インタビュー
11月28日の大規模アップデートで「ラグナロクオンライン」の世界が一変。3次職スキル/モンスター調整でどう変化するのかを運営スタッフに聞いてみた
ガンホー・オンライン・エンターテイメントは本日(2012年11月22日),同社が運営するMMORPG「ラグナロクオンライン」(以下,RO)で,9月28日から10月16日に行われた「3次職スキル調整テスト」で得られたデータをもとに,3次職スキルおよび各種バランス調整を含んだ「ラグナロクオンライン 大規模バランスアップデート 〜育てる楽しさ、無限大!!〜」を11月28日に実施すると発表した。
3次職スキルに関して,これまでの経緯を改めて説明しておこう。
まず,2010年7月6日にROがリニューアルされ,同時に3次職が実装された。プレイヤー待望の3次職実装ではあったが,「迷惑行為につながる恐れがある」ことなどを理由に,いくつかのスキルが使用制限されることになり,今なお,その力を発揮しきれない職業も存在している。
それらの仕様変更や,3次職のバランスをさらに調整するため,2011年8月31日には3次職のスキル調整を目的としたクローズドテストが実施されたのだが,テスト開始直後から数々のトラブルに見舞われ,わずか数日で中止となってしまった。
それから約1年後,すべてのトラブルを解消したうえで2012年9月28日に,「3次職スキル調整テスト」が再開された。このテストは,予定よりも4日間延長され,10月18日に無事終了している。
そのテスト終了から約1か月,折しも10thアニバーサリーイベント開始日と同時に3次職スキル調整が導入されるのだという。なぜこのタイミングでの実装を決めたのか,そしてそもそも3次職スキルテストおよび調整は達成できたのか。大規模アップデート前にオンライン本部 パブリッシング部 第一企画課主任の中村聡伸氏と第二企画課主任の山本兼寛氏に話を聞いてきたので,その内容をお届けしよう。
「3次職スキル・精霊システム」特設サイト
「ラグナロクオンライン」公式サイト
約1年の準備期間を経て再開された3次職スキル調整テスト。Gravityとの関係を密にし,スピーディな対応を実現
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず,2011年に行われた3次職スキルのテスト中断から,今年9月に再開されるまで,どういう経緯があったのでしょうか。
2011年のテストにおける一番の問題は,サーバーとの接続が切断されてしまい,テストがまったくできない状況が発生したことです。
山本兼寛氏(以下,山本氏):
とくに厄介だったのが,プレイヤーさんがログインすることによってシャットダウンが発生するという状況でした。もちろん一度サーバーを閉じたあと,すぐに調整しましたが,社内やデバッグ会社からのアクセスではほとんど再発しなかったため,原因特定に時間がかかってしまったんです。
4Gamer:
それ以外の問題点として,プレイヤーが実験した数値から,古い計算式がそのまま入っているのでは? というものもありましたよね。
山本氏:
スキル発動による結果は,いくつもの計算式を経て算出されるのですが,一部が想定したものと違う順番になっていたり,計算式が最終決定したものではなかったりといった問題が発覚しました。
その結果,接続ができないことも含めて,このままテストをしても意味がないと考え,テストを中断することにしたんです。
4Gamer:
なるほど。では,再開するまでの約1年,内部ではどのようなことが進められていたのでしょうか。
山本氏:
先ほどお話しした計算式の修正ですね。接続障害があったとはいえ,テストの結果はそこそこ出ていましたので,それに対する不具合の修正や,あとは少ない期間で見られた範囲でのバランス調整を行っていました。
4Gamer:
少しずつ調整を進めて,順に実装していくということはできなかったのでしょうか。
山本氏:
単体の調整だけでは,全体的な最終調整とは違う受け取り方をされてしまう可能性があるんですよ。例えば,一部のスキルを弱体化した場合,単に弱体化したのか,ほかのスキルとの兼ね合いで弱体化したのかで印象がすごく変わりますよね。
中村氏:
そもそも根本となるシステム部分を,どこかのタイミングで入れなくてはなりませんでした。それを最後に入れるのであれば,スキル調整もまとめたほうが,プレイヤーにとって不公平になりませんし,バランスの調整という意味でも,弊社が目指している形で導入できます。
4Gamer:
今回の3次職スキル調整は,そうした全体のバランスが考えられているんですよね。
中村氏:
そうです。このスキルはこうだと考えても,そのスキル単体だけの話にはなりません。そのスキルを調整したら,ほかのスキルも調整していく必要があります。考えることが多岐にわたっているため,サクサクとは進みませんでした。
4Gamer:
ちなみに今回のスキル調整にあたり,日本側の要望はどれぐらいGravityに通ったのでしょうか?
中村氏:
Gravityの企画意図や,日本以外でサービスしている国の要望もあります。ですから,双方100%の要望どおりとはいきませんが,お互いに「このスキルはこの形でいこう」という意見をまとめて,しっかりと落とし込めました。
4Gamer:
最終的に日本に実装されるのは,日本向けの調整が入ったスキルになるんですよね。
中村氏:
基本的な柱の部分については,各国で共通になります。ですが,おっしゃるとおり国によってプレイ環境の違いや人数の差があったり,また基本プレイが無料であったりと差異がありますので,各国のスタイルに合わせた調整が入ります。
4Gamer:
つまり,スキルの性能や威力が,各国とも一緒というわけではないんですね。
内容や威力というよりは,各職業のコンセプトやスキルのイメージ,あとはスキルの使い方が違います。例えば……,コメットを無詠唱で発動できる「コメットの書」が一番分かりやすいかもしれませんね。
韓国やほかの国の攻城戦は,敵を待ちかまえるというスタイルではなくて,敵味方がぶつかったところが戦場という捉え方なんですよ。ですから,コメットを撃っても,その中に何人も入らないんですよ。詠唱を見てから避けられるので。
※コメットの書……韓国で実装されている魔法書。ウォーロックのスキル「リーディングスペルブック」で保存したスキルをリリースで開放すると,無詠唱でスキルが発動する
中村氏:
それもあって韓国ではコメットは,「当たれば強いけど,そもそも当たらないダメスキル。だって逃げればいいじゃん」という評価なんですよ。
4Gamer:
なるほど,戦い方が違うから魔法の使われ方も違う。韓国では韓国の戦い方の中で,コメットがスキルとして成立するように魔法書が出てきたわけですね。
山本氏:
そうです。しかし,それをそのまま日本に入れてしまうと,戦い方や人数の差があるために問題が生じてしまいます。そのため,日本では「コメットの書」を実装できないということになりました。
中村氏:
ただ,その代わりとして,日本ではコメットのクールタイムを減らして,短時間にたくさん使えるような調整を行っています。
実際,テストでも最初のころは「コメットの書」を実装した状態でテストをお願いしたんですよ。そしてプレイヤーさんのご意見も確認して「やっぱり実装しちゃだめだよね」という結論になりました。
このほかにもSakrayJのテストでは,いくつもの状態を確認するため先週は設定3や4,今週は設定2でいくといった,さまざまな設定でテストを実施しました。
4Gamer:
事前にいくつかのテストパターンを設定していたわけですか。
中村氏:
そうです。中には極端に威力を高めたり,低くしたりした設定も入れました。調整というと細かい数値を弄るようなイメージがあるかもしれませんが,僕らとしてはダメなラインも出しておきたくて,「強すぎる」「全然使えない」という,わざと極端な性能にしたスキルを設定に含めておいたんです。
山本氏:
なぜ極端な設定が必要かというと,今後アイテムを実装するときに「これ以上の性能を出したらダメ」という結果が明確に分かるので,作りやすくなるからです。
4Gamer:
どの程度までアイテムの効果を上げても大丈夫か,というデータが得られるいい機会になったわけですね。
山本氏:
はい。と言うと,運営はゲームを分かっていないんじゃないかと思われるかもしれませんが,空論ではなく,事実として残ることが重要です。このデータが残ることで,パブリッシャとしてGravityと協議するときの大きな力になるんですよ。
ダメだと分かっている設定でもあえて試して,本当にダメという結果を残せば,その範囲内で落としどころが分かります。実際に,そうして調整したスキルもありますし。
4Gamer:
しかし,そこまでするのであれば,日本にSakrayJサーバーを常設してもいいのではないかと思ってしまうのですが。
中村氏:
以降は,そこまで大きな調整が予定にありませんので,常設というのは考えていません。
今回は,プレイの規模感,人数感を含めて,スキルがどう使われるかをじっくりと検証する必要がありました。ですから,プレイヤーの皆さんにデバッグしていただきたいというよりも,本サーバーと同じように遊んでほしかったわけです。
4Gamer:
とはいえ,このスキル調整の結果によって,本サーバーの自分達の装備バランスに大きな影響が出てくるわけですから,プレイヤーとしてはいつもどおり遊ぶというよりも,いろいろと試して数値だったりを細かく検証したくなるのでは。
中村氏:
そうですね。ですが,テスト開始前にこの真意を伝えると先入観にとらわれてしまって,いつもと違う遊び方になってしまうかもしれないので,あまり詳しくは話せませんでした。結果として,皆さんが確認したいものと,ご意見としていただきたいものが多少異なる部分もありましたが,それでも今回のテスト自体は無事に終えられたと考えています。
山本氏:
午前中はさすがに参加者は少なかったですが,攻城戦が行われる前後の時間には,おそよ500人前後が参加していました。攻城戦終了後も,プレイヤーの皆さんは反省会を行っていたんですよ。
4Gamer:
この仕様で本サーバーに実装されたらどう対応するべきか,という相談もあったでしょうね(笑)。
山本氏:
そうですね。ですから,「明日はこういう作戦でチャレンジしてみよう」みたいな会話が結構されていて,テストサーバーでも反省会ってあるんだなと感心しました。
ほかにもテストに参加したプレイヤーさんの生放送やブログなどに書かれている意見,もちろんSNSに寄せられたご感想もすべてチェックしていました。テスト期間中は,ほぼ24時間体制といっても過言ではないほどの密度で情報を収集し,その結果,予定になかったスキルをテストするために,Gravityに急遽開発してもらったこともありました。
4Gamer:
そんなに即応できるような体制になっていたんですか。どうしてもオンラインゲームの開発において,日本と韓国のあいだでは,何かあったら連絡して,しばらくしてフィードバックがあって,という感じだと思っていましたが。
中村氏:
今回のテストでは,Gravityのプログラムチームとホットラインでつながる体制が作れたので,最終的にはかなりスピードアップしました。
山本氏:
このような調整が続いて,いよいよ今月28日に本サーバーに実装が可能なところまで持ってこれたわけです。
4Gamer:
先ほど,テスト時のスキルの設定パターンについておっしゃっていましたが,今回実装される仕様はそれらを統合したものになるのでしょうか?
中村氏:
このスキルは設定1,こちらのスキルは設定4,これは設定2と3の間ぐらいといった感じで,それぞれ個別で調整しています。最終的な個々の細かいスキル調整結果については,11月27日に公式サイトで告知させていただきますので,「こう変わったのか」と見てもらえればと思います。
4Gamer:
ところで,今回の実装で,これまで停止されていたスキルもすべて解禁されるんですか。
中村氏:
基本的に全スキル解禁という形で調整しています。ただ,開発と確認して「これは攻城戦で使ってほしいスキルだよね」というものは,一般フィールドでは,使用できないままにしたスキルもあります。
4Gamer:
少し気が早いかも知れませんが,今後のRJC(Ragnarok Online Japan Championship)ではそうしたすべてのスキルを使って戦えるようになりますか。
中村氏:
RJCにおいては,競技を行ううえで,7対7に適していないというスキルがあります。例えばジャックフロストのように範囲全体を一気に凍結できるものは,競技用のスキルとしてお話になりませんから,キチンと制限をかけて成り立つ形にします。
4Gamer:
では,今回の実装でスキルが解禁されたとはいえ,それが今後のRJCで使えるかはルール次第ということなんですね。
中村氏:
そうですね。さらに,RJCとRWC(Ragnarok World Championship)でも異なってくると思います。RJCのルールを決めているのは弊社ですが,RWCのルールを作ってるのはGravityです。
RJCの場合,この職業だとBaseLvいくつ,JobLvいくつという感じで細かく調整していましたが,RWCの場合は全員同じレベルなので,全然違うものだと思っています。
4Gamer:
分かりました。今回,3次職スキル調整の実装が決まったわけですが,これで一段落といった感じなのでしょうか。それとも今後,少しずつ調整を進めていくのでしょうか。
中村氏:
よほど想定していない使われ方が見つかったとかでなければ,スキルの性能やコンセプトに関する,大規模な調整は行われないと思いますが,この先新しい職業が増えたり,レベルキャップが開放されたりするという形でのアップデートが控えていますので,そのときに調整が行われる可能性はあります。
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