レビュー
Razerから登場した“G5 Laser Mouse後継”のハイエンドマウス
Razer Imperator
南米大陸に棲息する寿命の長いヘビ「インパレータ」の名にちなみ,ゲーマー向けマウス市場における長寿製品になるべくその名が与えられたというImperator。本体左サイドに用意される2連サイドボタンの位置を前後に調整できる点と,Razerブランドの従来型マウスにはありそうでなかった形状に目を引かれがちな本製品だが,競合製品がひしめく,1万円前後の価格帯で,優位性を示すことはできるのか。今回は,この点を考えてみたい。
“(G5T+DeathAdder)÷2”な形状でフィット感良好
「つまみ」「かぶせ」の両方に対応できる柔軟性も
冒頭で,Razer USA製品らしくない形状だと述べたが,身も蓋もない言い方をすれば,Logitech(ロジクール)製のゲーマー向けマウス,「G5 Laser Mouse」(型番:G-5T,以下 G5T)の特徴を,かなりの部分で模倣したようなデザインだ。
例えば左サイド。G5Tの場合,えぐり取られたような側面のカーブは,手前(=手首側)から奥(=指先側)に向かっていったん外側(=マウスの手前から見ると左斜め前方向)へ膨らみ,サイドボタンの端あたりから先はカーブが収束に向かう。対するImperatorでは,手前から奥まで一貫して外側へ反り返っていて,「Razer DeathAdder」(以下,DeathAdder)似だ。端的にまとめると,「DeathAdderに似たカーブを持つ左サイドに,G5Tのような窪みを付けたような形」である。
このメリットはかぶせ持ち時に顕著で,親指の密着度合いが高まった結果,マウスを奥方向へ動かす場合に,親指の先を使って奥へ押すように動かせるのはいい。
「G5Tを深めにかぶせ持ちしたとき,出っ張りのせいで薬指が右サイドに収まりきらず,やむなく右ボタン脇のスペースに載せることになった」という2本指派の読者もいると思うが,Imperatorの右サイドデザインでは,スペース的に余裕があり,ぎりぎり薬指と小指を側面に収められる。この意義は小さくない。
縦方向が短くなっている分,指先を使ってマウスを手前へ引き寄せても,本体が手のひらにぶつかってしまうようなケースが少ないのは,つまみ持ち派にとってポイントが高そうだ。
スライド式サイドボタンは斬新かつ有用
その他のボタンも満足できる完成度
サイドボタンの位置調整が可能なマウスといえば,Imperatorを語るうえで外すことのできない製品「Microsoft Habu」(以下,Habu)が思い当たるが,Habuでは,サイドパネルを交換することで,2パターンを切り替えていたのと比べると,Imperatorでは,ずいぶんスマートなものへ進化したといえるだろう。
最初にRazer USAのプレスリリースを見たときは,そのコンセプトから実用性に疑問を持っていた筆者だが,実際に試してみると意外に便利だ。2個あるボタンの中間に親指の腹が来るよう調整すると,親指を動かさなくても押せるようになるうえ,前後の押し分けができて素晴らしい。
その構造上,頻繁にがちゃがちゃ移動させた場合には耐久性に不安が残るので,最初に設定を追い込んで,そのまま固定するのが正しい使い方ということになりそうだ。
クリック感はいつものRazer USA製品同様に,カチカチとしっかりしたもの。若干固めには感じられるものの,押したいと思ったときに,その硬さが邪魔となるほどではないし,柔らかすぎると誤爆が怖いので,これくらいで丁度よいと思われる。
左右メインボタンも同様にカチカチしたクリック感で,不満のない作り。Mambaを踏襲した大きめのスクロールホイールも,上下回転・センタークリックともに誤操作の起こりにくい,やはりしっかりした完成度だ。
追従性十分なレーザーセンサーだが
現時点では致命的な問題を抱える
さて,Mambaと同じ3.5G Laser Sensorを採用していることから,Imperatorの追従性やマウスパッドとの相性にも期待が高まるが,今回も表1に示したテスト環境で,Imperatorの性能をチェックしたいと思う。
テストに当たっての設定は,下記のとおりである。
●Imperatorの基本設定
- ドライバ:1.00
- ファームウェア:1.04
- トラッキング解像度:5600/1800DPI
- ポーリングレート:500Hz(※Imperatorのデフォルト設定)
- Imperator側設定「Enable Independent X-Y Sensitivity」:オフ
- Imperator側設定「Enable Acceleration」:オフ
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速動作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.5」。ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.175(5600CPI)および0.55(1800CPI)の2種類を用い,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
そして,テスト結果を示したのが表2,3だ。
追従性の面で,不安はまったく残らない結果となった。いずれのマウスパッドでも,ポインタ飛びやネガティブアクセラレーションのない,高いトラッキング精度を実現している。
センサー位置はほぼ中央。ただ,両サイドのホールド位置が奥側になりやすい形状なので,実際に操作するときは若干後ろ寄りの感覚になる |
Razer USAは,Imperatorのセンサーに直線補正をかけていないと主張しているが,Windows付属のペイント機能から確認してみると,確かにかかっていない様子。5600DPIでもピクセルスキッピングは起こらず,1ドットずつ動いているのも確認できた |
これは程度の差こそあれ,いずれのマウスパッドでも現れた症状である。とくに,「DHARMA TACTICAL PAD(DRTCPW35SD)」では,接地のたびに1秒以上動かなくなるため,ゲームどころか,一般的なPC用途でもまず使用不可能というレベルである。フリーズが収まったあとの追従性は上で示したとおりなのだが……。
総じて,樹脂製パッドよりも布パッドのほうが症状は軽微。同じ布パッドでも,「DHARMA TACTICAL PAD(DRTCPW30C)」より「ARTISAN KAI.g2」のほうが症状は軽く,どうも光沢の少ないマウスパッドのほうが,発生頻度,フリーズ時間とも短いような気配は感じられるのだが,確証には至っていない。樹脂製パッドより,ガラス製である「Icemat Purple 2nd Edition」のほうが軽症だったりするのも謎だ。
いずれにせよ,ハイセンシ設定を好み,マウスをほとんど浮かさないのなら影響は少ないが,頻繁にマウスを持ち上げるローセンシタイプのユーザーにとってはイライラの種となり得るだろう。
持ちやすさとサイドボタンのギミックはかなり良い
ファームウェアアップデートでの改善待ちだ
スライド式のサイドボタンは,持ち方に合わせた位置を選べるため押しやすく,センサーの追従性も文句なし。本来なら強くお勧めできるハイエンドモデルなのだが,先にも触れた接地時のフリーズがすべてを台無しにしてしまっているのは,残念でしかたがない。
フリーズさえ解消されれば,Imperatorの弱点は,9000〜1万円程度(※2010年2月27日現在)という実勢価格以外にほぼなくなる。Razer USAには,一刻も早い対応を期待したいところだ。
購入を検討するのは,同社のサポートサイトであるRazerSupport.comで解決のアナウンスがあってからでも遅くはないだろう。
- 関連タイトル:
Razer
- この記事のURL:
Copyright (C) 2023 Razer Inc. All rights reserved