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腐った肉を食べ,汚水をすすって生き残れ! 凄惨なサバイバルを描く「Fallout 3」のレビューを掲載
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印刷2008/11/12 16:38

レビュー

荒廃した世界を舞台にしたPRGシリーズの最新作

Fallout 3

Text by 星原昭典

»  2007年の7月のスニークプレビューから1年とちょっと。ついに「Fallout 3」が発売された。世界中から高い評価を受け,発売から1週間で450万本が出荷されたというこのモンスタータイトルを,Bethesda Softworksの前作「The Elder Scrolls IV: Oblivion」(およびミッシェル)で鳴らした星原氏がレビューしてみた。荒れ果てた核戦争後の世界は,果たしてどのようなところなのだろうか。


画像集#006のサムネイル/腐った肉を食べ,汚水をすすって生き残れ! 凄惨なサバイバルを描く「Fallout 3」のレビューを掲載

 Falloutシリーズは1997年にInterplayから発売されたRPG「Fallout」にその端を発する。一作目は大ヒットこそしなかったものの,その個性的な世界設定などが一部のマニア層から高く評価された作品であり,それ以降,シリーズ続編やスピンオフ作品がいくつか発表されていった。しかし版権を保有するInterplayの経営状態の悪化とともに,近年では続く作品が作られなくなっていた。
 その状態に目をつけたのが,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」の大ヒットで知られるゲーム開発スタジオBethesda Softworksだ。コアなファンにとっては思い入れの深いこのシリーズのIPを買い取り,自分たちでその続編を作ろうと計画したのである。その結果完成したのが,今回発売された「Fallout 3」だ。

 日本では,ゼニマックス・アジアから12月4日にXbox 360用日本語版「Fallout 3」が,また2009年1月15日にはPLAYSTATION 3用が発売される予定になっている。というわけで,今回は欧米ですでに発売されているPC用英語版によるレビューを行っている。コンシューマ機版とは,レーティングによるゴア表現のグラフィックスや,クエストの一部に違いがあるようだ。

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 さて,Fallout 3は,箱庭のような広いゲーム世界の中を比較的自由に歩き回れることを特徴とするシングルプレイ専用のRPGである。
 一応メインストーリーとそのエンディングは存在するものの,必ずしもそれを進めなければいけないものではない。ゲーム世界には一連のメインクエスト以外に多くのクエストや名所,ダンジョンなどが用意されており,本筋を無視してそちらを気ままに楽しむようなプレイも許容されている。
 比率からいえば,メインクエストを追いかけることで楽しめる内容は,ゲーム内に用意されているコンテンツ全体のほんの数十%程度であり,むしろ寄り道や脇道,自由な放浪が存分にできる部分にこそ,この作品の本当の面白さがあるともいえる。

 ゲームの舞台は核戦争によって荒廃した2277年のアメリカ。プレイヤーキャラクターが実際に歩き回るのは,今では「Capital of Wasteland」と呼ばれているかつてのワシントンD.C.。核戦争が起こったのはプレイ開始時点の200年前にあたる2077年という設定だ。
 パラレルワールドである我々の世界からFalloutユニバースのタイムラインが分岐したのは,第二次世界大戦が終わった頃で,Falloutの世界ではその頃に生きた人々が思い描いた未来の姿がそのまま現実になっている。そのためにゲーム内で見られる廃墟やガジェットのデザインセンスなどは“1950年代の人々が考えていた未来”風のものだ。「“レトロ・フューチャー”な世界がさらに核戦争によって荒廃してしまった」世界観というのは,文字で説明するとややこしいが,実際にオープニングのムービーを観たり,プレイを始めたりすれば,ゲームの背景はすんなりと理解できるはずだ。

ガジェットや衣装,看板やうち捨てられている車などは,まんま「フィフティーズ」な雰囲気
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キャラクタークラス(職業)はなく
スキルの伸ばし方で個性が決まる


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 キャラクターメイキングでは自分の人種をアフリカ系アメリカ人,アジアン,コーカシアン(白人),ヒスパニックの四種類の中から選択する。
 クラス(職業)は用意されておらず,キャラクターの個性は,能力値の割り振りと“Skills”の伸ばし方,“Perks”と呼ばれる能力の選び方で決まっていく。Skillsの追加ポイントや新たなPerksは,レベルアップのたびに得られる。キャラクターレベルはゲーム内で何かを達成する(敵を倒す,鍵開けやハッキングに成功する,新たな地域を発見する,クエストを達成するなど)ごとに得られる経験値を溜めることで上がっていく。

 こうした要素の中で最もキャラクターの個性への影響が大きいのは,Skillsだ。例えば“Small Guns”のスキルを伸ばせば実弾系の銃器で戦うのが得意なキャラクターとなり,“Energy Weapons”を伸ばせばエネルギー系の武器で戦うのが得意になる。“Melee Weapons”を鍛えれば刃物や鈍器での戦いに長じたキャラクターになっていくというわけだ。
 一方,“Sneak”“Lockpick”“Science”といったスキルにポイントを多く振れば,物陰から敵に大ダメージを与える攻撃や,鍵開けやコンピュータのハッキングを得意とする,盗賊風なキャラクターになる。“Barter”や“Speech”のスキルを鍛えていって,戦闘よりも取引や交渉で障害を切り抜けていくキャラクターにすることも可能だ。

 RPGのセオリーの一つに,「万能型のキャラクターよりも専門家を育てたほうが有利な場合が多い」というのがある。このセオリーはFallout 3と多くの共通点を持つOblivionにおいても通用した。
 ところが本作の場合,実際にプレイしたところ「どんな武器もそこそこ使えて,なんでもひととおりこなせるキャラクターのほうが有利なのかもしれない」と思う局面が少なくなかった。これは「どうせこのゲーム,Oblivionとほとんどいっしょなんでしょ」とタカをくくっていた筆者にとって嬉しい驚きの一つだった。

 Fallout 3では敵を倒すことで得られる経験値はそれほど大きくなく,クエストを達成することでまとまった量の経験値がドカンと入手できるようになっている。だからレベルを上げたいのであれば,クエストをこなすことに注力すればいい。だが,そもそも急いでレベルを上げることを楽しむようなゲームでもないので,そのあたりは各人で自由に目標を設定すればいいだろう。

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初回のプレイであれば武器は銃器系をおすすめしたい。メレー武器や素手のみでの冒険は玄人向けという感じ
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ロックピッキングで金庫やケースの鍵を開ける。とにかく物資が不足しがちなこの世界では重要な技能だ
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レベルアップ時に新たなPerkを取得できる。Perksにはさまざまな種類があり,レベルが上がるほど選択可能なものが増えていく
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ターミナルハッキングはミニゲーム仕立て。成功すると近くの扉の鍵が開いたり,警備システムをコントロールできるようになったりする

戦闘では「V.A.T.S.」とリアルタイム行動の
両方を使うことになる


 戦闘のしくみには,FPSのように敵に照準をあわせて銃弾を発射したり,メレーウェポンを振るったりするリアルタイムなもののほか,ゲームを一旦ポーズして行動を指定し,ポーズ解除後にそれを順番に解消していく半リアルタイムな仕組みが用意されている。半リアルタイムなシステムは「V.A.T.S.」と名付けられており,これを使えば,プレイヤーにアクションゲームの腕前を問うことなく,誰でも精度の高い射撃が行える。

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 V.A.T.S.では,敵NPCの身体の特定の部位を狙って,そこに攻撃を加えられる。足を集中攻撃することで相手の移動速度を下げたり,腕を攻撃してこちらに対する攻撃の精度を下げたり,頭を攻撃することで大ダメージを狙ったりといったことが可能だ。ただし,頭のような小さな部位を目標とすれば当然命中率は低下する。大ダメージを期待して頭部を狙うか,当たりやすいがダメージの低い胴体を狙って確実に相手の体力を削るか,ここに駆け引きが発生する仕組みになっている。

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 事前情報から筆者は,「腕に覚えがある人は基本的にリアルタイム戦闘を行って,そうでない人向けにV.A.T.S.があるのかな?」などと想像していたのだが,実際にプレイしてみるとそうではない。Fallout 3の戦闘は「可能な限りV.A.T.S.を使って戦い,それが使えないときにはリアルタイムで対処する」というものであった。
 このゲームでは,基本的には誰もがV.A.T.S.を使って戦闘を行うことになるだろう。なぜならそのほうが格段に効率よく戦えるからだ。特定の部位を上手に狙うことが可能で,無駄な弾薬の消費も抑えられる。しかしV.A.T.S.を戦闘中ずっと使い続けることはできない。V.A.T.S.を使用して行動する際には「AP」というポイントを消費するが,だいたいこのAPはピストルであれば3〜4回の射撃,ライフルであれば2〜3回のバースト射撃で尽きてしまう。それで敵を仕留められなかった場合,これ以降の状況にはリアルタイムで対処することになる。
 尽きてしまったAPは,キャラクター性能にもよるが,だいたい15秒くらいのリアルタイム行動をとることで完全回復する。その間,FPSスタイルで攻撃を行うのも一つの方法だ。その敵をもう少しで倒せてしまいそうなときなどはトドメの弾丸を立て続けに送り込み,戦いを終わらせてしまうのもよい。だがすでに書いたようにリアルタイム戦闘はV.A.T.S.での戦闘に比べると効率が悪く,とくに弾薬の消費量に大きな差が生じる可能性がある。
 この世界では弾薬がとても貴重なものだ。だから使い切ったAPが回復するまで物陰に隠れたり逃げ回ったりすることがかなり有力な選択肢となる。

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 戦闘で傷つき,消費してしまったヘルスはスチムパック(回復薬)の使用や食べ物/飲み物の摂取,睡眠などで回復する。自然には回復しない上,RPGの定番である“魔法で回復”という便利な選択肢がないところが本作の特徴的な部分の一つだ。
 弾薬が貴重であるように,この世界では回復アイテムも貴重品だ。とくに序盤では高価なスチムはできるだけ非常時のためにとっておきたい。そこで使うことになるのが拾ったお菓子や,巨大ゴキブリやネズミの死体から手に入れた肉だ。そんなものを食べてもヘルスはほんの少ししか回復しない上に,ほぼすべての食料は放射能を帯びており,食べるたびに身体のRadiationレベルが上がってしまう。だが背に腹は代えられないのでむさぼり食らうことになる。

 さらに水も貴重だ。廃墟内で見つけたトイレは,水をすすることで体力を回復できるポイントだ。水は好きなだけ飲めるが,やはり放射能を帯びているのでRadiationレベルには気を遣う必要がある。ちなみに放射能を帯びていない水は,特定のNPCにあげることでキャラクターのカルマ(善人/悪人レベル)が上がってしまうほどのレアアイテムだ。

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シンクの水は比較的汚染が少なく安全だが,便器の水は多量の放射能を帯びているので,基本的に飲んではダメ!
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人骨が乗ったボロボロのマットレスでもベッドはベッド。死体の横でも眠れるようにならないとこの世界では生きていけない

 さらに忘れてはならない回復手段に睡眠がある。睡眠をとれるのはベッドのある場所だけだが,眠れば放射能の影響をまったく受けることなく,体力を完全に回復できる上,なぜかケガまで治る。だから寝る機会があったらぜひ寝たい。トイレの床に敷かれたものすごく汚いマットレスを見つけたとき,そこにウキウキ気分で横たわれるようになったら,そろそろ一人前のFallout 3プレイヤーである……のかもしれない。

自律行動するNPCとセンスが光るインタフェース


 本作に登場する多くのNPCは,それぞれが自分自身のスケジュールを持ち,それに従って自ら行動している。例えば,朝になると自分の店を開けて働きだし,正午になるとレストランに出かけていって食事をし,午後も働き,夜には友人と会ったあと家に帰って鍵を閉めて寝るといった具合だ。

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 自律的に動くNPC達で構成された町は,常に一か所に立ちっぱなしのNPCたちが集まった他作品の町々とは異なり,見ているだけでもなかなか面白い。気になるNPCの後を追ってその行動を観察したくなることもあるほどだ。ときどき目的のNPCがどこにいるか分からなくなり,探し回ることになったりするのも,また面白さのうちだ。

 さらに本作ではNPCに対して盗みを働いたり,NPCを殺してしまったりすることもでき,その気があるなら,殺しまくり&奪いまくりの極悪人としてのプレイも可能になっている。
 ちなみにNPCを殺したとき,周囲のNPCが状況に応じて自然な反応をしてくれるところも本作の気がつきにくいが良くできた部分の一つだろう。これらNPCの動きの制御には,Oblivionで使われていた「Radiant AI」をさらに改良したものが使われている。

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 NPCとの会話は選択肢を選ぶことで進めていくスタイルだ。会話の際に,Speechスキルなどが十分に高かったり,特定のPerksを持っていたりした場合,特別な選択肢が現れるなど,会話を有利に進められることがある。
 クエストはNPCに話しかけることから始まるものが多い。Fallout 3のクエストには複数の解決方法や結果が用意されているものが少なくなく,クエスト中に自分の行った決断が世界に影響を与えていくようになっている。
 選択の中には善なるものも悪なるものも含まれている。プレイヤーキャラクターにはカルマ(善人/悪人レベル)が設定されており,選択を積み重ねていくことでカルマは上下する。カルマがどちらかに傾けば,特定のNPC達の反応に変化が現れたりするようだ。つまり,善人や悪人として振る舞えるというだけでなく,その結果によって周囲の反応にも変化が起こるようになっているわけだ。

 受け取ったクエストはプレイヤーキャラクターの左腕に装着された「Pip-Boy 3000」というデバイスに格納されていつでも確認できる。Pip-Boy 3000には,ほかのゲームでいうところのインベントリやクエストログ,キャラクターシート,マップウインドウにあたるものなどが詰め込まれている。セーブやロード,グラフィックスオプションの変更といったシステム関連のいくつか操作を除けば,ゲーム内のほとんどのメニュー操作はこのPip-Boy 3000を介して行うことになる。

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町の風景。すべてのNPCがAIの制御によって自律的に行動しており,それぞれの暮らしをおくっているという雰囲気十分
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主人公が左腕に装着しているPip-Boy 3000。クエストやマップの確認だけでなく,アイテムや体調の管理もここで行う

 プレイ中にTABキーを押すとプレイヤーの左手が目の前にかざされ,Pip-Boy 3000が現れる。こういった,雰囲気重視のユーザーインタフェースに使いやすいものは多くないと思っていたのだが,このPip-Boy 3000に関しては予想外に不満を覚えることが少なくて驚いた。
 ゲームをプレイしていてユーザーインタフェースが使いづらく,「なんでこんなことになっちゃってるの?」と不思議になる局面は多い。Pip-Boy 3000も一瞥したときからそういった類のものだと予想していたが「非常に使いやすい」とまでは言わないものの,こんなにスクリーンが小さくて,さらにわざわざ単色にしてあるようなものである割には,不思議と不満を覚えない。なかなか気がつきにくいところだが,並々ならぬセンスのよさを感じる部分である。

荒れ果てた世界でのサバイバルを実感できる
ゲームデザインが秀逸


 Fallout 3の一回目のプレイを開始して,筆者がとにかく困ったのは「弾薬不足/回復薬不足」だった。もともと「人の家の引き出しを勝手に開けてなんでもかっぱらっていくようなプレイはおかしい」というポリシーを個人的に持っていて,RPGのプレイではそういうことはなるべくしないようにしていた。Fallout3のプレイもその方針を保ちつつ進めていたのだが,そのうちどうにもならなくなってきた。
 あまりにも弾が足りないのでちょっと考えたのだ。

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 まずムダ撃ちをなくす必要があるだろう。そのためにリアルタイムでのFPS風の射撃は極力避けて,可能な限りV.A.T.S.を使って戦うことにする。また,遠くからの撃ち合いにもムダが多いので,物陰に隠れて敵を引きつけて,なるべく少ない射撃で仕留めるようにする。さらに弱めの動物などと戦うときはそもそも銃を使わずにメレー武器によって弾薬の消費を抑える……。
 しかし,ここまでやってもまだ弾が足りない。スキル値が高く,自分が得意とする種類の武器はすぐに弾切れになってしまうため,得意ではない種類の武器もかなり使用する。しかしそれでも足りない。とにかくジリ貧状態。どうしてこんなに足りないのか?
 さらにはスチムパックも足りない。ダンジョンの中でスチムが切れてしまったらどうしようと常にビクビク。町に戻ったらスチムを買い足すだけで少ない所持金はほとんどなくなってしまう。どうしよう。

 ここに至って,筆者はポリシーを曲げ,棚や机をあさりまくって物を拾いまくるプレイに転換する事にした。
 弾薬についてはこれでいくらかマシになったが「やや改善した」という程度で基本的には慢性的な弾不足。ときに武器を持ち替えなければならない状況に変わりはない。FPS感覚で撃ちまくったらすぐに残弾は0になってしまうだろう。ここにきて,この荒れ果てた世界において,弾薬は本当に貴重なものなのだと実感した。

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 さらに体力の回復に関しても,物あさりプレイを通じて同様の納得を得た。
 廃墟内の棚の上や動かなくなった冷蔵庫の中には,栄養価の低そうなスナック菓子や気味の悪い食べ物,汚い水の入ったボトルなどが転がっている。これらは放射線にさらされている上に,食べたところで体力はほとんど回復しない。長期的にはむしろ身体に悪いくらいのものだ。だから今まではこれらのことを単なるゴミアイテムだと考えていた。
 トイレの流し台から水が飲めて,それで体力が回復することもなんとなく知っていたが,この水も放射能を帯びているため,こちらも同様に実際には飲むものではないと思っていた。便器からも水が飲めるが,それは単なるギャグだと思っていた。死体から取れるゴキブリの肉やネズミの肉が食べられることにも気がついていたが,まさか食べる気にはならないし,質の低い換金用アイテムぐらいにしか考えていなかったのである。

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 だが筆者は気がついた。これらを食べなければ自分は死ぬのだ。ゴミ箱をあさって出てきた菓子をむさぼり,トイレで汚水をすすり,ゴキブリの肉を生のまま食べる。そうしなければ死ぬ。たとえ放射能に汚染されていても食べなければ自分は今死ぬからだ。汚染のないスチムだけで生きていくことはできないのだ。これらのことに気がついたとき,にわかに,Fallout 3の荒廃した世界が自分の中で強い真実味を持ったものへと変化していった。

 このような,非常にシビアでプレイヤーにサバイバルを強要するゲームバランスは,もちろん意図した上でのものだろう。
 ゲームの中でプレイヤーは凄惨な生きる努力を演じなければならない。プレイヤーにそれを強いることで,このゲームの作り手は,プレイヤーの心の中に,自身がイメージした核戦争後の世界の姿を非常な強さで描き込むことに成功している。つまり本作では,ゲームのアーキテクチャーが,核戦争後の荒廃した世界を表現するというテーマとしっかりと結びついており,そしてそれが意図したとおりに機能している。その意味で,Fallout 3は表現として非常に優れているといえる。

 現在筆者は2回目にプレイの最中だ。今回は勝手が分かっているので,初めからあされるものはすべてあさりながら進めている。それでもやっぱりこの世界での冒険はサバイバルだ。初回のプレイではメインクエストを一直線に終わらせてしまったので,今回はそっちは無視してふらふら気ままに遊ぶつもりでいる。まだまだ冒険していない場所のほうが多いくらいなので,しばらくは終わりそうにない。

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