プレイレポート
[プレイレポ]Meta Quest版「トライアングルストラテジー」はパススルー機能による“ミニチュア感”が最大の見どころ。VR空間で描かれるノゼリアの世界を一足早く味わってきた
本作は「OCTOPATH TRAVELER」などを手掛けた“浅野チーム”と,アートディンクが開発した中世風ファンタジー世界を舞台にしたタクティクスRPGだ。ドットアートと3Dを融合したHD-2D表現や,シンプルながら奥深い戦略要素が特徴となっている。今回発売されるMeta Quest版では,VR空間に広がる「トライアングルストラテジー」の世界を楽しめるというわけだ。
とはいえ,3Dアクションゲームならともかく,先述のとおり本作はタクティクスRPGだ。HD-2Dとはいえキャラクターのグラフィックスはドットアートであり,VR空間での“映え”がどうなるかは未知数。それだけに,「果たしてVRにする意味はあるのか?」と疑問を感じている人は少なくないだろう。
今回はMeta Quest版の本作をひと足早くプレイする機会を得られたので,気になる各部の映像表現を中心にチェックしてみた。
Meta Quest版
「トライアングルストラテジー」特設サイト
超豪華なボドゲのように楽しめる
キャラクターや演出はしっかりHD-2D
Meta Quest版においてもストーリーや基本システムは同一とのことなので,まずはトライアングルストラテジーの基本情報を振り返ってみよう。
舞台となる世界は「ノゼリア」と呼ばれ,同じ大陸に3つの大国がひしめいている。これら3国はそれぞれ交易,鉄,塩といった重要な機能や資源を司っており,長い歴史の中でそれらを奪い合う戦争が繰り返されてきた。
物語が始まるのは,歴史上でも類稀なる大戦争「塩鉄戦争」が終結してから30年が経過した後だ。資源を分かち合い,平和への道を探り始めたころ,交易を司る「グリンブルク王国」の筆頭領主であるウォルホート家の嫡男セレノア・ウォルホートが当主の座に就こうとしていた。
タイトルの“トライアングル”は,この3国の微妙な関係性を示している。セレノアの行動や決断は仲間たちの行く末に変化をもたらし,ゆくゆくは世界の趨勢をも動かしていく。プレイヤーは,主人公セレノアとしてウォルホート家の家臣たちと力を合わせ,新たに始まる激動の時代を生き抜いていかなければならない。
バトルパートは見下ろし型のターン制バトルで,マップ上に配置された各キャラクターに指示を与えて行動していく。システム面での特徴は,強力なコマンドを実行するのに必要なリソース「TP」の管理要素と,挟撃によって手数を増やせる「追加攻撃」の2点だ。
TPはターン経過によってしか累積しないため,連続して強力なコマンドを実行し続けられない。追加攻撃を意識した位置取りと,限られたTPの使いどころを意識する,奥深いバトルを楽しめる。4GamerではNintendo Switch版のプレイレポートを掲載しているので,詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてほしい。
「トライアングルストラテジー」製品版プレイレポート。硬派なシステムながら,随所に遊びやすい工夫が詰まったタクティクスRPG
スクウェア・エニックスは2022年3月4日,Nintendo Switch用ソフト「トライアングルストラテジー」を発売する。最新技術で美しく描き出されたドット絵と,往年のタクティクスRPGを思わせる歯ごたえを併せ持つ,“HD-2D”シリーズ第2弾の製品版プレイレポートをお届けしよう。
続いては,Meta Quest版の特徴に触れていこう。多くの人が気になっているのは,VR空間におけるゲーム画面の表現だと思うので,そこから説明していこう。
本作は,ざっくりと2つの表現方法を使い分けている。1つめは巻物の中で映像が流れる「上映型」,2つめは目前に3Dのステージが表示される「ミニチュア型」だ。キャラクターの会話が中心になるADVパートは前者,戦闘や探索のパートでは後者が用いられる。
ADVパートでは映像を眺めるような形で物語を楽しめる |
キャラクターを操作する要素があるシーンでは,マップが目前に出現する |
VRの実力がいかんなく発揮されているのは,やはりミニチュア型で表現されるシーンだ。3Dで表現されるマップを自由な角度から見渡せるだけでなく,マップの土台部分に木製の枠を追加して“ミニチュア感”を高める工夫もなされている。
遊んでみて驚いたのは,こうした表現とパススルー機能の相性の良さだ。ミニチュアのように表現されたマップが現実世界と重なるような形で表示され,位置や高さを自由に移動させられるので,うまく合わせれば卓上にマップが出現したかのようにゲームを楽しめる。
この臨場感は想像以上で,超豪華なミニチュアセットを使ってボードゲームやTRPGを遊んでいる感覚を味わえる。アクションや魔法のエフェクトは現実では再現不可能なので,ある意味では現実以上に豪華な体験ができる,と言えるかもしれない。
マップそのものもよく作られており,オリジナル版ではしっかりと確認できなかった小物や,隅っこのオブジェクトまでじっくりと見られるのも面白いポイントだ。
オリジナル版はHD-2Dの美しさを1枚の画面で表現するため,光源を中心にしたボカしの処理や,画角の隅に独特なエフェクトがかかっていたが,Meta Quest版ではそうした処理が行われていない。そのぶん小物や造形がよく見えるので,見渡しているだけでもワクワクできる。
特にワールドマップの作り込みがよく見えるのは嬉しかった。オリジナル版ではそこまでアップで見られなかったが,本作では各都市がかなり細かく作り込まれていることが分かる。出来事の位置関係を把握しやすいこともあり,世界への没入感が増す要素としても機能しているように感じられた。
操作方法は状況によって異なり,探索パートではセレノアをコントローラで直接操作し,戦闘シーンではコントローラから伸びるポインタを使ってキャラクターに指示を出す形式が採用されている。
複雑になりがちな戦闘シーンでの操作は,特に気を使って作られているように感じられた。ユニットや移動先などの指定は右手コントローラのポインタで行うのだが,コマンドは左手コントローラのスティックで選択できる。
つまり,流れとしては「右手で移動先を選択」「左手でコマンドを選択」「右手で対象を選択」といった流れになる。最初は戸惑うかもしれないが,盤面に触れるポインタ操作と,コマンドなどにかかわるカーソル操作が互いを邪魔しないので,慣れればかなりスムーズに操作できる。
機能面で少し気になったのは,UIや画面のサイズと“見切れ”の問題だ。重要なUIは左手コントローラに張り付く形で表示され,これはこれで便利なのだが,手を常に上げているのはけっこう疲れる。左手を机の上に置く形で進めると,今度はマップを覗き込むのが手間だ。マップ自体のサイズを縮小拡大する機能や,UIを視界内に固定する機能があれば,より遊びやすくなるかもしれない。
数時間ほど遊んでみて,Meta Quest版「トライアングルストラテジー」の体験はかなり印象深いものになった。パススルー機能とHD-2Dの相性は想像以上に良く,ミニチュアを使ったボードゲームのような遊びの感覚はVRならではのものだと感じられた。
ちなみに,VR酔いとは基本的に無縁ではあるものの,パススルー機能で表示される“リアル”の空間はさすがに現実と同等とはいかず,それなりに目の疲れを感じることもあった。ADVパートに入ったらパススルー機能をOFFにするなど,長時間遊ぶ際にはひと工夫を入れるのがオススメだ。
Meta Quest版「トライアングルストラテジー」特設サイト
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