中華圏や東南アジアが狙い目。NFTokyoの講演「世界を見据えた日本のWeb3ゲームプロジェクトが語るゲームビジネス」をレポート

　2023年6月22日，東京国際フォーラムでNFTカンファレンス「Non Fungible Tokyo 2023」（略称：NFTokyo2023）が開催された。2018年の「Tokyo Blockchain Game Conference」に端を発し，今回が6回目となるイベントで，ブロックチェーンに関連する多数の講演が行われた。

　本稿では，その中から「世界を見据えた日本のWeb3ゲームプロジェクトが語るゲームビジネス」の模様をお届けする。


　本講演には，MetapのCEOであるMaxi Kuan氏，double jump.tokyoの取締役COOである松谷幸紀氏，グリーのメタバース事業本部でHead Of Business Developmentを務める村田卓優氏が登壇した。モデレーターは，N.AvenueとCoinDesk Japanの代表取締役社長である神本侑季氏が務めた。

　まずは，スライドを使いながら事業の紹介が行われ，Maxi氏はMetapが運営する「元素騎士Online -META WORLD-」を紹介した。ウインライトが2008年にサービスを開始したMMORPG「エレメンタルナイツオンライン」を原作とするブロックチェーンゲームで，NFTや「Play to Earn（遊んで稼ぐ）」といった要素を備えている。
　最近では，ゲーム内の土地である「LAND」を販売し，ハウジング機能「GENSO Maker」も公開したとのこと。


　松谷氏は，double jump.tokyoが2018年にリリースした「My Crypto Heroes」を紹介した。同作は，NFTマーケットプレイス「OpenSea」において取引量の約8割を占めていた時代もあったそうだ。
　つづいて，スクウェア・エニックスと協業している「資産性ミリオンアーサー」や，セガのIPを使用してdouble jump.tokyoが開発する「三国志大戦BCG（仮）」，double jump.tokyoがメインデベロッパを務めるゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys」についても例示された。


　村田氏は，グリーのバリデーション事業を紹介したのちに，現在制作しているゲーム「INCURSION（インカージョン）」のビジュアルを初公開した。コンセプトはNFT Multiverse RPGで，NFTユーザーとWeb2のユーザーが交わるような場所にしたいとのことだ。

Metap CEO
Maxi Kuan氏

　それぞれの紹介が終わると，講演は神本氏が質問を投げかける形で進行し，元素騎士のユーザー属性がトークテーマとなった。
　Maxi氏は，地域ごとに違った楽しみ方があるが，日本はゲームを楽しみたい層と，投資で利益を得たい層が同じくらいだと説明した。同氏が普段暮らす台湾などの中華圏では投資目的の人が多く，「Axie Infinity」が流行したフィリピンではエンジョイ勢が多いのだという。
　つづいてMaxi氏は，従来のゲームバランスに加えて，マーケットにおけるトークンの価格やNFTの性能など，さまざまなバランスを取っていく必要がある難しさと，AIの時代におけるBOT対策の重要性について語った。

double jump.tokyo 取締役COO
松谷幸紀氏

　つぎにdouble jump.tokyoの話となった。松谷氏はグローバルの状況がベアマーケット（弱気相場）であることを指摘し，北米ではSEC（米国証券取引委員会）による規制が話題の中心で，NFTが証券だと言われてしまうと何もできないので，いま狙いたいのは中華圏や東南アジアであると語った。Maxi氏もそれに同意していた。
　また，松谷氏はAxie Infinityのスカラーシップによって慣れたユーザーが多いフィリピンでは，ゲームコミュニティによるボトムアップの動きが起こっており，重要な地域になっていると語った。
　村田氏が人口の多いインドのポテンシャルについて尋ねると，松谷氏は注目はしているものの現時点では届けられていないと答え，Maxi氏はこれから来るだろうと予想した。

グリー メタバース事業本部 Head Of Business Development
村田卓優氏

　そして，グリーのWeb3戦略がテーマとなった。村田氏によると，会社に事業部ができたのが1年前で，知識もなく，赤字事業として開発を続けるのが難しかった際に，バリデーション事業を始めたのだという。
　ブロックチェーンの運営に協力するバリデーション事業には，ブロックチェーンの知識を得られるメリットがあり，トークンベースで対価を受け取れることも事業の継続につながったそうだ。
　また，トークンの売上を円建てで計上することで，バックオフィスの経理担当者が暗号資産に慣れていったことも語られ，ゲームのリリースに向けた地盤としてのバリデーション事業を推奨していた。

N.Avenue・CoinDesk Japan 代表取締役社長
神本侑季氏（モデレーター）

　最後に，神本氏が「ゲームによるマスアダプションで重要になってくるポイント」を全員に質問した。

　Maxi氏は，Web3教育と従来のゲーマーに向けたプロモーションが必要だと語り，業界用語で「ラグプル」と呼ばれる持ち逃げ詐欺によって生まれた危険なイメージを払拭していきたいと述べた。

　松谷氏は，App StoreやGoogle Playといったインフラ面を指摘し，モバイルとスキャム（詐欺）への対策が鍵になるとした。
　また，ブロックチェーンゲームならではの要素であるコミュニティを活性化していくことも重要だと語った。

　村田氏は，半年でマスアダプションというのは難しいかもしれないが，1年以内なら起こりうると述べ，普通の人が日常で使うサービスにブロックチェーン技術が組み込まれるような世の中の動きを期待しつつ，ゲーム会社としては従来のゲームにないブロックチェーンゲームならではの魅力を発信していきたいと締めくくった。

「Non Fungible Tokyo 2023」公式サイト