プレイレポート
[プレイレポ]バスを待つ,トイレを待つ,ただひたすら待つ――「While Waiting」は,“待つ”ということをあらためて考えさせてくれる不思議なゲーム
そんな,“待っているあいだ”にフォーカスしたちょっと変わったゲームが,「Moncage -箱庭ノ夢-」で知られるOptillusion Gamesが制作中の「While Waiting」(ただ待つゲーム)だ。
アメリカ・ロサンゼルスで行われた「Summer Game Fest 2024: Play Days」のDay of the Devsコーナーに本作がプレイアブル出展されていたので,開発メンバーの解説を受けながらプレイしてきた。
プレイヤーの目的はいろいろなものを“待つ”,ただそれだけだ。本作は,いろいろな“待つ”シチュエーションを漫画のワンシーンのように切り取っており,プレイヤーはそれらを体験していく。
ひとつ待ち終えたら次のシチュエーションへ,それが終わったらまた次へと展開していくのだが,特別な操作は必要なく,本当にただただ待っている(時間が経過する)だけでシーンは終わってしまう。
ただ,何かをしようと思ったら実行に移すことはできる。
たとえばバスを待っている場面なら,バス停のとなりでチラシ配りをしている人からチラシを受け取り,風で飛ばしたりどこかに貼ったりできる。渋滞が動き出すのを待つ場面なら,車を降り,アヒルを連れて池に向かうことも可能だ。「あるあるだなー」と共感できるものからシュールなものまで,その振れ幅は大きい。
先の例がすべてシュール寄りだったので,試遊して最も面白かったところであり,風刺が効いている」と思ったものをひとつ紹介しよう。それが「スマホゲームのスタミナ回復を待つ」という場面だ。
「あともう少しスタミナが回復すれば,ゲームを進められるのになあ」という状況は誰もが味わったことがあると思うが,この場面ではそれが体験できる。
スマホゲームには,新しい装備の購入画面や,広告を見るとスタミナチャージができるリンクのボタンが配置されており,ただスタミナ回復を待てばいいのに,ついつい押したくなる。
しかも,新しい装備を購入するにはちょっとお金やポイントが足りず,スタミナチャージは「あれー? おかしいなあ。解けないぞぉ?」系のスマホゲームの広告を強制的に見せられる。
さらに画面を閉じるために×を押そうとすると,タッチに反応する範囲が狭くてぜんぜん閉じられない。「ああ,なにもしないで待てばよかったのだ」と虚無感を抱くであろうアレやコレが,実に丁寧に作られている様子には感心させられた。
ただ,この「何かをする」という行為は,それ自体にリワードのようなものがあり,達成するとメモ書きのようなものに関連したシールが貼られる。よくできましたシールみたいなものだろうか。
筆者は個人的にバスが来るのを待つことを「バスマティ(ライス)」と呼んでいるのだが,そういうしょうもない思いつきやつぶやきみたいなのが報酬になっているような気がして,「本作の開発陣はなんか近い感覚を持ってそうだな」と勝手に共感していた。あとはふつうにシールが好き,けっこう集めたくなる。
筆者はわりと待てる人間で,待っているあいだにひとりで考えごとをしたり,周りで起きていることを見ていろいろ想像したり,何もしない時間を過ごすのが好きだったりする。元々そういう人たちなのかな? と,ここでも開発メンバーに勝手に共感する。
なお本作はすでに日本語に対応しており,今回の試遊でも途中から日本語テキストでプレイできた。Steamではデモ版の配信も行われているので,気になった人は“ここは待たずに”すぐチェックしてほしい。
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