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「そうだ アニメ,見よう」第105回は神山健治氏×荒牧伸志氏で贈る「攻殻機動隊 SAC_2045」。14年ぶりに公安9課が再起動
1989年に「ヤングマガジン海賊版」で発表されて以来,アニメはもちろん,ゲームやコミック,果てはハリウッド映画にまで進出した,士郎正宗氏原作の「攻殻機動隊」。さまざまな派生作品が生まれたタイトルだが,その中でも神山健治監督のTVアニメシリーズ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(2002年放送)は,国内外での評価も高く,続編として「S.A.C. 2nd GIG」(2004年放送),そして「S.A.C. Solid State Society」(2006年放送)が発表されている。
というわけで「そうだ アニメ,見よう」第105回のタイトルは,シリーズ最新作となる「攻殻機動隊 SAC_2045」。制作はProduction I.GとSOLA DIGITAL ARTS,シリーズ構成を神山氏が担当し,監督は映画「APPLESEED」の荒牧伸志氏と神山氏の2人体制となっている。
「攻殻機動隊 SAC_2045」
草薙素子(CV:田中敦子)やバトー(CV:大塚明夫)ら元公安9課のメンバーは,傭兵部隊「ゴースト」として,アメリカ西海岸で民間傭兵会社から委託を受け,レイドを未然に防ぐために掃討作戦を遂行していた。
あるとき,レイディスト達との交戦中に,素子達はジョン・スミス(CV:曽世海司)と名乗る黒服の男と,彼の率いるアメリカ軍特殊部隊に捕らえられてしまう。ジョン・スミスは,「ゴースト」に強制的に任務を依頼し,素子達はビバリーヒルズのとある豪邸へ潜入。そこで驚異的な知能と身体能力を持つ「ポスト・ヒューマン」と出会う。
いっぽう,解体された9課から民間警備会社へと再就職したトグサ(CV:山寺宏一)は,荒巻(CV:阪 脩)から9課再編の計画があることを知らされる。素子達の行方を捜し始めたトグサは,アメリカに渡り,手がかりを追って彼らと合流。大国間の謀略が渦巻く中で,9課は再び組織されるのだった。
電脳やサイボーグボディ“義体”が一般化している近未来を舞台にした,SF作品の金字塔である「攻殻機動隊」。その原作とは異なる「もし草薙素子が人形使いに出会わなかったら?」というifの物語が展開されるのが,「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」だ。本シリーズは,ヒロインの素子だけでなく,公安9課そのものにスポットを当てた構成になっており,医療問題や難民問題といった,社会派のテーマを主軸に,高度に発達しながらもどこか歪な社会にメスを入れる,公安9課の活躍が描かれている。
14年ぶりの再起動となる「攻殻機動隊 SAC_2045」は,シリーズ通しての監督である神山氏のもと,田中敦子さんや大塚明夫さんらお馴染みの声優陣が再結集。物語も前作「S.A.C. Solid State Society」の数年後からスタートする,ファン待望の内容だ。
正直なところ,初のフル3DCGアニメーションということで,これまでのようなテイストが出せるのかどうか不安はあった。電脳世界やタチコマらメカニカルな部分はともかく,人間ドラマを3DCGでどこまで表現できるのか。
そんな不安を抱きつつ,第1話をドキドキしながら視聴したところ,あっさりと“攻殻機動隊”の世界に入り込んでいる自分に驚いた。拍子抜けしたといってもいい。それほど“3DCGの攻殻機動隊”に違和感を覚えなかったのだ。
メスゴリラと仲間に揶揄される素子のパワフルなアクションや,デルタ部隊の練度の高い動きなど,人間の表現においても丁寧に作りこまれている。バトーとタチコマの珍妙なやり取りも相変わらずだ。
もちろん,素子のデザインがやや少女めいた風貌にリメイクされているなど,異なる部分はあるが,「ああ,今回の少佐の義体は少女タイプなのか」と作品の世界観を思い出させる仕様だと納得できた。じつは,今回から初めて「攻殻機動隊」を観る人が楽しめることを意識して,意図的に若くされているのだそうだが。
ともあれ,スピーディな展開や超人的なアクションシーン,独特の電脳世界での攻防など,シリーズのファンなら9課の新たな活躍を楽しめるはず。ネタバレになるので多くは語れないが,新たな脅威「ポスト・ヒューマン」との戦いに注目してほしい。
現在Netflixで全12話が一挙配信されており,やろうと思えば一日で全話視聴することも可能だ。12話の前半では,公安9課が再結集するまでの流れがメインで描かれ,後半は「ポスト・ヒューマン」の物語にスポットが当たっている。
新たな戦争の形態“サスティナブル・ウォー”で混沌さを増した世界情勢で,公安9課がどんな活躍を見せるのか,ぜひ自分の目で確認してほしい。
なお,本作のセカンドシーズンの制作が早くも決定している。新たな「攻殻機動隊」ワールドに乗り遅れないようにしたいところだ。
「攻殻機動隊 SAC_2045」公式サイト
「攻殻機動隊 SAC_2045」公式Twitter
放映データ |
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Netflixにて,2020年4月23日より配信開始 |
全12話 |
キャスト | |
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草薙素子:田中敦子 | |
荒巻大輔:阪 脩 | |
バトー:大塚明夫 | |
トグサ:山寺宏一 | |
イシカワ:仲野 裕 | |
サイトー:大川 透 | |
パズ:小野塚貴志 | |
ボーマ:山口太郎 | |
タチコマ:玉川砂記子 | |
江崎プリン:潘めぐみ | |
スタンダード:津田健次郎 | |
ジョン・スミス:曽世海司 | |
久利須・大友・帝都:喜山茂雄 | |
シマムラタカシ:林原めぐみ |
スタッフ |
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原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KCデラックス刊) |
監督:神山健治 × 荒牧伸志 |
シリーズ構成:神山健治 |
キャラクターデザイン:イリヤ・クブシノブ |
音楽:戸田信子 × 陣内一真 |
オープニングテーマ:「Fly with me」millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045 |
エンディングテーマ:「sustain++;」Mili |
音楽制作:フライングドッグ |
制作:Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS |
製作:攻殻機動隊2045製作委員会 |
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会 |
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