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Samsung,ペン入力対応スマートフォン「Galaxy Note8」発表。6.3インチなのに握れる,アスペクト比18.5:9の縦長有機ELパネルを搭載
発表会は現在も続いているが,本稿では,報道関係者向け事前説明会で明らかになった内容をお伝えしたい。
Galaxy Noteシリーズとしては,実質的に2年ぶりの新製品
一般的なスマートフォンよりもひとまわり大きめの,いわゆるファブレット的なボディと,独自のペン入力機能を搭載するGalaxy Noteシリーズは,2011年9月にベルリンで行われたSamsungの発表会で第1弾製品が登場して以来,年ごとにモデルチェンジを繰り返してきた。
スタイラス(stylus,タッチペン)を用いたペン入力に対応するファブレットとして,Galaxy Noteは一定のニーズに応え続けてきたが,2016年に登場した「Galaxy Note 7」は,バッテリーの発火事故や焼損事故が複数回にわたって発生したことにより,全世界で出荷停止となり,最終的には大規模な製品回収にまで発展して,有名になってしまった。
Samsungと第三者機関による原因究明で,バッテリーの製造と組み立ての過程において複数の発火要因が存在していたことが判明しており,最終的には謝罪と,Galaxy Note 7の欠番化という結末を迎えている。
韓国国内など特定の地域では,判明した不具合の改修とバッテリーの低容量化で安全性を確保した「Galaxy Note FE」(Fan Edition)という製品が出荷されはしたものの,世界市場だと,Galaxy Note8は,実質的に2年ぶりの新製品だ。ペン入力対応のスマートフォンというのは,ほぼSamsungの独占状態と言っていいカテゴリーだけに,失地回復は同社にとっても最重要課題であり,その期待を受けてGalaxy Note8は登場したことになる。
Galaxy Note 7は,国内市場投入が確実視されていたが,これも前述のトラブルで見送りになった経緯がある。つまり,日本のGalaxy Noteファンは,3年も新製品の登場を待っていることになるわけだ。
前置きが長くなったが,本題の新製品に戻ろう。
今回発表されたGalaxy Note8の主なスペックは以下にまとめたとおりだ。なお,これらは時限の機密保持契約下で入手した資料に基づくものであり,現在進行中の発表内容によっては,一部を修正する可能性がある。
●Galaxy Note8 の主なスペック
- メーカー:Samsung Electronics
- ディスプレイパネル:6.3インチAMOLED(有機ELパネル,「Infinity Display」),解像度1440
× 2960ドット - プロセッサ:CPU×8(最大CPU動作クロック2.3GHz)またはCPU×8(最大CPU動作クロック2.35GHz)
※販売地域によって,Qualcomm SnapdragonまたはSamsung Exynosのいずれかを採用する - メインメモリ容量:最大6GB
- ストレージ:内蔵(64/128GB/256GB)+microSDXC(最大容量未公開)
- アウトカメラ(メイン):有効画素数約1200万画素(※デュアルフォトダイオード技術により約2400万画素相当),F値1.7,光学式手振れ補正対応
- アウトカメラ(サブ):有効画素数約1200万画素,F値2.4,光学式手振れ補正対応
- フロントカメラ:有効画素数約800万画素,F値1.7,光学式手振れ補正対応
- バッテリー容量:3300mAh
- モバイル通信機能:Cat.16 LTE 4波/5波キャリアアグリゲーション対応,最大下り通信速度1Gbps以上
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth:5.0(2Mbpsモード対応)
- USBポート:Type-C
- 本体公称サイズ:74.8(W)×162.5(D)×8.6(H)mm
- 本体公称重量:195g
手書き入力を意識して,Galaxy S8+よりもやや四角くなったボディ
Galaxy Note8が採用するディスプレイパネルは,縦:横のアスペクト比が18.5:9となる有機EL「Infinity Display」で,これはS8+と同じ。ただし有機ELパネルのサイズは,S8+よりもひとまわり大きい6.3インチだ。
アスペクト比の影響で縦持ち時に縦長となるボディだが,面白いのは本体の幅が公称約74.8mmしかないこと。5.5インチ液晶パネルを採用する「iPhone 7 Plus」だと縦持ち時の横幅は公称約77.9mmなので,ほとんど変わらない(というかむしろわずかに短い)わけである。
S8+に近い外観と述べたが,もちろん細かな違いはある。最たるものは,付属の専用スタイラス「S Pen」を使って手書きする端末であることから,ボディの四隅が,鋭角に近いエッジの処理になっていて,全体の印象が四角くなっていることだろう。
縦持ち時のパネル面左右両端がカーブしているという点ではS8+と変わらないものの,カーブのR(湾曲)はS8+と比べて緩やかで,「ノートであること」を意識したものになっていることが分かる。
背面にデュアルレンズカメラを搭載。サブ側は望遠用に
カメラ機能もポイントだ。Galaxy S8シリーズは,シングルレンズのカメラを採用していたが,Galaxy Note8は,最近のトレンドどおり,アウトカメラにデュアルレンズカメラを採用している。
アウトカメラのメイン側には,光学式手ぶれ補正機能(Optical Image Stabilizer,以下 OIS)付きで1200万画素のセンサーを搭載。Samsungが「DualPixel」と呼ぶデュアルフォトダイオード技術によって,最大2400万画素相当の映像を撮影することが可能だ。
サブ側は望遠用に割り当てられており,焦点距離はメインカメラのちょうど2倍。ただ,標準側の焦点距離が本稿執筆時点では未公開のため,現時点では便宜的に2倍とだけ紹介しておきたい。
サブ側に2倍のテレ端を採用するのは,スマートフォンのアウトカメラとしては一般的だが,標準のカメラアプリからは,タップひとつで標準側の1倍と望遠側の2倍を切り替えられる。デジタルズームは望遠側が最大5倍なので,標準の1倍から換算すると,最大10倍相当のデジタルズーム機能を持つというわけだ。
また,2つのレンズを同時に使用することで,焦点距離に合わせて自然な背景ボケなどを作り出す機能や,撮影中にリアルタイムで被写界深度を変える機能といった,デュアルレンズカメラならではの要素も搭載している。望遠側のサブカメラにもOISを採用することで,より精緻な撮影ができるとSamsungはアピールしていた。
「Galaxy S8」およびS8+の発表以降,このような配置は,「小指をスマートフォンの下側面にかけて支えるような持ち方をしたときに,指先がセンサーに届きにくい」というユーザーからの報告が少なからずあった。Samsungも,それを問題として認識はしているようだが,おそらく,そうしたフィードバックを得た時点では,もはや配置を大きく変更できないところまで設計が進んでいたことは想像に難くない。そうした問題への対応は,2018年以降の製品に反映されるのだろう。
なお,Galaxy Note8では,背面の指紋認証センサーに加えて,前面のベゼル上側に,虹彩認証センサーも装備している。詳しい説明はなかったが,Galaxy S8やS8+と同等の生体認証機能を採用するようである。
専用スタイラス「S Pen」はスペックが向上し,4096段階の筆圧感知に対応
さて,Galaxy Note8をデジタルノートたらしめているのが,専用のスタイラスであるS Penだ。
Galaxy Note8でも基本的なところは変わっておらず,縦持ち時の本体底面に,S SPenを挿入することで収納できる。収納された状態で頭の部分をプッシュして引き出すと,画面上にペン入力関連のメニューが出てくるのも従来どおりだ。
ただS Pen自体はアップグレードされており,4096段階の筆圧感知が可能となった。S Penのサイズは,長さが108mmで直径5.8mm,ペン先の直径は0.7mmとのこと。スキャンレートはGalaxy Note 5の240Hzから360Hzへと,1.5倍も向上したそうだ。
なお,Galaxy Note8はIP68準拠の防水防塵仕様だが,S Penも同様の防水防塵仕様になっているとのことだった。
Galaxy Note8のプリインストールOSは「Android 7.1.1」(Nougat)。8月21日にGoogleは,次期Android OS「Android 8.0 Oreo」を発表済みで,同社はそのとき,主要スマートフォンメーカーの端末でも2017年末までにはAndroid 8.0の配信が始まるとの見通しを示していたが,Samsungによれば,「現時点では,更新時期などは明らかにできない」とのことだった。
ちなみにGalaxy Note8は,Samsung独自のセキュリティプラットフォーム「Samsung Knox 2.9」を搭載しているとのこと。OTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートで,最新のセキュリティパッチを毎月配信できる見通しであるという。
ソフトウェア面では,以前からSamsungが独自に採用していた「1つのスクリーンに2つのアプリを並べて表示する機能」が改善を果たしたのがトピックとなる。
Galaxy Note8では,あらかじめアプリのペアを作っておけば,1回のタップにより,2つのアプリをサイドバイサイドで同時に立ち上げることができる。こうしたアプリのペアは,右端のエッジスクリーンをスワイプして呼び出すアプリランチャー「App edge」に登録しておくことも可能だ。
そのほかにも,スタイラス入力の過程をGIFアニメーションとして記録しておき,
USBの物理インタフェースはType-Cを採用。また,従来モデル同様にワイヤレス充電規格「Qi」(チー)に準拠しており,対応する充電器と組み合わせてのワイヤレス充電が可能となっている。
なお,3.5mmミニピンのヘッドセット端子は残っていた。iPhone 7世代でヘッドセット端子を省略したAppleの後に続いたりはしないようだ。
Galaxy Note8のカラーバリエーションは,ゴールド系の「Maple Gold」と黒系の「Midnight Black」,ブルー系の「Deepsea Blue」,そしてグレー系の「Orchid Gray」という4色になっている。ゴールド系を除いた3色は,ペンキを塗ったかのようなしっとりとしたイメージで,色の層の上に透明な光沢層が存在しているように見えた。
純正のアクセサリ類は,写真でまとめて紹介しておこう。これは従来も同様だが,すべてのGalaxy Note8用アクセサリが日本でも提供されるとは限らない。
Galaxyシリーズ用アクセサリといえば,スマートフォンはめ込み型の簡易VRヘッドマウントディスプレイ「Galaxy Gear VR」(以下,Gear VR)が思い浮かぶ人もいるだろう。
Galaxy Note8も,Gear VRには対応するとのことだが,本体サイズが大きくなっているため,既存のGear VRにははめ込めないそうだ。そのため,Galaxy Note8にも対応する新しいGear VRの製品化を予定しているという話だった。
一方,Galaxy S8とS8+を接続して,PC風に利用できるようにする国内未発売のドック型デバイス「Samsung DeX Station」は,Galaxy Note8でもそのまま利用できるという。ただ,Galaxy S8/S8+とGalaxy Note8では,アプリランチャーの表示方法など,UIに若干違いがあるようだ。
Samsungの「Galaxy UNPACKED 2017」特設Webページ(英語)
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