インタビュー
新ワールド「Breidablik」では「ラグナロクオンライン」の10年間が追体験できる。10周年記念「βプロジェクト」の正体とは
4月29日に開催された「ラグナロクオンライン ファン感謝祭」のカンファレンスで,プロジェクト名のみが発表されていた「βプロジェクト」(関連記事)。翌日には早々とティザーサイトが公開されたものの,やはりプロジェクトの詳細は分からないままという,一切が謎に包まれたプロジェクトだった。
5月7日には「βプロジェクト」のメディア先行登録キャンペーンが開始されたのだが,通常ワールドであれば冒険者アカデミーで手に入るアイテムがキャンペーンのプレゼントだったりして,謎は深まるばかり(関連記事)。
しかし今回の発表で,「βプロジェクト」のキャンペーン内容が,新ワールド「Breidablik」に関わるものであることが分かったわけだ。
もう一つ,これまでROの情報を追っていた人であればお気づきかもしれないが,そもそも「Breidablik」というのは,2012年8月のインタビューでガンホーの中村聡伸氏が話していた,「まったりプレイ」をキーワードにした新ワールド企画と同一のワールド名である。これがβプロジェクトと,どう関わってくるのだろうか。
「ラグナロクオンライン ファン感謝祭 2013」開催前の4月25日に,オンライン本部 第1パブリッシング部 第1企画課主任の中村聡伸氏と,第2企画課の田口 彰氏から,このβプロジェクトとBreidablikについての話を聞くことができたのでお届けしよう。
「ラグナロクオンライン」公式サイト
プロジェクト名の「β」は,ROβテスト時代と「Breidablik」のダブルミーニング
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,「βプロジェクト」について教えてもらえるとのことですね。
はい。そもそもβプロジェクトというのは,RO10周年を記念して進行するプロジェクトの一つなんです。そして,その柱となるのが新ワールド「Breidablik」です。このワールドを起点に,いろいろなものを体験していただきます。
4Gamer:
Breidablikと言えば,昨年のインタビューで話題に上がっていた社会人向けの新ワールドのことですよね。まったりワールドで攻城戦がなく,上位2次職までプレイできるとのことでしたが,今回のBreidablikはそれと同じものなんですか?
中村氏:
「社会人向け」という企画はそのまま引き継いでいますが,ワールドの仕組みは企画当初とは違った形で調整しています。
田口彰氏(以下,田口氏):
まずは,こちらのマップをご覧ください。オープン当初は,ルーンミッドガッツ王国にしか行けないんですよ。
4Gamer:
現在のROで行ける範囲と比べると,ずいぶん狭いですね。
登場するモンスターも,それに合わせて少なくなっています。また,Breidablikのオープンとなる5月21日時点では,1次職のベースレベル60までの開放になります。その後,月1回のペースでアップデートを行い,マップやダンジョン,モンスターの追加,レベルキャップの開放などを行って,最終的には上位2次職まで展開します。エピソード的には,異世界の手前,魔王モロクまでを開放する予定です。
4Gamer:
なるほど,なんとなく見えてきました。Breidablikは,段階的にいまのROの仕様に近づくワールドが追体験できるんですね。
中村氏:
そのとおりです。βテスト時代から異世界直前までを,約半年で体験していただくというのがBreidablikのコンセプトになります。このβテスト時代から連なるROの歴史を体験するという意味での「β」,そしてBreidablikの頭文字が「βプロジェクト」の名前の由来となっているんですよ。
4Gamer:
そういう意味があったんですね。それにしてもβ時代からを追体験できるということは,壊れる前のモロクの街や,昔のフェイヨン(都市)などにも行けるわけで,そこはちょっと嬉しいですね。
田口氏:
すみません。街自体は現在と同じままなんです。
4Gamer:
あれ,そうなんですか。
中村氏:
本当は昔のモロクの街も使いたかったのですが,Breidablikは現在サービス中のクライアントで遊ぶものになるんです。
4Gamer:
Urdrワールド(ほぼすべてのマップでPvP可能なワールド)のように,別クライアントでのプレイではないんですか。
中村氏:
はい。今回の企画は,同じクライアントで既存ワールドもBreidablikも遊べることを重視しています。ウェルカムサービスと似た形式で,ワールド選択時にBreidablikは一番上に表示されて,既存のワールドはその下にあるといった感じですね。だから,モロクやフェイヨン,アルベルタなど,クライアントに付随したゲーム中のデザインは変更できないんです。
4Gamer:
昔の姿を知るプレイヤーとしては,ちょっと残念ですね。もっとも,これを機会に遊ぶという新規プレイヤーには,あまり関係のない部分ではありますけど。ところでマップを見ると,開放予定のダンジョンも当時と開放されていた階層が違いますよね。
田口氏:
そうです。Breidablikのモンスター配置は,既存ワールドに準拠した形になります。そのため,モンスターの強さが昔とは異なっていて,当時のダンジョンに完全に合わせようとすると,バランス的に問題が出てしまうんですよ。
4Gamer:
なるほど。では,サマースペシャルやディメンションダイバーといった季節イベントなどは,Breidablikで開催されるのでしょうか。
中村氏:
通常ワールドで行われるイベントは,通常ワールドのバランスで調整していますので,Breidablikでは一切行いません。ただ,Breidablikオリジナルとして当時のイベントを再現することがあるかもしれません。
あえて残した不便さを人の力で解決する
「Breidablik」は人と人とのコミュニケーションを重視
4Gamer:
Breidablikにおける実際のプレイについて,具体的に教えてください。β時代を体験ということは,スタートから異なると思うのですが。
はい。Breidablikでは,キャラクターメイキングが終わると,すぐにプロンテラの南のマップに転送されます。そこで,プレイヤーみんなで力を合わせて乗り切るみたいな楽しさを体験してもらいたいんです。
4Gamer:
と言いますと?
中村氏:
えーと,個人的な思い出になるんですが,僕が初めてROをプレイしたとき,いきなりポンとゲームに放り出されたんですが,そのとき画面にいたキャラクターから「今日ゲーム始めたの?」と話しかけられたことが,僕にとって「ああ,これがMMORPGなんだ」と一番最初に感動できたことなんです。そういう,MMORPGの何が楽しくて,何に興味を持って遊んできたのかという部分を完全再現したいんですよ。
4Gamer:
現在のMMORPGってチュートリアルが充実しすぎていて,人と話なんてしなくてもゲームのことはほとんど分かるし,進められますからね。
中村氏:
そうなんです。βテスト時代は不自由な環境であったがゆえに,いろいろ工夫するという段階を体験できたと思っているんです。なのでBreidablikでは,そういったものを再現するため,ちょっと大がかりなギルドマスター(以下,GM)イベントをやろうと考えています。
4Gamer:
どのようなGMイベントなんでしょうか。
初めてプレイヤーさんが出現するマップ内にGMがいて,「ROを遊ぶのは初めて?」と問いかけて,簡単なアドバイスや質問に答えたり,希望する1次職の転職先へワープポータルで飛ばしたりするんです。狩りのしかたなどを教えるために,ミニツアーみたいなことを実施して「知らない人とでも一緒に遊べるゲームなんだ」ということを体験してもらおうかなと考えています。
4Gamer:
それなら,ただチュートリアルで教えられるよりも,MMORPGがどういうゲームなのか分かりやすいかもしれませんね。ですが,ずっとGM総出でプレイヤーを見ているわけにもいきませんよね?
中村氏:
最初は,GMイベントを通して「教え合う」ことに慣れていただくんです。そして,GMに教わったプレイヤーが,新しいプレイヤーに教える。将来的には教えることに積極的なプレイヤーさんをGMがコンパニオン認定します。コンパニオンに認定されたプレイヤーさんには専用の頭装備を被ってもらい,初心者はこの人に聞けば大丈夫という,プレイヤーさん同士が交流しやすい環境ができればと思っています。
4Gamer:
昔のスタート地点には,待ちかまえていたようにそういう人がいましたね……。ただ,コンパニオンに認定されたプレイヤーは,個人的に遊ぶことが大変になりませんか?
中村氏:
24時間体勢とまではいきませんがGMも継続して教えていきますし,コンパニオン認定するのは一人ではありません。世話好きのプレイヤーさんを見つけるのは大変かもしれませんが,何人かにお願いすることになると思います。
4Gamer:
うまく教え合う連鎖ができればいいですね。というか既存ワールドで遊んでいるプレイヤーが教えにくるかも……ちなみに,既存ワールドのプレイヤーもBreidablikで遊べるんですか。それとも新アカウントが必要に?
中村氏:
既存のアカウントでBreidablikを選択すればプレイできます。ただ,5月7日開始の先行登録に応募するためには新しいアカウントを作る必要がありますが。プレイに便利なキャンペーンアイテムを手に入れることができるので,そちらもオススメです。
4Gamer:
キャンペーンアイテムというと,「アカデミーバッジ[0]」と「アカデミー新入生帽子[0]」ですよね。あれって,冒険者アカデミーで手に入るアイテムのはずですが,キャンペーンでしか入手できないというのは,どういうことでしょう。
中村氏:
これまでお話ししたとおり,当然あとから登場した冒険者アカデミーもないので,ここではキャンペーン以外で入手できないんですよ。
4Gamer:
ああ,なるほど。なぜこの2つがキャンペーンアイテムなんだろうと思っていたんですよ。序盤にあるとないとでは大違い(初期HPが最大で+1100%)ですから,既存プレイヤーもBreidablikが気になったら,先行登録しておくと良さそうですが,新規アカウントとなる料金が気になります。
中村氏:
Breidablikに関しては,基本プレイ無料で遊べるワールドになるんです。
4Gamer:
基本プレイ無料というのは,これまでに行われた無料ワールド(Skuldなど)とは違うわけですか。
中村氏:
ええ,違います。基本プレイ無料なので,アイテム課金要素も予定しています。具体的には,既存ワールドでも売っているものから,種類を減らしてアイテム販売を行う形になります。
4Gamer:
購入に必要なショップポイントは既存ワールドと同じですか?
中村氏:
はい。ショップポイントも,購入できるアイテムの性能も一緒です。あとは,ゲームのバランスには一切影響のないコスたま(※)も,販売しようと思っています。
(※コスたま……ショップポイントで購入できる衣装装備くじ)
4Gamer:
基本プレイ無料であれば,既存プレイヤーも新アカウントで参加はできますね。
話を戻しますが,プレイヤー同士の交流を深めるGMイベントとしては,ほかにどのようなものを考えていますか。
中村氏:
困っているGMを,プレイヤーのみなさんで協力して助ける,例えばキノコの胞子を100個ずつ集めてくるみたいな,昔のキャストイベントに近いものを展開したいと考えています。
交流を促すものとしては,GMイベントだけではなく「ボスハンティング(仮称)」というイベントも企画/制作しています。毎週土曜日と日曜日,通常ワールドでは攻城戦を行っている時間帯に集まり,みんなでパーティを組んでボスやその取り巻きを倒しにいこうというイベントで,参加するとポイントが入手できます。ポイントはアイテムと交換できるので,イメージとしては蜃気楼の塔に近いかもしれません。先のアップデートで実装する予定のモンスターも出現するので,いち早く強い装備品やレアアイテムを手に入れるチャンスでもあります。
中村氏:
知らない人同士,プレイヤー同士でコミュニケーションをとれる場所を作りたいんです。パーティを組んでいると効果を発揮する支援NPCも設置して,知らない人同士でパーティを組んで効果を受けられる,パーティを組むとメリットがあるからみんなで組もう,という形にできたらと思ってます。
4Gamer:
ボスハンティング(仮称)だと,経験値を稼げたりするんでしょうか。
中村氏:
どれぐらいの経験値が稼げるかは,まだなんとも言えませんが,そもそもBreidablikは,キャラクターの成長がかなり早くなるように調整しているんです。
4Gamer:
というと,モンスターの獲得経験値が多くなるんですか?
中村氏:
当時のワールドと比較した場合は,ですね。3次職まで育てることを前提で組み上げられた既存のワールドと比較すると実は逆に,同等の獲得経験値だとレベル上昇が早すぎるんです。
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