レビュー
有名ストリーマーとコラボした軽量ワイヤレスマウス
Logitech G/Logicool G
製品名にあるshroudとは,「Counter-Strike: Global Offensive」の元プロゲーマーで,現在はストリーマーとして活躍中のshroudこと,マイケル・グゼシェック氏のことだ。Logitechは,本機を氏と共同開発したそうで,2015年に発売された「G303 Daedalus Apex Performance Edition Gaming Mouse」(以下,G303)をベースに,デザインの改良と氏の好みに合わせた調整を施したうえで,さらにワイヤレス化したモデルという理解でいいだろう。人気ストリーマーとのコラボによって,G303SHはどのような特徴や使い勝手を備えるマウスとなったのか。検証していこう。
重量73.5gの軽量ワイヤレスマウス
G303SHは,パッと見で左右対称マウスのようだが,サイドボタンが左側にしかないので,右手での使用が前提の製品だ。
そして,ワイヤレス化に積極的なロジクール製マウスらしく,超低遅延の応答速度を実現する独自技術である「LIGHTSPEED」に対応したワイヤレスマウスである。
本体サイズは,実測で69(W)×117(D)×40(H)mmと手に収まりやすい大きさで,重量は実測73.5gだった。昨今は重量を抑えた軽いマウスがトレンドとなっているが,ワイヤレスでこの重量なら,本製品も十分に軽い部類と言える。
左右メインボタンは,上面カバーと分かれたセパレートタイプだ。ボタン表面は,人差し指と中指を置きやすいように,少しだけ凹みのある形状になっている。
スクロールホイールの幅は,実測で約7mmあった。表面に凹凸がないので指が滑りやすいのではないかと思ったが,特にそういうこともなく,操作感は良好だ。ホイールは24ノッチで1回転と,ゲーマー向けマウスとしては標準的な仕様である。
スクロールホイール手前には,DPI切り替え用のボタンが配置されているが,こちらは上面カバーと高さが同じなので,意識的に押さない限り誤操作することはない。
続いて両側面だが,こちらは上面部から底面部にかけて狭まるように傾斜している。これがあることで,側面に配置した指で握り込みやすくなり,操作性の向上に役立つ仕組みだ。
左側面には,右側面にはないサイドボタンが前後方向に配置されている。サイズは前側(奥側)が長さ約18mmで幅約4mm,後側(手前側)が長さ約19mmで幅約5mmだ。本体からは約2mmほど突き出しているので,指先でボタンの在り処が把握しやすく,感覚的に押せる。
マウス上面から底面にかけて内側に傾斜する,独特のボディ形状となっている |
G303SHの側面はクリアブラックとなっているが,これはshroud氏の好みだそうだ |
底面部は,大きめのマウスソールが前後方向に1枚ずつ貼られていて,さらに中央のセンサーホールを囲むようにO型のものが貼り付けられている。
センサーホールの横にあるスライドスイッチは,マウス本体の電源スイッチだ。
搭載センサーは,Logitech独自の「HERO 25K」である。こちらは「PRO X SUPERLIGHT Wireless Gaming Mouse」(以下,PRO X)でも使用された実績のあるセンサーだ。
持ち方は選ばないが,指を立て気味に持つ人は若干注意
G303SHを持ったときのフィーリングを確認してみよう。定番の持ち方である「つまみ持ち」「つかみ持ち」「かぶせ持ち」に加え,かぶせ持ちをベースに親指と小指,薬指といったサイドに配置する指を立たせるように持つ筆者独自の「BRZRK持ち」の4パターンで試してみた。
つまみ持ちの例。側面に指が配置しやすいため,しっかりと握り込める |
つかみ持ちの例。側面に置いた指だけでなく掌でも後部を握り込めるので,より安定感が増す印象 |
かぶせ持ちの例。特にコレといって難はなく自然と手を乗せられる |
BRZRK持ちの例。側面に指を立てにくいため,やや強めに握り込む必要があるので疲れやすい |
普段,マウスを定番の持ち方で操作しているなら,特に違和感なく馴染むだろう。ただ,側面に傾斜が設けられているため,筆者のように指を側面に立てるタイプだと,強めに握らなくては操作しづらい。つまみ持ちやつかみ持ちで,そうした指の配置をする人は,注意したほうがいいかもしれない。
マウスの設定は「Logicool G HUB」で
G303SHの性能を最大限に引き出すには,Logicool Gブランドの製品をまとめて管理できる統合設定ソフトウェアの「Logicool G HUB」(以下,G HUB)の導入が必須となる。
G HUBを開くと,PCに認識されているデバイスが画像付きで表示される。G303SHの場合,写真の下には現在のバッテリー残量が表示されるので,どのぐらい使用できるのかもすぐに分かる。もっとも,G303SHの連続動作時間の公称値は,145時間もある。同じLogicool GのPRO Xが70時間であることを考えると,倍以上長持ちするので,バッテリー残量を気にしながら使う頻度は少なくなるだろう。
G HUBで設定できるG303SHの項目は上掲のとおりだ。シンプルな見た目で扱いやすく,操作に戸惑うことはないだろう。
ただ,1つだけ,気になった点がある。G303SHはワイヤレスマウスであるため,バッテリーを無駄に減らさないようスリープ機能が備わっている。スリープ状態からマウスを動かしたときの復帰速度は,ほかのLogicool G製品と同様に極めて速く,マウス操作とほぼ同時にWindowsのカーソルが動き出す。
しかし,環境によってはここで誤動作が生じるケースがあるようなのだ。というのも,スリープからの復帰直後の数秒間,DPI感度がメチャクチャ速くなったり遅くなったりするケースがあったのだ。技術的なことは不明であり確証はないのだが,スリープからの復帰時にG HUBとの通信で遅延が生じると,設定が読み込まれるまでの間,意図していないDPIで動作しているのではないだろうか。
一応,マウス本体内のオンボードメモリを利用して,G HUBとの通信をしない設定にすれば上記のような謎の挙動は生じなかったが,あくまでも筆者の環境下による対処法であることは承知いただきたい。
センサーは安定の「HERO 25K」を搭載
ここからはG303SHのセンサー性能を確認すべく,「MouseTester」を用いたテストを行う。前述のとおり,G303SHは光学式センサーのHERO 25Kを搭載しているが,同じセンサーを搭載するPRO X(関連記事)と,特性も同じなのだろうか。
テストで使用した環境と,HUBのソフトウェアバージョンは以下の通りだ。マウスパッドは「ARTISAN 飛燕 MID」を用いている。使用環境が異なれば結果が変わることもあるので,参考程度に見てほしい。
●テスト環境
- CPU:Core i9-12900KF(16C24T,定格クロック3.2GHz,最大クロック5.2GHz,共有L3キャッシュ容量30MB)
- マザーボード:MSI Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4(Intel Z690チップセット)
- メインメモリ:PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2
- グラフィックスカード:GeForce RTX 3080 10G(GeForce RTX 3080,グラフィックスメモリ容量10GB)
- ストレージ:Intel SSD 670p(SSDPEKNU010TZX1,NVMe M.2,容量1TB)サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows 11 Pro
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:29.0.15
- ソフトウェアバージョン:2022.2.1154
- DPI設定:100〜25600 DPI (50dpi刻みで設定可能)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz (主に1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
MouseTesterでのテスト方法はシンプルだ。G303SHを一定のリズムで左右に振るだけ。これを400,800,1600,3200のDPIで行う。
計測結果のグラフは,縦軸のプラス方向が左方向への振り,マイナス方向が右への振りを示す。横軸はms(ミリ秒)単位での経過を表すもの。青い点はセンサーが読み取った実際のカウントで,青い線はそれを正規化したものだ。青線が滑らかで点の上に沿っているほど,トラッキング性能に優れるということになる。
また,今回のテストは,G303SHの一般的な運用方法となるワイヤレス状態で行っていることを付け加えておく。
400DPI設定時。線の折返し付近でやや乱れはあるものの,全体的に安定している |
800DPI設定時。特に大きな変化は見られず |
1600DPI設定時。カウントが異常に飛ぶようなこともなく安定している |
3200DPI設定時。高DPI時にも特に問題はなし |
同じセンサーを搭載しているPRO Xの時点で優秀だったので予想はできていたが,G303SHのトラッキング精度は上々といったところだろう。コアゲーマーが使用してもまったく問題のない反応速度を備えている。
続いては,マウスをどれくらいマウスパッドから持ち上げるとセンサーの反応が途絶するかのリフトオフディスタンスを計測する。
計測方法は,センサーを塞がないようマウスの前後方向に厚みの異なるステンレスプレートを重ね,カーソルの反応が途絶する高さを割り出すという,シンプルなものだ。
その結果,カーソルの反応が消えたのは0.7mmで,4Gamerが合格ラインとしている2mm以下であることの確認が取れた。
最後に,アングルスナップこと直線補正の有無を確認する。アングルスナップとは,センサー側が自動でマウス操作時のブレを補正してしまう機能だ。これが効いていると,自分が意図した挙動と実際に画面に現れる挙動とで隔たりができてしまうので,ゲーマーからは好まれない。
このテストでは,Windows標準の「ペイント」を使い,さまざまな線を描くことでアングルスナップ特有の補正が働いていないかを確認している。その結果が下の図で,筆者の意図したとおりにカーソルが動いていた。G303SHは,G HUB上ではアングルスナップに関する項目が見当たらないものの,補正は働いていないと言っていいだろう。
全体的に使いやすく,バッテリー持ちも高評価
個人的には,バッテリーの持ちの良さがとくに気に入った。連続動作は145時間とメーカーは謳っているが,筆者の体感では,それよりもちょっと長いような気がする。残念なことにワイヤレス給電の「POWERPLAY」には対応していないが,G303SHはUSB Type-Cに接続することで高速な充電が可能であり,バッテリーでてんやわんやするようなことはないだろう。
スリープからの復帰時の挙動は少々気になるが,欠点はそれぐらいだ。こちらも対処はできたので,全体的に使いやすいマウスである。
実勢価格は約1万6000円と少々お値段が張るものの,ゲーマーが求めるポイントをしっかりと抑えている。軽量ワイヤレスマウスの競合としては,Logicool G自体がPRO Xを出しているが,握り心地の好みや,バッテリー持ちを考えると,G303SHという選択も十分にアリだ。
「Logicool G303 Shroud Edition Wireless Gaming Mouse」製品情報ページ
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