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[プレイレポ]現代を舞台にあの不朽の名作が甦る。ポアロになりきって原作以上の謎に挑む推理ADV「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」
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印刷2024/01/22 12:30

プレイレポート

[プレイレポ]現代を舞台にあの不朽の名作が甦る。ポアロになりきって原作以上の謎に挑む推理ADV「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」

 3gooは2024年1月25日,フランスのMicroids Studio Lyonが手がけた推理アドベンチャー「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」PlayStation 5 / PlayStation 4 / Nintendo Switch)の日本語版を発売する。
 本作は言わずと知れたミステリーの女王,アガサ・クリスティの推理小説「オリエント急行の殺人」を原作にしたゲームだ。プレイヤーはこちらも知らぬ者はない,と言っても差し支えないであろう名探偵エルキュール・ポアロを操り,列車内で発生した不可解な殺人事件の真相を暴くべく捜査を開始することになる。

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「アガサ・クリスティ:オリエント急行殺人事件」公式サイト


 原作の小説はもちろん,映画やドラマなど数え切れないほどのメディアで繰り返しモチーフとなり,ミステリーファンを楽しませてきたオリエント急行殺人事件。本作では舞台設定が現代になり,完全に3D化されたオリエント急行の列車内などを自由に歩き回って捜査ができるという,文字通り“現代のポアロになれる”作品になっているのが大きな特徴だ。

 今回はそんな本作のレポートをお届けする。なお推理モノということもあり,ネタバレにはとくに気をつけているが,ストーリーに関する必要最低限の記述とスクリーンショットは掲載しているため,気になる方は注意していただければと思う。


「私はエルキュール・ポアロ。灰色の脳細胞を持つ,世界一の探偵と言えよう」


 本作の物語は現代のイスタンブールの,とあるホテルからスタートする。混雑するロビーに降り立ったのは,特徴的なヒゲと鋭い眼光が目を引くヨーロッパ系の男性。そう「世界一の探偵」を自称し,それにたがわぬだけの実力を兼ね備えた稀代の名探偵,エルキュール・ポアロその人だ。ポアロは,鉄道会社の重役で旧友のブークと待ち合わせ,140周年を迎えて記念運行されるオリエント急行に乗車し,列車の旅を楽しみつつヨーロッパに帰還する予定だった。

一緒に旅をすることになる探偵のポアロと友人のブーク。几帳面で抜け目ないポアロと善人だが若干間の抜けたブークの対比が面白い
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イスタンブールのホテルでは,アーバスノット“大尉”のとあるトラブルを解決することに。物語の導入とチュートリアルを兼ねたものだ
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 ホテルでの“些細な事件”を片手間で解決したポアロは,多少のトラブルはあったものの無事にオリエント急行に乗り込み,快適な旅が始まる……はずであった。だがその道中で乗客の一人が無残に殺され,さらに豪雪と雪崩によって線路は塞がれ列車は立ち往生。乗客と乗員は車内に閉じ込められたあげく,列車は“雪中の密室”と化してしまう。

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 携帯電話の電波も届かない僻地で孤立してしまった彼らは,ポアロに殺人事件の捜査を依頼し,この事態の収拾を図ることにする。だが,あまりにも不可解な状況で殺害された被害者,食い違う証言と証拠,そして非協力的な乗客達……と,事態は混迷を極めていた。ここにポアロといえども一筋縄ではいかない難事件の幕が今,開くことになったのだ。

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 冒頭でも触れたように,本作は現代のポアロとなって事件の解決を目指す,推理アドベンチャーゲームだ。主な舞台となるオリエント急行の列車はもちろん,冒頭のホテルなどのプレイエリアは3Dグラフィックスで描かれており,三人称視点でポアロを操作し調査や聞き込みを行う。主に事件現場では物証の確認,それ以外のエリアでは会話がメインになっていく。
 なお,基本的に現場の捜査は1回で済むようになっている(すべて調べ終わるまで先に進めない)ので,昔のADVのように“現場百遍”を繰り返して何度もフラグ立てのために移動して回る……といった必要はない。

「自由に歩き回れるオリエント急行」は本作の目玉の一つ。原作小説はもちろん,ドラマ版や映画版を思い出しつつプレイするのもいいだろう
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 本作の捜査情報は「マインドマップ」にまとめられていく。これは上から下に伸びていくツリー状のフラグで,例えば「○○を調べる」や「××に事情聴取する」といった個別の目標を達成していくとさらに別の枝が伸びていき,徐々に真相に迫っていけるシステムだ。迷った場合はこれをチェックすることで,次の目標を簡単に確認できるし,同時に判明している事実も一望することができる。

マインドマップは本作のキモのシステムだ。捜査の進展具合や,次に何をすべきかがすぐに確認できる
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 またマインドマップはポアロの推理を進めるトリガーにもなっており,黄色いアイコンが表示されたときに,それまでの情報を整理することで,新たな展開につながっていく。
 具体的には聴取で得られた容疑者のアリバイを付き合わせる,重要な出来事のタイムラインを整理する,証拠品の関連を明らかにするなど,まさに「推理を行うためのパート」であり,シンプルな操作ながらプレイしているとなかなかにテンションが上がる。無事にクリアできたらポアロの自画自賛が適時挟まるのも,本人の自信満々な性格が表れていて面白い。

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 なお,事件捜査とは少し離れた形で本作にはパズル要素が盛り込まれており,暗号を解く,隠された証拠品を入手する,関係者に恩を売って話を引き出すなど,さまざまなタイミングでプレイヤーに挑戦状を叩きつけてくる。
 内容としては2Dや3Dのパズルを解いたり,倉庫の荷物を潰さないように整理したり,ケーブルの接続を確認しながら電源を復旧させたりと,バラエティはかなり豊か。前半は簡単に解けるものが多いが,後半になってくるとかなりしっかりとプレイしないとクリアが難しい印象で,手間取ることもそれなりにあった。

意外とパズル要素が多いのも,本作の特徴だ。なお,クリアに必須でないものも存在する
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 とはいえ推理にしてもパズルにしても時間制限はなく,さらに何度間違ってもゲームオーバーになることはないので,自分のペースでじっくり進めていける。さらに,難しい場合にはデメリットなくヒントを自由に利用できるため,詰まってしまうことはまずないだろう。恐らく翻訳(日本語)の関係でより難しくなっているものもある,と感じるものもあったので,困ったときはどんどんヒントを活用しよう。

謎解きや推理ごとに適時挟まるポアロの自画自賛も,ちょっとした見どころ
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原作をかなり忠実に再現しながらも,新たなキャラクターの追加やシナリオ面でのプラスαが見逃せない


 古今東西さまざまな媒体で展開されてきたオリエント急行殺人事件だが,本作は舞台設定が現代であるためスマートフォンなどを活用するポアロが見られたり,時代に合わせたキャラの微妙な設定変更が行われたりしている。だが全体としてはかなり原作,あるいは往年の映像作品に近い“手堅い”作りになっていると感じた。
 作品自体をある程度知っているなら,恐らくかなりすんなりと登場人物を把握できるだろうし,列車内での捜査もしっかりと王道を行くものと感じられるはず。いい意味で奇をてらってはいない作風という印象が強く,ファンが幻滅するようなことはないだろう。

外見や会話から相手の特徴を掴んだり,会話の嘘を見抜いたりと“探偵らしさ”がシステムに組み込まれている
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 その一方で,ただ“原作そのまま”かと言えばそうではない。その象徴となるのがオリジナルキャラクターであるジョアンナ・ロックで,本作の殺人事件に大きく関わる“もう一つの事件”のキーパーソンであり,同時にヘイスティングズ大尉のようなポアロの助手としても活躍することになる女性だ。ネタバレを避けるために最低限の記述に止めるが,彼女は独自の操作パートがある“第二の主人公”的な立ち位置でもあり,決してオマケ的な追加要素ではない。
 若干ポアロの出番を食っている感もあるが,個人的には彼女の出番により,物語により深みを持たせることに成功していると感じた。

ジョアンナという女性を通し,現在と過去が交差し物語が進んでいく。またポアロが手がける捜査においても,重要な役割を果たす
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 さらにストーリーにおいても,本作は「原作プラスα」の要素が含まれており,ある意味で元の作品を知っていればこそ驚くような展開になっている。確固たる原作がある作品は,単純に元のままではどうしても新鮮さが薄れるし,逆に変更点が大きすぎればファンの期待を裏切ったり,原作へのリスペクトが疑われる事態になったりすることもある。そういった点を考慮すれば,個人的には多すぎず少なすぎずの,丁度いい程度の追加要素ではないかと思う。

現代が舞台なので,スマートフォンやインターネットのようなテクノロジーや各種のガジェットは普通に登場する。画面で証拠を見せるポアロはなかなかに新鮮だ
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 グラフィックスに関してはマルチプラットフォームということもあり,PS5版でも最先端のビジュアルという印象はないが,狭いながらも豪華絢爛なオリエント急行の作りは十分に見応えがあるもので,歩き回るのも楽しい。また,キャラクターも若干リアル寄りながら,全体的にデフォルメが効いた分かりやすいキャラに仕上がっており,実写ドラマなどとはまた違った感覚で楽しめるだろう。
 さらに主役のポアロは「几帳面で大層な自信家」というベースは維持しつつも,紳士で思慮深いという側面が強く描写されており,原作をあまり知らなくても親しみやすいだろう。

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 前述のとおりゲームの進行上,推理とはあまり関係のないパズルを解く必要がそれなりにあり,「推理は好きだけどパズルは苦手」という人は(ヘルプ機能でほぼ答えを見られるが)少し面倒に感じるかもしれない。

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 ただ全体としては良質な推理アドベンチャーゲームである,とまとめられると思うし,著者もエンディングまで一気にプレイしてしまった。原作を知らないならオープニングからエンディングまで丸ごと楽しめるし,逆にドラマなどで履修済みならオリジナルとの違いを堪能したり,追加部分の展開に驚いたりできるだろう。興味があればぜひ,ポアロになりきってオリエント急行の旅に出てみてほしい。

「アガサ・クリスティ:オリエント急行殺人事件」公式サイト

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