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[TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート
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印刷2022/09/16 18:41

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[TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート

 TGS 2022の初日(2022年9月15日),ブロックチェーンゲームギルドのYGG Japanブースにて,「Web3でIPビジネスはどう変わるか 〜ファンに愛される世界的IPのつくりかた〜」と題したステージイベントが開催された。Web3ゲームや経済の有識者2人による対談の模様は,YGG Japanの公式Youtubeチャンネルでも生放送された。

 ここ数年,ブロックチェーン技術をもとにしたゲームが注目を集めているが,その潮流はIPビジネスにどのような影響を与えるのか。古今東西のエピソードを交えながらWeb3領域特化ファンド・Emooteのコムギ氏と,エンタメ社会学者の中山淳雄氏とのセッションが行われた。

モデレーターを務めるコムギ氏(左),ゲストの中山淳雄氏(右)
画像集 No.001のサムネイル画像 / [TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート


スライド不要の濃いトーク!


 ゲストの中山氏は「推しエコノミー」や「オタク経済圏創世記」など多数の著書を手掛けており,司会のコムギ氏は読者でもあったことから今回のセッションを心待ちにしていたという。本ステージは,そんなお二人がノースライド,ノー資料でおくる白熱のトークとなった。

 中山氏と,ブロックチェーン技術やNFTの出会いは,2019年ごろだという。あるブロックチェーンの企業から話を聞いて知ったそうだが,その当時は「怪しい〜」という印象だったらしい。それでも「カードファイト!! ヴァンガード」で試してみて,売上やユーザーの様子から,これは大きい動きであるとブロックチェーンの動向を追うようになったのだとか。

 また,Axieのブームも体感しており,そのときに立役者であるYGGのことも知ったそう。やはり,数千人のプレイヤーが数十万人に膨れ上がったことが,怪しさを払拭させることになったようだ。その後,AxieやSTEPNの浮き沈みを受け,「根付かない畑だけれど,少しずつ養分が育っている」という感覚を持ったという。

 一方のコムギ氏は出版社出身ということもあり,Web3関連の情報を発信したり,携わる人々とのセッションを数多くしていることから,中山氏も今日はいろいろ教わりたいという姿勢で臨んでいるようだ。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート

 コムギ氏は,今回のTGS 2022では集英社ゲームズに注目しているとのこと。出版社がパブリッシャとして進出するのは,これまでのマンガからアニメ,そこからゲーム化という流れとは異なることを中山氏はどうとらえているかと聞くと,中山氏は「少し回り道をしながら作られている印象」だと語る。

 というのも,本当は出版社自らゲーム化まで担うほうが近道ではあるけれど,まだ一足飛びにそういうところまで行くには様子を見たい,だからインディーのクリエイターさんに入ってもらって一緒に作っているのかな,という所感を持ったそう。それに対し,コムギ氏はまるで新人作家を発掘しているようだと例える。

 またコムギ氏からは,これまで新しいメディアや技術が出るたびに,それを象徴するIPが生まれてきたことを踏まえて,NFTやブロックチェーンゲームをどう思っているのか,という質問も出た。中山氏は,そんなに大きな転機だとは感じていなかったそう。なぜなら,スマホという“ウィンドウ”が変わっていないからだという。

 さらに,ブロックチェーンは2021年になって急に売り上げがケタ違いに大きくなって「何かやらなきゃ」という風潮が出てきたが,そこへWeb3など余計なものがくっついてしまった,ゲーム云々ではなく「これは壮大な実験である」とか,ちょっと意識高い系になりすぎちゃった,とバッサリ。

 それを受けてコムギ氏は,資産運用インタフェースとしてブロックチェーンゲームの可能性があるのではと斬り込んでいく。中山氏は「先ほど意識高い系なんて揶揄してしまったけれど,こうした流れには賛成」という意も示しつつ,ソーシャルゲームが台頭してきた当時を振り返る。

画像集 No.003のサムネイル画像 / [TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート

 F2P(フリー・トゥ・プレイ)により,課金する人は20%もいかないくらいで,当然コンソールゲームの会社さんは嫌がった。でもそこから7〜8年かけて課金する人は,コンシューマだけの時代に比べてどんどん払う額が多くなっていった。課金しない人が9割だけれど,その人たちも含めたソサエティができて,IPを運用してくれる。グッズなど商品化されたものを購入してくれるようになったと語る。

 これまでゲームのメディアミックスを手掛けてきた中山氏は,ゲームのツボはキャラクターであり,“キャラクターを遊ぶ”ことだという。プレイヤーにとってはゲームはキャラクターで遊べる箱庭だと,キャラクターの重要性を強調したうえで,ゲームなどストーリーテリングされたものを使って,日々接していることでキャラクターを忘れなくなる,そしていろいろなグッズなど商品を購入したくなると,プレイヤーの心理を的確に分析していた。

 コムギ氏も,身近な存在だから愛着がわくし,それがスマホの中に入っていることもまたポイントだと納得された様子。中山氏は,ポケモンカードの人気の再燃が「Pokémon GO」iOS / Android)のヒットから少し経ってからという事例を挙げ,メーカー側が「モバイルゲームはIP拡張にイイじゃん」と気づくのに時間がかかるものだとも教えてくれた。

 同じことがブロックチェーンゲームの現在の状況にも言えるのだそうだ。マネーゲームさながらに,お金を持っている人がいろいろな人材を集めて作って,コンテンツがお金になったらすぐ逃げてしまう。そういう背景もあって,「ブロックチェーンゲームはIPを育ててくれるのか?」という試しの状態だけど,今のところ育てくれていない。中山氏は「だから手堅い大手メーカーはブロックチェーンはやらないんですね」と鋭く指摘する。

 と,ここで中山氏からWeb3領域特化ファンド・Emooteのコアメンバーでもあるコムギ氏へ,ブロックチェーンゲームが最近少し下降気味であることから,コンテンツが弱いのでは,と質問が飛ぶ。そこはコムギ氏としても認めるところで,トークンが行き交う仕組みに脆弱さがあるという。コムギ氏いわく,Web3は電子メールや検索エンジンの黎明期のような状態とのこと。ただ,進化のスピードとしてはまだまだとしながらも,世界的にこんなに資金が集まるのは,革新的な技術であるからと,明るい面にも目を向ける。

 そして中山氏の「Web3は何パーセント実現していると思いますか?」という問いに,コムギ氏は「5%くらい……」と謙虚な数字を出す。中山氏はなるほどといった様子で,Web3の話は2040年や2050年の話をしているような,ポエムのような印象もあると続ける。

 コムギ氏に対し「この状態で投資するのは挑戦的じゃないですか?」と案じてもいたが,コムギ氏は,NFTという技術のように,これまでにないもの,それが動く瞬間をとらえることがベンチャーキャピタルとしての一番の面白味でもあると語る。失敗から学びながら少しずつ進化していく過程であり,NFTの使いかたなど,世界中で各プロジェクトが模索しているとのことで,長いスパンでプロジェクトを捉えられていることが感じられる。

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 コムギ氏はNFTプロジェクトの問題点として,NFTは転売したほうが大元のクリエイターに還るという仕組みがおかしいと感じているそうだ。そのNFTが好きなら転売したくないだろうけれど,転売のインセンティブが高いという背景もある。IPへの愛着を持つことと,NFTの構造上の問題のいい落としどころがあればと,いつも考えられているそう。

 これは中山氏もブロックチェーンゲームの難しい点であるとうなずく。そのゲームが好きになって遊ぶほど,プレイヤーの持つ資産や価値が上がり,売りどきを意識してしまうことになるからだ。中山氏は,これを目の前にいつもスカウターがあるような状況だと,言い得て妙な表現をしていた。

 お二人はまだまだ話せるという様子だったが,ここでセッションは終了の時間を迎える。コムギ氏は日本のチームは運用に長けている面があるし,ブロックチェーンも運用に長けていたほうが明らかにいいので,日本がブロックチェーンゲームで花開くシチュエーションはあるのではと期待していると締めくくった。

 ちなみに,YGG Japanの公式チャンネルでは番組のアーカイブが配信されている。“イノベーションが起こったときの最初のクリエイターになる人数と,ユーザーになる人数の比率が,昔と現在とでほぼ変わらない”など,中山氏が興味深いエピソードを交えてゲーム内外の話をしているので,興味を持った人は視聴してみては。今回のセッションは専門用語も飛び交う最前線のお二人ならではの内容となったので,コムギ氏は分からないことがあればTwitterアカウントに質問を寄せてほしいともおっしゃっていた。


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