企画記事
パズルゲーマーや受験生は要チェック! The New York Timesのタイトルは良作揃いで英語力アップも!?
アメリカの大手紙「The New York Times」(以下,NYT)のデジタル版は,一般のニュースだけでなく,スポーツ情報やゲーム,レシピといったコンテンツが新しい軸になっているらしい。ニュースとそれらを組み合わせたバンドル販売が好調で,もちろんゲームも有料購読者数の増加に一役買っているのだとか。
現在提供されているのは「The Mini」「The Crossword」「Spelling Bee」「Wordle」「Connections」「Letter Boxed」「Tiles」「Vertex」「Sudoku」といった9つのタイトル。いずれも,NYTのトップページからジャンプして遊べる,ブラウザベースのパズル系ゲームで,制限が付く場合もあるが無料でプレイ可能だ。
本稿では,これらの中から,クロスワードや数独といった多くの人が知っている定番ではなく,学生やビジネスパーソンが電車やバスの中でプレイしながら英語力を身に付けられそうな,英単語がテーマになっている4つのパズルタイトルをセレクトして紹介しよう。
表示は当然英語なので,翻訳・辞書サイトの力を借りながらチャレンジした。個人的な所感にはなるが,相対的な難度も添えてみたので,参考にしてほしい。
たった5文字と侮るなかれ。推理力がものを言う単語当て
Wordle
数年前,NYTが数億円でとある大人気ゲームを買収したというニュースを覚えている人はいるだろうか?
ニューヨークのブルックリン在住のソフトウェアエンジニア,Josh Wardle氏によって開発されたそのゲームの名は「Wordle」。日替わりで出題される5文字の単語を,6回の試行のうちに当てることが目的のパズルとなっている。
英単語推測ゲーム「Wordle」をThe New York Timesが買収。開発者のWardle氏は今後も運営に協力予定
The New York Timesは2022年1月31日,英単語推測ゲーム「Wordle」を,開発者のJosh Wardle氏より買収したことを明らかにした。「Wordle」は,5文字の英単語を,単語を入力することで得られるヒントを基に推測していくブラウザゲームだ。買収後もこれまで通り無料でプレイすることが可能だという。
- キーワード:
- OTHERS
- ニュース
- 編集部:Igarashi
日本では,本作にインスパイアされた個人制作ゲーム「POKEMON WORDLE」(外部リンク)が話題になったこともあり,そこから知った人が多いかもしれない。
ゲームは,まったく手がかりのない状態からスタートする。まずは,何でもいいので5文字の英単語を入力してみよう。すると,それらの文字の背景に色が付いた状態で表示されるはずだ。この色は正解に関するヒントになっていて,意味するところは以下の通り。
なので,上の画像の状況の場合,3行目には,
- 「L」から始まる
- 5マス目以外に「C」が入る
- 「A」「T」「E」「R」「O」「G」「I」の文字を含まない
という条件を満たした単語を入力して,さらに絞り込むのが基本となる。そうした作業を6行目まで繰り返すうちに,お題の単語を突き止める,というわけだ。
なお,条件を満たしていない(=正解の可能性がない)単語でも入力は可能だ。例えば3行目に「FLUSH」などを入れて,その5文字が正解に使われているかを確認することはできる。普段から英語を使っていないと,条件から単語を選ぶのは難しいと思うので,そんな人にはこの手が有効かもしれない。
もちろん「そういう“力押し”はちょっと……」と思ったら 自分で何かしらの制約をかけてもいいし,条件を満たした単語しか入力できないハードモードをプレイしてもいいだろう。
Wardle氏は当初このゲームを,パートナーや親類の間だけで楽しんでもらうものとして開発したという。それもあってか出題される5文字の英単語は非常にシンプルで,日本の中学生でも分かりそうな単語が多い印象。
だからといって,簡単に解けるだろうと決して侮るなかれ。たった5文字でも,文字そのものや位置すら確定していない状況から,わずか6回のチャンスの中でスマートに答えを導き出すには,名探偵のような推理力が必要になってくるのである。
ここまでの説明で気付いた人もいると思うが,使用頻度が高い母音(「A」「E」「I」「O」「U」)を複数含む単語を最初に入力するというのは,1つの効果的なテクニックだ。そんなふうに,自分なりの推理法を確立していく中で,英単語の性質のようなものを少しずつつかんでいくこともできそうだ。
英語力(英単語の語彙) | ★ |
パズル力(推理・推測) | ★★ |
初手の運 | ★★ |
Wordle
目指せパングラム! 7つの文字で単語を作れ
Spelling Bee
Spelling Beeは,限られた数のアルファベットを使って,英単語をいくつ捻り出せるかに挑むパズルだ。六角形のマスが蜂の巣のように7つ並んでいて,その中に書かれた7文字をどう組み合わせて単語にするか,知恵を絞る。
単語に求められる,まず押さえておくべき条件は,
- 4文字以上である
- 中央の黄色のマスにある字が使われている
という2つ。これに気を付けながら,頭に浮かんだ単語を入力していこう。文字の配置が変わると急に新たな単語を閃くこともあるので,下にあるシャッフルボタンはどんどん活用するといい。
もちろん,好成績を狙うなら大きなポイントが獲得できる単語を考える必要がある。
最低条件である4文字の単語で得られるのは1ポイントだけだが,5文字以上の単語からは1文字につき1ポイント換算に。さらに,表示中の7文字すべてを使った英単語「パングラム」を見つけ出せたら,文字数に加えて7ポイントのボーナスを手に入れることができるのだ。
接頭辞や接尾辞になる文字が蜂の巣の中に含まれている日はチャンス。例えば,「Mount」なら「Unmount」,「Get」なら「Getting」という長めの単語を容易に追加することができる。
あるいは,もし「Tact」のような単語を見つけたなら,同じ名詞の「Tactic」や形容詞の「Tactical」,副詞の「Tactically」といった言葉が作れないか試してみるといい。楽をして文字数を稼げることもあるからだ。同時に,これまで忘れかけていた派生語の存在を思い出すこともできるだろう。
英語力(英単語の語彙) | ★ |
パズル力(推理・推測) | ★ |
派生力 | ★★★ |
Spelling Bee
アメリカンカルチャーへの理解が深まりそうな曲者パズル
Connections
「Connections」は2023年6月にリリースされて人気となったタイトルで,Googleが発表した年間検索ランキングのゲーム部門で3位に入っている。今回紹介中の4つのうち3つのパズルは,推測や閃き,ときには運の力で隠されている単語を見つけ出していくものだが,Connectionsは少し趣が異なり,最初から単語が明らかになっている。
Googleが2023年の検索ランキングを発表。日本のビデオゲームカテゴリで「ホグワーツ」「ティアキン」を抑えて1位となったのは……
Googleは2023年12月11日,2023年の検索ランキングを発表した。4Gamer読者が気になるゲームのカテゴリーを見てみると,全世界でトップとなったのは「Hogwarts Legacy」で,「The Last of Us」「Connections」が続いている。国内ランキング1位は,9月に突如ブレイクしたあのゲームだ。
では何をするのかというと,16個ある単語を4個ずつの4グループ(簡単なほうから黄・緑・青・紫の難度順で色分けされている)に分類すること,言い換えると単語の共通点を見つけることが,このパズルの目的。ミスできるのは4回までだ。
当初,あらかじめ単語が分かっているConnectionsはハードルが低そうに見えたのだが,プレイしているうちに「曲者」だと気付かされることになった。
ある日,「MOP」(ぞうきん)や「SPONGE」(スポンジ)といった単語から「掃除」という黄色グループを当てることができた筆者は,意気揚々と次に取りかかった。
目についたのは「SALT」(塩)」や「PEPPER」(胡椒)。これは「調理」関係だと直感し,さらに「SMOKE」は燻製,「ACID」は酸味だと自信満々で4つを選別してみたのだが,まさかの不正解。
答えを調べてみると,「PEPPER」は「くしゃみ」に関連するグループに分けられていたのだった。
全体を見ずに先走りすぎたことも確かにあったのだが,こんなふうに,16の単語の中には複数のグループに当てはまる言葉が潜んでいて,巧みに遊び手を惑わせてくるのである。
また,単語の意味が分かっていても,それをつなげるうえで「文化の壁」を感じることもあった。
「CIRCLE(円)」「HORSESHOE(蹄鉄)」「PITCHFORK(熊手)」「TRIANGLE(三角形)」といった言葉が示されたなら,どんなグループを連想するだろうか?
正解はギリシャ文字(大文字)の形。順に「Ο(オミクロン)」「Ω(オメガ)」「Ψ(プサイ)」「Δ(デルタ)」ということだろうか。答えが分かるとなるほどと思えるが,日本に長くいるとこうした発想自体がそもそも出にくい。紫グループなので,アメリカで生活している人にとってもトリッキーな問題だったのかもしれないが。
単語の意味がひとつだけ分かっても十分ではなく,得手不得手はあるかもしれないが,そこに西洋,特にアメリカに根付いた文化的知識や雑学なども求められるという,ひと捻りが加えられたパズルだった。
英語力(単語の深い知識) | ★★★ |
パズル力(推理・推測) | ★★★ |
西洋文化の知識 | ★★★ |
Connections
Spelling Beeのレベルアップ版的な雰囲気の英語しりとり
Letter Boxed
最後に紹介するLetter Boxedは,正方形の各辺に3個ずつ,計12個並べられた文字で単語を作るゲーム。ただし,12の文字を必ず1度は使う必要があり,作れる単語の数は限られている。Spelling Beeと同じ担当者が関わっているためか,Spelling Beeがレベルアップしたような雰囲気がある。
大前提となっているルールは,
- 3文字以上の単語を作る(作れる単語数は日ごとに変わる)
- 同じ辺にある文字を続けて入力することはできない
- 単語の最後の文字は次の単語の最初の文字になる
- 12文字すべてを一度は使用しなければならない
という4つ。特にLetter Boxedならではと思われるのは3つめのルールで,つまるところ英語版の「しりとり」だといえば分かりやすいだろう。
日本では誰もが親しんでいるしりとりだが,どうも英語圏ではかなりマイナーな言葉遊びらしい。その理由の1つは,単語の始まりや終わりで使われる文字に大きな偏りがあることのようだ。
少し遊んでみると,例えば「y」で終わる単語は多いのに対して,そこからつながる「y」から始まる単語は少なく感じる。確かにこれは対戦ゲームとしてみるとバランスが悪そうだ。
なお,日本のしりとりでゲームオーバーになる「ん」は,英語の場合「x」らしい。
そういったこと考えると,基本としては始まりと終わの文字に注意して単語を作ったほうがいい,ということになる。
そんなわけで,この日は,なんとなく使いどころが少なそうに思える「Q」を先に潰す作戦でいくことに。画面左に表示されている「Try to solve in 6 words」というのは,6単語をつくる間にすべての文字を使わなければならない,という日替わりの条件だ。単語数をオーバーしてしまうと,リトライを促す画面が表示される。
再挑戦を繰り返しつつ,何とかギリギリ6単語に収めてクリア。続いてほかのプレイヤーがどんな答えを出しているか調べてみると,「OVERSTOCK」(供給しすぎる)「KUMQUAT」(金柑)というたった2つの単語でクリアしている最適解を発見。KUMQUATという英単語は初めて知りました。いやあ勉強になるなあ。
6ワードでのクリアを目指すなら,多くの文字を含む単語をなんとか1個見つけ,その後は3文字や4文字の単語で切り抜けることもできそうだ。2ワードでのクリアは辞書を引きながらでもかなり難しいので,どのレベルを目標とするか,自身に合った遊び方を選ぼう。2ワードでクリアできるようになる頃には,語彙が格段に増えているに違いない。
英語力(語彙の多さ) | ★★ |
パズル力(推理・推測) | ★★ |
あきらめない心 | ★★ |
Letter Boxed
ブラウザゲームの大きな利点の1つは,インストールすることなしに,例えば家ではPC,外ではスマホ,とフレキシブルに遊べる気軽さ。けれどもNYTでは,そんないつでもどこでも遊べる&学べるコンテンツを,世界中の誰もが1日に同じ1つだけしか遊べないスタイルにしたというのが面白い。
今回紹介したNYTのタイトル以外にも,「GeoGuessr」や「漢字でGO!」などといった,“学びや頭の体操”につながるタイプのブラウザゲームへの関心やニーズが,近年なんとなく高まっているように感じる。
数を必死にこなすのではなく,ひとつとじっくり向き合ったゲームプレイは,個人的にはなんだか久しぶりのことだった。そして,1日かけてギリギリまで考えた答えは,それが自力で解いたものであれ,辞書を調べて得たものであれ,強く記憶に残るもの。筆者は忘れることはないだろう,KUMQUATのことを(当面の間は)。
- この記事のURL: