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新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート
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印刷2013/10/11 00:00

テストレポート

新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート

新型PS Vita。4Gamerで入手したのはカーキ/ブラックだ
画像集#002のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート
 速報でもお伝えしたとおり,2013年10月10日,ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアから新型PlayStation Vita(以下,PS Vita),「PCH-2000」シリーズが発売となった。従来モデル「PCH-1000」と比べると,薄く軽くなり,ディスプレイデバイスが有機ELから液晶に切り替えられたのが大きな特徴だ。
 速報ではひとまず,黒の“浮き”と色合いをチェックしたが,本稿ではその続報として,速報で掲載したテスト結果の考察を交えつつ,ゲームにおける画面の見え方の違いや,残像感の違いなどについてのテスト結果をお届けしてみたいと思う。


PCH-2000とPCH-1000では

色温度の違いがある


 従来モデルのPCH-1000に採用されている有機ELは,自発光デバイスであるため,液晶と比べて,発光していない状態では黒がしっかりと沈み込み,彩度も高いといった特徴を持つ。一方,PCH-2000で採用される液晶パネルは,バックライトが組み合わされるために,「光を完全にオフとする」のが難しく,結果,黒が浮き上がり気味になって,彩度も低めとなる。
 これはパネルの特性によるものなので,やむを得ない部分ではあるのだが,これを知っているがゆえに,「PCH-2000では表示品質が低下しているのではないか」と考える読者も多いだろう。

 実際,2台並べて電源を入れると,その直後からPCH-2000における黒の浮き上がりにはすぐに気付く程度の違いがある。速報時にもお伝えしたが,真っ暗な室内でPCH-2000とPCH-1000の「カメラ」アプリを起動し,その状態を撮影した写真を見てもらえれば,違いは一目瞭然だ。
 液晶パネルだと,黒い部分でもバックライトが透過してくるため,真っ暗な室内では特に黒の浮き上がりが目立ちやすいのである。

内蔵カメラアプリを起動した状態で暗闇に置いたPCH-2000(左)とPCH-1000(右)。有機ELパネルは各種アイコン部を除くと真っ黒なのに対し,バックライトが搭載される液晶パネルの場合は,どうしても若干白みがかる。暗い室内では,とくにこの現象が目立ってしまう
画像集#003のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート

 では,黒を含めた色の再現にはどういう違いがあるのか。独自に用意したカラーチャートで少し詳しく見てみよう。下に示した2枚の写真は,カラーバーを表示させた状態で,本体正面から撮影したものである。
 すぐ上で示した写真は斜めから撮影したものなので,黒の白浮きが目立ちやすいが,実際にゲームをプレイする状態に合わせて正面から撮影した写真で,そういう事態が生じていない点はあらかじめ押さえておいてほしい。また,これは言うまでもないが,以下,比較写真ではカメラの設定を揃えてある。

画像集#004のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート
PCH-2000にカラーバーを表示させたところ
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PCH-1000にカラーバーを表示させたところ

こちらが実際に用いたカラーバー
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 最も分かりやすいのは,画像中央より上の,白から黒に変化するバーにおける,白から灰色にかけての色の違いではないかと思う。PCH-2000ではやや緑色がかっているのに対し,PCH-1000ではやや青みがかっているのだ。つまり,PCH-2000のほうが色温度は低いということになる。

 ただ,画面下側のバーを各色で比較していくと,「色温度が違うだけ」という単純な相違に留まらないのも分かる。たとえば,マゼンタだとPCH-2000のほうが明度は高い一方,青系の色だとPCH-1000のほうが明度は高めになるなど,色によって明度が異なっているのである。
 乱暴にまとめるなら,色の出方がPCH-2000とPCH-1000では異なる,ということになりそうだ。PCH-2000では緑系の色,PCH-1000では青および赤系の色が強めに出る傾向があるという理解でいいように思う。

先ほど示したカラーバーの画像2点から,それぞれ一部を切り取って並べたもの。こうやって比較すると,色の出方に違いがけっこうあると分かる
画像集#007のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート

 最初に違いを示した「黒」にはどういった違いがあるだろうか。今回は,上で示したカラーバーの中央より少し下あたりの黒い部分を200×30ドット切り取って,「Photoshop CC」のカラーヒストグラムにかけてみた。結果は下のスクリーンショットだ。

 黒い領域のヒストグラムなので,どちらも暗い領域に頻度が集中しているのは当然だが,明度の平均値(平均)を見てみると,PCH-2000が3.10なのに対し,PCH-1000は2.48と,明らかにPCH-2000のほうが黒は浮き上がっている。また,PCH-1000のほうが標準偏差は大きい,つまりばらつきの大きなデータになっており,完全な黒とそうではないピクセルの開きが大きいというわけだ。

PCH-2000(左)とPCH-1000(右)にカラーバーを表示させた状態で撮影した写真の「黒い部分」をサンプリングして,カラーヒストグラムを比較した結果。明度の平均値はPCH-2000が3.10なのに対してPCH-1000は2.48と抑えられている
画像集#008のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート 画像集#009のサムネイル/新型PS Vita「PCH-2000」の液晶パネルは結局のところアリなのか。従来モデル「PCH-1000」の有機ELパネルと比較レポート

 ヒストグラムのデータはPCH-2000の浮き上がりを裏付けるものといえそうだが,ただ,実際のゲームプレイにおいてはそれほど大きな違いがあるわけでもない。下に並べたのは,「KILLZONE: MERCENARY」の1シーンを撮影したものである。
 細かく見比べると,暗い部分の浮き上がりはPCH-2000のほうが大きい。また,色合いの違いも見えてくる。たとえば,奥の壁の色はPCH-1000だとやや紫が強く見えるのに対し,PCH-2000だと紫がそこまでは強くなかったり,といった具合だ。また,床や壁の色もけっこう異なるが,2台並べないと分からない程度でもあるだろう。
 しかし,少なくともKILLZONE: MERCENARYのようなタイトルをプレイする限り,発色や黒の違いを強く実感することはないようにも思われる。要するに,色は確かに違い,黒の出方も異なるが,別に困らないのである。

KILLZONE: MERCENARYの対戦マップから,やや暗めのシーンを比較したところ。PCH-2000(上)とPCH-1000(下)。厳密に比較すれば,PCH-2000では暗い部分が少し浮き上がっていたり,色の出方も異なっていたりするが,目の前の画面を見る限り,気になるレベルの違いでもなかったりはする
(C)2013 Sony Computer Entertainment Europe. Published by Sony Computer Entertainment Inc. Developed by Guerrilla Cambridge.
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 もっとも,色温度がかなり異なることから,とくに肌色では大きな違いが出る可能性もある。たとえば2Dのゲームでキャラクターが大きく表示されるタイプのゲームだと,液晶と有機ELの特性の違いをモロに受けそうな気はする。
 さらに言えば,従来のPS Vita用タイトルではPCH-1000が持つ有機ELの色合いにチューニングされている可能性がある。キャラクターの肌色はけっこう異なるということも起こり得るので,その点は気に留めておいたほうがいいかもしれない。

ホーム画面での色合い比較。左がPCH-2000,右がPCH-1000
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液晶固有の残像感はやはりあるものの

フレームの書き換え速度は変わらず


 PCH-1000で採用される有機ELの場合,原理的に残像感はほぼ皆無だが,液晶パネルの場合は,高速応答を謳うものであっても,ミリ秒オーダーに留まる。それだけに,PCH-2000における「液晶パネル特有の残像感」がどの程度なのか,気になる人は多いだろう。

 そこで,KILLZONE: MERCENARYのキャンペーン冒頭部分で,視点をグルグルと回転させ,それをカシオ製のハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」(以下,EX-FH100)から240fps設定で録画することにした。それを4分の1の速度で60fps再生すれば,残像などの違いが見えてくるはず,というわけである。
 その結果が下に示したムービーだ。冒頭から25秒程度がPCH-2000,それより後がPCH-1000の結果で,前者では前のフレームの像が確かに残っている。


 ただ,ここで注目したいのは,ある意味で織り込み済みの残像感ではない。むしろ,PCH-2000とPCH-1000とで,フレームの書き換え速度が異なるように見えることのほうだ。
 PCH-2000では,フレームの書き換えが高速に行われたあとで,そのあと数フレームにわたって残像があるのに対し,PCH-1000では,フレームの書き換え自体に2フレーム程度を要しているようで,フレームの画像が上から下に向かって書き換えられる様子が見えるのである。

上のムービーからPCH-2000(左)とPCH-1000(右)のフレームを1秒間隔でそれぞれ16フレーム抜き出して,アニメーションgifとしたもの。書き換わり方の違いに注目してほしい
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 要するに,残像を無視すれば,PCH-2000のほうがPCH-1000より高速ということになるわけだが,なぜこのような事態が生じているのだろうか。
 まず否定できるのは,「PCH-2000だけリフレッシュレートが高い」可能性である。ゲーム機向けのゲームプログラムは,常に一定のリフレッシュレートを想定して画面の書き換えを行うように書かれているはずなので,仮に「PCH-2000のほうがCPUコアやGPUコアの性能が高くなっている」というサプライズが万が一あったとしても,フレームの表示速度に影響が出るとは考えにくい。

 となると,液晶と有機ELのディスプレイインタフェースが異なり,それが異なる結果を生んでいるのではないかというのが,現実的な推測ということになるだろう。
 実のところ,PCH-2000とPCH-1000を2台並べてテストしてみると,PCH-2000の残像感はほとんど気にならない。もちろん画面が小さいというのも影響しているだろうが,PCH-2000では,確実に存在する残像感を,高速な画面書き換えでカバーし,残像感はない一方で書き換え速度はPCH-2000に劣るPCH-1000と同等の速度感が得られているということなのではなかろうか。
 いずれにせよ,PCH-2000の残像感を気にする必要はまずない。


あえて言えば懸念点は色合いの違い程度か

「液晶であること」のデメリットはほぼない


 以上,やや駆け足でテストと考察を終えたが,PCH-2000で液晶パネルを採用することのデメリットはほぼないと述べていいのではないかと思う。あえていえば,色温度の違いによる色合いの違いは懸念材料であるものの,この程度の違いは,有機ELパネルを採用するスマートフォンと液晶パネルを採用するスマートフォンの間にもある。目の前の1台を見続ける限り,そう気にする必要はないだろう。
 これからPS Vitaを購入する予定がある人は,参考にしてもらえれば幸いだ。

【速報】新型PS Vita「PCH-2000」発売。取り急ぎ液晶と有機ELの「黒」と「色合い」を比較してみた

  • 関連タイトル:

    PS Vita本体

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