レビュー
これは紛れもないMOBAゲーマー向けマウスだ
G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse
製品名からもすぐ分かるように,G302はMOBA向けとされる製品だ。「League of Legends」の有名プレイヤーであるTeam SoloMidのJason
Logitech G/Logicool Gにとって,推奨ゲームジャンルが製品名に提示されるマウスは,「G600 MMO Gaming Mouse」以来。MOBA向けマウスは初となるが,そのポテンシャルはどれほどあるだろうか。発売から少し経ってしまったが,製品を入手できたので,検証していきたい。
Delta Zeroセンサーを採用するG302
メインボタンは速さと安定感が秀逸
●G302の主なスペック
- 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
- ボタン数:6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,スクロールホイール手前×1,左サイド×2)
- トラッキング速度:最大120IPS(≒3m/s)
- 最大加速度:最大20G
- 画像処理能力:未公開
- フレームレート:未公開
- DPI設定:240〜4000DPI(80DPI刻み)
- USBレポートレート(ポーリングレート):125/250/500/1000Hz
- データ転送フォーマット:16bit
- スリープモード:あり(1〜60分の中で選択。デフォルトは30分)
- 本体実測サイズ:65(W)×115(D)×37(H)mm
- 重量:約127g(※ケーブル含む),約86g(※ケーブル抜き)
- マウスソール:動摩擦係数 −μ(K)0.1,静止摩擦係数 −μ(S)0.15
- ケーブル長:2.1m
- 製品保証:2年間
Logitech/ロジクールは,Gxx2系でデザインコンセプトをそれまでから一新し,共通の,近未来的なルックスを採用した。G302も基本的にはその路線だ。ただ,比較的低価格市場向けということもあってか,ゴテゴテした感はない。
そのシルエットからして左右両手用に見えるのだが,サイドボタンは左側面にしか用意されていないため,冒頭で紹介したとおり,右手用ということになる。
左右メインボタンは中央部がわずかに凹んでいる |
ボタンを押し込んだ後,力を抜いた瞬間に独特な押し返しの力が働く |
そのクリック感は非常に良好で,とにかく押し返しが素晴らしい。2000万回の押下に耐えるとされるスイッチに,金属バネを用いたテンションを組み合わせることによって,押下感と反応速度を最適化してあるとのことだが,スイッチとボタンユニットの押し返す力のみに頼っている一般的なゲーマー向けマウスと比べて,押し返しの速さは,「数段」というレベルで向上している印象だ。FPSのタップ撃ち(※フルオートの銃を,数発ずつ区切って撃つ操作)との相性が,すこぶるいい。
また,押下したとき,しっかり戻ってくる安心感も高いといえる。MOBAのプレイヤーはゲーム中,ひたすら右クリックを叩き続けることになるわけだが,そういった操作を安定して繰り返せるあたりは,伊達にMOBA向けを名乗ってはいない,といったところか。さすがに耐久試験を行ったわけではないが,常識的に考えて,金属バネは,右クリックを連打し続けたときの耐久性にもプラスの影響を与えているはずだ。
センタークリックは,“誤爆”を防ぐためだと思うが,左右メインボタンと比べると若干硬めだ。
なお,サイドボタンは本体側面から約1mm突き出ているため,本体を握ろうとしてうっかり押してしまう心配はない。
マウス後方側のボタンは,側面のデザインに合わせる形で,手前側が膨らんでいる |
サイドボタンを上から見たところ。約1mm突き出た感じになっている |
見た目どおりの握りやすさ
「かぶせ持ち」以外なら問題なく使える
前段でも触れたとおり,G302の形状はとても個性的で,持ち方を左右しそうであることが容易に想像できる。というわけで,恒例となった4パターンの持ち方で,持ちやすさをチェックしてみることにした。
逆に言うと,小指と薬指をベタ置きしないような持ち方であれば,形状そのものが違和感につながることはなく,問題なく使える。以下,「つまみ持ち」や「つかみ持ち」,つかみとかぶせのハイブリッドである筆者独自の「BRZRK持ち」ともども写真と短評をまとめておくので,参考にしてもらえればと思う。
LGSは「いつもどおり」
間口は狭いが,使い勝手はまずまず
Logitech/ロジクール製ゲーマー向けマウスの伝統を引き継ぎ,G302も,基本的にはWindowsのクラスドライバで動作する,いわゆるドライバレス仕様のマウスだが,実力を100%発揮させるには,「Logicoolゲームソフトウェア」(英語では「Logitech Gaming Sofware」,以下 LGS)をロジクールのサイトからダウンロードして導入する必要がある。
LGSは,シンプルで,慣れれば使いやすい一方,いきなり「オンボードメモリ」と「自動ゲーム検出」という,動作モードの選択を求められるという“間口の狭さ”を持つツールなのだが,それはG302でも変わらずだ。
このうち,より多くの人に向いているのは,フル機能を利用できる動作モードとなる「自動ゲーム検出」のほうだ。こちらでは,センサー関連だけでなく,ボタンへの機能割り当ても行って,それをプロファイルとして保存し,ゲームなどのアプリケーションを実行したとき,自動的に切り替えるよう設定できる。
フラッシュメモリに保存したのであれば,設定内容はLGS未導入のPCでも利用できるのではないか,と思うかもしれないが,結論から言うとそういう使い方はできない。あくまでも一部のタイトルに向けたセーフモード的な動作モードだと理解してほしい。
なお,G302のテストで用いた8.57.145版LGSには,「どのボタンをどれだけ利用しているのか」が分かるヒートマップ機能が追加されている。マウスのボタンに,選択肢として用意されている「入力分析を開始/一時停止」機能を割り当てれば,あるゲームのプレイ中,一定時間内の操作をチェックできるのだが,それによって何かを分析できる気はせず,正直,使い道は見当たらなかった。
LEDの設定変更メニュー。Gロゴと側面LEDそれぞれに対して設定できる。スライダー操作で消灯も可能 |
「設定」メニューから「G302」タブを選択。直線補正関連の項目は用意されていなかった |
センサー性能は価格相応
少なくとも上位モデルなみの挙動は期待できない
本稿の序盤で指摘したとおり,Delta Zeroというセンサー名はあくまでもブランドの名称であって,G302の光学センサーが持つ特徴を100%説明できているとはいえない。では,実際のところ,どういう挙動を示すだろうか。下に示したテスト環境とマウス設定で,G302を使ってみよう。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスのレシーバーはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:91.0.7
- LGSバージョン:8.57.145
- DPI設定:240〜4000 DPI(主にデフォルト設定の1600 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
テスト結果 | |
---|---|
ARTISAN 隼XSOFT(布系) | 1.8mm |
ARTISAN 疾風SOFT(布系) | 2.1mm以上 |
ARTISAN 飛燕MID(布系) | 2.1mm以上 |
Logicool G440(プラスチック系) | 2.1mm以上 |
Logicool G240(布系) | 2.1mm以上 |
Razer Destructor 2(プラスチック系) | 2.1mm以上 |
Razer Goliathus Control Edition(布系) | 2.1mm以上 |
Razer Goliathus Speed Edition(布系) | 2.1mm以上 |
Razer Manticor(金属系) | 1.4mm |
SteelSeries 9HD(プラスチック系) | 2.1mm以上 |
SteelSeries DeX(布系) | 2.1mm以上 |
SteelSeries QcK(布系) | 2.1mm以上 |
ZOWIE G-TF Speed Version(布系) | 2.1mm以上 |
ZOWIE Swift(プラスチック系) | 2.1mm以上 |
では,センサー性能そのものはどうだろうか。「MouseTester」を使った検証を行ってみよう。ここではマウスパッドとしてマウスパッドにARTISAN 隼XSOFTを組み合わせたうえで,レポートレートを1000Hzに固定し,DPI設定を400
グラフは,Y軸のプラス方向が左への移動,マイナス方向が右への移動時におけるそれぞれカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示す。青い点が実際のカウント,青い波線はそれを正規化したものとなるため,波線が上に乗っかっていればいるほどセンサーの性能が良好だということになる。それを踏まえて,5枚のグラフを見比べてもらえればと思う。
全体として,「美しい波形」とは言いがたい。なんというか,実勢価格5000円以下のマウスらしい,価格相応の結果,といったところだろうか。
最後に,直線補正周りをチェックしてみたい。
LGSを紹介した段ではあえて触れなかったが,G302のLGSには直線補正に関するチェックボックス「アングルスナップを有効にする」が用意されていない。そのため,テストしての体感を語るしかないのだが,Windows標準の「ペイント」を使ってチェックした限り,分かりやすいレベルでの直線補正は無効化されているという理解でいいのではないかと思う。
実際にゲームをプレイしてみても,操作中,“持って行かれる”ような挙動はなかったので,無効か,限りなく無効に近い状態になっているはずだ。
光学センサー自体はG402と同じ
テンションシステムはメインボタンと一体化
ひととおりのテストを終えたところで,G302を分解してみよう。
G302は,底面のマウスソールを剥がし,そこに隠れているネジ計3本を取り外すと,上面カバーを取り外せるようになっている。
メイン基板は,本体底面にある3点のネジで,底板に固定されている。左サイドボタン用のサブ基板は,側板部に用意されたU字状のガイドに差さったような感じで固定されていた。
というわけで取り出してみると,基板中央の光学センサーは,G402に搭載されていたのと同じ小型タイプなのが分かる。刻印も変わらず「AM010」なので,センサー自体はG402と同じものという理解でよさそうである。
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
製品名に偽りなし。これは紛れもない
MOBAゲーマー向けマウスだ
人によっては硬すぎるという印象を得るかもしれないので,万人向けかというと多少なりとも疑問は残るのだが,個人的には試す価値のある仕様だと思う。
握りやすさは,形状の割にはまずまずで,かぶせ持ちさえ諦めれば,だいたいはなんとかなるのではなかろうか。
なかなか評価の難しいセンサーだが,リフトオフディスタンスは多くで2.1mm以上となり,操作時の挙動にも少々怪しい部分が見られる。「遠くに見える,せいぜい数ドットという敵を的確に狙う」ような操作が求められるFPS用としては,正直,厳しい印象である。“ガチ”のFPSプレイヤーで,かつ,低センシでプレイしているような人に,G302は勧められない。
しかし,ここで重要なことは,G302がMOBA向けのマウスであることだ。FPSと異なり,そこまで細かなエイミングが求められないMOBAにおいては,センサー周りの弱点をそれほど気にすることなく,メインボタンの素晴らしい挙動を味わえる。そう,G302は製品名どおり,MOBAプレイヤーこそが手を出すべきマウスなのである。
気になる実勢価格は4300〜5400円程度(※2014年12月27日現在)と,まずまず手頃だ。長く使えるMOBA用マウスを探している人や,この正月休みにがっつりMOBAで遊びたい人なら,試してみる価値があるだろう。
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ロジクールのG302製品情報ページ
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Logitech G/Logicool G
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