テストレポート
Motorola「Moto G4 Plus」を試す。Snapdragon 617搭載のミドルクラス機はバランスの取れた性能のスマートフォンだった
「それはなんだい?」と興味深げにデレステを見つめる氏に,説明しながらテストをするという羞恥プレイというか,謎な展開になってしまったわけだ。
ともあれ,ミドルクラススマートフォンの新しい選択肢となり得るのか,Moto G4 Plusの実力をチェックしていこう。
ストイックなデザインに往年のMotorola製携帯電話を思い出す
4Gamer読者に,Motorolaブランドのスマートフォンや携帯電話機を使ったこと,あるいは見たことがあるという人はどれくらいいるのだろうか。ストイックとさえいえる機能性重視の外観でありながら,ある種の洒落たデザインというか機能美というか,独特のデザインセンスを感じられる製品が,Motorolaには多かったように筆者は思う。
新しいMoto G4 Plusも,そんなMotorola製品の雰囲気を,しっかりと継承している。
触り心地もなかなか良好。派手で人目を引くコンシューマ向け製品ではなく,道具としての良さを重視した法人向け製品な雰囲気が強いといってもいいだろう。
前面下側には四角いボタン型の指紋認証センサーがある。一見するとホームボタンのようにも見えるが単なるセンサーであり,一般的なAndroid端末と同様に,ホームボタンは画面上に表示されるものを使う。
ゲーム用途ではあまり活躍の場がなかったスマートフォンのアウトカメラだが,「Pokémon GO」(iOS / Android)のサービスが日本でも始まれば,プレイヤーがカメラ機能を活用するシーンも増えそうではある。特筆するほど画質がいいというカメラではないが,人物や風景のスナップショットではなく,ある種のスクリーンショット的にポケモンの写った風景を保存しておく程度の用途であれば,写真の画質もとくに不満を感じることはないだろう。
独自のアプリや機能がほぼない,クリーンなAndroid 6.0.1を搭載
Moto G4 PlusはAndroid 6.0.1(Marshmallow)を搭載するスマートフォンだが,端末メーカー独自の機能や独自のアプリといったものは,ほとんど搭載されていない。製品発表会で端末の説明を担当したプロダクト・マネジメント・ディレクターのAllison Yi氏も,「チューニングを施している部分はあるものの,(基本的にはGoogle製の)Nexusスマートフォンに近い」とMoto G4 Plusを紹介していた。
ゲーム用途で致命的な問題となり得る,SoCの動作制御が「チューニング」に含まれるかだが,Motorolaによると,バッテリー残量が一定以下の水準になったとき,動作クロックを抑える機能はあるという。ただこれも,OSの設定から有効/無効を切り換えられるので,ゲームプレイの邪魔になるケースは少ないはずだ。
ミドルクラスのSoCながら動作は軽快。ゲームもよく動く
Moto G4 Plusのスペックを確認していこう。冒頭でも触れたとおり,搭載SoCは現行のQualcomm製品のなかでミドルクラス市場向けとなるSnapdragon 617
液晶パネルは5.5インチサイズで,解像度1080×1920ドット,画素密度は401ppiである。
冒頭でも紹介したとおり,Moto G4 Plusのラインナップはメインメモリ容量とストレージ容量の違いで2つある。今回テストに用いたのは,メインメモリ容量3GB,ストレージ容量32GBの上位モデルだ。実際のところ,Motorolaの製品パンフレットには上位モデルのスペックしか書いていなかったりするので,主力製品はこちらと考えていい。
筆者のテストで定番となっているグラフィックス系テスト「3DMark」と,CPUの動作クロックを見る「CPU-Z」「AIDA64」,メインメモリおよびストレージの性能を見る「A1 SD Bench」,連打応答性を調べる「ぺしぺしIkina」は,すべて実施。そのうえで,ゲームの動作検証としてデレステと,Android版「艦隊これくしょん -艦これ-」(以下,艦これ)の先行運用版を実行してみることにした次第だ。艦これのテストでは,「Intel Performance Viewer」を使ったCPU使用率チェックも行っている。
というわけでまずは,3DMarkのIce Storm Unlimitedプリセットからだが,総合スコアは「9689」となった。最新世代のハイエンドスマートフォンと比べてやや低いという印象は否めないのだが,Snapdragon 61x世代では1つ下の「Snapdragon 615」を採用するスマートフォン「AXON mini」が「8209」だったので,それよりも高い性能を有するとはいえそうだ。
続いては,CPU-Zと,クロスチェック用のAIDA64だが,前者はSoCをSnapdragon 615と判定し,後者は,Moto G4 Plusが搭載するSnapdragon 617の最高クロックが1.52GHzのところを,どういうわけか1209MHzと判定する問題があった。
もっとも,どちらのアプリもCPUコアの挙動は正しく取得できているようで,アイドル中は,高クロック動作がターゲットとなる「big」コア4基中2基が最大960MHz動作,残る2基は停止して,低クロック動作がターゲットとなる「LITTLE」コアは4基が最大806MHz動作となる様子を,CPU-Z,AIDA64ともレポートしていた。負荷をかける操作を行ってもなかなかクロックは上がらないので,何らかの制限はかかっているのかもしれない。
とはいえ,3桁MHzという表示の割に,操作に対するレスポンスは良好だ。
Adreno 405は基本的に400MHz動作。低負荷状態が長く続いた場合に限り,240MHzまで下がるという挙動を示していた |
A1 SD Benchの測定結果 |
A1 SD Benchのスコアは,内蔵ストレージへのアクセス速度を示すInternal memory Readが「134.39MB/s」で,Writeは「49.17MB/s」,メインメモリの読み書きを示すRAMは「3503.98MB/s」となった。実際,アプリのインストール時に遅いなと感じていたので,書き込み速度の低い,低コストなフラッシュメモリを採用しているのだと思われる。ただ,読み込み性能のReadはごく一般的なレベルなので,一度アプリをインストールしてしまえば,それほどストレスを感じることはないかもしれない。
RAMの速度は,ハイスペック端末の50%ほどだったが,体感するほど遅いシーンに出くわすことはなかった。
ゲームのプレイテストは,まずデレステから行った。チュートリアル時の判定は「3D標準」で,タップの反応も問題ナシ。3D標準で「流れ星キセキ」をプレイしたところ,後半の紙吹雪演出でフレームレートの落ち込みがあったくらいだ。
ただ,難度「Pro」までは確認した限りなかった「スライドやドラッグ入力の取得漏れ」が,難度「Master」だと,後半に目立つようになったので,この点は記しておきたい。
普段は「2D標準」か「2D軽量」でプレイしておき,MVを楽しむときは「3D標準」にするのが無難だろうか。
余談だが,テストをしていた関係者控え室はネットワーク状況があまりよくなく,20分くらいダウンロード状態が続いたためか,本体はけっこうな熱を発していた。iPhone用赤外線カメラ「FLIR ONE」を使って筐体の温度計測をしてみたところ,背面の一部は44℃まで発熱していたほどだ。
それにも関わらず,プレイ中には熱の影響によると思われる挙動の重さは感じなかったことを付け加えておこう。
最後は艦これのプレイテストだ。Moto G4 Plusは,DMM.comのスマートフォン事業である「DMM mobile」でも販売する予定なので,快適な動作が期待できるかもしれない。
テストプロセスは,スマートフォン&タブレット8機種を使った検証記事と同じで,起動画面で「スタート」(BGMあり)を選び,1−1へ出撃。1−1を勝利したら撤退して母港に戻るまでの様子を動画で撮影するというものになる。
チェックしてみた限りでは,推奨端末入りしそうなくらい快適な動作をみせた。リザルト画面や中破時の演出ではやや処理がもたつく部分も散見されたものの,母港画面でも主な操作でひっかかりを感じることはない。
艦これの画面に重ねて表示しているので見難いとは思うが,Intel Performance Viewerのグラフを見ると,big.LITTLEのうちLITTLE側の4コアが1.2GHzで動作し続けていることが分かるだろう。ときおり986MHzに下がることもあるが,描写がもたつく様子もない。艦これ用として,Moto G4 Plusはなかなか優秀なスマートフォンだと言えそうだ。
デレステも艦これもよく動く
多用途に使えて導入コストも低い優等生
それではまとめに入ろう。
これまでのミドルクラススマートフォンといえば,ゲームの性能においては割り切りが必要というのが定番だったが,Moto G4 Plusでそういった妥協は不要であり,デレステも艦これも挙動はおおむね快適だった。バッテリー駆動時間を過剰に重視したチューニングが行われていないことが,ゲームにおいては功を奏しているのではなかろうか。
その意味において,ゲームを中心に,WebブラウズやSNS利用と多用途に使える,できる限り安価なAndroidスマートフォンを探している場合に,Moto G4 Plusは狙い目のスマートフォンだと言えるだろう。
おそらく今後は,他メーカーもMoto G4 Plusと同程度の価格帯に向けて,性能のいい端末を投入してくると予想される。今後のスマートフォン選びは,いい意味で悩ましくなりそうだ。
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