ,初心を忘れることなく「本当に作りたいもの」を追求していますので,ぜひ楽しみにしていてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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――2022年11月5日収録

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