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[E3 2013]PS4対Xbox One。両陣営のE3発表を受け,西川善司が次世代ゲーム機における5(+1)つのポイントを勝手に斬る
そんなわけで,E3 2013における両者のプレスカンファレンスは,あらためて述べるまでもなく,非常に大きな注目を集めた。任天堂がプレスカンファレンスを行わないことが早い段階で判明していたこともあって,なおさら「ソニー対M
PlayStation 4 |
Xbox One |
4Gamerではすでにプレスカンファレンスのレポートを速報としてお伝え済みだが(PS4編,Xbox One編),本稿ではあえて,この対立の構図にまつわる疑問を6つとりあげ,それに答えるスタイルで,状況を整理してみたいと思う。
Q:PS4とXbox One,ぶっちゃけどっちの性能が高いの?
A:CPU性能はほぼ同じ。GPU性能はPS4が上か
COMPUTEX TAIPEI 2013の会期中に,PS4とXbox Oneが同じ世代のAPUを採用していることがAMDから発表された(関連記事)。また,時間の経過とともに,
まず,PS4とXbox Oneが同一世代のAPUを採用するということから,PS4とXbox Oneがいずれも28nmプロセス技術で製造され,「Jaguar」(ジャガーもしくはジャギュア)アーキテクチャのCPUコアと,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャを採用したRadeon HD 7900〜7700系のGPUコアを採用するAPUであることは,ほぼ確実となった。
ただ,だからといって,PS4やXbox Oneが,TemashやKabiniそのものを搭載しているわけではない。CPUコアの動作クロックこそ,Temash&Kabiniの1〜2GHzと同程度と思われるPS4およびXbox OneのAPUだが,CPUコアの数は,TemeshとKabiniが最大4基のところ,PS4とXbox Oneはいずれも8基で,規模が異なっている。
これに対し,まずスペックが公表されているPS4だと,演算ユニットの数は18基。いきなり9倍である。シェーダプロセッサ数は1152基なので,文字どおり桁が違うわけだ。
もちろん,GPUの性能というのは,GPUコアの規模だけでは測れない。GPUやグラフィックスメモリの動作クロックも重要な要素なので,演算ユニットやシェーダプロセッサの数だけで比較するのは乱暴にすぎる。ただ,同一世代の技術をベースとしたプロセッサである以上,(Xbox Oneの)動作クロックが劇的に高いといったことを考えるのが現実的でないのも確かだ。
少なくともピーク性能に着眼する限り,Xbox Oneのグラフィックス性能は,PS4には及ばないだろう。
Q:Xbox OneのAPUに搭載されているeSRAMってなに? eSRAMでPS4のGDDR5に勝てるの?
A:eSRAMはスクラッチパッドメモリ。メモリ帯域幅で劣るXbox Oneにとってはキーポイントとなる仕組み
しかし,「引き分けですね」というほど話は単純ではない。PS4だと,実クロック比4倍の速度でデータ伝送を行えるGDDR5を採用しているからだ。
一方のXbox Oneが採用するのは,データ伝送速度が実クロックの2倍となるDDR3だ。DDR3の場合,高速なものでも実クロックは1GHz台前半に留まるため,どうやっても,GDDR5との間にある“データレート格差”を埋めるのは難しい。つまり,メモリバス帯域幅のピーク性能で,Xbox OneはPS4に及ばないこととなる。
簡単にまとめると,SRAMというのは,トランジスタ規模が大きく,コストがかさむが,一般的なDRAM――上で紹介したGDDR5やDDR3がまさにそのDRAM――が抱える「メモリセルへの再充電(リフレッシュ動作)が必要で,その分遅延がある」という制限から解放されており,低遅延で極めて高速に動作できる特徴を持ったメモリだ。非常に高価なものなので,CPUなどのキャッシュメモリには数KB〜数MB単位で実装されることが多いのだが,Xbox OneのAPUには,そんなSRAMが32MBも搭載されているのである。
そして,業界関係者の一致した見解では,eSRAMの用途は「ソフトウェア制御のスクラッチパッドメモリ」だ。
「スクラッチパッドメモリとは何か」の前にキャッシュメモリの話をしてみたいと思うが,キャッシュメモリは一般的にハードウェア制御される。なので,プログラム側からはその機能の存在を気にする必要がなく,「アクセス頻度の高いメモリ領域が自動的に溜め込まれていく」イメージになる。
DRAMへのメモリアクセスというのは,プロセッサの動作速度からすれば途方もなく遅い。それをSRAMなら超高速に済ませられるため,劇的な性能向上を期待できるのだ。それゆえにSRAMは,今日(こんにち)のプロセッサにとって,必須の機能部位となっている。
現行製品となる「Xbox 360」の場合,GPUによるレンダリング結果の出力先専用として,容量10MBで32GB/sの帯域幅を持つeDRAM(embedded DRAM)を持たせているが,あの発想を拡張したものが,今回の「容量32MBのスクラッチパッドメモリ」という理解でもいいだろう。
スクラッチパッドメモリを前提としたシステムでは一般に,プログラム設計自体がプロセッサアーキテクチャ(≒スクラッチパッドメモリ)へ依存しすぎたものになってしまうことが多く,ソフトウェアの普及を考えるとあまり歓迎されない(※昔話をしておくと,かつてCyrixというCPUメーカーが「6x86」というIntel互換CPUでスクラッチパッドメモリを採用したのだが,ほとんど採用されなかった)。
しかし,独自アーキテクチャが前提となるゲーム機の場合,いま述べた一般論はまったく問題にならない。むしろ,eSRAMをスクラッチパッドメモリとしてうまく活用をすれば,Xbox Oneにとって負い目となる「DDR3メモリの帯域幅不足」を克服することにもつながるはずで,Xbox One用ゲームは,eSRAMの積極活用が高性能化実現のカギを握ることになると思われる。
気になるこのeSRAMの速度だが,上下512bitバスで,動作クロックは800MHzと言われている。つまり,帯域幅は片方向50GB/s,両方向100GB/sec程度だ。これでもPS4のGDDR5が持つ176GB/sには及ばないが,先ほども述べたようにSRAMは遅延がDRAMと比べて小さいため,ランダムアクセス頻度の高いアルゴリズムの実行では絶大な効果を発揮する可能性がある。
もっとも,グラフィックス用途の場合はバースト転送(=まとまったデータ量の一括転送)頻度が高くなるため,ゲーム用のグラフィックス処理においては,多くの場合,GDDR5メモリを持つPS4のほうが優勢になるだろう。
ところで,Xbox OneのAPUは50億トランジスタを集積すると発表されているが(関連記事),このかなりの部分がeSRAMに割かれていると見られる。Xbox OneでMicrosoftが,トランジスタ予算をGPUの演算ユニット数(=シェーダプロセッサ数)ではなくeSRAMに割いたのは間違いなく,良くも悪くもここがXbox Oneの持つアーキテクチャ上の特徴ということになる。
Q:PS4とXbox Oneは同じタイトルが同じ画質レベルで動くの?
A:基本的には。ただ,横並びで比較すれば違いも出てくるはず
PS4とXbox Oneは,CPU性能がほぼ同じで,グラフィックス技術世代も(DirectX 11.1対応で)同じ。なので,マルチプラットフォーム展開されるゲームタイトルの開発は,PlayStation 3(以下,PS3)&Xbox 360時代よりも俄然しやすくなる。上で紹介した「Xbox One特有の仕様」となるeSRAMへの最適化を,ゲームエンジン側で引き受けられるなら,(Kinectなど,プラットフォーム独自機能への対応を別にすれば)ほぼそのままで動作するのではないかと思えるほど,開発はラクになるはずだ。
Microsoftのプレスカンファレンスでは,開幕一番に小島秀夫監督が登場。「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」をお披露目したが,こうしたサードパーティタイトルは,PS4にもリリースされる計画のあるものが多い |
ただ,前述のとおり,GPUの規模とグラフィックスメモリ性能には明らかな違いがあるため,品質面での調整が必要なケースも出てくるだろう。
PS3&Xbox 360時代,グラフィックス性能はXbox 360が明らかに優れており,マルチプラットフォームタイトルでは,Xbox 360版のほうがレンダリング解像度やテクスチャ解像度,あるいはアンチエイリアシング品質が高かったりしたが,そういった細かい部分で品質を最適化するに当たっての“立場”が,次世代のPlay
Q:Xbox Oneって日本で発売されるの?
A:時期は未定ながら販売計画はある模様
筆者の個人的な見解だが,SCEのPS3向けの周辺機器であるネットワークストレージ「nasne」やテレビ録画キット「torne」の人気振りを考えれば,日本向けのXbox Oneが欧米市場から遅れて登場する以上,テレビ録画文化への対応対応は必要不可欠なものになるはずだ。
もともとXboxにおけるMicrosoftの狙いは,初代Xboxの時代から一貫して,「リビングルームをMicrosoft製品で制圧すること」にあった。Windowsで仕事場(オフィス)の制圧に成功したMicrosoftの,次なる重点攻撃目標がリビングというわけである。
かくして,世界市場においてXbox 360は一定の成功を収め,リビングルームの侵攻は予想以上の戦果をもたらした。そんななか,なぜか日本市場では完膚なきまでの惨敗を喫したというのは,4Gamer読者もよくご存じのことだろう。
これまた,筆者個人の意見で恐縮だが,Xbox 360はゲーム機としてかなり完成度の高いハードウェアで,ネットワークサービスも最初からかなりデキがいいものだった。にもかかわらずこれだけの惨敗に終わったことで,Microsoftと日本マイクロソフトも「『いいゲーム機を開発した』だけでは,日本市場では成功できない」というのを,身に染みて理解したはず。次の世代で成功するためには,発想を切り替える必要があるのだ。
Q:PS4ってXbox Oneよりも100ドル安いけど,2眼式の「PlayStation Camera」は同梱されないの?
A:残念ながらされない
ただ,そんな状況にあって,2月時のPS4発表会時には大々的に発表されていた「PlayStation Camera」がE3 2013ではまったく訴求されなかったことは,押さえておく必要があるだろう。
それが,399ドルで発売されるPS4本体にはバンドルされないことになったのだ(関連記事)。PlayStation Cameraというか,モーション入力システムは,PS4世代においてもPlayStationプラットフォームにおいて標準ではなく,事実上の周辺機器扱いになることが半ば確定したわけである。
PlayStation Cameraは単体価格が59ドルとされている。つまり,同梱させても単純計算で458ドルと,Xbox Oneより安いことはアピールできたのだが,戦略的に,モーション入力システムはオプション(=別売り)扱いとして,本体価格の直接的な安さを選択したということなのだろう。
サードパーティからすれば,システムに同梱されない周辺機器のサポート優先度は,どうしても一段低くなる。もともと「PS Moveの仕切り直し」的な色彩が濃かったPlayStation Cameraだが,この方針転換はPlayStation Cameraの今後に影響を及ぼしそうだ。
Q:PS4の本体が公開されました。縦置きにすると「マンハッタンシェイプ」ですよね
A:そうですね(笑)
筆者も,「X68000XVI」や「X68030」を連想した。なんのことやら分からない人は,昔「パソコン少年」と呼ばれていたような人に聞いてみてほしい。
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