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6月から日本でも発行・流通が可能に。WebXのセッション「日本でステーブルコイン解禁 暗号資産・金融業界はどう変わる?」をレポート
登壇したのは三菱UFJ信託銀行でプロダクト部門のバイスプレジデントを務める齊藤達哉氏,MZ Cryptosのディレクター白石陽介氏,アンダーソン・毛利・友常法律事務所に所属する弁護士の河合 健氏,そしてモデレーターを務めた片岡総合法律事務所に所属する弁護士の佐野史明氏だ。
セッションの内容をお伝えする前に,ステーブルコインについてあらためて整理しておきたい。まず暗号資産は,日本円などの法定通貨と比べて,はるかに高速かつ安価な手数料で送金できるというメリットがある。
一方で,法定通貨に換算した価格が変動しやすいというデメリットも存在する。最近のブロックチェーンゲームでよく使われているMATICを例に挙げると,過去1年間における1MATICの価格は78〜218円といった具合だ。これではガチャ1回の価格を300円くらいにしたいと思っても,何MATICに設定すればいいのか分からないだろう。
そしてステーブルコインとは,その名の通り価格が安定するように設計された暗号資産を表す。つまり,メリットを保持しながら,デメリットを解決した暗号資産なのだ。法定通貨に価格を連動させたものが一般的で,米ドルと連動したUSDTやUSDCがグローバルで普及している。
日本でも,2023年6月に施行された改正資金決済法でステーブルコインは「電子決済手段」に区分され,国内での発行・流通が可能となった。
最初に弁護士の河合氏が,改正資金決済法の概要を説明した。ステーブルコインの発行には銀行などのライセンスが必要になるという。
そしてモデレーターの佐野氏が,ステーブルコインがPayPayをはじめとする◯◯Payを置き換えるものなのか,ビジネス上のインパクトはどうなのかと齊藤氏に話を振った。
クロスボーダー(越境)は,海外にも一瞬で送金でき,仲介者に手数料を取られることもない特性を表し,日本と現地にそれぞれ中継銀行を必要とする銀行送金との大きな違いだという。
マルチカレンシー(複数通貨)は,ステーブルコインと連動させられる法定通貨は日本円に限らないということだ。銀行に為替手数料を取られずに,さまざまな通貨と日本国内で交換できる利便性が説明された。
そして,プログラマビリティ(自動化)は銀行のシステム面について。「勘定系システム」と呼ばれる既存のものは,外部からAPIでアクセスできないが,大手銀行にとってコストとリターンが釣り合わないので,整備される見通しもないそうだ。一方,ステーブルコインは勘定系システムにアクセスしないので,自動化が容易だという。
既存の決済サービスは会社ごとに開発しているので,ほかのサービスとの接続が難しいが,ブロックチェーンを使用する決済サービスは,同じチェーンや互換性のあるチェーンならば開発が標準化されているので,接続が実装しやすいとのこと。
また,ステーブルコインはデジタルコンテンツの購入など,実体経済に即した形でも使用できるので,これまで少なかったブロックチェーンのユースケースとして実績を積み,さらなる規制緩和につながることを期待しているそうだ。
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