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「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
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印刷2014/12/27 00:15

レビュー

これは紛れもないMOBAゲーマー向けマウスだ

G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse

Text by BRZRK


G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse(国内製品名:G302 MOBAゲーミングマウス)
メーカー:Logitech
問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター 電話:050-3786-2085(平日9:00〜19:00)
実勢価格:4300〜5400円程度(※2014年12月27日現在)
画像集#002のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 ゲーマー向け周辺機器ブランド「Logicool G」(日本以外では「Logitech G」)から,右手用のワイヤードマウス「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」(国内製品名:G302 MOBAゲーミングマウス,以下 G302)が,11月に国内発売となった。
 製品名からもすぐ分かるように,G302はMOBA向けとされる製品だ。「League of Legends」の有名プレイヤーであるTeam SoloMidのJason“WildTurtle”Tran選手が開発に協力しているという。

 Logitech G/Logicool Gにとって,推奨ゲームジャンルが製品名に提示されるマウスは,「G600 MMO Gaming Mouse」以来。MOBA向けマウスは初となるが,そのポテンシャルはどれほどあるだろうか。発売から少し経ってしまったが,製品を入手できたので,検証していきたい。


Delta Zeroセンサーを採用するG302

メインボタンは速さと安定感が秀逸


北米市場における愛称は「Daedalus Prime」(ダイダロスプライム)。命名の意図はよく分からない
画像集#003のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 Logitech/ロジクールは,現行のGxx2系マウスで共通して,PixArt Imaging製のオーダーメイドモデルとなる光学センサーを搭載し,それに「Delta Zero」(デルタゼロ)という名を与えている。Delta Zeroセンサーというのは特定の個体を指すものではなく,半ばブランド名のようなもので,実際にはマウスごとにスペックが異なるのだが,それを踏まえつつ,まずはDelta Zeroセンサーを採用する基本G302のスペックを以下のとおり確認しておきたい。

●G302の主なスペック
  • 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
  • ボタン数:6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,スクロールホイール手前×1,左サイド×2)
  • トラッキング速度:最大120IPS(≒3m/s)
  • 最大加速度:最大20G
  • 画像処理能力:未公開
  • フレームレート:未公開
  • DPI設定:240〜4000DPI(80DPI刻み)
  • USBレポートレート(ポーリングレート):125/250/500/1000Hz
  • データ転送フォーマット:16bit
  • スリープモード:あり(1〜60分の中で選択。デフォルトは30分)
  • 本体実測サイズ:65(W)×115(D)×37(H)mm
  • 重量:約127g(※ケーブル含む),約86g(※ケーブル抜き)
  • マウスソール:動摩擦係数 −μ(K)0.1,静止摩擦係数 −μ(S)0.15
  • ケーブル長:2.1m
  • 製品保証:2年間

センサーは中央付近の配置。ソールは本体前側と後側にそれぞれ1枚ずつ,形状が異るものが貼り付けられている
画像集#004のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 型番的にG302の一世代前となる2011年発売の光学センサー搭載モデル「Gaming Mouse G300」(後に「Optical Gaming Mouse G300」へ改名,以下 G300)だとトラッキング速度が150IPS,最大加速度が20Gだったので,スペックは若干大人しくなっているといえるだろう。

 Logitech/ロジクールは,Gxx2系でデザインコンセプトをそれまでから一新し,共通の,近未来的なルックスを採用した。G302も基本的にはその路線だ。ただ,比較的低価格市場向けということもあってか,ゴテゴテした感はない。

本体右側面にサイドボタンは用意されない
画像集#005のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 本体サイズは実測65(W)×115(D)×37(H)mmと小振り。面白いのは,真上から見て菱形っぽい六角形的な形状になっており,本体前後中央付近が膨らんでいることだ。G300も含め,Logitech G/Logicool Gのマウスは本体前後中央部が多少なりとも凹むタイプが主流なので,これほどまでに膨らむのは珍しいということになるだろう。
 そのシルエットからして左右両手用に見えるのだが,サイドボタンは左側面にしか用意されていないため,冒頭で紹介したとおり,右手用ということになる。

4Gamerの比較用リファレンスマウス「Gaming Mouse G500」と並べてみたところ。二回りほどG302のほうが小さく見える
画像集#006のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった 画像集#007のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
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左右メインボタンは中央部がわずかに凹んでいる
画像集#009のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
ボタンを押し込んだ後,力を抜いた瞬間に独特な押し返しの力が働く
 左右メインボタンはGxx2系の共通仕様となるセパレートタイプ。指を自然に配置できるよう,ボタンの表面にはわずかな凹みが用意されている。
 そのクリック感は非常に良好で,とにかく押し返しが素晴らしい。2000万回の押下に耐えるとされるスイッチに,金属バネを用いたテンションを組み合わせることによって,押下感と反応速度を最適化してあるとのことだが,スイッチとボタンユニットの押し返す力のみに頼っている一般的なゲーマー向けマウスと比べて,押し返しの速さは,「数段」というレベルで向上している印象だ。FPSのタップ撃ち(※フルオートの銃を,数発ずつ区切って撃つ操作)との相性が,すこぶるいい。

 また,押下したとき,しっかり戻ってくる安心感も高いといえる。MOBAのプレイヤーはゲーム中,ひたすら右クリックを叩き続けることになるわけだが,そういった操作を安定して繰り返せるあたりは,伊達にMOBA向けを名乗ってはいない,といったところか。さすがに耐久試験を行ったわけではないが,常識的に考えて,金属バネは,右クリックを連打し続けたときの耐久性にもプラスの影響を与えているはずだ。

画像集#011のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 スクロールホイールは横幅実測7.5mmで,ラバーコート仕様。とくにそうだと明言されているわけではないが,Gxx2系の「G402 Hyperion Fury Ultra-Fast Gaming Mouse」(以下,G402)や「G602 Wireless Gaming Mouse」で採用されているホイールと同じ,もしくは近い仕様のものではないかと思う。
 センタークリックは,“誤爆”を防ぐためだと思うが,左右メインボタンと比べると若干硬めだ。

画像集#012のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 左サイドボタンは左側面にあるサイドボタンは左メインボタンとその後方に続く上面カバーに寄り添うような形で配置されている。その実測サイズは奥側(=左メインボタン側)が長さ約17mmで幅約4mm,手前側(=マウス後方側)は長さ約17.5mmで幅が4.5〜7.5mm程度だった。
 なお,サイドボタンは本体側面から約1mm突き出ているため,本体を握ろうとしてうっかり押してしまう心配はない。

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マウス後方側のボタンは,側面のデザインに合わせる形で,手前側が膨らんでいる
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サイドボタンを上から見たところ。約1mm突き出た感じになっている

ちなみにこちらはケーブル。ビニール皮膜製で,太さは実測約3.3mmある。G402のケーブルと同じではないかと思う。折り畳んだ状態で製品ボックスに押し込まれていたりしないため,使い始めに変なクセを感じたりはしない
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見た目どおりの握りやすさ

「かぶせ持ち」以外なら問題なく使える


 前段でも触れたとおり,G302の形状はとても個性的で,持ち方を左右しそうであることが容易に想像できる。というわけで,恒例となった4パターンの持ち方で,持ちやすさをチェックしてみることにした。

日本人にしては手の大きめな筆者だと,かぶせ持ち時,小指と薬指の第二関節が側面の凸部分よりも手前側に配置されてしまい,第一関節側が浮いて,妙な力がかかってしまう
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 その結果はというと,一般に小型マウスは「かぶせ持ち」との相性が悪いのだが,御多分に漏れず,G302も「かぶせ持ち」はキツい。マウスを覆うように持ったとき,伸ばした小指と薬指をマウスに配置できないため,これがストレスになるのだ。
 逆に言うと,小指と薬指をベタ置きしないような持ち方であれば,形状そのものが違和感につながることはなく,問題なく使える。以下,「つまみ持ち」や「つかみ持ち」,つかみとかぶせのハイブリッドである筆者独自の「BRZRK持ち」ともども写真と短評をまとめておくので,参考にしてもらえればと思う。

画像集#018のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
つまみ持ちの例。サイドボタンへのアクセスに若干難はあるが,これはつまみ持ちの宿命。持ちやすく,操作もしやすい
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つかみ持ちの例。手のひらの手首側をマウス後部にしっかり設置すると持ちやすく,サイドボタンの操作も難なく行える
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かぶせ持ちの例。上で指摘したとおり,小指と薬指をうまく配置できず,それがストレスになってしまう。小型マウスの常ではあるのだが,かぶせ持ちでの利用には不向きと考えたほうがいい
画像集#021のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
BRZRK持ちの例。人差し指と中指をベタ置きするのではなく,第二関節を少し浮かせるように持つとベター。このとき,手をマウスの左手前(=左後部)から持つようにするとグリップ力がかなり増す

本体側面奥側のザラついた滑り止め加工
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 本体両側面の奥側(=左右メインボタン側)側面には,少しザラついた滑り止め加工がなされており,ここに親指や薬指,小指などを立てて持つとグリップが増す。対する後方側は,LEDの光が漏れるパンチ穴を,光沢の透明なアクリル板が覆うような感じになっており,つかみ持ちのときに手のひらで握り込むように持つと,面でしっかり捉えることができるようになる。

本体後方側から
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LGSは「いつもどおり」

間口は狭いが,使い勝手はまずまず


 Logitech/ロジクール製ゲーマー向けマウスの伝統を引き継ぎ,G302も,基本的にはWindowsのクラスドライバで動作する,いわゆるドライバレス仕様のマウスだが,実力を100%発揮させるには,「Logicoolゲームソフトウェア」(英語では「Logitech Gaming Sofware」,以下 LGS)をロジクールのサイトからダウンロードして導入する必要がある。

 LGSは,シンプルで,慣れれば使いやすい一方,いきなり「オンボードメモリ」と「自動ゲーム検出」という,動作モードの選択を求められるという“間口の狭さ”を持つツールなのだが,それはG302でも変わらずだ。

LGSのメインメニュー。いきなり「オンボードメモリ」か「自動ゲーム検出」のどちらかを選ばされるという不親切さは相変わらずだ。なお,Gxx2系の上位モデルである「G502 Proteus Core Tunable Gaming Mouse」で用意される,非常に優れたサーフェスキャリブレーション機能は,残念ながらG302だと利用できない
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 このうち,より多くの人に向いているのは,フル機能を利用できる動作モードとなる「自動ゲーム検出」のほうだ。こちらでは,センサー関連だけでなく,ボタンへの機能割り当ても行って,それをプロファイルとして保存し,ゲームなどのアプリケーションを実行したとき,自動的に切り替えるよう設定できる。

「自動ゲーム検出」を選ぶと,LGSの全機能を利用可能。ボタン周りの設定とセンサー周りの設定は別メニューに分かれる
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「オンボードメモリ」を選ぶと,基本的な項目のみを設定可能になり,ボタン周りとセンサー周りの設定が1つにまとまる
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 一方の「オンボードメモリ」は,一部のオンラインゲームに代表される「外部ツールの利用が規約で禁じられたタイトル」向けのセーフモード的な設定項目で,センサー周りの基本的な項目のみマウス側のフラッシュメモリに保存し,規約に違反しない範囲でG302の機能を使う動作モードとなる。
 フラッシュメモリに保存したのであれば,設定内容はLGS未導入のPCでも利用できるのではないか,と思うかもしれないが,結論から言うとそういう使い方はできない。あくまでも一部のタイトルに向けたセーフモード的な動作モードだと理解してほしい。

 なお,G302のテストで用いた8.57.145版LGSには,「どのボタンをどれだけ利用しているのか」が分かるヒートマップ機能が追加されている。マウスのボタンに,選択肢として用意されている「入力分析を開始/一時停止」機能を割り当てれば,あるゲームのプレイ中,一定時間内の操作をチェックできるのだが,それによって何かを分析できる気はせず,正直,使い道は見当たらなかった。

マウス上にあるボタンのどれかに「入力分析を開始/一時停止」を割り当てると,ゲーム中にどのボタンをよく使うかチェックできるようになる。ちなみにこの機能は,確認したところ,最新世代のLGSを導入済みなら,Gxx2系の上位モデルでも利用できるようだった
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画像集#045のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
LEDの設定変更メニュー。Gロゴと側面LEDそれぞれに対して設定できる。スライダー操作で消灯も可能
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「設定」メニューから「G302」タブを選択。直線補正関連の項目は用意されていなかった

Gロゴと側面の明るさを揃えつつ,スライダーで明るさを調整したところ。左が最大輝度,右が最小輝度(※消灯より1段だけ明るい状態)だ。最大輝度近辺は相当眩しい
画像集#027のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった


センサー性能は価格相応

少なくとも上位モデルなみの挙動は期待できない


 本稿の序盤で指摘したとおり,Delta Zeroというセンサー名はあくまでもブランドの名称であって,G302の光学センサーが持つ特徴を100%説明できているとはいえない。では,実際のところ,どういう挙動を示すだろうか。下に示したテスト環境とマウス設定で,G302を使ってみよう。

●テスト環境
  • CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
  • マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
    ※マウスのレシーバーはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結
  • メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
  • グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
  • ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
  • サウンド:オンボード
  • OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1

●テスト時のマウス設定
  • ファームウェアバージョン:91.0.7
  • LGSバージョン:8.57.145
  • DPI設定:240〜4000 DPI(主にデフォルト設定の1600 DPIを利用)
  • レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
  • Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
  • Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効

画像集#028のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 まずは,「マウスを持ち上げたとき,センサーの反応が止まる距離」であるリフトオフディスタンスを計測しよう。ここでは,厚さの異なるステンレスプレートを重ねながら,マウスパッドごとのリフトオフディスタンスを計測している。その結果がで,「ARTISAN 隼XSOFT」と「Razer Manticor」以外は軒並み2.1mm以上という結果が出ている。チューンされていない光学センサーにありがちな結果だ。

表 G302のリフトオフディスタンス検証結果
テスト結果
ARTISAN 隼XSOFT(布系) 1.8mm
ARTISAN 疾風SOFT(布系) 2.1mm以上
ARTISAN 飛燕MID(布系) 2.1mm以上
Logicool G440(プラスチック系) 2.1mm以上
Logicool G240(布系) 2.1mm以上
Razer Destructor 2(プラスチック系) 2.1mm以上
Razer Goliathus Control Edition(布系) 2.1mm以上
Razer Goliathus Speed Edition(布系) 2.1mm以上
Razer Manticor(金属系) 1.4mm
SteelSeries 9HD(プラスチック系) 2.1mm以上
SteelSeries DeX(布系) 2.1mm以上
SteelSeries QcK(布系) 2.1mm以上
ZOWIE G-TF Speed Version(布系) 2.1mm以上
ZOWIE Swift(プラスチック系) 2.1mm以上

 では,センサー性能そのものはどうだろうか。「MouseTester」を使った検証を行ってみよう。ここではマウスパッドとしてマウスパッドにARTISAN 隼XSOFTを組み合わせたうえで,レポートレートを1000Hzに固定し,DPI設定を400/800/1600/3200/4000DPIの5段階に切り替えながら,挙動を追うことにした。その結果が下のグラフ5点だ。
 グラフは,Y軸のプラス方向が左への移動,マイナス方向が右への移動時におけるそれぞれカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示す。青い点が実際のカウント,青い波線はそれを正規化したものとなるため,波線が上に乗っかっていればいるほどセンサーの性能が良好だということになる。それを踏まえて,5枚のグラフを見比べてもらえればと思う。

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400DPI設定時。マウスの振り方向を変えるときの減速時に,カウントが大きく乱れている。中には飛び飛びになってしまっているものもあり,安定しているとは少々言い難い印象だ。直線部分は良好
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800DPI設定時。青い点の乱れ具合が400DPI設定時よりも顕著だ。というか,折り返し時の乱れがひどい
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1600DPI設定時。「400DPIや800DPI設定時よりは多少マシになった」とはいえるが,やはり減速時の乱れが気になる
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3200DPI設定時。折り返し時,グラフでは頂点付近で点の乱れが増したように見える
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4000DPI設定時。やはり折り返し時の点が飛んでいる。全体的に見ても折り返し時の飛び方が目立つので,急制動に弱いのは一目瞭然だ

 全体として,「美しい波形」とは言いがたい。なんというか,実勢価格5000円以下のマウスらしい,価格相応の結果,といったところだろうか。

 最後に,直線補正周りをチェックしてみたい。
 LGSを紹介した段ではあえて触れなかったが,G302のLGSには直線補正に関するチェックボックス「アングルスナップを有効にする」が用意されていない。そのため,テストしての体感を語るしかないのだが,Windows標準の「ペイント」を使ってチェックした限り,分かりやすいレベルでの直線補正は無効化されているという理解でいいのではないかと思う。
 実際にゲームをプレイしてみても,操作中,“持って行かれる”ような挙動はなかったので,無効か,限りなく無効に近い状態になっているはずだ。

直線補正の有無をチェックした結果
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光学センサー自体はG402と同じ

テンションシステムはメインボタンと一体化


 ひととおりのテストを終えたところで,G302を分解してみよう。
 G302は,底面のマウスソールを剥がし,そこに隠れているネジ計3本を取り外すと,上面カバーを取り外せるようになっている。

G302の上面カバーを取り外した状態。底面と側板が一体化しており,そこから,基板などが取り付けられておらず,完全に独立した1パーツとなる上面カバーが外れる仕様になっていた
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 メイン基板は,本体底面にある3点のネジで,底板に固定されている。左サイドボタン用のサブ基板は,側板部に用意されたU字状のガイドに差さったような感じで固定されていた。
 というわけで取り出してみると,基板中央の光学センサーは,G402に搭載されていたのと同じ小型タイプなのが分かる。刻印も変わらず「AM010」なので,センサー自体はG402と同じものという理解でよさそうである。

1枚の基板にほぼすべての要素を詰め込んであるため,ややゴチャついた印象もある基板。中央にある8本脚のセンサーがAM010だ。マイクロコントローラはSTMmicroeclectronicsの「STM32L100R8」。32bitプロセッサである「Cortex-M3」と容量64KBのフラッシュメモリを統合した,低価格&低消費電力市場向けプロセッサである。なお,レンズユニットはLogitech G/Logicool G伝統のもののように見えた
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左右メインボタン用のスイッチは,オムロン スイッチアンドデバイス製の高耐久モデル「D2FC-F-7N(20M)」を採用している
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スイッチを押す部分は大きめ。いわゆるリップも用意されていた
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 中央付近にある「針金を巻いてスプリング状にしたもの」がG302のキモとなるテンションシステムだ。ボタンの押し返しの力を補助するように,上面カバー側,左右メインボタンのパーツに組み込まれている。このちょっとした工夫により,小気味いいクリック感が得られているわけだ。

上面カバー部を覗き込むと,金属バネの存在は容易に確認できる
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スクロールホイール手前のボタンとサイドボタンはKaihua Electronics製。ここではサイドボタンに寄ってみたところだが,刻印らしき「NF17JA」「NF18JA」という刻印が,それぞれ,肉眼でなんとか確認できるレベルでうっすらと施されていた
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※注意
 マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。


製品名に偽りなし。これは紛れもない

MOBAゲーマー向けマウスだ


製品ボックス
画像集#036のサムネイル/「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」レビュー。Logicool Gの新型マウスは,確かに製品名どおりのMOBAゲーマー向けだった
 以上,G302を見てきた。個人的に最大の驚きはボタンのクリック感だろうか。金属のバネを仕込むといった単純な仕掛けで快感とも言えるクリック感が得られるのは割と目からウロコといった感じだ。
 人によっては硬すぎるという印象を得るかもしれないので,万人向けかというと多少なりとも疑問は残るのだが,個人的には試す価値のある仕様だと思う。

 握りやすさは,形状の割にはまずまずで,かぶせ持ちさえ諦めれば,だいたいはなんとかなるのではなかろうか。
 なかなか評価の難しいセンサーだが,リフトオフディスタンスは多くで2.1mm以上となり,操作時の挙動にも少々怪しい部分が見られる。「遠くに見える,せいぜい数ドットという敵を的確に狙う」ような操作が求められるFPS用としては,正直,厳しい印象である。“ガチ”のFPSプレイヤーで,かつ,低センシでプレイしているような人に,G302は勧められない。

 しかし,ここで重要なことは,G302がMOBA向けのマウスであることだ。FPSと異なり,そこまで細かなエイミングが求められないMOBAにおいては,センサー周りの弱点をそれほど気にすることなく,メインボタンの素晴らしい挙動を味わえる。そう,G302は製品名どおり,MOBAプレイヤーこそが手を出すべきマウスなのである。

 気になる実勢価格は4300〜5400円程度(※2014年12月27日現在)と,まずまず手頃だ。長く使えるMOBA用マウスを探している人や,この正月休みにがっつりMOBAで遊びたい人なら,試してみる価値があるだろう。

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