ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
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第32回:やれることをやる。やれないことはやらない。
2026年7月28日に熊本で起きた地震のニュースを見ながら,その日の夜にこの原稿を書いている。
被害の全容がまだ見えない中,余震への不安を抱えながら過ごしている方も大勢いらっしゃることでしょう。
とてもこんなコラムを読んでいられるような状況ではないと思いますが,こんな時だからこそ「やれることをやる」というのが自分の考えであり,ポリシーであります。
現状,いつもどおりの生活を続けられている自分にとって,いつもどおりに生活することが,巡り巡って何かにつながる。そう思っています。
私には7歳年上の兄がいます。
兄夫婦は数年前から被災地支援のスタッフとして,1年を通じてさまざまな場所で災害支援活動を行っています。はっきり言って,私は当初,彼らの活動に反対でした。
活動内容に反対というわけではありません。
YouTubeなどでも公言していますが,私は今,母親の面倒を看ながら音楽活動,配信活動などを続けています。母は末期がんで余命宣告を受け,脳腫瘍の治療も乗り越えてきました。現在は再発したがんの治療を続けていますが,私はそんな母と毎日楽しく2人で過ごしています。
そんな実の母親よりも血のつながっていない他人を助けている兄に対して,決して明るくない感情を抱いていました。ひょっとすると今もまだそうなのかもしれません。
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鹿児島県での支援活動に一区切りをつけ,数日かけて車で東京に戻り,ちょうど我が家に寄っていたタイミングで熊本の地震が起こり,彼らはまたすぐに車で熊本へ向かいました。
※兄夫婦は支援団体のスタッフとして,国の補助金などを活用しながら被災地での支援活動を行っています。なお,現地でのボランティア活動を希望される方は,自治体や社会福祉協議会による受け入れ体制が整うまで個別の現地入りはお控えください
この数年間,彼らからいろんな話を聞いてきました。
現地での作業は過酷で,人手不足も当然大きな問題ですが,私自身が最大の問題だと感じたのは,「ボランティア活動」というものに対する周囲の人間の認識でした。
災害支援活動の担い手に対して強要される「無償性」こそが,すべての問題の根源なのだと感じました。国などから活動費の補助を受け,どうにか生活費も賄えてはいるものの,客観的に見て,兄夫婦の暮らしは豊かなものではありません。
金銭的な援助を頼まれたこともありましたが,私は断りました。
デリケートな問題ですし,うまく伝えたいと心から思っていますが,兄だから,家族だからこそ,彼らが選んだ生き方を金銭的に支える気にはなれないのです。
彼らがこの生活にピリオドを打ってほかの仕事に就き,それでも生活が苦しいのであれば,あるいは共に母親の面倒を看るために資金が必要なのであれば,私は協力したでしょう。
しかし彼らは自らの意思で,「自分達のやれること」を災害支援活動に見いだしたのだから,それで生活が立ち行かなくなるなら辞めるべきだし,そうでないのなら身近な個人からの金銭的な援助に頼らずに続けるべきだと私は思っています。
他人に金銭的な援助を求めなければ続けられない人助けには,どうしても賛同できないのです。
もっと言えば,私が彼らを資金的に援助したところで,それは焼け石に水というものでしょう。兄夫婦だけでなく,災害支援に携わる人達には,国家規模の金銭的支援が必要だからです。
個人の善意や援助に頼らなければ維持できない構造にこそ問題があって,支援活動の担い手には正当な報酬を受け取ってほしい。それを実現するためにも,個人に頼るのではなく,国や自治体,支援団体が活動に見合った報酬と生活保障を制度として用意する必要があると思います。
そして私が声を大にして伝えたいのは,彼らに対して「無償性」を求めるな,ということです。
彼らは良い家に住み,良いものを食し,良い暮らしをし,良い人生を送る必要があります。趣味や娯楽にも十分なお金を使えるだけの収入を得ていいはずです。
そうして蓄えた心身のエネルギーを災害支援活動へと還元していくことこそが,本来あるべき姿だと思うのです。
しかし彼らは,「被災して大変な思いをしている人達がいるのに,ボランティア活動で金銭を得るなんて何事だ!」という心ない言葉を,被災当事者ではない人から,そして悲しいことに,被災当事者からもぶつけられることが少なくないそうです。
じゃあお前がやれバカ野郎。
編集部,どうかここはこのまま使ってほしい。
こういう考えがある限り,日本でも世界でも,人々が本当の幸福にたどり着くことは難しい。
もう一度言う。
彼らはぜいたくをしてもいい。もちろん,被災者に届けられるべき義援金などを彼らの報酬に回せ,という話ではない。
支援する側の人件費や生活費を,別の仕組みによって正当に確保すべきだ。その保障は,「健康で文化的な最低限度の生活」を営めるだけの水準にとどまらず,それ以上のものであってほしい。
過酷な活動に見合わないほど低い報酬で働く彼らに,「助けた人達の笑顔や感謝の言葉さえあれば私達は幸せなんです」なんて,きれいごとを言わせないでほしい。
そんな状況だったら,人手不足にならないわけがない。当たり前の話だ。
「おい! 災害支援活動をすると,めっちゃ金がもらえるらしいぞ!?」
これで良いじゃないか。こうあるべきだ。
こうしたことは,実際に災害支援活動をしている当事者には,言いたくてもとても言えないだろう。だが普通の人よりも,ほんの少しだけ発信の機会が多い自分が言うことには意味がある。これが私の「やれること」だと思っている。
今大変な思いをされている方々を励まし,声をかけ,応援するのはほかの方に任せる。どうか励まし続け,声をかけ続け,応援し続けてほしい。
私にできることは,母親の面倒を看て,兄夫婦の背中を押して送り出し,曲を書き,ベースを弾き,コーヒーを作り,プリンを売り,YouTubeでしゃべり,ゲーム配信をして,「マジック:ザ・ギャザリング」をプレイしてコラムを書く。それだけだ。
どうか「やれること」と「やれないこと」をしっかりと見極めて,皆さんの一つ一つの行動が積み重なり,持続的な平和の礎となることを願っています。
そして,ほかの方に任せるなどと言っておきながらこんな結びは調子がいいってのは百も承知ですが,被災された皆さん,不安な思いをされている皆さん,大変な思いをされている皆さん。
私の「やれること」が皆さんにとっての平穏への一助になることを心から願っています。どうか,どうかご無事でいてください。
こんなことしかできず本当にごめんなさい。
世界の平和が皆さんを守ってくれますように。
| ■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |


















