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インタビュー

[インタビュー]夢色カンパニーの脚本家たちの愛が形となったアーカイブアプリ「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」。開発の裏側を聞く

 2015年にセガゲームス(現セガ)から配信され,2019年にサービスを終了したスマホ向けミュージカルリズムゲーム「夢色キャスト」の一部機能がオフラインで遊べるアーカイブアプリ「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」iOS / Android)が,2024年9月29日にリリースされます。

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 4Gamerは今回,「夢色キャスト」のプランナーであり,「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」のディレクターを務める松永真依子氏にインタビューを行う機会を得た。技術的な困難を伴いながらも,オリジナル版の魅力をそのまま再現することにこだわった制作秘話を,たっぷりとお届けする。


●「夢色キャスト」とは?

 ミュージカル劇団「夢色カンパニー」の脚本家となったプレイヤーが,7人のメインキャストと共に最高のミュージカルを作り上げるために奮闘していく物語が展開される。多彩なミュージカル演目の楽曲を使ったリズムゲームでキャスト達との絆を深めつつ,プレイヤーのランクを上げてストーリーを進めていく,というのがおおまかなゲームの流れだ。

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「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」公式サイト


※記事内のゲーム画面は開発中のものです


脚本家の想いに後押しされ
ついにアーカイブアプリ化を実現


4Gamer:
 9周年おめでとうございます。アーカイブアプリのリリースが発表され,話題となりましたが「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」はどのような経緯で開発がスタートしたのでしょうか。

松永真依子氏(以下,松永氏):
 運営型アプリとしては2019年1月15日にサービスを終了しましたが,その後もコラボカフェやグッズショップなどの展開を続けさせていただき,9周年を迎えられました。コラボ展開をするたびに,脚本家(プレイヤー)の皆さんから「アプリを復活させてほしいです」というお声をいただいていたんです。私自身,プランナーとして携わっていたので思い入れもあり,その声にお応えできないかとずっと考えていました。

4Gamer:
 愛はあってもアーカイブアプリ化には難題も多そうですね。

松永氏:
 弊社ではこれまでスマートフォン向けアプリのアーカイブ化を行ったことがなかったため,なかなか企画を動かす糸口が見つけられなかったんです。でもあるとき,脚本家の皆さんの熱意を会社に伝えるのがいいのでは……と考えました。そこで2023年の秋に実施したコラボカフェにお越しいただいたお客様に,アンケートへのご協力をお願いしたんです。

 そしてそのアンケート用紙の山を持って,こんなにたくさんのファンに愛されているんだよとみんなに伝えたところ「アーカイブアプリはどうだろう」という話になりました。脚本家の皆さんの想いが伝わったのが,アーカイブアプリ始動の1番のきっかけです。

4Gamer:
 皆さんの願いが届いたと。直筆というのもより想いが込められていそうですね。

松永氏:
 そうですね。もちろんSNSで気持ちを発信していただくのもすごくうれしいですが,物理的にも説得力があるアンケート結果をいただけたからこそ,弊社内でも「これはいけるんじゃないか」という雰囲気になり,アーカイブアプリ化が実現したのかなと思っています。

 コラボカフェの運営の方にお話を聞いたら,来店されたほとんどのお客様がアンケートに協力してくれたそうです。アンケート1枚1枚を見て,もしも今回ダメでも,ほかの形で企画を頑張ろうと思えるほどうれしかったですね。

4Gamer:
 アプリサービスが終了してから5年後の今年に発表ということもあり,脚本家の皆さんから大変大きな反響がありました。皆さんの反応を見たときのお気持ちをお聞かせください。

松永氏:
 まずは,安心しました。アンケートだけでなく,弊社に届くお手紙などを見て,何かしたいとはずっと思っていたんです。しかし開発として,脚本家の皆さんが望むものを発信できるかという点には不安もありました。

 ですが発表後にすごい反響をいただき,皆さん喜んでくれていて……。まだ配信前ではありますが,皆さんが求めていたものをちゃんとお届けできたんだと思いました。


「夢色キャスト」の魅力は
共感できる等身大のキャストたちの姿


4Gamer:
 あらためて,脚本家の皆さんの心をとらえ続ける「夢色キャスト」の魅力は,どこだと思いますか。

松永氏:
 キャスト(「夢キャス」に登場する劇団員のこと)たちをリアルに,等身大の人物像として描いているので,脚本家の皆さんがより身近に感じてくださっているのかなと感じます。実際に,そういうお声もいただきました。

 いい意味で,派手過ぎない(笑)。仕事の悩みだったり,現実でありそうな困難に直面したり,脚本家の皆さんと同じような苦労をしているところに共感していただけた点も魅力につながっているのかなと思います。

 また,イラストや楽曲も魅力の1つです。本当に作品を理解して愛し,どんなものが相応しいか考えてくれるクリエイターの皆さんが作り上げてくださいました。

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4Gamer:
 制作陣の愛は,プレイヤーにも伝わりますよね。

松永氏:
 楽曲はレーベルのバンダイナムコミュージックライブ様(旧ランティス様)が手掛けており,ゲーム開発側は完成したものを受け取る側なんです。毎回届いたものが我々の想像をはるかに超えるもので,スゴイと驚かされました。

 こちらがオーダーしたものをそのまま作るのではなく,クリエイターさんたちが理解して高めて,楽曲としてアウトプットしてくださいます。ほかの要素もそのような形だったので,際限なく作品がよくなっていくなと感じましたね。

4Gamer:
 歌唱を担当する声優陣も実力派ばかりで,いい楽曲になるのも納得です。

松永氏:
 声優の皆さんには,新機能やイベントなどのボイス,楽曲の収録をお願いしました。ドラマCDからも4,5年ぶりの収録だったのですが,それぞれのキャラクターを理解して,今の彼なら……というふうに演じてくださいました。

 こちらがディレクションする以上のものを声優の皆さんや,音響監督さんが作り上げてくださいました。私が最初に想定していたよりも,さらにクオリティの高いものになっていますので,ぜひ楽しんでいただきたいです。

4Gamer:
 アーカイブアプリのための新規メインビジュアルも公開されています。こちらに込めた想いや,注目して欲しいポイントを教えてください。

松永氏:
 「夢色キャスト」は第1部から第4部までメインストーリーがあり,作中でも年月か経過しているという描写があります。

 今回のメインビジュアルでも,運営型アプリのときから,年月を重ねているはずなんですよね。イラストを見たときに,キャストの表情や立ち振る舞いで成長を感じられるように描いてもらいました。すでに大人だったキャストたちは表情に余裕を持たせ,芸の幅が増えていることが分かるように……などの成長を,1人ひとりに反映させています。そこに注目していただけると,うれしいですね。

 また「夢色カンパニー」主宰の朝日奈響也と劇団「ジェネシス」の看板役者である黒木崚介は,どのように劇団や脚本家を引っ張っていくのかという姿勢を,ポーズで表現しています。カードイラストにはなりませんが,ゲームのスタート画面に収録されるので,いつでも見られますよ。

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朝日奈響也
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黒木崚介

4Gamer:
 私も舞台作品を観ることが多いので,主宰や看板役者の想いが込もっていると聞くと,役者としての彼らがリアルに感じられてニヤニヤしてしまいますね。

松永氏:
 魅力でお話ししたリアルさにも通じる部分ですが,彼らが生きている役者であるというのは,開発としても意識している部分です。時代は移り変わるので,5年前と同じパフォーマンスは,彼らはしていないと思うんです。2024年現在,彼らが今でも横浜のどこかで劇団を運営していることを前提に考えています。

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技術的な困難を乗り越えて実装された
ドラマやリズムゲーム


4Gamer:
 アーカイブアプリは初期から全カードが使えるなど,ファンにはうれしい作品です。本作の見どころを教えてください。

松永氏:
 アンケートでも,アーカイブアプリでどこを復活させて欲しいかという質問をさせていただきました。リズムゲーム,ドラマ(ストーリー),イラストを使うキャストショットなど,皆さんが情熱をもって答えてくださって。優先してほしい順番に番号を振っていただいたんですが,全部1番(最優先)という方もいらっしゃいました(笑)。それが本音だというのも分かりますし,うれしかったですが,どうしようか悩みましたね。

イラストやボイスが確認できる「キャストアルバム」,キャストとメッセージのやりとりができる「プライベートモード」,公演ポスターや設定資料などが見られる「DCTコレクション」も収録されている
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4Gamer:
 脚本家さんのリアルな声ですね。

松永氏:
 なかでもドラマは約4年運営していたこともあり,膨大な数があってチェックするだけでも大変な作業です。さらにドラマに使用したLive2D素材などは,2015年に制作したものなので,2024年にすべて再利用するのは技術的にも難しい部分がありました。

 ただ新しく作り直しても,キャストたちの表情を完全には再現できません。当時の彼らがなるべく変わらない姿で登場してもらうために,開発一同頑張りました。

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4Gamer:
 あのころのキャストに再び会えるのがうれしいです。ちなみにドラマは,どんなものが収録されているのでしょうか。

松永氏:
 ミュージカル劇団「夢色カンパニー」の活躍を描くメインドラマ(全4部)や,キャストたちの個別ストーリーにあたる恋愛ドラマ,キャストドラマ,お披露目ドラマ,楽屋差入ドラマのほか,季節イベントの特別ドラマを収録しています。コラボを除けば,ほぼ網羅できました。メインドラマと恋愛ドラマはフルボイスです。

4Gamer:
 今回の開発で改良された点はあるのでしょうか。

松永氏:
 キャストショットを改良しました。オリジナル版は1人ずつだったんですが,今回は最大7人で撮れるようになっています。またUI(プレイヤーが触るメニュー画面など)も,より遊びやすくしました。カメラで撮影する機能は,この5年間で進化し,身近になっています。そのため当時の使いやすいカメラでは今は不便だろうということで,今遊びやすいカメラ機能にしています。

最大7人と一緒に撮影できるようになっている
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実際撮影したみたもの(背景が黒いのはレンズを覆ったためだ)
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4Gamer:
 何を踏襲し,何を改良するかは悩まれた部分もあるかと思います。開発の際に,苦労した点はありますか。

松永氏:
 アーカイブアプリということで,大きく変えるのではなく,オリジナルの良さをそのままお届けするという方針でした。ただ運営型のアプリに比べて開発チームが少人数で,先ほどお話ししたように素材データなどの問題もあり,一時期はドラマは無理かもという話も出たほどです。

 ですが脚本家の皆さんがその要素をなぜ求めているかをちゃんと説明し,話し合いをして,「ドラマを復活します」と言えるところまで到達できました。そこが,1番の苦労でしたね。

コラボを除く,ほとんどすべてのドラマが収録されている
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4Gamer:
 ゲーム開発も技術や機材の進化が目覚ましいぶん,アーカイブアプリとして蘇らせるのは困難も多かったんですね。

松永氏:
 バージョンの違いなどには頭を悩まされましたね。イラストもデータは全部そろっているのですが,途中を修正しなければいけないものがあって……。でも,その途中経過のデータは残っていなんです(笑)。別の部署に移ってしまった,当時の開発スタッフに声をかけて,臨時で協力してもらったこともありました。

4Gamer:
 「夢色キャスト」と言えば,リズムゲームや楽曲も見どころです。こちらは,最初から入れる前提で開発していたのでしょうか。

松永氏:
 アンケートで復活させてほしい機能で,やはりリズムゲームが1位でした。我々としてもリズムゲームを入れられないようであれば,「夢色キャスト」復活とは言えないなという想いがあったんです。そのためリズムゲームが可能だと分かった状態で,企画がスタートしたところもあります。アーカイブアプリには,リミックスやバージョン違いを含め,全113曲が収録されています。

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4Gamer:
 アプリのリリースをきっかけに「夢色キャスト」を知る方も多いです。新規の方に,どのような部分を楽しんでほしいですか。

松永氏:
 9年前からあるコンテンツで,ファンの皆さまのコミュニティも完成されており,今から初めて大丈夫かなと思う方もいると思います。ですが物語は1話から見られますし,リズムゲームもEASYモードからありますので,気負わずに遊んでほしいです。

 逆にずっと待ってくださっていた方は,最終話の告白シーンだけ見たり,いきなり高難度のリズムゲームに挑んだりできます。自分のスタイルに合わせて,楽しんでいただけるとうれしいです。


これからの夢色カンパニー,
そしてジェネシスの活躍にも注目!


4Gamer:
 10周年に向けた展開について,すでに発表されているものですと新規楽曲を制作中とのことですが……。

松永氏:
 現時点でお伝えできることは少ないのですが,新規楽曲は10周年に向けたものとなっています。メインビジュアルにも絡んでくるので,イラストを見ながら楽しめるものにしたいなと思っております。もちろん楽曲は,劇団ごとです。

4Gamer:
 お話しいただける範囲で,今後の展望を教えてください。「夢色キャスト Road to 10th Starting Point」などオフラインイベントも実施されましたが,今後もゲーム外の施策を期待してもいいでしょうか。

松永氏:
 発表されているものだと,11月9日と10日に行われるアニメイトガールズフェスティバル2024に夢色カンパニーとして出展させていただきます。過去最大規模で計画しておりますので,ご来場される方はぜひスペースに立ち寄っていただけるとうれしいです。ほかにも10周年に向け,さまざまなコラボを予定しています。9月29日に配信する「9周年記念生放送」でも最新情報をお届けしますので,ぜひチェックしていただきたいです。

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9月29日配信の「9周年記念生放送」。最新情報をチェックしよう
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12月にはキャストイベントも開催予定

4Gamer:
 これだけ盛り上がると,新展開も……とついつい思ってしまいます。

松永氏:
 脚本家さんたちを盛り上げ,彼らが活躍できる土台を我々が整えることが大事だと思っています。彼らが現代を生きている役者なので,場が整えばきっと……と信じています。

4Gamer:
 ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

松永氏:
 9年間,「夢色キャスト」に携わった身として,皆さんの声が届いたから動けたという気持ちがあります。皆さんの期待を裏切らず,喜んでいただける限界を目指して開発し,いよいよ9月29日にリリース予定です。ぜひ,楽しみに待っていていただけるとうれしいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

――2024年9月10日収録

「夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL」公式サイト

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夢色キャスト TAKE A CURTAIN CALL公式サイトへ
  • セガ
  • 発売日:2024/09/29
  • 価格:4800円(税込)
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