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インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン6」レポート【後編】。己の癖(へき)を詰め込んだ作品こそが,人の心も動かす
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印刷2024/11/07 15:56

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インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン6」レポート【後編】。己の癖(へき)を詰め込んだ作品こそが,人の心も動かす

 インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン6」が,2024年10月27日に東京の都立産業貿易センター浜松町館で開催された。
 先日掲載したレポート記事の前編では,キャッチーな魅力を持っていたり全体的な完成度の高い作品を紹介したが,後編となる本稿では,制作者の癖(へき)を感じられたタイトルを紹介していこう。

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 個人開発や小規模開発のゲーム展示会「東京ゲームダンジョン6」が,2024年10月27日に東京・都立産業貿易センター浜松町館で開催された。レポートを2回に分け,前編ではキャッチーな魅力があったり,完成度の高さが目に止まったりしたタイトルを紹介しよう。

[2024/11/01 14:33]

 なお今回の会場では,撮影や取材が一切不可のブースがあったことが印象的であった。展示されていた作品のクオリティはかなり高いと感じたが,あくまでイベントに来た人にだけ見てほしいとのこと。
 メディアに掲載されることにはメリットだけではなくデメリットもある。また作品に対する印象は,人を通してではなく直接感じてほしいという制作者もいるであろう。そういった出展者の意思は,尊重されるべきだと思う。

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あのMZ-700用テキストアドベンチャー「ロポコ」(現在はSteamでも販売中)に,妹的なゲーム「プチロポコ」が登場! こちらはMZ-80K/700/1500用のパズルゲームだ

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姉のロポコも一緒に展示されていたが,一瞬,画面一体型のマシンかと思ってしまった

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以前紹介した「PEKOLRS」を手がけたNewfrontiaSoftwareは,「ホロライブタイプ診断 3期生編」を出展。ホロライブ・エヴァンジェリストとしての道を一歩ずつ歩んでいた

「東京ゲームダンジョン」公式サイト



ムラヤキヴィラン

出展者:ALENISM

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 村焼き──それは戦乱の時代によく行われる敵勢力に対する示威だったり,山賊による略奪だったり,ときに物語の主人公が旅立つ動機だったりするもの。想像してみてほしい。自分の故郷が火に包まれ,親兄弟や見知った人々が財貨や命を奪われていくおぞましい光景を……。

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 そんなムラヤキ(村焼き)による勢力拡大シミュレーションと,配下の青年たちとのハーレム的な恋愛イベントをカジュアルに楽しめる女性向けゲームが本作「ムラヤキヴィラン」だ。
 主人公は,先代魔王の血を引くイラ。彼女は,人間の村々を襲って世界制覇を目指しつつ,恥じらい戸惑う配下たちをウリウリと可愛がってやるなど,やりたい放題の限りを尽くすのである。

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侵略パートで領土を広げつつ,交流パートで会話やプレゼントで高感度を上げ,イベントを楽しむタイプのゲーム。ちなみにこのメメルも男だ

 「でも,結局は頼りになる騎士たちに守られる姫様なんでしょう?」などと思うことなかれ。作者のアレン氏(@uaaaalen)によれば,主人公のイラは「照れなし」「(男に)守られなし」「(人間との)和解なし」と,ないない尽くしのピカレスクな女傑らしい。
 侵略すること火の如し。かつて,ユーラシア大陸を席巻した騎馬民族の首魁のようなもので,彼女の征服欲は誰にも止められないのだ。

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この物言い。部下のヴィヴィアンもちょっと怯えている

 そしてムラヤキの場面がこちら。……なんだかチャーハンを炒めているようにも見えるが,方向ボタンで鍋をゆすると村人の数が減ったり(自分たちの兵力も減る),チャリンチャリンと金品が出てきて奪えたりするのはカジュアルなようでかえって恐ろしくもある。

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アレン氏はこのムラヤキ場面を作るために,数々の料理ゲームを遊んで参考にしたという(料理ゲーム?)

 故郷を焼かれまいと抵抗する村人との駆け引きが面白く,勝負どころを見極めて部下に必殺技を使わせる要素もある。女性向け作品とのことだが,Steamで体験版をダウンロードできるので,興味を持った人は性別に関係なく「新たな扉」を開いてみてほしい。



日本史大戦

出展者:Miura Production

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 スマートデバイス用ゲームの「世界史大戦」「世界史大戦2」を手がけたMiura Production(@MiuraProduction)の新作は,“日本史”を統一するという,壮大なテーマを持つ歴史シミュレーションゲームだ。

 といってもゲームの舞台は日本列島ではなく,歴史の教科書や資料集などでおなじみ,古墳時代から明治時代までをまとめた「歴史年表」なのだ。
 プレイヤーは,織田信長や西郷隆盛,藤原道長といった人物を担当し,「大化の改新」「源平合戦」「応仁の乱」「関ヶ原の戦い」「明治維新」などの歴史上の出来事に攻め込み,所属する勢力の権力拡大を目指していく。

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 舞台は「年表」ということで,基本的には自勢力が優勢な時代から,その前後の時代を攻めていくことになる。年表上にいかに部下を配置するかが重要で,集中させすぎず,また手薄にもなりすぎないようにするのがポイントとのこと。

 また,各時代には複数の勢力が混在するため,そのすべてを破らなくては100%支配することはできない。
 まずは今いる時代をしっかり固めるべきか。それとも大勢が決した時点で,大勢力に成長しそうな別の時代の勢力を叩きにいくか。あるいは配下にしたい優秀な人物がいれば,その人物がいる時代を目指すのもアリかもしれない。

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 ちょっと新鮮な「クロスオーバー歴史ロマン」を味わえる作品を目指して開発中の本作。作者のMiura氏に話を聞いている最中,会場に訪れていた氏のお子さんが,「すごく簡単だよ!」と言ってプレイを勧めてきた。それで本作を紹介したわけでもないのだが,その子のお父さん思いな姿がとても印象に残っている。

「日本史大戦」公式サイト



仏陀摩真(ブッダマシーン)

出展者:ナンダコレ

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 会場を歩いていると,ポクポクポクポク……といずこかから木魚を叩く音がする。「木魚? そんなバカな」と思っていたら,すぐに数人の僧侶がたむろするブースが視界に入ってきて,そこには怪しげなゲームが展示されていた。
 これはもしや,インディゲームや東京ゲームダンジョンの人気に気がついた仏教界の,若者に対する新手の布教アプローチか? などと思っていたら,単にこの「仏陀摩真」出展のために制作者がお坊さんのコスプレをしていただけでした。それでも頭はガチで丸めてあり,迫真のクオリティだったことは事実。ご本人の撮影がNGだったのがとても残念だ。

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 ゲームは,お経を元にAIが作った「今様 Jロック般若心境」「今様 HipHop大悲心陀羅尼」「生きててエライ」などの楽曲と,きらびやかな映像を楽しみながら,リズムに合わせ(別に合わせなくてもいい)木魚を叩く気分でスマホ画面をタップするゲームだった。懐かしの「クッキークリッカー」のようなものだと思えばそう遠くない。

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 曲を聴きつつ出展用に用意された木魚を叩いていると,あっという間にトランス状態に……といった神秘体験はなかったが,単調さが妙に落ち着くというか,本家クッキークリッカーとはまた別の癒し効果があることは確か。
 仏像は実在のものを選べるだけでなく,プレイヤーが用意した画像を表示することも可能だ。推しのアイドルや最愛のペットを拝むのがオススメだそうだが,ちょっと縁起でもないような気もする。チーン。

 ちなみにアジア圏の仏教の盛んな国では,自動でお経を流し続けることで,念仏を唱えるのと同等の功徳を積める「ブッダマシーン」という機器が普及しているという。
 本邦でも一時,アンビエントミュージック界隈で話題となっていたそうだが,本作もこれを元に思いついたそうだ。

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ブッダマシーンの実物も展示されていた。こんなものがあったとは……

「仏陀摩真」公式サイト



Under A Groove

出展者:Stab of Bee Project

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 晴れやかで心地よいサウンドと,ちょっとかわいかったり,アブストラクトアート風だったりな映像がシンクロする,チルな感覚のリズムゲーム「Under A Groove」。多数の鍵盤を押し分けるのではなく,ワンボタンで気軽に楽しめるタイプの作品だ。

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 また,プレイヤーの操作タイミングによって,映像がダイナミックに変わっていくのもポイントとなっている。しっかりノリが合っていればそんな感じに,そうでなくてもまた別の展開になり,気に入った楽曲は何度も繰り返し遊びたくなるはず。

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 面白く感じたのが,リズムの判定の「OK」と「NG」を,プレイヤーにはっきりとは伝えないというデザイン哲学だ。確かに,音楽を楽しむときに正しいリズム,ノリかたなんてものはないわけで,プレイヤーが好きにノってボタンを押せばそれでOKなはず。そこにわざわざNGを突き付けるのはヤボかもしれない。

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 一見キレイにまとまっているようで,じつは従来の音楽ゲームやリズムゲームに対する挑戦的な問いかけを含んだ作品のようでもある。
 ただ,しっかりとノれている感覚(それは耳と体で感じてほしいという話かもしれないが)が増すと,さらに魅力がハネるような気も。筆者はこういう姿勢の作品はつい応援したくなってしまうタチだ。

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「原カバンは鞄のお店ではありません。」公式サイト



SHOJING(ショウジング)

出展者:Kafka Games

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 ちょっと元気がありあまるネコちゃんが疾走し,障子(紙の部分)を突き破っていく! そんなまさに一点突破な楽しさがあった「SHOJING(ショウジング) 」だ。ビジュアルもポップでかわいく,小さなゲームファンたちも楽しそうに遊んでいた。

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 操作方法は少し独特で,マウスを左右に動かしてネコの走るコースをコントロールし,左クリックの長さでジャンプの高さを決定する。すると疾走していたネコちゃんが,そこに向かってジャンプする……といった感覚だ。
 絵の描いてあるマスに飛び込ませると高得点となり,破る瞬間に左クリックをするとポーズを決めて,さらなるボーナスが加算される。

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 舞台が昼間の家の中ということもあってか,ネコちゃんを妨害するのはちょっと足元のおぼつかないおじいさんや,きっといつもは優しいであろう奥さん。彼らをかわしつつ,障子をベリバリ破るという「ささやかなタブー」をおかしてハイスコアを狙うわけだ。

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 個人的には,DSやWiiの時代のポップなゲームの雰囲気を感じたのだが,作者のみやもと氏もまさにそんな雰囲気を狙っていたとのこと。
 エンドレスモードも搭載する予定で,「最終的にはリズム天国シリーズのエンドレスモードのように,反応速度の限界に挑戦する遊びになる」と話していた。同作のエンドレスモードが好きな筆者的には出会うべくして出会えた作品と言えるかもしれない。2025年にSteamでの配信が予定されている。

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チュールっぽいのをキメて(?)ブッ飛ぶネコちゃん



DevilReversi

出展者:喜多山浪漫

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 「懲役200年の超デカい凶悪死刑囚がついに主人公に!」と思った人も少数いるかもしれないが,違います。

 「DevilReversi」(PC / Switch)は,元ゲーム会社社長にして謎の覆面小説家・喜多山浪漫氏(@RomanKitayama)がプロデュースする「常識破壊シリーズ」の1作目だ。
 キャラクター原案にヴァニラウェアの神谷盛治氏,音楽にベイシスケイプの崎元 仁氏を起用する,なんとも贅沢な作品となっている。

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東京ゲームショウ2024での喜多山氏。いったい何者なのだ!?

 ゲーム内容は,対戦型ボードゲームの定番で,誰もが良く知るリバーシ(オセロゲーム)のルールをアレンジしたもの。だが石の初期配置が盤上をクロスしていたり,石を重ね置きできるため,「カドを取るのが強い」などの常識がいっさい通用しない。
 盤上の石が目まぐるしくひっくり返るのはもちろん,勝敗も最終的な石の数ではなく,試合中に獲得したポイントの合計で決まる。

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 いくらでもひっくり返せるということは際限なく試合が続きそうだが,自分の石を生贄に捧げることでひっくり返されない「要塞化」マスを作ることもできるなど,守りの要素もある。
 ただ,作り手側もセオリーが見いだせていないそうで,どんな遊び方・遊ばれ方になるのかはリリースされた時点で初めて判明するのではないだろうか。

 理想の「遊ばれ方」としては,VTuberなどストリーマー同士の格付け勝負に使ってもらったり,視聴者との交流などで遊んでもらえたらとのこと。本作はSteamにて2024年11月21日リリースの予定だ。

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 以上,今回もアイデア勝負の作品や,独特の世界を持つ作品が多数集まっていた「東京ゲームダンジョン6」。予算たっぷりの豪華な画作りで,大ボリュームかつ,多くの人を楽しませる現代の大規模なゲームは確かに素晴らしい。だがすべてのゲーム好きを満足させられるかといえば,それは違うだろう。

プロジェクターで画面を見せるという,だいぶ思い切りのいい展示をしていた「プロジェクト・ソラリス」。ゲーム内容は判断力と素早い操作の両方を求められる,マジメな作りのデッキ構築型ローグライトRPGだった
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 クリエイターが「自分のためのゲーム」を作れること。またプレイヤーが「まるで自分のために作られた」と感じられる宝物のようなゲームに出会えることが,小規模開発の良さだと筆者は思う。

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毎度ではあるが,時間が足りず遊び損ねてしまった作品も多かった。これはそのひとつ,ヒャッホイ半角地獄の「──星が滅びるまで。」のポスター

 少し堅苦しくなってしまったが,そんなインディゲームを大事にしている東京ゲームダンジョンは,「出展する側も遊ぶ側も大きな手応えを感じられる貴重なイベント」であり,同時にコミュニティ(場)でもある。本イベントが着実に人気イベントへと成長したことは,筆者としては素直に嬉しい。

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協賛企業のひとつ,アウリンのブースは,初音ミクや九十九トッカのかわいいケースに収められたPCや,「REALFORCE × 初音ミク GX1 Keyboard」を使い,男くさい「魂斗羅 オペレーションガルガ」をプレイできる不思議な空間となっていた

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