「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜花影ゆれる砥水〜」ゲネプロレポート。刀剣とは，刀剣男士とは――をあらためて問われる物語

　DMM GAMES / ニトロプラスの刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」（BROWSER / iOS / Android）を原作とした「ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ」（通称，刀ミュ）の10作目となる新作本公演「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜花影ゆれる砥水〜」が，2023年4月30日〜6月18日にわたり上演された（※福岡公演は中止）。
　本稿では，上演に先駆けて行われた関係者・マスコミ向け公開ゲネプロの模様をレポートする。

■出演（敬称略）
鬼丸国綱役：林 光哲
一期一振役：國島直希
大般若長光役：京典和玖
小竜景光役：長田光平
へし切長谷部役：木原瑠生
山姥切長義役：水江建太

本阿弥光徳役：唐橋 充

カゲ役：杉山諒二

豊臣秀吉役：小須田康人

■STAFF（敬称略）
原案：「刀剣乱舞ONLINE」より (DMM GAMES/NITRO PLUS)
演出：茅野イサム
脚本・作詞：浅井さやか
音楽監督：YOSHIZUMI
振付・ステージング：桜木涼介　TETSUHARU
主催：ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
（ネルケプランニング　ニトロプラス　DMM GAMES　ユークリッド・エージェンシー）

刀剣男士たちの前に現れたカゲ

　季節は春，桜を楽しんでいる刀剣男士たちのもとに，審神者（さにわ）から出陣命令が下る。へし切長谷部を隊長に，鬼丸国綱，一期一振，大般若長光，小竜景光，山姥切長義は，天正18年の京都に向かうことになった。

　小田原征伐が行われ，豊臣秀吉に天下がほぼ定まった年でもあり，刀剣男士たちも時代遡行軍の狙いが秀吉だと予想するが，審神者いわく相手の狙いが分かっていないという。そのため刀剣男士たちは，京都で調査をすることになるのだった。


　京都で調査を始めた刀剣男士たちは，歴史上は起こるはずのない火災に遭遇し，刀剣の鑑定・研磨などを家業としている本阿弥光徳に出会う。また，時間遡行軍に襲われた秀吉を救うことに成功するが，一期一振が負傷，さらに謎のカゲと相対することに……。秀吉は一期一振を命の恩人と称え，世話役の大般若長光とともに，彼のもとに滞在することを許される。天下人に近づいたことで孤独を抱えていた秀吉が，一期一振の笑顔に救われ，心から気に入っている様子が伝わってきて，筆者は胸が熱くなった。


　さらに秀吉を守った褒美として鬼丸国綱は彼の護衛となり，へし切長谷部たちは強引に光徳の弟子となる。光徳がへし切長谷部の性格をすぐに見抜くさまは，さすが刀剣鑑定のプロだと思わずニヤリとしてしまった。刀剣に精通した秀吉たちの前で本来の名前で呼び合うことができないため，鬼丸国綱は鬼右衛門，一期一振は一太郎など，その場の思いつきで呼び名がつく展開も面白い。

　ある時，秀吉は，光徳に粟田口吉光作の刀剣“一期一振”だと思われる二振りの太刀を鑑定するように命じる。光徳はどちらも粟田口吉光作に間違いないとし，1つは同じ鋼や水で作られた刀剣だとした。実はこれまで刀剣男士たちの前に現れていたカゲは，この影打だったのだ。

　光徳は真打の“一期一振”を見抜くものの，秀吉の身長に合わせて磨上げる（刀剣を短くする）ことを受け入れられず，影打を“一期一振”であると報告してしまう。するとカゲが実体を持って現れ，逆に刀剣男士の一期一振がまるでカゲのようになってしまって……。


　“一期一振”という名を得たカゲは，献身的に秀吉に仕えており，その真っすぐな想いは観ていて眩しく，感情移入してしまうほどだ。また，秀吉が本物の一期一振と，カゲの違いを感じている描写もあり，切ない気持ちになった。

　クライマックスでは時間遡行軍の真の目的が明かされ，刀剣男士たちは時代を守るために，辛い決断を迫られることになる。また一期一振とカゲが，どんな運命をたどるのか，最後まで読めない展開となっていた。

　今回の物語は，刀剣鑑定の第一人者である光徳が主軸になっていたこともあり，刀剣とは，刀剣男士とは何か――をあらためて考えることができた。光徳たちが鑑定することで，刀剣に名前が与えられ，後世へと伝わっていく裏で，カゲのように歴史に残らなかった刀剣も多数あったことだろう。それだけに現在でも保存されたり，逸話として名前が残された刀剣に出会えるのは幸せなことなのだと感じた。


　また，自身の在り方と向き合った一期一振をはじめ，刀剣男士それぞれの魅力が，刀ミュならでは解釈として描かれてていた点も見どころだろう。言葉の端々から審神者への敬愛が伝わってくるへし切長谷部，冷静な行動のなかに柔らかな一面ものぞかせた山姥切長義，鬼丸国綱と本阿弥光徳の絆，ひょうひょうとしながらも仲間たちを見守り，時には鋭い指摘をする大般若長光と小竜景光，とてもバランスのいい部隊で，彼らの今後の活躍もとても楽しみだ。


　全体をとおしてシリアスな物語だったが，秀吉たちが仮装して楽しむ瓜畑遊びのシーンや，刀剣男士同士の息の合った掛け合いは，ほっと和ませてくれる時間であった。アーカイブ配信やDVD / Blu-rayで，もう1度作品の世界に浸りたい。

第2部は刀剣男士たちによる華麗なライブパート

　2部は，刀剣男士たちの歌とダンスによるライブパートになっている。華やかな衣裳に身を包んだ刀剣男士たちは，時間遡行軍との戦いとはまた違った姿を見せてくれた。部隊全員での歌唱のほかに，大般若長光と小竜景光，鬼丸国綱と一期一振がデュエット，へし切長谷部と山姥切長義はソロで美しい歌声を響かせる。

　MCパートでは，ミュージカルパートに登場した瓜畑遊びにちなんで，刀剣男士たちがアナウンサーに挑戦する企画が行われた。公開ゲネプロでは山姥切長義が，ほぼ早口言葉という難しいニュース原稿を読むことになったのだが，スラスラと読み上げて見せたのには驚いた。

　また，圧巻の太鼓パフォーマンスも！　ほかにも秀吉と光徳やカゲの見せ場もあり，公演全体の余韻を味わえる素晴らしいステージとなっていた。

「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜花影ゆれる砥水〜」公式サイト

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「刀剣乱舞ONLINE」ダウンロードページ

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