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「DreamHack Winter 2022」開催。世界最古にして最大のLANパーティーは,ゲームカルチャーの祭典としてさらに発展中
「DreamHack Winter 2022」公式サイト
ブロードバンドが身近になった現在では考えにくいことだが,1990年代後半はまだ通信速度64KbpsのISDNが主流で,利用時間に応じて料金が課金されるため電話代もかさんだ。そこで,遅延なく気の済むまで対戦ゲームを楽しみたいプレイヤー達はPCをLANケーブルでつなぎ,やがて,参加者が個人のPCを持ち寄ってデスマッチやチーム対戦に明け暮れる集まりがLANパーティーと言われるようになる。自分のPCを持ち込むタイプのイベントは,BYOC(Bring Your Own Computer)とも呼ばれる。
DreamHackは,そんなBYOC型LANパーティーの中でも,1991年に始まったノルウェーの「The Gathering」や,1996年以降,テキサス州で開催されている「QuakeCon」と並ぶ歴史と規模を誇っている。ゲーム事情やeスポーツに詳しい人なら,DreamHackの名前を一度は聞いたことがあるはずだ。
2023年には日本でも開催予定のDreamHack
DreamHackは1994年,スウェーデン中南部のマールングという村にある小学校の地下を借りて行われた「デモシーン」を起源とする。デモシーンとは,デモと呼ばれる自作のプログラムを見せ合ったり交換したりする催しで,北欧ではゲーム文化として定着している。
同時に行われたLANパーティーは年々規模を拡大し,2002年からは夏と冬の年2回開催になった。2013年の冬には,LANに同時接続されたPCが1万7000台以上になったことで,ギネス世界記録にも登録されている。
スウェーデンの首都ストックホルムで2011年に行われた大会では,「StarCraft II」を使ったトーナメント「Stockholm Invitational」が開催され,eスポーツ大会を取り込む。2012年にはアメリカ進出のため,Major League Gaming(MLG)やElectronic Sports League(ESL)などとの提携を行い,一方で,コスプレ大会やライブコンサートなども実施して,ゲームカルチャー全般の祭典へと発展していった。2015年にはテキサス州オースティンで,2016年にはカナダ・ケベック州のモントリオールでDreamHackが開催されており,このほか,ドイツのライプチヒ,ブラジルのリオデジャネイロ,スペインのバレンシアなど複数の都市でも開催されている。
新型コロナ感染症拡大により,ゲームイベントやトーナメントが相次いで中止になった2020年9月には,ESLとの統合がアナウンスされる。持株会社のESL Faceit Group(EFG)傘下の独立したイベントとなったDreamHackは,2022年2月にアメリカ・カリフォルニア州で開催されたDreamHack Anaheimを皮切りに,テキサス州ダラス(6月),オーストラリアのメルボルン(9月),インドのハイデラバード(10月)など,今年,精力的に開催されてきた。
2023年4月にはカリフォルニア州サンディエゴでの開催が予定されており,さらに,10月6日に掲載した記事でお伝えしたように,2023年5月には日本へ初上陸することになっている。
日本初上陸のゲームイベント「DreamHack Japan」,2023年5月13日と14日に幕張メッセで開催決定
ゲームイベント「DreamHack Japan」が,2023年5月13日と14日に幕張メッセで開催されることが発表となった。音楽ライブやeスポーツ大会,企業ブース出展などの複合型イベントとして世界各地で開催されているDreamHackが,ついに日本へ上陸する。
DreamHack Winter 2022に見る
LANパーティーの流儀
「DreamHack Winter 2022」の参加者には,それぞれ幅83cm,奥行き60cmのデスクスペースが与えられ,そこにPCや周辺機器,人によっては座り慣れた椅子を持ち込む。参加者の年齢は,10代からリタイアしたシニアまで幅が広いが,20年以上の歴史を誇るだけに,親子2代にわたるBYOC愛好家も少なくないようだ。イベントホールでは,親子づれや子供達だけで楽しそうに歩き回る姿が見られる。
以前に比べれば,LANパーティーそのものの勢いは落ちているが,約4000人という参加者の多くが,いつもネットでプレイする仲間達と直接会うためにヨーロッパ各地からやってくる。
基本的に会場の扉は24時間開放されており,お金がない学生や,仲間との時間をできるだけ長く過ごしたい来場者達は寝袋と枕を持参し,イベント会場に用意された雑魚寝スペースに寝泊まりする。ハンバーガーやドーナツ,ピザ,ケバブなど,豊富な種類を揃えたフードセレクションが用意されているし,トイレはもちろん,イベント会場にはシャワーもあるので,寝泊まりに支障はない。寒さに強い北欧人の中には,氷点下まで気温が下がる冬場にもかかわらず,車中泊する猛者もいるようだ。
今回,行われているeスポーツ大会は,「Counter-Strike: Global Strike」の女性リーグ,ESL Impact シーズン2 ファイナル,および同作向けのスウェーデン国内リーグElitserien,惜しくも日本チーム,Cyclops Athlete Gamingのグループ突破がならなかった「レインボーシックス シージ」の世界トーナメントR6 Major,「スマッシュブラザーズ」や「ストリートファイターV」,そして「GUILTY GEAR -STRIVE-」などを楽しむ格闘ゲームコミュニティ(FGC),「フォートナイト」をプレイするDreamHack Open,そしてコミュニティやインフルエンサーが参加する「Fall Guys」のClashとなっている。
BYOC参加者のトーナメントは,何をプレイしてもオーケーだ。「Counter-Strike: Global Strike」には誰でも参加できる「メイン」のほか,16歳以下,30歳以上という年齢別での登録も可能。賞金は,正式なトーナメントほど多くはないが,メインのプライズプールとして2万クローネ(約39万円)が用意されているという。
今年のDreamHack Winterのモットーは,「Leave Planet Boring」で,意訳すると「この星を,退屈なまま置き去りにしてしまえ」というようなものだろうか。エキスポホールには,ハードウェアメーカーを中心とした,趣向を凝らしたブースが並んでいたり,自分のPCを持ってきていない人や,新しい機器を試してみたい人が,メーカーが提供するPCのテストプレイができる「フリーゾーン」などがある。
今年はパレード方式が採用されたコスプレ大会や,中継するインフルエンサーの姿を参加者が間近で見られる「クリエイターハブ」,カードゲームやテーブルトップゲームが楽しめる「テーブルトップアリーナ」,さらにはパネルディスカッションなども用意され,退屈することはない。
Altego,Basshunter,Elov & Benyなど,EDM(エレクトロニックダンスミュージック)系DJによるステージなど,ゲームカルチャー全般を祝う祭典としての趣向が強いのもDreamHackの大きな特徴だろう。
DreamHack Winter 2022は,まだ始まったばかりだ。2023年に日本でも開催されるとあって,多くのゲーマーが興味を持っているはずだが,今後,いくつかの記事に分けて,イベントの様子をレポートしていく予定だ。気になる人は,ぜひチェックしてほしい。
「DreamHack Winter 2022」公式サイト
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