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[GDC2004#14]Epic Gamesが最新エンジン公開! | - 2004/03/29 20:48 |
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GDCイベント会場にあるEpic Game社のブースで,同社の人気シリーズの最新作「Unreal III」のベースとなる,Unrealゲームエンジンの最新バージョンが公開された。 これは,ライセンシングを目的にゲーム開発者を中心に披露されていたもので,カメラの持ち込みはできない(撮影はいっさい不可)ものの,プレスにも情報公開が行われていたのだ。デモは,技術デモらしくいくつものシーンに分かれていたが,すべてがリアルタイムでレンダリングされたダイナミックなものだった。 まず最初に公開されたシーンが,Unrealデモの定番ともいえるカテドラルの屋外シーン。ガーゴイルなど石像のリアリティもなかなかだが,ここで見せているのはパーピクセルの照明効果である。 Unreal IIIエンジンで可能となったHDR Lighting(High Dynamic Range Lighting)は,DirectX 9で標準化されている照明効果(及びテクスチャ)技術で,浮動点テクスチャと浮動点に精密なフレームバッファを処理することで達成される。単一の照明源でも非常に明るくできるので,オブジェクトの影もリアルで濃密に表現できるのだ。 カテドラルの内部にカメラを進めると,さまざまな照明効果や物理効果の実験の場となる。チェーンでつるされた金属製の手提げランプの火がチラチラしており,デモの担当者は「ゲームエンジンに取り入れられたことで,プログラマーの手をかけなくてもアーティストが照明のチラつきを自在に表現できるようになる」と説明する。 ランプをクリックすると狂ったようにランプが動き始め,壁にぶつかるたびに物理や照明,影の動きがリアルタイム演算されているのが分かる。人間型モデルを使ってのラグドール効果のデモも行われたが,これまで提携してきたKarmaの物理エンジンなのか独自のものなのかは不明だ。 このカテドラルの内壁は,いかにも火山岩を切り出したようなデコボコとした材質で表現されており,近くにカメラを寄せると穴やひっかき傷に合わせて影が投影されているように見える見事なものだ。しかしこれはBump Mappingの進化型であるテクスチャによる効果であり,Virtual Displacement Mappingという技術を使っているもの。ワイヤーフレームに切り替えてみるとただの平面だったのには,デモが行われていた室内の30人ほどの開発者達も驚きの声をあげていた。 このVirtual Displacement Mappingは今回のデモで頻繁に登場しており,Unreal IIIエンジンの代表的な機能の一つであるようだ。 その次のデモでは,200万ポリゴンで描かれたというドラゴンが登場。胴体の大きな茶色のドラゴンで,頭部から背中にかけては皮の材質のヘルメットやくつわが装着されている。このモデルをリアルタイムでNormal Mapping(法線ベクトルを使ったBump Mapping)に切り替えてスケールダウンできるのがUnreal IIIエンジンの特徴だ。 翼を広げると薄い皮膚を透かして血管が見えており,スケールダウンしてもまったく質感が失われていない。 ドラゴンの次に出てきたのがゴブリンかオークのような生き物で,これまたリアルな皮膚が素晴らしかった。大きい図体のものは,サイズこそドラゴンよりも小さいものの装備を含めて600万ポリゴンでモデリングされている。これを,やはりリアルタイムでスケールダウンさせて,Normal Mappingで処理した6500ポリゴンのモデルへと変換。しかし,いつ変換させたのかさえ分からないほど,オリジナルの質感を留めていた。 今回のデモで使用されていたシステムは,Athlon FX系統の2GHzのCPUと,NVIDIA社の次世代GPU(NV40?)。また筆者が入らなかった隣りの部屋では,ATIの次世代カードを使用してのデモが行われていたという。 Epic Games社は,ミドルウェアとして成功するためにはデベロッパにやさしいツールセットでなければいけないとし,オブジェクトの物理計算も,重量や材質などを指定するだけで行われるようになっている。"ドアに付いた金属の留め金"なんてものも,別々に計算されるようだ。そしてさまざまなテクスチャ効果も,まるで「Civilization」のテクノロジツリーのようにドラッグ&ドロップでつなぎ合わせていくだけで,マルチテクスチャとしてリアルタイムで表現できるようになっている。 今回はあくまで"技術デモ"であってUnreal IIIに関する情報は皆無だったが,「Half-Life 2」や「DOOM III」さえも,早くリリースされなければ,少なくてもグラフィックス面では旧世代化してしまうかもしれないと感じた次第だ。 ライセンシングで成功しているEpic Games社だけに,今後もUnrealエンジンの能力がさまざまなゲームで発揮されることになるだろう。(奥谷海人) ※ブースの外観さえ撮影を断られたため,写真はありません。ご了承ください |
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