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日本のIPを世界へ届けるJapan Pavilionの挑戦とは。話題作「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」開発陣に聞く,その狙いと戦略
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印刷2024/09/07 12:00

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日本のIPを世界へ届けるJapan Pavilionの挑戦とは。話題作「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」開発陣に聞く,その狙いと戦略

 インディアナ州のインディアナポリスにて,2024年8月1日から4日にかけて開催された北米最大のアナログゲームイベント「Gen Con 2024」には,アメリカのみならず世界各地のアナログゲームメーカーがブースを構え,新旧問わないさまざまなゲームタイトルが会場を賑わしていた。

 関西を中心とした日本のアナログゲーム企業――AsobisionイクリエグループSNEFrogGames妄想ゲームズ☆の5社による共同ブース,Japan Pavilionもまたその一つだ。同ブースでは各社の代表作の展示が行われていたほか,一部は販売を行っていたようである。

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 「Board Game Business Expo Japan」のオーガナイザーであり,Japan Pavilionの代表も務める高橋宏佳氏によれば,今回のブース出展は昨年開催されたGen Con 2023への参加経験を元に企画されたものだという。

 アニメやマンガなどの日本のコンテンツは,アメリカでも近年大きなブームを巻き起こしており,侍や忍者,寿司に折り紙といったオリエンタルなテーマもまた,変わらず人気がある。しかし日本からの出展を果たしている企業は――オインクゲームズやホビージャパンなど一部存在するとはいえ――まだまだ少ないのが現状だ。そこで先の複数のメーカーに声を掛け,共同出展の形で初のGen Con出展が実現したとのことである。

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 氏はまた,来年開催されるGen Con 2025に同じく出展予定とのことで,そのときはさらに大きな規模のブースを確保したいとも語っていた。すでに多くの日本のメーカーに認知されているドイツのEssen Spiel同様,Gen Conにもたくさんの日本企業が参加する状況になってほしいとも言っていたので,志を同じくする日本のメーカーは出展を検討してみてはいかがだろうか。

Japan Pavilion代表の高橋宏佳氏。今回の出展の感想を聞いたところ,思った以上に反応がいいと話していた。実際,日本から持ち込んだ妄想ゲームズ☆のいくつかのタイトルは,早々に完売してしまった様子
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ミニチュアゲームでIPの魅力を発信する――「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」開発陣インタビュー


 そんなJapan Pavilionだが,中でも注目すべきタイトルは,Gen Con開幕直前の7月31日に発表されたばかりの新作「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」だ。明らかになっているのは同作が多数のミニチュアを使ったボードゲームであり,Kickstarterによるクラウドファンディングを経てリリースされるといった情報のみだが,いったいどんなゲームになるのだろうか。会場に居合わせた開発陣に話を聞いてみた。
 質問に答えてくれたのは,「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」プロデューサーの立澤龍一氏と,ゲームデザイナーの松永直樹氏,フィギュア製作担当のキムラユヅル氏,そしてクリエイティブ・ディレクターの丸山 諒氏だ。以下,その模様を対話形式でお届けする。

左からプロデューサーの立澤龍一氏,クリエイティブ・ディレクターの丸山 諒氏,フィギュア製作担当のキムラユヅル氏,ゲームデザイナーの松永直樹氏
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4Gamer:
 お時間をいただきありがとうございます。今回出展された「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」について,詳しいお話を聞かせていただけるとのこと。まず,本作はどんなゲームなんでしょうか。

松永直樹氏(以下,松永氏):
 本作は2〜4人用の対戦型ボードゲームです。新宿区や渋谷区といった,いくつかのエリアに分割された東京を舞台に,各プレイヤーが仲魔(なかま)を増やしながら陣取りをしていく,いわゆるエリアマジョリティのメカニクスを採用しています。

4Gamer:
 プレイヤー同士で争うわけですね。エリアマジョリティとのことですが,直接バトルをしたりもするのでしょうか。

(C)ATLUS. (C)SEGA. 監修中につき,デザインや内容は変更となる場合があります。/All designs are under supervision.
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松永氏:
 はい。原作の「真・女神転生」はシングルプレイのRPGなのでほかのプレイヤーと争うことはありませんが,本作ではボードゲームらしいインタラクションを目指して,対戦の要素を取り入れています。ゲームが進むにつれ,仲魔にできる悪魔も強力になっていきますので,後半はとくに盛り上がると思います。

4Gamer:
 展示を拝見しましたが,ものすごい数のフィギュアが収録されるようです。この手のミニチュアゲームは,日本ではなかなか珍しいと思うのですが。

松永氏:
 ええ,全部で72体のミニチュアを収録しています。これだけの数は,日本どころか海外でもなかなかないと思います。

4Gamer:
 ミニチュアゲームにこだわったのは,何か理由があったのでしょうか。

松永氏:
 最近のボードゲーム市場において「クトゥルフ・ウォーズ」「ブラッドレイジ」「グルームヘイヴン」といったミニチュアを使った大ボリュームのゲームが人気を博していること。また「真・女神転生」の魅力的な悪魔達を少しでも多く立体化したいという想いから,本作は企画されました。

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4Gamer:
 そもそもなんですが,開発経緯はどういうものだったのでしょう。「真・女神転生」のボードゲームが作りたくてミニチュアゲームになったのか,反対にミニュチュアゲームに適したテーマとして「真・女神転生」が選ばれたのか。その辺りの事情を聞かせてください。

立澤龍一氏(以下,立澤氏):
 それでいうと,まず本作のパブリッシングを担当するイクリエという会社がありまして。イクリエでは映像やイラスト,フィギュア,グッズといったさまざまな媒体を通し,ゲームコンテンツのプロモーションを行っているんですが,「真・女神転生」ブランドのグッズ制作もその一つでした。そこで新しいグッズの企画を考えることになって……その時クリエイティブ・ディレクターの丸山が考えたのが,ボードゲームというアイデアでした。

4Gamer:
 なるほど。では「真・女神転生」が先だったんですね。

立澤氏:
 そうなります。そのうえで,ボードゲームなら「真・女神転生」を知らない人にも手に取ってもらいやすい。ファンアイテムとしてだけでなく,原作ゲームのファンになってもらえる可能性があるんじゃないかと思ったんです。題材としても,ボードゲームにはぴったりですし。

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4Gamer:
 しかしイクリエにとって,ボードゲームの製作は初めての挑戦なんですよね。またずいぶん思い切りましたね。

立澤氏:
 そうかもしれません。ただ,ゲームコンテンツの商品化の可能性を広げていく意味でも,ゲームと親和性の高いボードゲーム開発に挑戦することにしました。ミニチュアを72体もつけるのは大きな決断でしたが,イクリエは元々フィギュアの原型制作などを手がけていましたし,キムラさんという頼れるパートナーも居ました。それにミニチュアゲームなら,これまで立体化されてこなかった悪魔も造れます。それが本商品の強みになると思ったんです。

4Gamer:
 というと?

立澤氏:
 「真・女神転生」には数多くの魅力的な悪魔が登場しますが,膨大な種類数ということもあり、立体化が難しい悪魔も多数います。そういった悪魔は,一般的なスケールフィギュアとして製造・販売するのにさまざまな課題があって,ハードルが高い状況にある。しかしボードゲームのミニチュアであれば,悪魔達を大量に立体化できます。

4Gamer:
 なるほど。それは盲点でした。では,造形面のこだわりについてはいかがですか。

キムラユヅル氏(以下,キムラ氏):
 今回はサイズがサイズなので,原作イラストのディテールをどこまで残して,どこを省略するのかというデフォルメの部分に一番気を使っています。今回の展示は3Dプリンターで出力した見本ですが,これを実際の製品にどこまで反映できるかが勝負だと思っています。

展示されていた本作のミニチュア群。なおゲームでの遊びやすさを考慮し,スケール(縮尺)は原作から変更しているとのこと。強さなども考慮したうえで,大きさは3段階に分けられている
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松永氏:
 見ていただければ,一つ一つの造形が驚くほど精巧にできているのが分かると思います。フィギュアのプロが作っていますので,そういう意味でも唯一無二なタイトルになっています。

キムラ氏:
 むしろ普通のミニチュアゲームのフィギュアがどうやって作られているのか,よく知らないだけなんですけど(笑)。

4Gamer:
 これは,自分でペイントして楽しむこともできるんでしょうか。

キムラ氏:
 ゲームに必須の要素ではないので推奨しているわけではありませんが,もちろんペイントして楽しんでいただくことに問題はありません。かなり大変だと思いますが……。

立澤氏:
 でも,展示を見に来たミニチュアゲーム好きのお客さん達は,皆一様に興奮して帰って行きましたよ。挑戦しがいがあるって(笑)。

キムラ氏:
 なので猛者の皆さんは,ぜひペイント後の写真をSNSなどにアップロードしてもらいたいです(笑)。

4Gamer:
 なるほど……本当は今回,試遊させてもらいたかったのですが,それはスペース的に難しそうですね。発売までに,日本国内で本作が展示される機会はあるでしょうか。

立澤氏:
 もちろん国内での展示も検討中です。こちらは公式Xなどで追ってアナウンスできればと思っています。

4Gamer:
 分かりました。最後に,読者に向けたメッセージをいただけますか。

松永氏:
 そうですね。まだルールの詳細を公開できていない状況ですが,純粋にボードゲームとして面白いものを目指したつもりです。だから「真・女神転生」が好きな人はもちろん,ぜんぜん知らないボードゲームファンの方も手に取ってもらえたら嬉しいです。

立澤氏:
 今回のボードゲームをより多くの方々にプレイしてもらい,「真・女神転生」の世界に足を踏み入れるきっかけを提供したいと考えています。値段は張りますが,1つあれば4人まで遊べますので。グループで相談して,ぜひキックしてみてください。

4Gamer:
 接客対応で話に加われなかった丸山さんは,最後に何かありませんか?

丸山 諒氏:
 はい。今回Gen Conに出展して一番感じたのは,「真・女神転生」というIPが,やっぱり世界中で愛されているんだ,っていう実感ですね。皆さん,お気に入りの悪魔のミニチュアを手に取って,そのディテールだったり思い出だったりをものすごく語ってくれるんですよ。それがとても嬉しかったです。日本のファンの皆さんにも,本作をお披露目できる機会を楽しみにしています。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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 なお「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」のKickstarterキャンペーンは,当初予定されていた開始日が延期されることが公式Xにて発表されている。理由はクオリティアップのためとのことで,新たな開始日は決まり次第,改めて告知されるとのことである。
 ちなみに用意される支援コース(プレッジ)は本作が購入できる予価6万円(税込)のもののみ(先行1000個のみ20%オフの税込4万8000円)となる予定だという。決して安い買い物ではないが,72体もの精巧なミニチュアが付属することを考えれば,決して高いともいいきれないのが悩ましい。一般販売は行われず,期間内にキックした人しか入手できない製品とのことなので,迷っている人はプロジェクトの開始までに,準備しておく必要がありそうだ。

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Kickstarter「真・女神転生 THE BOARD GAME(仮)」キャンペーンページ

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