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AMDがGPUの機能ロードマップを公開。2016年のRadeonはDisplayPort 1.3&HDMI 2.0aとHDR表示,そしてHDMI接続時のFreeSyncに対応する
次世代GPUのアーキテクチャが明らかになったわけではないが,PCゲーマーにとっては十分すぎるほど重要な情報が出てきたので,今回は,その内容を簡単に紹介してみたい。
RadeonがUltra HD Blu-rayと同じHDR表現に対応
HDRとは何かについての詳しい説明は4Gamerの連載「西川善司の3Dゲームエクスタシー」バックナンバーを参照してほしいが,誤解を恐れずざっくり表現するならば,HDR対応ディスプレイと対応GPU,対応アプリケーションを利用することにより,従来比で輝度ダイナミックレンジと色域を大幅に引き上げた,より現実世界の見た目に近い映像を表示する技術のことだ。
HDRと対になる従来型ダイナミックレンジのことは「Standard Dynamic Range」(以下,SDR)というが,下は,これまたAMDが示した,SDRとHDRにおける「輝度と色域をどれくらい表現できるか」を比較したスライドだ。
SDRでは0.05〜100cd/m2の間に輝度ダイナミックレンジを収める必要があったため,輝度や色域に大きな制約があったが,HDRでは0.0005〜1万cd/m2をカバーするので,輝度も色域も制限が一気に緩まるという。
冒頭で,次世代RadeonがついにHDMI 2.0aをサポートするという話をお伝えしているが,すでにDisplayPort 1.2に対応し,十分な伝送帯域幅を持っている既存のRadeon R9 FuryシリーズおよびRadeon R9 300シリーズでも,HDR表示自体はサポートされる。ただし,現行製品の場合,1920
上のスライドで,解像度とリフレッシュレートを示す文字のところに「10bpc」とあるのに気づいたと思うが,bpcというのは「bits per color(channel)」の略で,要するに「10bitカラー」のことである。
現在市場に流通しているディスプレイデバイスだと,RGB各8bitで約1677万色表示に対応するのが一般的だが,「Ultra HD Blu-ray」に対応するHDRディスプレイでは,輝度ダイナミックレンジの変換関数(※ガンマ関数のこと)に「ST.2084」,色域の表現には「ITU-R BT.2020」を採用し,RGB各10bitへ拡張することになる。AMD製GPUだと,プロフェッショナル向けのFireProがすでに10bitカラーに対応しているが,Radeon R9 300シリーズ以降のGPUでは,FirePro並みの仕様を獲得することになるわけだ。
もちろん,HDR表示は,Ultra HD Blu-rayだけでなく,ゲームグラフィックスにも有用である。最近のゲームエンジンだと,内部的にHDRでレンダリングして,最終表示の段階でそれをSDR表示用に最適化しているものが多かったりするので,ゲーム側のHDR対応自体は,実のところ,それほど難しくないだろう。
なんといってもディスプレイデバイスの買い換えが必要になるため,初期投資は必要になるが,相当にわくわくさせられる発表なのは間違いない。
2016年のFreeSyncは,HDMIやノートPCの内蔵パネルに対応
FreeSync自体は,組み込み向けのDisplayPort規格である「eDP」(embedded DisplayPort)にある仕組みを利用して,外付け液晶ディスプレイの表示タイミングをGPU側から制御するという技術である(関連記事)。
DisplayPort規格を利用して生まれた技術であるため,現状のFreeSyncは,DisplayPortでPCと液晶ディスプレイを接続する必要がある。しかし,いまどきのゲーマー向け液晶ディスプレイはともかく,低価格の液晶ディスプレイや家庭用のテレビなどでは,DisplayPort入力を備えていない製品も多い。AMDによれば,「メインストリームのディスプレイでは,70%がDisplayPort端子を備えていない」そうだ。
そこでAMDでは,将来のHDMI規格にFreeSyncのような可変リフレッシュレート技術を盛り込むように働きかけているという。ただ,規格の成立を待ってばかりもいられないということで,ディスプレイメーカーや半導体メーカーと協力して,HDMIでFreeSyncを利用する「FreeSync Technology over HDMI」(以下,FreeSync over HDMI)を開発したというのが,今回の発表に至る経緯だと,追加の情報がもたらされている。
AMDの資料によれば,FreeSync over HDMIは,HDMIの「vendor-specific extensions」(メーカー固有拡張)仕様を使って実装しているとのことである。
FreeSync over HDMI対応製品も,すでに名前が挙がっており,3社から多くの製品が投入される予定であるという。Samsung Electronics製(以下,Samsung)の34インチディスプレイ「CF791」のように,アスペクト比21:9の横長ディスプレイも登場するようだ。
液晶ディスプレイだけでなく,テレビでの対応も期待したいところではあるが,日本メーカーで可能性がありそうなのは,1080pでの120Hz入力に対応した製品をラインナップしている東芝くらいだろうか。
もう1つは,ノートPCの内蔵液晶パネルでも,FreeSync対応できるようになったことだ。対応製品の第1弾は,Lenovoのゲーマー向けノートPC「ideapad Y700」のAPU+GPU搭載モデルになるという。ただ,ideapad Y700は国内でも販売されているものの,ラインナップの中にAPU+GPU搭載モデルはなかったりするので,AMD製プロセッサ搭載ノートPCがほとんど壊滅的な日本市場に果たして登場するのかは,まだなんとも言えない。
なお,これに合わせてAMDでは,FreeSyncに対応可能であると確認できたノートPC用液晶パネルを,「FreeSync panel」として認定するとのこと。これは,ノートPC用G-SYNCに対応する液晶パネルを「G-SYNC Panel」として認定しているNVIDIAの制度をフォローしてきた形といったところだ。
……以上,駆け足でまとめてみた。今回AMDからもたらされた情報がスライドだけなので,いろいろ分からない部分も多いのだが,HDR関連はゲームグラフィックスを大いに進化させる可能性があるだけに,対応ディスプレイも含め,今後の動向を注視していきたい。
あとは,期待の次世代GPUに関する情報が,一刻も早く明らかになることを楽しみに待ちたい。
AMD 公式Webサイト
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