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NFTの法的リスクを解説した,JOGAのオンラインセミナー「トークンの抵抗:ゲーム内のNFTに対する規制課題を克服する」をレポート
このセミナーでは,アメリカや欧州,日本でゲームなどのコンテンツビジネスを専門とするGamma Law法律事務所のDavid Hoppe氏が,ブロックチェーンゲームにおけるNFT(Non-Fungible Token,代替不可能なトークン)の法的リスクや,コロナ禍におけるアメリカのゲームユーザーの動向について解説した。
改めて説明しておくと,NFTは“代替不可能”なトークン(デジタル資産)を指す。例えば,通貨は代替可能な資産だ。円からドルへ,ドルからビットコインなど,別の通貨に交換することができる。
しかし,ブロックチェーンゲーム「Crypto Kitties」内で配合を行うことで生まれた猫は,NFTとして設計されているので,それぞれ異なる識別子が与えられる。つまり猫達それぞれが唯一無二の価値を持つので,単純なレートでの交換ができない。これが“代替不可能”ということである。
これらNFTの中には,ニュースになるほど極めて高額で取引されるものもあり,Hoppe氏によると2020年におけるNFTの総売上は2億5000万ドルだったが,2021年は3月末までに2億2000万ドルに達しているという。また,NFTのスタートアップ企業に対して9000万ドルほどが投資されているそうで,その加速度的な盛り上がりがうかがえる。
なお,高額で取引されるNFTは一部のデジタルアートなど一握りに過ぎず,平均的なNFTは100ドル前後で取引されているとのこと。Hoppe氏は「幅広い層の人達やさまざまな規模の企業がNFTの取引に関わる機会がある」とし,「本質的には,リスクが大きい半面,リターンが大きい市場である」と説明した。
その一方で自社のゲームでNFTを扱いたいと考えている企業は,法的なリスクがないかどうかを十分検証する必要があることも指摘された。
Hoppe氏によると,アメリカでは長らくNFTが有価証券かどうか,米国証券取引委員会(SEC)の規制が適用されるのかどうかという議論がなされてきたという。
関連した事例として,数年前に起きたICO(Initial Coin Offering,新規仮想通貨公開)フィーバーのときに,「Howeyテスト」が注目を集めたことが紹介された。Howeyテストとは,1946年のHowey社訴訟事件にて裁判所が定めた投資契約の判断基準である。
結果として,ICOは有価証券になり得るとSECは判断したわけだが,NFTに関しては公式なガイダンスは出ていないとのこと。そのため少し前までNFTは,有価証券というより絵画やワインなどのコレクターズアイテムに近く,投資として購入できるがそれ自体は投資契約ではないという解釈が一般的になされてきた。
しかし最近では,NFTを投資の対象にして大きな儲けを得ようとする流れが活発になっている。Hoppe氏は,SECなど各国の当局もそうした動きに注目しており,NFTに関連した一部の資金調達活動が投資契約と見なされ,HoweyテストによってICO同様に有価証券と判断されてしまう可能性があることを指摘した。
それでは,どうすればNFTが有価証券と判断されないのか。Hoppe氏は,NFTを実装したコンテンツのマーケティング活動において「これは価値が上がる」「再販・転売できる」といった表現は絶対避けるべきだと語った。同時に,それらNFTがコレクターズアイテムであることをアピールすることも重要だという。
アメリカでは,NFTがギャンブル防止規制に引っかかる可能性があることも紹介された
現在,アメリカには暗号資産に関するさまざまな規制があり,NFTにもそれらが適用される可能性があるという
アメリカの送金規制はまだNFTに適用されていないが,今後高額の取引が増えるとその限りではないとのこと
アメリカを筆頭に多くの国ではNFTを含むデジタル資産は財産であり,課税対象であると見なしていることも紹介
セミナーの終盤では,コロナ禍におけるアメリカのゲームユーザーの動向も紹介された。それによると2020年3月から7月の5か月間で,モバイルゲームユーザーの数が28%増加し,そのうち半数がコロナ禍が収束したあとも引き続きゲームをプレイすると回答したとのこと。
また2021年3月のアメリカにおける,ゲームに対する個人消費は56億ドルと前年同月比で18%増加した。これには2020年末にPS5やXbox Series X/Sが発売され,コンシューマゲーム機の世代交代が起きたことが大きく貢献しているという。
ただ,この流れが今後も続くかどうかは分からないそうだ。というのも,アメリカでは新型コロナウイルスのワクチン接種率が上がった結果,モバイルゲームの売上が下がるという傾向が見られるからだ。また,2020年中はゲームの開発が滞るケースも多く,今後数か月間にわたって新作のリリースが減少する可能性が高いため,市場規模縮小の懸念も指摘された。
とはいえ,消費者にはゲーム以外にも動画や音楽配信サービス,SNSなどがあるので,デジタルエンターテイメント不足に悩まされることはないだろうとHoppe氏は語った。また,5〜20歳くらいの世代を指す,いわゆるジェネレーションZのゲームに対する興味関心は圧倒的に高く,ゲーム業界にとってポジティブな要素となっていることも紹介された。
日本オンラインゲーム協会公式サイト
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