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東京ゲームショウ2024では「PlayStation 5 Pro」が試遊展示。SIEで開催された事前体験会と青木俊雅氏のインタビューの模様をお届け
それに先駆け,カリフォルニア州サンマテオにあるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の本社にて,一部メディア向けに実機とゲームデモが公開された。
同社のグローバル商品企画部シニアプリンシパル・プロダクトマネージャーである,青木俊雅氏にインタビューを実施する機会もあったので,実機チェックと合わせて紹介しよう。
※記事内の画面写真は,『PlayStation 5 Pro Console - Game Lineup Sizzle』- State of Play アナウンストレーラーの映像をキャプチャしたものです
「PlayStation」公式サイト
PlayStation 5は,フレームレートを60fpsに引き上げる代わりに映像のクオリティを下げる「パフォーマンスモード」と,画質を優先してフレームレートを下げる「フィデリティモード」の2パターンから選択してゲームをプレイできる
マルチプレイヤーモードやオンライン対応必須のゲームでプレイする場合,パフォーマンスモードを選ぶプレイヤーが多いと思うのだが,その双方のモードの良さを引き出すべくハードウェアおよびソフトウェアのテクノロジーをアップデートしつつ,フィデリティを犠牲にすることなくパフォーマンスを引き上げたのがPS5Proだ。
その大きな柱となるのが,現行モデルよりもCompute Unitが67%増量されたGPUと,28%高速化されたメモリで,描画能力が向上したことにより約45%も早くレンダリングが可能となっている。
レイトレーシング性能は最大で3倍ものレイ(光線)を投射できるようになり,今までよりさらにフォトリアルな光の反射や影の質感が得られるようになった。また,新たに開発されたAIベースの超解像技術「PlayStation Spectral Super Resolution」(PSSR)の導入によって,グラフィックス面でのノイズの発生を補正し,アーティストたちが見せたかったゲーム世界本来の美しさを最大限に表現できるようになっているのだ。
今回のイベントで公開されたのは,以下の10タイトル。
- Demon's Souls
- ドラゴンズドグマ 2
- F1 24
- FINAL FANTASY VII REBIRTH
- グランツーリスモ7
- ホグワーツ・レガシー
- Horizon Forbidden West
- Marvel's Spider-Man 2
- ラチェット&クランク パラレル・トラブル
- ザ クルー:モーターフェス
- The Last of Us Part II Remastered
これらのPS5Proに対応するタイトルのうち,最もグラフィックスの向上を感じられたのが「FINAL FANTASY VII REBIRTH」であった。
会場では,クラウド,エアリス,ティファ,バレット,そしてレッドXIIIが町の外に出てグラスランドエリアにやってくるシーンが紹介されたのだが,地下道から出てきた瞬間に現れる一つひとつの葉や花の落とす影,太陽光を透かした葉の柔らかい色をしっかり見て取れた。さらにドロー・ディスタンス(描画距離)が向上していることもあって,PS5では圧縮されて何だかよくわからない形になっていた遠方のオブジェクトが,明らかに風車であることも判別できるようになっていた。
PS5Pro対応版では,それぞれのキャラクターの肌や髪の毛(そしてレッドXIIIの体毛),バレットの袖なし革ジャンや天然素材風のエアリスのシャツといった衣類の質感なども,PSSRが解像度を向上させて描画しており,オリジナル版よりも細かく表現されているのがわかる。
ゴールドソーサーエリアのような街中では,遠くにある看板まではっきりと文字が読めるのも大きなポイントになるだろう。
パフォーマンス面で大きな向上を見せていたのが「ドラゴンズドグマ 2」だ。起伏やNPCなどのオブジェクト数が多い村の中を走り回っても,非常に滑らかな動きを実現しており,フレームレート60fpsの恩恵をしっかりと受けていた。
「Marvel's Spider-Man 2」は,これまで時おり感じたスイング時のカクつきがなくなっており,プレイをスムーズに楽しめる。またドロー・ディスタンスの向上によって,マンハッタンの摩天楼は遠くまで緻密に表現されており,その美しい都市風景にあらためて息を呑むことだろう。
ドロー・ディスタンスについては,「The Last of Us Part II Remastered」も顕著な向上を見せており,以前は気付かなかったであろう木々に隠れた遠くの家までが判別できるようになっている。
もやと木漏れ日で白っぽいフィルターがかかっていたような森の中の風景は,さらに立体感を増し,AIアップスケーリングにより以前にも増して臨場感を感じられるようになった。
レイトレーシングがうまく機能していたのが「グランツーリスモ7」だろう。PS5ではホイールのリムに移り込む横の車を反射した光が,どこか疑似的な白っぽい光に置き換えられていたのだが,PS5Pro対応版では車の形状までわかるほど色や反射角度をしっかりと捉えている。
「ホグワーツ・レガシー」も,大理石で作られた壁やタイルが多いぶんだけ,レイトレーシングによる尋常ではない光のバウンスが表現されていた。
「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」の凱旋パレードシーンは,花火などのパーティクルや周囲の観客など視覚的に忙しいほどの物体で溢れている。それもあってか,PS5ではパフォーマンスを優先させると,紙吹雪のあとにグレーの残像のようなものが残ってしまっていた。PS5Pro対応版では,そうしたノイズの補正がしっかりと行われていることもデモで確認できた。
続いて,SIE グローバル商品企画部シニアプリンシパル・プロダクトマネージャーである,青木俊雅氏のインタビューを紹介しよう。
シニアプリンシパル・プロダクトマネージャーに聞く
グラフィックスにこだわるゲーマーにとってのベストオプション
4Gamer:
まず簡単に自己紹介をお願いします。
青木俊雅氏(以下,青木氏):
東京オフィスで商品企画を担当しています。PlayStation 5世代においては,GPUのホースパワーやデュアルセンスといった新しい要素で,ゲーマーの皆さんにより良くイマーシブなゲーム体験をご提供しようと努めてきました。
4Gamer:
PS5Proの企画意図を教えてください。
青木氏:
テクニカルプレゼンテーション映像でマーク・サーニー(Mark Cerny / PS5リードアーキテクト)が述べていたように,現行モデルではパフォーマンスを優先するかグラフィックス(フィデリティ)を重視するかという選択になってしまっています。
PS5そのものは私は素晴らしい商品であると思っていますが,テクニカルな部分で両立できない部分を克服することを目指して,PS5Proの設計と開発を行ってきました。
4Gamer:
今回の会場ではテクニカルアーティストさんたちにデモの説明を行ってもらっていますが,彼らの評価が高いように思います。
青木氏:
はい。デベロッパの方々,とくにアーティストさんたちと話していると,昨今のゲームではコンバットが複雑化しているだけでなく,十分なレイテンシやレスポンスが必要になっているため,30fpsでプレイするとゲーム体験がスムーズに感じられなくなってしまうそうなんです。
そのため,プレイヤーの多くはパフォーマンスモードでプレイするようになってしまい,デベロッパが用意した視覚的なこだわりを表現できていないんですよね。
PS5Proは,GPUを強化することによってグラフィックスを綺麗に見せながら高いパフォーマンスを維持することを念頭におきました。60fpsで美しい絵を描き上げるGPUのパワーだけでなく,レイトレーシングやAIアップスケールなどを利用し,最終アウトプットとして4Kグラフィックスで提供できるようにしています。
プレイ感だけでなく,グラフィックスの美しさにもこだわるゲーマーの皆さんにとってのベストオプションになればと考えております。
4Gamer:
グラフィックス表現を重視するデベロッパの場合,ハードウェアが向上すると,それを超えてくるような作品を作ってくるような気がしますが。
青木氏:
今の段階では,PSSRのAIアップスケールがうまく作用することによってピクセルのあいだを綺麗に埋めてくれています。
4K解像度を念頭に開発されている現状のゲームにおいては,彼らの要求を満たせていると感じています。そして,これ以上彼らが情熱や開発費を注ぎ込んで細かく描き込まなくても,デモでご覧になったような美しいゲーム表現が可能になっています。
4Gamer:
PS5Pro対応版でないタイトルは,どのようにハンドルしますか。
青木氏:
PS5Proには「ゲームブースト」という機能があります。PS5Pro対応版でなくとも,可変フレームレートであったり可変解像度を使っているゲームであれば,それを高い設定にしてもより安定して表現できるようになります。
ただ30fpsに固定されているゲームの場合などは,それをアンロックしていただくなどしない限りは対応できません……。
4Gamer:
PSSRと,NVIDIAのDLSSやAMDのFidelityFX Super Resolution,IntelのXeSSなどの機能の違いについて教えてください。
青木氏:
我々にはファーストパーティーのゲーム開発チームもおります。彼らの意見を取り込んで一緒に開発を行ってきたことにより,PlayStationというプラットフォームのゲームにあったAIアップスケールの仕方を表現できるようになりました。
今回は一部ハードウェアも入れていますので,中心の部分で我々に必要なニーズに応えられている機能なのではないでしょうか。
4Gamer:
PS5Proは,PlayStation 4世代のゲームをプレイする際にもいい影響を与えますか。
青木氏:
PlayStation 4世代のゲームは,後方互換性のサポートにより可変フレームレートのゲームの能力を引き出すことになります。
PS4には「イメージクオリティ・ブースト」という別の機能がありPSSRを使わずに簡易的にアップスケールできます。こちらはPS5Proでも設定をオンにしていただければ利用できます。
4Gamer:
PSVR2でも,可変フレームレートなどの恩恵は受けられますか。
青木氏:
もちろんです。とくにVRハードウェアにおいてはフレームドロップがゲーム酔いなどに作用しますので,PS5Proの性能を利用してよりスムーズにプレイしていただければ,そうした問題を防止しやすくなります。
将来的には,PSVR2でもPSSRをさらにうまく連動させて,何かできないかを検討しているところです。
4Gamer:
今後リリースされるサードパーティのタイトルについては,PS5Proの性能はフルに生かされていくことになるのでしょうか。
青木氏:
PS5Proの性能についての話はパブリッシャやクリエイターさんと密に行っており,連携も強化しています。PS5Proによって,クリエイターさんたちの思い描くゲームをさらに表現しやすくなると思っていますので,対応を目指してもらえるだろうと我々も期待しております。
4Gamer:
現時点では12タイトルほどのPS5Pro対応版がアナウンスされていますが,ローンチ時点ではどうなりますか。
青木氏:
現在の予定では,ファーストパーティーとサードパーティーを含めて40から50タイトルほどの対応をトラッキングしています。
4Gamer:
それはすごいですね!
青木氏:
やはりゲーム開発者さんの評価が高いということが挙げられると思います。4K解像度の映像でディテールを損なうことなく,ゲームプレイも滑らかに楽しめるというのは,彼らにとって最も重要なことであるということなのだと解釈しています。
4Gamer:
青木さんがPS5Proで一番感動したゲーム表現は何でしょうか。
青木氏:
「FINAL FANTASY VII REBIRTH」でのグラフィックス表現もですが,「Marvel's Spider-Man 2」をパフォーマンスモードでプレイしていた私としては,やはり4K解像度でニューヨークの街が描かれるようになったうえに,スイングのスピードや滑らかさを味わえたのが大きな喜びでしたね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
11月7日に発売される「PlayStation 5 Pro」は,価格が11万9980円(税込)で,9月30日10:00から予約受付を開始する。また11月21日には,世界1万2300台限定で「PlayStation 5 Pro 30周年アニバーサリー リミテッドエディション 特別セット」も販売される。
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PlayStation 5向けの特別モデルとなる「PlayStation 30周年アニバーサリー コレクション」。懐かしい4カラーロゴやグレーの筐体が多くのファンの琴線に触れているかも知れないが,接近して観察してみると,SIEらしくもいつもと違う表面処理の細かいワザが見て取れた。
先にも述べたように,東京ゲームショウ2024には試遊の出展も行われるので,PS5Proが気になっている人は,ソニー・インタラクティブエンタテインメントのブースで,PS5との違いを味わってみるのもいいかもしれない。
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