レビュー
最新世代の赤外線センサーを搭載した往年の名機,その価値を探る
Razer Diamondback 3G
» まだ日本でゲーマー向けデバイス市場が立ち上がっていなかったころに登場し,ハイエンドマウスとして高い注目を集めた「Razer Diamondback」。4GamerにおけるCrize氏のマウスレビュー第1弾となった同製品の復刻版を,国内“再発売”となったこのタイミングであらためて評価することになったわけだが,さて,そのジャッジは?
正確を期すと,2007年の秋口に一度国内発売されたあと,国内代理店が変わって2007年12月15日に再び“新発売”となったのだが,今回はこのタイミングで,新しい命を吹き込まれた往年の名機を掘り下げてみたい。
さてDiamondback 3Gだが,マウスのキモとなるセンサーが替わったことで,製品のスペックにいくつか変更が生じている。その詳細については10月17日に掲載したファーストインプレッションで説明してあるので,製品としての基本情報はそちらを参照してほしい。また,旧Diamondbackに関しては,“色違い”の限定版,「Razer Diamondback Plazma Limited Edition」のレビュー記事を参考にしてもらえれば幸いだ。
テスト環境は表のとおりで,今回も2台のPCで検証を行っている。
作りは旧Diamondback,挙動はDeathAdder。
いいところもそうでないところも踏襲する新モデル
先のファーストインプレッションでお伝えしているとおり,Diamondback 3Gは,旧Diamondbackと同じ“鋳型”を用いて製造されている。そのため,形状はもちろんまったく同じ。左右メインボタンのクリック感や,チルト機能のないシンプルなスクロールホイールも,「まったく同じ機構を用いているのでは?」と思うほど違和感がない。Razer製らしい,チルトホイールのしっかりした印象も健在だ。
もっとも,連打の必要がないコマンドを割り当てるなら,使い勝手の悪さはそれほど感じない。サイドボタンは親指から見て奥(=マウス前方)側がやや重く,手前(=マウス後方)側はやや軽めと,微妙に押し心地が異なるので,慣れれば「どちらを押しているのか」把握できるようになるからだ。
挙動についても述べておこう。ファーストインプレッションで説明しているとおり,Diamondback 3Gにおいて解像度は1800/800dpiの2段階設定となる。シンプルな2段階切り替え式で,後述するドライバのコントロールパネルから選択するとマウス内部でハードウェア的に切り替わる仕組みになっていることなどが影響しているのか,どちらの解像度設定でも基本的な動作におかしいところはなく,総じて安定している。同じセンサーを搭載したDeathAdderと同じく,マウスの追従性は高い部類に入るといっていい。
ただ,「第3世代センサーならでは」の部分はあまりなく,正直なところ,解像度1600dpiの旧Diamondbackと印象に大差はない。旧Diamondbackのポテンシャルは十分に高く,Diamondback 3Gにおいて,これこそ第3世代センサーの恩恵,と断言できるような要素に乏しいのも確かだ。
第3世代センサーでは,リフトオフディスタンスの短さが強くアピールされている。リフトオフディスタンスとは,マウスを持ち上げたときセンサーが反応してしまう距離(=高さ)のこと。FPSやRTSをプレイすると,マウスを持ち上げてマウスパッド“上空”を移動させる動作を行う局面が出てくるが,そうしたとき,マウスポインタが誤作動するのを避けるためには,短いほうがいいというわけだ。
第3世代センサーの公称リフトオフディスタンスは2.1mm。これに対して筆者はDeathAdderのレビューで「2.1mmより高い場所でセンサーが反応する場合はあるものの,大きな問題ではない」と述べたが,この評価をそのまま繰り返しておきたいと思う。
もう少し具体的に説明すると,今回試したサーフェス(※マウスが接地する面)では,布素材といっていい「QPAD Gamer LowSence」や金属系素材の「Razer eXactMat」,「色の薄い木目調のテーブル」では2.1mmというスペックどおりの反応となったが,同じ高さで試すと,プラスチック系の「Thunder 9 BK1(Smooth)」ではロゴ部分で微妙に,「色の濃い木目調のフローリング」と布系マウスパッドの「Fatal1ty FatPad」および「SteelPad QcK mass」だとマウスの動きに合わせてポインタが動いてしまう。相性の出方に一貫性がないため,試してみるまでなんともいえない雰囲気だ。
ただ,これもDeathAdderのときに述べたが,3.5mm以上の高さではどのサーフェスでもポインタは反応しなかったので,使い方次第ではまったく気にならないはず。可能なら,Razer Eliteプログラム参加店舗の店頭で試してみてほしい。
旧Diamondbackの問題点放置は残念
価格性能比も微妙だが,決して悪いマウスではない
それは,旧Diamondbackから機能的に引き継いだ“右手/左手の設定変更機能”だ。これは,専用コントロールパネル「Razer Configurator」の「BUTTONS−Orientation」に用意される選択肢「Right-Handed」「Left-Handed」から一つを選ぶと,それ一発でマウスボタンの配置を左手仕様に切り替えられるという,いかにも両手対応マウスらしい機能である。ただこの機能,旧Diamondbackでは不具合を抱えており,ゲームタイトルによっては,左右の入れ替えが正常に行われないという困った状態になっていた。
もちろん,ゲーマーの大多数は右手でマウスを使うと思われるので,目くじらを立てるようなことではないかもしれない。しかしRazerは,右手専用マウスであるDeathAdderをリリースしたとき,「左利きのゲーマーを大切にしている」と述べていた(※リンク先は英語ページです)。そして,左利きのゲーマーに向けたマウスがこうして出てきたわけだが,大切にするという姿勢が本物であるなら,最低限,過去の製品の明らかな問題点はきちんと修正してほしかったというのが,筆者の率直な感想だ。
今回,久しぶりに“Diamondback”を触って感じたのは,最近のマウスの中にあって,圧倒的に軽い部類に入ることだ。とくにプラ系のマウスパッドと組み合わせたときの軽快感は秀逸で,筆者のように,マウスパッドに手首をつけるようなスタイルで操作する人に向いている。長時間のゲームプレイ向き,ともいえるだろう。
こういった,いい部分が受け継がれた半面,そうでない部分も踏襲してしまったことは,残念というほかない。また,実勢価格が7000〜8000円という点についても,同じく復刻となった「Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0」が,(こちらは仕様が以前からほとんど変わっていないとはいえ)デビュー時のほぼ半額近い価格で再発売されたことと比較して,コストパフォーマンス的に微妙なものを感じてしまう。
もっとも,左右どちらの手でも利用できるゲーマー向けマウスとしては,依然として貴重な選択肢であり,その完成度からして存在感は大きい。左手でマウスを使う人にとっては上位候補となるだろう。今回は少々辛口な評価になってしまったと自分でも思うが,それでも往年の名機の復刻版。決して悪いマウスではない。光学センサー式の左右対称型マウスに魅力を感じたのであれば,選択肢に入れて後悔はしないはずだ。
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