レビュー
Logitech G(Logicool G)ブランド第1弾を飾るマウス3モデルは何が変わったか(前編)
G700s Rechargeable Gaming Mouse
G500s Laser Gaming Mouse
G400s Optical Gaming Mouse
Logitech(※日本ではロジクール)が,従来からあったゲーマー向け製品ブランド「G-Series」を再編し,新たに「Logitech G」(Logicool G)としての展開を始めたということは,2013年4月18日の記事でお伝えしたとおりだ。また同日,Logitech G(Logicool G)の新作マウスである,
- G700s Rechargeable Gaming Mouse(以下,G700s)
- G500s Laser Gaming Mouse(以下,G500s)
- G400s Optical Gaming Mouse(以下,G400s)
のファーストインプレッション記事も掲載している。
ただ,そのファーストインプレッション記事でも予告したとおり,筆者はその後も継続してテストを行った。今回はその結果を基に,Logitech G(Logicool G)の新作マウス第1弾となる3製品の評価を,前後編に分けて行っていきたいと思う。
なお本稿では,ファーストインプレッション記事をすでに読んでくれている前提で話を進めていく。なので,未読の人は,一度目を通しておいてもらえれば幸いだ。
Logitech「G700s」「G500s」「G400s」ファーストインプレッション。ゲーマー向けの新型マウスは従来製品の耐久性向上版か
リファイン版ということで
基本的な形状は変わらない
ファーストインプレッションで言及したとおり,G700sとG500s,G400sでは,「Science Wins」(勝利の方程式)というキーワードに基づいて,手のひらが触れる部分には疎水性のあるコーティング,メインボタン部には手垢の付きにくいコーティングがなされている。一方,基本形状は“リニューアル前”から変わっておらず,G700sは「Wireless Gaming Mouse G700」(以下,G700),G500sは「Gaming Mouse G500」(以下,G500),G400sは「Optical Gaming Mouse G400」(以下,G400)と,それぞれ同じ形状,同じボタンレイアウトだ。
以上を踏まえて,まずは以下,順に外観をチェックしていこう。なお,筆者のマウスレビューでは通常,重量の計測にあたって,ケーブル込みの重量と,分解して,ケーブルをコネクタから取り外した状態とを並記するが,前編の執筆時点では分解まで辿り着いていない。G500sとG400sからケーブルを取り外した状態の本体重量は後編でお知らせしたいと思うので,この点はご了承のほどを。
■G700s
とにかくボタン数が多い印象のG700sだが,13ボタン中,左右メインボタンを除く11ボタンはいずれも,後述する「Logitech Gaming Software」(Logicoolゲームソフトウェア,以下 LGS)から役割を変更可能。標準だと,左メインボタン脇に並んだ3個あるボタンのうち,最奥側とその手前側にはDPI設定引き上げ/引き下げが,最も手前側にはバッテリー残量確認が割り当てられている。
これら3つのボタンは硬めで,人差し指が触れたくらいでは“誤爆”しない。それぞれ異なる傾斜が設けられているため,意識して押し分けることも十分に可能だ。
左サイドボタンは,4個の中央が凹み,それぞれ端に向かって傾斜がキツくなっていく形状で,見た目以上に押し分けやすい。ただ,押下時に得られる感触はカチカチしておらず,なんというか,昔のゲーム機における[A][B]ボタン的な感触になっていた。このあたりがどうなっているのかは後編で確認したい。
なお,左右の両側面加工はサンドグリップだ。ファーストインプレッションでは「サンドグリップの目がG700sより粗くなっているような気もするが,個体差の可能性もある」と,断定を避けていたが,その後,Logitec G(Logicool G)部門を率いるLogitech本社のEhtisham Rabbani(エティシャン・ラバニ)氏から「G700からの変更はない」という回答が得られたので,ここに紹介しておきたいと思う。
端的に述べて,G700sのサンドグリップは,マウスを持ったときに滑りにくく,指先が汗などで少しくらい湿っていても操作性へ負の影響が出にくいように思える。
ちなみに,ワイヤレス接続用のUSB接続型レシーバを好きなところへ引き出せるケーブルのほうは,全長約1.6m,太さ約3mmとなっていた。
■G500s
次はG500sだ。G500sの実測サイズは73.4(W)
……もともとケーブル込みで165gもあるマウスをさらに重くしたいかというのは別の話だが。
G500sのボタン構成。スクロールホイール近くのボタン(風のもの)はスクロールホイールの動作モード切替スイッチだ。ホイールの仕様はG700sと変わらない |
左から順にG700s,G500s,G400sのサイドボタン。G700sの左サイド4ボタンは変則的だが,「変わっている」という意味ではG500sも負けていない |
そんなG500sのボタンで特徴的なのは――繰り返すが,G500でも同じだったので,G500sで初めてこうなったわけではない――サイドボタンだ。G500sでは,一般的なゲーマー向けマウスで約2個分のスペースに3個のボタンが配されているのである。
G500を本気で使ったことのない筆者の場合,使い始めた最初の数時間は,とっさの瞬間に押し間違えることがあった。ただ,ボタンの形状が明確に異なり,指先で凹凸も感じ取りやすいため,指の動かし方に慣れさえすれば,親指の操作だけでで3つの異なるボタンを押し分けられるようになる。サイドボタン多用派からするとメリットは大きい印象を強く受けた。
大きめに凹んでいる左側面。右側面ともども,サンドグリップ加工されている |
ケーブルは硬めだが,実使用上の問題はそれほどない |
なお,本体側面の表面加工はG500sもG700sと同じくサンドグリップ。こちらもG500からの変更はない。G700sと同様,使いやすい印象だ。
最後にケーブルだが,全長は約2mで,太さは約3mm。布巻タイプとなっている。下ろしたては少し硬めの印象を受けるが,G700sのケーブルとは異なり,1週間も使っていればケーブルが馴染んでくる。なので,硬さが問題になることはおそらくないと述べていいのではなかろうか。
■G400s
ボタン構成は左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,DPI変更×2,デフォルトDPI,サイド×2の計8個。「デフォルトDPI」というのは聞き慣れない言葉だが,これは,「デフォルトのDPI設定値」にワンボタンで戻す機能を持ったボタンである。デフォルトのDPI設定値は工場出荷状態だと800 DPIだが,これは後述するLGSから自由に変更できる。
G400sも,上位モデルと同様,親指を置くことになる本体左側面が凹んでいる。G700sやG500sほどには大きくないが,それでもスカートの端からもう一方,本体カバー側と接する端までの長さは実測で約23mmあるため,指が太めの人でもマウスを握るうえで違和感を覚えることはまずないだろう。対する右側面はG500sと同じデザインになっているため,人を若干選ぶ。
G400sで上位モデルと決定的に異なるのは,そんな側面の加工がラバーグリップになっていることだ。やはりG400から変わっていないので,G400のユーザーには説明不要ながら,このラバーグリップには表面に細かな凹凸があり,しっかりとマウスを握り込むことができる。Logitechによれば,同社の一般ユーザー向けマウス製品で採用されているラバーグリップとはまったく異なり,長期間の利用でも摩耗しにくいとのことだが,確かに触った感触も,たとえば「Wireless Mouse M235」などのラバーグリップとは別モノだ。
ゲームで長時間使ったあとに見てみると,指紋の付着は確認できたが,とくに左側面だと,凹みのなかで影になる部分なので,見栄えへの影響はそれほど気にしなくていいだろう。
ケーブルは長さ実測約2.04mで,太さは3mmのビニール皮膜タイプ。G500sの布巻ケーブルと同様,若干の硬さは感じるが,こちらも1週間使っていれば慣れてきて,ケーブルに引っ張られるような感覚はなくなってくる。
少し工夫をすれば持ち方を問わない3製品
G500sとG400sの握った感覚はほぼ同じ
形状が変わらない以上,G700やG500,G400を使っていた人が乗り換える分には操作感も変わらないという話になるわけだが,G700sやG500s,G400sで初めてゲーマー向けマウスに触れる人もいるだろう。その人達に向け,「つまみ持ち」「つかみ持ち」「かぶせ持ち」「BRZRK持ち」の4つの持ち方でそれぞれ数時間プレイしたときの印象を,下記のとおり写真とそのキャプションでお伝えしてみたい。
なお,使ってみたところ,G500sとG400sでは持ちやすさという観点で違いがほとんどなかったため,写真はそれぞれ載せる一方,キャプションは両製品で共通とすることをあらかじめお断りしておく。
■G700s
■G500s&G400s
以上,一部の持ち方ではアレンジが必要ながら,基本的にはどの持ち方でも使っていけると述べていいだろう。個人的には,手のひらをベタ置きできる「かぶせ持ち」との相性が3製品とも最もよく,長時間のゲームプレイでも疲れにくい印象を持った。
Logitech Gaming Softwareは従来から変わらず
多機能だが,端的に述べて分かりづらい
G700sとG500s,G400sは,Windowsのクラスドライバだけでも動作するのだが,本稿の序盤でも簡単に触れたとおり,統合ソフトウェアであるLGSをインストールすると,マウスの各種設定をカスタマイズできるようになる。
LGSのホーム画面は下に示したとおり。ここではG700sを認識した状態になっているが,G500sとG400sでも,基本デザインに違いはない。上ペインにマウスイメージがどんと表示され,下ペインの左側で設定変更したいデバイスを選択し(※Logitech GのキーボードなどもLGSから制御する),下ペイン右に並んだ目的別アイコンをクリックして,それぞれのメニューへ遷移する,といった流れだ。
オンラインゲームのアンチチートツールは,ゲーム以外のプロセスを監視しているのだが,ゲームとは別のプログラム同士が頻繁に情報をやりとりしているケースだと,それを「不正行為である」と認証するケースが少なくない。「オンボードメモリ」は,プロファイルの切り替えなどを行ったときに誤検出されないよう配慮したものだというわけである。
ちなみに「オンボードメモリ」で保存した内容は,LGSがインストールされたPCでのみ有効だ。字面から受けるイメージだと,設定内容を別のPCでも読み出して利用できそうだが,そうではないので注意してほしい。外出時に好みの設定で利用したい場合は,LGSのインストーラをUSBフラッシュメモリなどへ入れて持ち運ぶのがいいかもしれない。
さて,先ほど「最低限」という話をしたが,「オンボードメモリ」を選択した状態では,基本的なボタンの機能割り当てやポインタ速度関連設定,“繰り返し入力”を含まないマクロ機能を設定可能になる。
一方,「自動ゲーム検出」を選択した状態では,より踏み込んだ設定を行って,プロファイルとして管理し,ゲームなどのアプリケーションに応じて切り替えることができるようになる。具体的には,プロファイルごとに異なるポインタ速度設定や機能割り当て設定,いわゆる「加速」の有無,X軸Y軸で異なるDPI設定,“繰り返し入力”を含むソフトウェアマクロ設定が可能だ。
できることが異なっているため,ここを切り替えると,下ペイン右に並んだアイコンも切り替わる。「オンボードメモリ」を選択した状態で表示されるのは,ホーム画面に戻るための家アイコンと,マウスの傍らにNANDフラッシュメモリチップ(?)が描かれたアイコン,接続されたデバイスの基本設定やファームウェアアップデート関連およびLGS自体の設定をカスタマイズするための歯車アイコン,ヘルプを表示するためのはてなアイコンの4つ。これに対して「自動ゲーム設定」では,マウス&チップアイコンが消え,その代わりに,マウスに向かって2本の矢印が伸びるアイコンとマウスカーソルに歯車が寄り添うアイコンが表示され,前者ではボタン設定全般,後者ではセンサー周りの設定が行えるようになる。
「オンボードメモリ」でマウスにチップが寄り添うアイコンを選んだときに表示されるのが下の画面で,ここではマウスの左右メインボタン以外のボタンに単機能や修飾キー込みのキー割り当て,最大5段階のDPI設定,レポートレートや管理マクロなどを,プロファイルとして5つまで保存できる。プロファイル切り替えボタンを設定しておけば,そのボタンから切り替えながら利用可能だ。
そうしてプロファイルを用意したら,今度は左の「コマンド」から任意の機能をマウスのボタン部分へドラッグ&ドロップすると,機能を割り当てられる。「コマンド」には単一キーの押下などがあらかじめ用意されているが,ソフトウェアマクロなどといった特殊な機能は,[+]ボタンから作成可能だ。
「自動ゲーム検出」で表示されるもう1つのアイコン(「ポインタ設定をカスタマイズする」)では,「オンボードメモリ」でマウスにチップが寄り添うアイコンが選んだときと似た画面が表示されるが,ここではボタン設定は行えず,代わりに,ソフトウェアベースの追加機能を利用できる。おそらく最も重要なのは加速の無効化だろう。「アクセラレーション」のチェックを外すと,LGSレベルでポインタの加速を無効化できるので,「自動ゲーム検出」を利用する場合はぜひ無効化しておきたい(※「オンボードメモリ」の場合はWindows側の「マウスのプロパティ」にある「速度」に頼ることとなる)。
なお,歯車アイコンをクリックしたときに表示されるウインドウは下のとおり。ファームウェアアップデートに対応するのはG700sとG500sだけである点や,直線補正の有効/無効を切り替えられるのはG500sだけであることが,スクリーンショットから見て取れよう。
LGSについて長々と説明してきたが,端的に述べて,非常に分かりにくい。
Logitech(ロジクール)は今回,Logitech G(Logicool G)の発表において,わざわざ従来製品の製品ボックスまで新しくして全体イメージの統一を図り,「Logitech(ロジクール)がPCゲーム向けに本気」であることをアピールしているわけだが,これまでゲーマー向けデバイスに触ったことのない人が「へえ,こんなのあるんだ。試してみようかな」と思って購入し,LGSを導入したところで,その内容を理解できるかというと大いに疑問である。
もちろん,G-Series時代から使い込んでいる人であれば問題ないとも思われるが,Logitech G(Logicool G)の展開にあたって,設計を抜本的に見直すべきとまでは言わないまでも(※言いたいが),せめて初心者向けの設定ウイザードくらいは用意してもよかったのではないか,とは思う。
……というわけで前編はここまで。後編では,「で,“s”なしの従来モデルと何が違うのか」という,キモの部分に踏み込んでみたい。
「G700s」「G500s」「G400s」レビュー(後編)。分解と挙動チェックで明らかにする新世代マウスの価値
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- 関連タイトル:
Logitech G/Logicool G
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