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溢れ出すJRPGへのリスペクト! 「ルインドキング:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー」レビュー
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印刷2021/12/22 14:00

プレイレポート

溢れ出すJRPGへのリスペクト! 「ルインドキング:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー」レビュー

 流行は,時代や地域により異なるものだ。東アジアから北米にかけて爆発的な人気を誇り,月間のアクティブユーザーは1億人とさえ言われる「リーグ・オブ・レジェンド」(以下,LoL)は,今もっとも流行しているゲームの一つと言っても過言ではない。

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 一方で私たち日本にはRPG,特に強固な世界設定とターンベースの戦闘を楽しむJRPGの文化が存在する。そんな地域をまたいだ「人気者」同士をうまく混ぜたなら? 今回紹介する「ルインドキング:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー」PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)(以下,ルインドキング)はそんな挑戦から生まれた作品だ。


日本,そしてJRPGへのリスペクトに溢れたRPG


 「ルインドキング」はRiot Games内のパブリッシングレーベル,Riot Forgeのもと,Airship Syndicateによって開発されたゲームだ。

 元々Riot Gamesは10年以上,LoLの開発にのみ専念してきたのだが,昨今ではLoL内に築かれた「ルーンテラ」と呼ばれるユニバースを活かし,他社と協力のもとで様々なタイトルを開発している。「ルインドキング」もその一つである。

 「ルインドキング」はLoLに登場するチャンピオンのうち,イラオイブラウムヤスオアーリパイクミス・フォーチュンら6人を中心に据えた群像劇的なRPGとなっており,本来手を結ばないチャンピオン同士が「黒き霧」という現象を前に団結し,立ち向かっていくストーリーが描かれる。

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 そしてこの「ルインドキング」,昨今では珍しいほどに純粋なJRPG的な作品に仕上がっている。筆者個人としては,「JRPG」という単語は漠然としているため,あまり好まないが,「ルインドキング」は海の向こうから見た「日本のRPG」へのリスペクトが詰め込まれている。だからこそ,ここはあえて「JRPG的な作品」と呼びたい。

 まず,「ルインドキング」に登場する各キャラクターには細かいパラメータが設定されており,攻撃力,精神力,スタミナ,物理防御,魔法防御,クリティカル,素早さ,回復,ライフスティールなどがある。これらのパラメータは武具を装備したり,戦闘によって経験値を蓄積し,レベルアップしたりして伸ばすこともできる。さらに各キャラクターは「自動効果」というパッシブスキルと,「即時」「レーン」というアクティブスキルを持っていて,それぞれの個性がパラメータとスキルで差別化されているのだ。

 次に戦闘のルールを説明しよう。戦闘が始まると各キャラクターに攻撃,防御など戦闘の指示を与え,それぞれ処理していくのはまさにJRPGのクラシックな戦闘そのままだ。ただし,必ずしも1ターンで敵味方が1度ずつ行動するわけではなく,素早さの値や行動によって順番が敵味方で前後することがある。これは「ファイナルファンタジーX」のカウントタイムバトルに近い。

 興味深いのは「レーン」と呼ばれるスキルだ。「レーン」は通常のRPGでいう「特技」「魔法」のようなもので,使用の際には有限のマナを消費する代わりに強力……という点はありふれているが,スキルによっては行動が大きく遅れる代わりに強力なものがある。こうしたスキルをうまく組み合わせて,いかにして突破するかを考えるのが楽しい。

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 そこに加え,今作ではスキルをスピード(早い)/バランス(普通)/パワー(遅い)の3段階に切り替えることで,より細かく順序を調整することができる。またターンの僅かな時間のみ設定された「ワイルドカード」のタイミングでスキルを発動すると,追加で回復や攻撃力増加などの恩恵を受けられる。

 これらスキルの差異,スピードの調整,ワイルドカードの考慮などを加味する戦闘が,ターンベースのJRPG的な戦闘に大きな深みを加えている。単なる雑魚戦であっても(高難度では)適当なコマンドでは苦戦するだろうし,一方で強敵もしっかりとコマンドの管理さえできていればレベルが不足していても太刀打ちできる塩梅なのだ。とはいえ,本作はいつでも難度が調整可能だったり,戦闘速度も変更できるため,どうしても勝てない場合は難度を調整して,テンポ良く進められる。

 このように「ルインドキング」は,まさにLoLのように,日本で発達したRPG文化をリスペクトのまま継承しつつ,それでいながら自分たちで独自に戦略の奥深さや手に取りやすいUIを作り出し,新しいJRPGの形式を作り上げている。それこそ(J)RPGというジャンルを愛してやまない人々にとって,自分たちの慣れ親しんだゲームを「ここまで綺麗に整えられるのか」と驚かせるインパクトがある。


お互い理解しあえず,だからこそ尊重しあうパーティの物語


 もう一つ,JRPGの醍醐味といえばゲームに没入させるストーリーは欠かせないだろう。「ルインドキング」もまた,仲間を一人ずつ集め,各地をめぐりながら住人たちと会話し,やがて強大な敵へ挑んでいく,まさにJRPGの王道そのものと言っていいだろう。

 ただし,重要な違いとして「勇者」,少なくともそれに準ずるパーティのリーダーが欠けており,徹底して「群像劇」として物語が進むのが「ルインドキング」の特徴だ。パーティメンバーはいずれもLoLでは平等なチャンピオンたちなので,そこに序列を付けられないのは当然なのだが,どちらかといえば全く違う立場,全く違う価値観,そういう者たちが半ば仕方なくといった具合で集い,仲間としての絆で結ばれていく。

 物語の舞台は海賊たちの街「ビルジウォーター」と,黒の霧の源泉と思われる「シャドウアイル」が中心となる。イラオイ,パイク,ミス・フォーチュンはいずれもビルジウォーター出身なので自然と参加するのだが,他にも凍土の「フレヨルド」からブラウムが,アジア風の「アイオニア」からアーリとヤスオが合流する。彼らの関係はほとんど初対面であり,それどころかビルジウォーター組は,本来であれば敵同士だったり,全く違う組織だったりするので,当然ギクシャクしている。

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 そうした人間関係をうっすらした同調圧力でまとめるのではなく,むしろ半ばギクシャクした「あなたはあなた,わたしはわたし」といった距離感のまま,されど団結していくというのが大変おもしろい。本作では休憩ポイントが各地に用意されているのだが,ここで仲間たちの会話を盗み聞くことができ,その「距離感」を垣間見られる。

 そもそも,物語上に敵として設定されたシャドウアイルの面々にしても,LoLではフォーチュンらと同様にプレイヤーが使えるキャラクターであり,中でも「魔王的なポジション」のチャンピオン「ヴィエゴ」は,LoLではプレイヤーにとっては親しみ深い相棒だったりする。誰もが必ずしも100%善良でも,悪徳でもないという点では,物語もなかなか読み応えがある。

 ここで一つ,LoLファンとして気になったのが,イラオイの存在だ。実はイラオイ,LoLではお世辞にも人気キャラではない。少なくともヤスオ,アーリ,ミス・フォーチュンたちと比べれば,愛用者はかなり少ないだろう。実際,OPGGで調べた(外部リンク)ところによると,パーティ6キャラクターのうち,イラオイが最も使用率が低かった。

 そんなイラオイも「ルインドキング」では,巫女としてビルジウォーターに伝わる神々と交信したり,尊大だが公正な性格で周囲から親しまれたり,むしろヤスオやブラウムなどの「外国人」との交流で己の考えを見直したりと,おそらくLoLファンであれば驚くレベルの魅力的な描写で,好感度が一気に増した。これはまさに,LoLのIPを使った別作品ならではの表現だと思う。

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 ただし,ストーリーにおいて気になったのが,あまりに専門用語が多い点だ。無論ファンタジーは専門用語を読み解く過程も楽しいのだが,「ルインドキング」は原作の背景まで読み込んでいないとついていけない会話や文章が多い。同じLoLの派生作品「Arcane」は原作を一切知らない視聴者にも理解できる描写が絶妙だったが,「ルインドキング」はハイコンテクストすぎる気がした。


10年越しの帰郷


 冒頭に述べたとおり,今では世界規模となったLoLだが,その発端はごく少数のゲーマーたちがカリフォルニアの小さな工場で開発した作品だ。もちろん最初はほとんど注目されず,資金も満足にない中で,自分たちが面白いと思えるゲームを目指してひたむきに作られた。今で言う同人ゲームやインディーズゲームのような始まりだった。

 そのためか,彼らは作品のあちこちに商業作品では見られないような,結構すれすれの悪ノリを盛り込んでいる。例えば,アサシン用アイテム「妖夢の霊剣(Youmuu's Ghostblade)」。詳しい方なら気づいただろうが「東方Project」に登場する「魂魄妖夢」をモチーフに作られたアイテムだ。

 また,プレイアブルキャラクター(チャンピオン)の1体,エズリアルはダンスコマンドで某アニメのオープニングを踊りだしたりする。日本でもかなりコアなオタクしか理解できないような日本のアニメ・ゲームネタが随所に隠されている。

 LoLは世界的なコンテンツでありながら,日本のサブカルチャーへの愛情を惜しみなく詰め込んでいる。言うならば,今も世界で多くのオタクたちを魅了し続ける日本への憧れや敬意が,それこそたった数人で作り始めた時からモチベーションにあったのだろう。

 そうして世界で羽ばたいたLoLが,派生した作品としてRPGを作り,そこにJRPG的なターンベースの戦闘,仲間たちを集めて挑む物語を導入した。そこに,より洗練された高度な戦闘,そして距離感を重んじる物語といった進化を見せたことは,それこそ一種の帰郷のような感慨深さがある。

 もちろん,その帰郷はRiot Gamesの粋な計らいとも言えるだろうが,何より開発したAirship Syndicateの功績も大きい。元はアメコミ作家でもあったジョー・マデュレイラが設立したスタジオで,実はJRPG的な戦闘といったシステムの一部は同社の「Battle Chasers: Nightwar」から流用した部分も大きい。

 日本のカルチャー,そしてJRPGは,海を渡ってこれほど広く愛されている。その結晶こそが「ルインドキング」なのではないのだろうか。

「Ruined King: A League of Legends Story」公式サイト

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