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[GDC 2018]今は雌伏のとき。VRゲームが生き残るためにするべきことが語られた講演をレポート
VRゲームが現在置かれている状況や,今後の展望などが率直に語られた興味深い内容だったので,本稿で紹介しよう。
VRは現在“幻滅期”にあり,2020年に復活する
Unger氏が最初に示したスライドは「VRは死んだ。それは君らを殺すだろう」という,ショッキングなものだった。
もちろん,Unger氏がこんなことを言い出すのも根拠があってのことである。氏によると,VRはガートナー(IT分野のリサーチやコンサルティングを行う企業)が提唱したハイプ・サイクルに沿っているのだという。Unger氏らが「The Gallery - Episode 1」をリリースした2016年4月は,ハイプ・サイクルにおける最初の山,つまり流行期だったとUnger氏は振り返る。
「The Gallery - Episode 1」はメディアからも好意を持って迎えられ,それなりの評価を得たという。
だが,その18か月後の2017年10月にリリースした「The Gallery - Episode 2」は,評価こそそれなりに高かったものの,「資金回収にも苦労している」(Unger氏)ありさまだそうだ。Unger氏によれば,今がVRのハイプ・サイクルにおける底,いわゆる幻滅期に当たるのだという。
こんな状態では,どんなVRゲームもクソゲーになると氏は語る。大半のゲーマーはVRに興味を失っており,クソゲーだと誹謗中傷こそしないものの,プレイすることもないので,結局クソゲーになってしまうのだというのがUnger氏の見解だ。
となると,いつになればVRはハイプ・サイクルの回復期を迎えるのだろうか。Unger氏によれば,それは2020年だという。
その理由はいくつかあるが,まず「2年後にはハードウェアの進化によってVR体験が大きく改善されるから」が挙げられた。それにつながるハードウェアメーカー間の競争が,今まさに起きている。もちろん,ソフトウェア技術も同じように進化すると見られている。
さらにUnger氏はアーケード(Location Based Entertainment)もVRの復活に一役買うと見ているそうだ。「思えば自分がゲームに触れたのもアーケードだった。VRもアーケードで広がっていくはず」とUnger氏は語っている。
生き残るには何をすべきか?
VRゲームが2020年に復活するとして,それまでに何をしておくべきなのか。Unger氏はそれについても語ってくれた。
VRゲームを手がけるスタジオに何が残されているのか,ということを示したのが下のスライドである。
いくつかかいつまんでおくと,まずメインストリームのメディアはVRへの注目が減っているので「VRやARの専門のメディアと密にコミュニケーションをとるようにしたほうがいい」(Unger氏)とのこと。
また,投資家はいまARやブロックチェーン技術に注目しているそうだ。「VRは駄目でもARやブロックチェーンと口にすると注目してくれるよ」とUnger氏は言う。
そして現在の市場では大きなプロジェクトを支えることができないので,ごく小規模なプロジェクトを手がけるようにすべきであろうと氏はアドバイスしている。
そのうえで,Unger氏は2つの道があると語っている。ひとつは短期的なトレンドを追っていくというもの。もうひとつは2年後を見据えた中長期的なプロジェクトに携わっていくという道だ。
どちらの場合でもプラットフォームは幅広くサポートしたほうがいい,とのこと。性能の目安としてはPS VRがもっともパフォーマンスが低いため,そこをターゲットにすべきだそうだ。
また,チームの規模は「15〜20人くらい」(Unger氏)が理想であり,50万から100万くらいの販売数をターゲットにしたほうがいいだろう,とのことだった。
さらに「投資家は避けるべきで,近寄るにしても慎重にせよ」とか「ハリウッドは金があるけれどもなかなか難しい」といったことも話題として触れていた。
以上のように,Unger氏はVRの現在をかなり厳しく見ているようだが,講演の最後には「VRには未来があると信じている。今やっていることは必ず報われるだろう」とも述べていた。Unger氏が語るように,2年後の2020年にVRが主流のゲームプラットフォームになることを期待したい。
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