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[TGS 2016]「これこそインディーズゲーム!」といいたくなる怪作,「You Must be 18 or Older」をプレイしてみた
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印刷2016/09/18 15:43

プレイレポート

[TGS 2016]「これこそインディーズゲーム!」といいたくなる怪作,「You Must be 18 or Older」をプレイしてみた

画像集 No.002のサムネイル画像 / [TGS 2016]「これこそインディーズゲーム!」といいたくなる怪作,「You Must be 18 or Older」をプレイしてみた
 インディーズゲームというものは,「デベロッパが作りたいものを作るところが良い」とは,しばしば語られる物語である。だが現実は厳しく,東京ゲームショウ2016(以下,TGS 2016)の「インディーゲームコーナー」を眺めると,なんだか見たことがある感が漂う作品をたくさん見つけることができる。
 ゲームを作り続けるにはお金が必要だし,売れるゲームを作るためには「類型的な売れるゲーム」を作るのが一番堅実なのだから,これは仕方ないところではある。実際,海外のゲームショウに行っても,似たような状況はいくらでも観測できる。

 だがそんななか,明らかにぶっ飛んだゲームが出てくるのも,またインディーズゲームシーンならではのこと。というわけで,筆者が「TGS 2016最高傑作」だと思うゲームをご紹介したい。「You Must be 18 or Older」という,分かる人にはタイトルで内容が分かってしまう怪作である。

開発元であるSeemingly Pointlessのデザイナー,James Earl Cox III
画像集 No.003のサムネイル画像 / [TGS 2016]「これこそインディーズゲーム!」といいたくなる怪作,「You Must be 18 or Older」をプレイしてみた


往年のアレなサイトでアレやコレやするゲーム


 ゲームの構造でいえば,「You Must be 18 or Older」はコマンド選択型のアドベンチャーゲームであり,そこに新しさは何もない。モンスターが出てきたりはしないし,戦って死んでゲームオーバーになるような展開も起きないというところまで含めて,アドベンチャーゲームの類型に収まる作品と言えるだろう。
 だが本作は,シチュエーションの設定と,その演出の手際が際立っている。

展示台の上が雑貨で溢れているが,これもあくまで演出だ。「テーブルクロスが必要だなと思ったので,日本に来てからクロスを買いに行った」(Cawks氏)というくらいのこだわりっぷり(※おかげで開発者になかなか会えなかったのだが)
画像集 No.004のサムネイル画像 / [TGS 2016]「これこそインディーズゲーム!」といいたくなる怪作,「You Must be 18 or Older」をプレイしてみた

 本作において,プレイヤーは,1990年代における原始的なインターネットサービスを利用している,おそらくは18歳未満の子供をプレイする。
 家には「インターネット」に接続できるPCがあり,主人公はたった1人で家にいる。そして主人公は,学校の悪友たちが「ポルノサイト」なるものについて話合っているのを耳にしたことがある。
 この条件が揃えば,主人公がやることはひとつ。PCを起動して「インターネット」に接続し,「ポルノサイト」とやらにアクセスするのだ!

 本作はアドベンチャーゲームではあるが,「パソコン通信とインターネット時代の狭間で発生したアングラなポルノサイトに,生まれて初めてアクセスする」という体験を再現してくれるゲームでもある。
 ゲームのディテールは十分に凝っていて,「インターネット」に接続するときはダイヤルアップモデムの音が鳴るし,グラフィックスはテキストベースだ。利用するプロバイダは「AOL」がイメージされており,ポルノサイトのURLも,なんとなく見覚えのあるものばかり。

AOLっぽいけどAOLじゃない,「America On-Line」
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 最初に,ポルノサイトを検索するところから始まるというのは,想定した時代に少し先んじているようにも思える(※米Yahoo!のサービス開始は1995年)。検索といってもコマンド選択式なので,「ブックマークされていた巨大なリンク集」と,脳内解釈しながらプレイするといいかもしれない。
 もちろんだが,画面の横に表示されるバナー広告をクリックすると,「今だけのサービス」から「あなたのコンピューターは汚染されています」まで,さまざまな小窓が開く。

 一応,本作では,ポルノサイトにありがちな画像をイメージしたテキストベースの画像――いわゆるアスキーアートみたいなものだ――が表示されるようになってはいる。とはいえ,かなり遠くから見ないと,どんな画像なのかを判別するのは難しい。
 一方でこれは,ゲームショウのような場だと,「プレイしている本人にはイマイチ分かりにくいが,後ろで見ているギャラリーには何なのかがハッキリ分かる」という素敵仕様でもある。

こんな感じのサイトがあったな……
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「かつてできなかったことを,ノーリスクで楽しむ」という楽しさ


 本作を最も楽しめるのは,まさにこの作品が示す時代のインターネットに,この作品の主人公と同年代で触れていたプレイヤーではないかと思う。
 この年代のプレイヤーにとって,本作が示すようなポルノサイトにアクセスするというのは,当時の常識からいっても「愚かしいこと」「避けるべきこと」であった。ゆえに,ある程度までリテラシーのあるプレイヤーであれば,本作が示す体験は「自分がしなかったこと」ではないだろうか(もちろん,「自分がかつてしたこと」を懐かしむ人もいるだろうが)。

 このように,過ぎ去った若き時代において,自分が「できたけれど,しなかったこと」を精密に経験できるという作品は,プレイヤーに独特の感覚を引き起こす。
 実際に開発者いわく,「少なからぬ体験者はナーバスな反応を示す」のだという。だが,大笑いしながらプレイしたり,激しく頷きながらプレイしたりする人も多いようだ。筆者も会場で,そのようなプレイヤーを多数目撃した。
 このように,「強い感情を惹起する」という点において,本作はアドベンチャーゲームとして大成功していると言えるだろう。

あるあるすぎる
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 もともと本作は,インタラクティブノベルとして開発が始まったという。だが開発が進むにつれて,今のような形で完成を迎えつつある。なんのかんので開発には1年半がかかっているというが,細かな作り込みを見るとそれも納得できる。

 本作の正式なリリースは,2016年12月の予定だ。開発者によると,「あくまで小さなゲームだが,もう少し追加したい要素もある」ということなので,完成版に期待したいところだ。
 なお公式サイトではデモ版のダウンロードもできるので,興味のある方は試してみてほしい。とはいえ楽しくプレイするなら18歳以上ではなく,38歳以上のほうがいいような気もするが……。

感想的なエンディング
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「You Must be 18 or Older」公式Webサイト(英語)


4Gamer「東京ゲームショウ2016」特設サイト


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