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[GDC 2014]メガネ型拡張現実HMD「Google Glass」対応ゲームで“やってはいけないこと”。注意すべきポイントをGoogleが解説
本セッションを担当したのは,
なお,半ば余談気味に述べておくと,講演タイトルにある「Okay Glass」とは,
RiftやProject Morpheusとは方向性が異なるGoogle Glass
講演の解説に入る前に,Google Glassとは何かについて,簡単に説明しておこう。Google Glassは,Googleの先端研究を担う「Google X Lab」が開発しているHMDだ。
HMDといえば,720p解像度の有機ELパネルを2枚搭載するソニーのHMZシリーズ,Oculus VRが開発中の「Rift」を思い浮かべる人も多いだろう。
さらにGDC 2014では,Sony Computer Entertainmentが開発中のPlayStation 4用のHMD「Project Morpheus」を発表しており,いまやHMDは,GDC 2014の主要テーマといっても過言ではないほどの注目を集めている。
HMZシリーズやRiftは,ゴーグル型の筐体で装着者の視野を覆い,スクリーンだけを見せるという,いわば没入型のHMDである。外界を遮断してゲームやビデオ映像に没頭するための機器,といっていいだろう。
それに対してGoogle Glassは,装着者が見ている現実の風景に,情報を重ねて表示するシースルー型のHMDである。
現実の風景に情報を重ねて見るという特徴から,どちらかといえばゲームよりも,実用面での応用が期待されているデバイスだ。
Googleは現在,Google Glassの開発者向けキット「Glass Development Kit
さて,GDC 2014でGoogle Glassの講演をすると聞けば,やはり現実の風景を利用した「拡張現実」(Augmented reality,AR)的なゲームを多数披露して,来場者に「さあ,こういったゲームを作ってください」といったテーマになるのかなと,講演が始まるまで筆者は考えていた。
だが,実際の講演はゲームへの応用事例を紹介するといったものではなく,むしろもっと基本的な,Google Glass向けアプリケーション開発の注意点を解説するものだった。シースルー型HMDに触れたことのある開発者など現状ではほとんどいないのだから,「何をすべきで,何をすべきでないか」のノウハウは,これから蓄積していくしかない。Jordan氏の講演は,それを説明するものだったわけだ。
Google Glass向けアプリで「やってはいけない」4つのポイント
Jordan氏は講演のなかで,Google Glass向けアプリケーションでやってはいけないことを4つ挙げていた。それを順に追っていこうと思うが,1つめは,「妨げない」ことである。
Google Glassは風景と重ねて情報を表示するので,視界を遮るような表示はご法度というわけだ。ゲームと言えば画面全体を使うのが常識ということもあり,
3つめは「予期しない表示を避ける」ということ。要は,ユーザーを驚かせるべからず,というわけである。
たとえば,深夜に突然「キャベツが25セント引き!」なんて広告が出たら,誰でも驚くし,不快に思うだろう。こういうことはするなというわけだ。しかしJordan氏は,「これもゲームにとっては若干の成約になる」と指摘している。ユーザーの感情を揺さぶるゲームにとっては,ある意味では難しい制約かもしれない。
Jordan氏が悪例として挙げたのは,誰もが見慣れたQWERTYキーボードだ。「QWERTY配列は,タイプライター時代の機械的な都合で,遅く打つように配列が決められた」とJordan氏は述べる。つまり,「人のため」ではなく,機械の都合によるデザインというわけだ。
Jordan氏の挙げた事例には異なる見解もあるのだが,ともかくGoogle Glass向けアプリケーションを開発するときには,開発者側の事情によるデザインの制約を作るべきではない,というところだろうか。
Google Glassにおけるゲームのお作法
一般的な注意点に続いて,Jordan氏はGoogle Glass向けゲームを作るときに注意すべき点,いうなれば「ゲームのお作法」について説明を行った。
氏によれば,Google Glassは「タッチパッドとマイク,音声による操作,位置情報サービス,高音質のサウンド機能が組み込まれた非常に強力なデバイス」であるが,それらをゲームで使うには,いろいろと注意点があるという。ただし,氏が挙げたのは技術的な側面――たとえばAPIの使い方――ではなく,開発者やデザイナーに対する心構えといったものだった。
「時間的に前後するUI」といわれても,今ひとつ理解しにくいかもしれないが,要は「古くなった情報をいつまでも表示し続けない」といったことらしい。
意外な注意点だったのが,「モバイルの体験をGoogle Glassに持ち込もうとしてはいけない」という点だ。Google Glassはモバイルデバイスなので,既存のモバイルゲームを移植しようというのはありがちな発想だろうが,それは望ましくないとJordan氏は述べている。
理由は明確で,モバイル機器向けのUIはGoogle Glassにとって情報が多すぎるから。これはサンプルとして提示されたスライドを見ると一目瞭然だろう。
また,「情報の表示は,できるだけ簡潔にまとめるべき」であるという注意点も示された。
Google Glassでの情報表示を複雑にすると,ユーザーがそれを認識するだけでも時間がかかる。そしてその場合,せっかくのリアルタイムな情報が「過去のできごとになってしまう」(Jordan氏)。“今”を扱うGoogle Glassにとっては,リアルタイムの情報表示が重要であり,そのためには簡潔にまとめるべきであるというのが,Jordan氏の主張であるわけだ。
いかにもGoogle Glassらしい注意点の1つが,「Google Glassのゲームは,必ずアウトドアで試すべきである」というものだ。
Google Glassに表示される映像は,インドアとアウトドアでコントラストが変わる。ゲーム開発というのはインドアな作業であり,動作検証もインドアで行うのが当たり前と考えられているが,Google Glassのユーザーはアウトドアでもアプリケーションを使おうとするだろう。それゆえに,インドアだけでデザインや動作を検証していては,使いやすいアプリケーションにはならないというわけだ。
「ヘッドジェスチャーの使い方には注意すべし」というのも,Google Glassならではの注意点だろう。
Google Glassは内蔵する加速度センサーを使い,ユーザーが頭をどう動かしたかを認識して,それをジェスチャー操作に使う機能がある。これをヘッドジェスチャーと呼ぶのだが,「異なる環境,異なる場所でも機能するようにチェックしたほうがいい」と,Jordan氏は注意を呼びかけている。
サンプルとして示されたスライドは,たしかに一瞬で「今はポジティブな状況である」とイメージできる。こうした心で分かるデザインを心がけてほしいと,
社会に受け入れられるGoogle Glass用ゲームを目指して
具体例が示されなかったので,氏がどのようなアプリケーションをイメージしていたのかはよく分からないのだが,スライドではGoogle Glassを装着した女性を中心に,Google Glassを使っていない人々も一緒になって,何かを楽しんでいるような光景が示されていた。つまりJordan氏は,「Google Glassを使っていない他の人(others)も,一緒に楽しめるようにしましょう」と訴えているのだ。
HMDは装着者自身にしか画面が見えないので,HMD用のゲームはどうしても,
現状のGoogle Glassは,プライバシー保護や安全性の面で社会から懐疑的,あるいは警戒的な目を向けられている面がある。他者を阻害しない使い方を模索してほしいというのは,Jordan氏に限らず,Google全体の希望なのかもしれない。
Google Glass 公式Webサイト(英語)
GDC 2014公式Webサイト(英語)
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