業界動向
VESA,AMDの「FreeSync」を「Adaptive-Sync」として標準化。DisplayPort接続でカク付き・遅延・テアリングフリーの表示を実現
Adaptive-Syncでは,2009年に標準化されたembedded DisplayPort(eDP)の技術を用いたもの。GPUがレンダリングするフレームレートに合わせたディスプレイ表示が可能になるため,ゲームではラグや遅延,テアリング(tearing)のない滑らかな画面表示が可能になり,ビデオ再生ではカク付きがなくなり,デスクトップ表示や低フレームレートのビデオ再生時には大幅な消費電力の低減が可能になるという。VESAの標準規格なので,もちろんVESA会員であれば利用にライセンス料はかからない。
従来のディスプレイデバイスは,約60Hz(=60fps)周期で映像を表示してきた。
ただ,4Gamer読者であれば体験的に知っていると思うが,ゲームのグラフィックスは負荷によってフレームレートが変動するため,60fpsなら60fpsというフレームレートで安定的に映像出力し続けらるわけではない。そこでディスプレイデバイス側の表示周期に合わせて映像を表示する「Vsync有効」か,それを無視して,「GPUがレンダリングした映像」を次々と表示し続ける「Vsync無効」かを選択することになっていた(関連記事)。
ただ,Vsyncを有効化した場合,フレームレートの変動に合わせて「ディスプレイ表示待ち」が発生し,結果として画面のカク付きや表示の遅延が生じることがある。一方のVsync無効だと,今度は画面が上下で千切れるような現象たるテアリングから逃れられない。これが,従来型ディスプレイ表示システムの抱える課題である。
それに対してNVIDIAが回答として示したG-SYNCは,「ディスプレイ側に,GPU主導で表示タイミングを制御するためのハードウェア」を組み込むことで,Vsync有効でも無効でもないディスプレイ同期方法を実現し,滑らかでカク付きや遅延のない映像表示をもたらすというものだ(関連記事)。では,Adaptive-Syncはどうかというと,G-SYNC的なものをDisplayPort規格側で引き受けてしまおうという考えによる技術である。
AMDがG-SYNC対抗技術として「FreeSync」なるものを提唱していたのを憶えている人もいると思うが,Adaptive-Syncは,それがVESA規格として採用されたものという理解でいいだろう。
Adaptive-SyncはDisplayPort 1.2aの外部出力規格として追加され,VESAでは認定プログラムを開始するとのこと。今後,Adaptive-Sync対応のグラフィックスカードやディスプレイが出てくれば,それを組み合わせることで利用できるようになるはずだ。
ロイヤリティフリーの標準規格ということで,ディスプレイメーカー側の対応は大いに期待できるのではなかろうか。また,AMDが提唱していた以上,これから登場するAMD製GPUやAPUは対応してくると思われる。
なお,現時点でG-SYNCがAdaptive-Syncと互換性を持つかは明らかになっていない。仮にAdaptive-SyncがG-SYNCと同じ機能を提供するのであれば,専用ハードウェアが不要な分だけAdaptive-Sync対応ディスプレイのほうが安く済むはずで,また,GeForce搭載カードでもDisplayPort 1.2aに対応すればいいだけだとすると,Adaptive-Syncに収束しそうな気もするが,さて,どちらが主流となるだろうか。
VESAによるニュースリリース(英語)
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FreeSync
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