レビュー
GTX 1050+Core i5-7500T搭載の小型PCでゲームはどれくらい動くのか
ZOTAC ZBOX MAGNUS EN51050
なお,本製品は,まだ国内発売となっておらず,年内にアスクから発売となる予定であるとのことだ。販売代理店想定売価は9万円台後半(税別)となっている。
Core i5-7500TとGTX 1050は内蔵
メモリとストレージを用意すれば完成
ベアボーンキットと言えば,CPUやメモリモジュール,ストレージをユーザー自身が用意して組み付ける製品が多いものだ。しかし,MAGNUS EN51050は,CPUとして「Core i5-7500T」をあらかじめ実装した製品となっている。また,製品名からも想像できるとおり,GPUとして「GeForce GTX 1050」(以下,GTX 1050)をマザーボード上に実装しているのもポイントだ。グラフィックスメモリ容量は2GB。CPUとGPUを標準搭載しているおかげで,ユーザーはメモリモジュールとストレージを用意すれば,ハードウェアは完成である。
メインメモリには,DDR4-2133またはDDR4-2400対応のメモリモジュールを利用できるのだが,デスクトップ用PCのDIMMではなく,ノートPC用のSO-DIMMを使うことには注意したい。SO-DIMM用のメモリスロットは2本あり,最大で16GB×2まで搭載可能だ。
なお,内蔵ストレージ用のスロットやベイは,PCI Express x4接続またはSerial ATA 6Gbps接続に対応するM.2スロットが1基と,Serial ATA 6Gbps接続対応の2.5インチベイを1基という構成になっていた。
そのほかの仕様も含めたMAGNUS EN51050の主なスペックは表のとおりとなる。
持ち運べる非常にコンパクトなサイズ
内部へのアクセスのし易さにも注目
それでは外観を見ていこう。
MAGNUS EN51050の本体は,サイズが実測で210(W)×203(D)×63(H)mmと,少し大きな弁当箱程度のコンパクトなものとなっている。重量はなぜか未公表なのだが,これくらいならカバンに入れて持ち運べなくもない。
外観は黒一色で,天面には,ZOTACのシンボルマークをイメージさせる「O」字型の凹みがある。天面の三辺と底面の四辺には,通気孔となるスリットが多数配置されており,さらに左側面と背面にもスリットがあった。小型筐体に単体GPUを内蔵するとあって,通気孔はかなり多い。
前面には,電源ボタンとSDカードリーダー,それにType-AおよびType-C形状のUSB 3.1 Gen.2ポートが1つずつ,そして3.5mmミニピンのヘッドフォン出力とマイク入力端子が配置されていた。
一方,背面側には,USB 3.0 Type-AポートとUSB 2.0 Type-Aポートが2つずつ用意されているのに加えて,DisplayPort 1.3出力とHDMI 2.0出力も2つずつあり,計4台のディスプレイを接続できるようになっているのが小型のベアボーンPCとしては珍しいところだろう。
MAGNUS EN51050は,内部にRealtek製のGigabit Ethernetコントローラを2系統と,Intel製の無線LANモジュール「Dual Band Wireless-AC 3165」を備えており,同時に計3系統のネットワークを利用できるのだ。ただし,複数のLAN回線を束ねて帯域を向上させるチーミング機能がない点は,ちょっと物足りないところか。
さて,MAGNUS EN51050はベアボーンキットであるため,ユーザー自身でメモリモジュールとストレージを内部に組み込む必要がある。内部へのアクセスは容易で,本体を裏返して背面にある手回し式のネジを2つ外したうえで,底板を外すだけだ。
ベアボーンPCで,メモリモジュールやストレージを何度も付け外しする人はあまりいないと思うが,メンテナンス性のよさは評価したいポイントと言えよう。
付属品についても,簡単に触れておきたい。
MAGNUS EN51050の製品ボックスには,クイックスタートガイドとマニュアルが付属していた。前者は,英語や中国など27カ国語で記述された簡単な組み立てとセットアップのガイドで,もちろん日本語のページもある。一方,後者は英語版しか用意されていなかったのが,残念なところ。国内での正式発売時には,日本語版が用意されるといいのだが。
また,Windows用のドライバソフトを収録したDVD-ROMとUSBフラッシュメモリも付属している。MAGNUS EN51050に,光学ドライブを搭載するスペースはないので,ドライバソフトのインストールにはUSBフラッシュメモリを使うことになるわけで,それがきちんと付属していることは評価したい。
設定を落とせばPUBGもプレイ可能
FFXIVでは快適にプレイしている動画も用意
とはいえ,GTX 1050自体のレビューはすでに掲載済みなので,レビュー時のテスト機材とCPUが異なるとはいえ,おおよその性能は見当がつく。そこで今回は,MAGNUS EN51050で描画オプションをどの程度に設定すれば,ゲームが快適にプレイできるのかを探ってみたいと思う。
具体的には,4Gamerのベンチマークレギュレーション20.1から,「3DMark」(Version 2.4.3819)で基本性能を確認しつつ,「Overwatch」「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG),「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の3タイトルでテストを行い,それぞれのタイトルで描画オプションを下げつつ,快適にプレイできるラインを模索する。
GTX 1050がエントリー市場向けGPUであることを鑑みて,テスト解像度は1600×900ドットと1920×1080ドット,2560×1440ドットの3パターンを選択。このうち,とくに1920×1080ドットで快適にプレイできるかどうかを検証する。
なお,今回のテストに当たって,MAGNUS EN51050には,Corsair製のDDR4
まずは3DMarkの結果から。グラフ1はFire Strike,グラフ2はTime Spyにおける総合スコアをまとめたものだ。
Fire StrikeにおけるMAGNUS EN51050の総合スコアは「5247」。あくまで参考程度ではあるが,CPUに「Core i7-6700K」(4C8T,定格4.0GHz,最大4.2GHz)を採用したGTX 1050のレビュー時におけるスコアが「6130」だったことを考えると,CPUの性能差が大きいことを考慮すればおおむね妥当なスコアと言っていいのではないだろうか。
同様にTime Spyも,MAGNUS EN51050の総合スコアは「1801」で,レビュー記事の「1980」から若干低いスコアとなっている。
グラフ3は「Overwatch」の結果をまとめたものだ。レギュレーションどおりの「ウルトラ」プリセットでは,1920×1080ドットで平均75.6fps,最小64.0fpsと,常時60fpsを超えているのでプレイに支障はない。一方,「ノーマル」プリセットまで描画オプションを下げると,平均フレームレートは112.5fpsとなった。
ウルトラプリセットからノーマルプリセットまで描画品質を落とすと,「アンチエイリアス品質」は「SMAA」ではなく「FXAA」へと変わり,「テクスチャ・フィルタリング品質」も「8X」から「2X」へと低下する。だが,MAGNUS EN51050で,垂直リフレッシュレートが60Hzを超える液晶ディスプレイと組み合わせ,フレームレートを稼いで対戦プレイを有利に進めたいのであれば,ノーマルプリセットを選ぶ価値はあるだろう。
PUBGの結果をまとめたものがグラフ4となる。Overwatchと異なり,こちらはレギュレーションどおりの「高」プリセットにすると,1920×1080ドットで平均31.9fpsしか出ておらず,快適にプレイできるとは言い難い。そこで,プリセットを「非常に低い」まで下げてみたところ,平均フレームレートは54.9fps,最小フレームレートは46.0fpsと,まずまずのスコアが出るようになった。
なお,「非常に低い」までプリセットを下げると,「アンチエイリアシング」や「テクスチャ」の設定も「非常に低い」になるので,画質は大幅に悪化する。ただ,ほかのプレイヤーが見える距離は変わらないので,プリセットを下げたら見えていたはずの敵が見えなくなるようなことはない。
以下に,高プリセットと非常に低いプリセットのスクリーンショットを並べておくが,その差は一目瞭然だろう。
FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの結果(グラフ5)は,描画プリセット「最高品質」では,1920×1080ドットでスコアは「6300」と,スクウェア・エニックスが示すベンチマーク指標で「とても快適」の評価となった。
しかし,より快適なプレイを求めるのであれば,描画プリセットを一段階下げた「高品質(デスクトップPC)」(以下,高品質)にするのがいい。高品質であれば,1920×1080ドットで「7293」と,ベンチマーク指標で最高評価となるスコア7000を超えることが可能だ。
高品質の設定で,ゲームがどれくらい快適に動くのか。分かりやすく見せるために動画を撮影してみた。この動画は,FFXIV紅蓮のリベレーターのパッチ4.1で新たに実装された24人用アライアンスレイド「リターン・トゥ・イヴァリース」のボス戦を,解像度1920×1080ドットの高品質でプレイしたときのものだ。
録画には,PC上で動くゲーム録画ソフト「ロイロ ゲーム レコーダー」を使用し,動画のフレームレートは60fps,「品質」設定は最高の「99」で録画した。プレイヤーキャラクターが24人もいるわけだが,それにも関わらず,目に見えるほどのコマ落ちをすることもなく,快適に動作しているのが分かると思う。
180WのACアダプタで動作するだけあって消費電力は低め。静音性の高さも秀逸
MAGNUS EN51050の消費電力はどの程度なのだろうか。そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定して確認してみた。
測定にあたっては,ゲームでの利用を想定し,ディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果はグラフ6のとおり。アイドル時は37Wとかなり低めで,各アプリケーション実行時も110W前後と,消費電力が抑えられていることを確認できた。180WのACアダプタで動作するのも納得といったところか。
内部の冷却はしっかり行えているのだろうか。MAGNUS EN51050の冷却能力を確認すべく,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,CPUとGPUの温度を「HWMonitor」(Version 1.33)で計測してみた。なお,テストにあたってMAGNUS EN51050は,室温24℃の室内で,机上に置いて動作させている。
グラフ7が計測結果をまとめたもので,CPU,GPUともに,アイドル時の温度は40℃台と若干高めだった。しかし,高負荷時でも70℃前後までしか上昇していないので,冷却は十分足りていると言えよう。少なくとも,きちんとエアフローを確保できる環境であれば,内部に熱がこもって故障の原因になるといった心配はしなくても済みそうだ。
MAGNUS EN51050の冷却能力が十分であることは分かったが,動作音はどうだろうか。今回は,MAGNUS EN51050の前面から30cm離れた場所にカメラを置いて,動作音付きの動画を撮影してみた。
以下に掲載した動画には,アイドル状態で1分間放置した時点(※動画内では「アイドル状態の動作音」),アイドル状態でFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを起動した時点,同ベンチをスタートしてから2分経過した時点,そして4分経過した時点の様子をまとめている。
アイドル状態が非常に静かなのは当然といったところだが,ベンチマークを起動しても,動作音がほとんど変わらないところに注目してほしい。さらに,2分経過した状態や4分経過した状態でも,動作音はあまり変わっていない。MAGNUS EN51050の優れた静音性は,称賛する価値のあるポイントと言えそうだ。
設定次第で快適にゲームがプレイ可能
適正価格で登場すればミニベアボーンPCの魅力的な選択肢に
ZOTACのミニベアボーンPCには,たとえばGeForce GTX 1060 6GBとCore i5-6400Tを組み合わせた「ZBOX MAGNUS EN1060」(型番:ZBOX-EN1060-J)という上位モデル的な製品もあるのだが,実勢価格が16万円前後から17万円台半ばと,相応に高価な製品となっている。一方,MAGNUS EN51050の国内価格は9万円台後半(税別)となっているので,ZBOX MAGNUS EN1060に比べれば,手の届きやすい値段と言えよう。
MAGNUS EN51050は,既存のミニベアボーンPCには価格面で手が出せないと感じていた人にとって,魅力的な選択肢となるのではないだろうか。
ZOTACのMAGNUS EN51050 製品情報ページ(英語)
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