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Logicool G「G810」レビュー。本日発表の「純粋なRomer-Gキーボード」は,あえて“らしさ”を切り捨て,万人受けを目指した意欲作だ
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印刷2016/02/17 10:00

レビュー

「純粋なRomer-Gキーボード」は,あえて“らしさ”を切り捨て,万人受けを目指した意欲作だった

G810 Orion Spectrum RGB Gaming Keyboard

Text by 米田 聡


G810 Orion Spectrum RGB Gaming Keyboard(国内製品名:G810 RGBメカニカルゲーミングキーボード)
メーカー:Logitech International
問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター
電話:050-3786-2085
メーカー直販価格:2万750円(税別)
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 2016年2月17日,Logitech International(以下,Logitech)の日本法人であるロジクールが,ゲーマー向け周辺機器ブランド「Logicool G」(日本以外では「Logitech G」)の新作となるワイヤードキーボード「G810 Orion Spectrum RGB Gaming Keyboard」(国内製品名:G810 RGBメカニカルゲーミングキーボード,以下 G810)を2月26日に国内発売すると発表した。直販サイト「ロジクールオンラインストア」における価格は2万750円(税別)とされているので,単純計算した税込価格は2万2410円となる。

 4Gamerでは,発表に合わせて,ハードウェアのみ製品版を入手することができた。G810に対応するバージョンの「Logicoolゲームソフトウェア」(日本以外では「Logitech Gaming Software」,以下 LGS)は,テスト開始時点で未公開だった――北米市場では2月12日に公開となったが,日本語版はまだだ――ため,今回はあくまでもハードウェアのみを,速報的に評価してみたいと思う。


Romer-G搭載キーボードで初めて「万人受けしそうな見た目」を採用したG810


 G810については,2月4日の記事で,世界市場におけるLogitechからの発表内容をお伝えしているが,その最大の特徴は,Logitechと日本のオムロン スイッチアンドデバイスが共同で開発したキースイッチ「Romer-G」を搭載するキーボードとして初めて,シンプルな外観を採用した点にある。

G810を正面から。キー配列は,右[Windows]キーを省略した,いわゆる日本語108キー仕様だ。メインキーのピッチは19mmが確保されているので,実に教科書的な日本語108キー配列キーボードと述べていい。いずれにせよ「外観がシンプルだ」ということは,納得してもらえるのではないかと思う。なおご覧のとおり,LGS未導入の状態では,ブランドカラーである水色でLEDが光る
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G910。ザ・多機能キーボードといった感じである。詳細は発売当時のレビュー記事を参照してほしい
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 Romer-G搭載キーボードの歴史を簡単に振り返っておくと,世界初の採用製品となったのは,2014年12月に国内発売となったフルキー仕様の「G910 Orion Spark RGB Mechanical Gaming Keyboard」(国内製品名:G910 RGBメカニカルゲーミングキーボード,以下 G910)だ。[W/A/S/D]キーの周辺を多機能キーパッド的に使えるよう,追加のキーや,向かって左側が大きく膨らんだパームレストを採用し,さらにキートップはゲーム中の操作性優先で場所ごとに凹型の掘り形状が異なる「Facet Keycap」(ファセットキーキャップ)仕様にしてあるという,大変意欲的な製品だった。
 キーのLEDイルミネーションを約1677万色から選択できる点や,ホイール式の音量コントローラを搭載する点もポイントといえるだろう。

G310(とその派生モデルであるG410)は,G910のルックスをなるべく保ちながらコンパクト化を目指した製品だった。こちらも詳細はレビュー記事を参照してほしい
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 続いて2015年7月に国内発売となったのが,10キーレスの「G310 Atlas Dawn Compact Gaming Keyboard」(国内製品名:G310コンパクトメカニカルゲーミングキーボード,以下 G310)である。G310は,G910から追加キーや音量コントローラを削り,LEDも単色としつつ,一方で左側手前が大きくなったパームレストや,Facet Keycapは残っていたため,G910と同じデザインコンセプトを採用する製品であると,一目で分かった。
 国内未発売の製品として,G310のLEDを1677万色対応とした「G410 Atlas Spectrum TKL Mechanical Gaming Keyboard」(以下,G410)も登場したが,LED以外の仕様は(試していないので,おそらくだが)共通だ。

[W]キーで比較。左がG810,右がG910のキーだが,G810では一般的なメカニカルキースイッチ採用型キーボード風のキートップデザインになっている
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 それに対してG810では,左手側のパームレストが出っ張ったデザイン,そしてFacet Keycapをいずれも廃してきた。一方でG310(とG410)で省かれたホイール式の音量コントローラが復活したりもしているが,それでも,従来製品と比べ,圧倒的にすっきりしたと述べていいだろう。
 Logitech G/Logicool Gキーボードというと,本体のどこかが妙な傾斜になっていたり,謎のギザギザや窪みが入っていたりと,外見のどこかに“クセ”があるのだが,G810には,そういうものがまったく見当たらず,あまりにも普通なフルキーボードに仕上がっている。

ぱっと見,Logitech G/Logicool Gのキーボードなのかと疑いたくなるくらい,見た目がすっきりした
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 主なスペックは下にまとめたが,机上を占める面積は,一般的なフルキーボードとほとんど同じである。

●G810の主なスペック
  • 型番:G810
  • キー配列:日本語108配列+追加ボタン7(Game/Windows key,Backlight key,Mute Key,Media Conrol Key×4)+音量調節ホイール
  • キースイッチ:メカニカル(Romer-G)
  • キー耐久性:7000万回(キーごと)
  • キーピッチ:19mm
  • キーストローク:3±0.2mm
  • 押下圧:45.0±0.2mm
  • キーボードバックライト:フルカラーLED搭載(※Romer-Gに統合)
  • 複数キー同時押し対応:最大26
  • Anti-Ghosting:対応(全キー)
  • キーカスタマイズ:[F1]〜[F12]キーが対応
  • 実測本体サイズ:443.5(W)×153(D)×34.3〜46(H)mm
  • 実測本体重量:1.22kg(ケーブル込み),1.2kg弱(ケーブルを重量計からどかした参考値)
  • ケーブル長:1.8m
  • 対応OS:Windows 10・8.x・7
  • 発売予定日:2016年2月26日
  • 保証期間:2年

側面は4面ともピアノブラック加工となっている。マット加工された表面とのコントラストが見た目のアクセントとなるが,それでも,従来のLogitech G/Logicool G製品と比べると,圧倒的に自己主張が少ない
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 もっとも,よく見ると“らしさ”は残っている。たとえば本体左奥にあるロゴマークは,G810がLogitech G/Logicool Gの製品であることを雄弁に語っており,またRomer-Gキースイッチの効果で,LEDイルミネーションはキートップの脇からほとんど漏れることなく,キートップの文字を照らしている。というか,全体に虚飾を排したデザインになったことで,Romer-Gのイルミネーションをより堪能できるようになったような気はする。

操作系は本体右奥部に集中。そういうデザインということもあり,一般的なキーボードで10キー部の奥にある3連のインジケータLEDは,[F9]〜[F11]キーの奥へ移動している
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 なお,G810における追加の操作系は,本体右手奥にまとまっている。前述のとおり,サウンド出力音量調整用ホイールが復活しているが,そのほかのボタンもG910と同じだ。具体的には,[Windows/コンテキストメニュー]キーを無効化するゲームモードの有効/無効を切り替えるボタン「Game Mode Key」と,LEDバックライトの一括オン/オフを切り替えるボタン「Backlight Key」,スピーカー出力のミュート有効/無効切り替え用ボタン,そしていわゆるメディア制御系の4ボタンを搭載している。

 今回,LGSを導入できていないため,これら操作系がG910とまったく同じかどうか,断言まではできないが,いずれもいわゆるドライバレスで動作することを確認できたので,おそらく,挙動はG910と同じだろう。
 出力音量調整用ホイールは,直感的な操作が可能で,個人的にはかなり気に入っている。少なくともよくある「[Fn]キーと何かのキー」による実装と比べると,ゲーム中の使いやすさは圧倒的に上だ。

3段階に高さを調整できるチルトスタンド。どれを使うかは完全に好みだ
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 キートップを除く,キーボード筐体部の高さは手前側が実測約20mm,奥側が同24.5mm。ここもフルキーボードとしては一般的なのだが,実のところG810では,2段階の高さ調整に対応した特殊なチルトスタンドを装備しており,ここも従来のLogitech G/Logicool G製キーボードにない,ユニークな特徴となっている。

 チルトスタンドの1段めを立てると,筐体の奥側は実測約30mmまで高くなり,2段めも立てると同40mmまで高くなる。1段めの高さが「一般的なキーボードのチルトスタンドを立てた傾斜」に相当しており,2段めも立てると,傾斜はかなりきつくなる印象だ。
 筆者はこれまでも「使う使わないは別として,チルトスタンドで傾斜を変更できるのはよいことだ」と書いてきたが,傾斜の選択肢が3段階に増えるのは,さらによいことだと思う。

 先ほど示したとおり,重量はケーブル込みで1.2kg超級と,かなりの重量感がある。しかも,底面には幅広の滑り止めゴムが奥側2か所,手前側3か所に貼ってあり,キーボードの安定性は極めて高い。チルトスタンドを立てても手前側3か所のゴムが“効いて”くれるので,ゲームプレイ時の手荒な操作でも本体がガタつく心配はまったく無用である。

本体底面(左)。斜めに入るストライプはおそらくデザイン上のものだと思われる。右は本体から伸びるUSB 2.0ケーブルにフォーカスしたものだ。全長は実測約1.8mで,少しゴツめの布巻きケーブルを採用している
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よくも悪くも普通になったキーキャップ


Romer-Gキースイッチ
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 G810が搭載するRomer-Gキースイッチ自体のスペックは,従来製品と変わっていない。バネ圧は約45gとやや軽めで,押しこむ量に応じた荷重変化は少ないストレートタイプ。メカニカルキースイッチの定番であるCherry MXでいうと「Brown」に近い。
 キーが反応する深さ,いわゆるアクチュエーションポイント(Actuation Point,作動点)は,そんなCherry MXよりも25%短い約1.5mmで,そのポイントに,音を伴わないレベルの,軽いクリック感がある。

 また,Cherry MXやその互換キースイッチの場合,メカニカルキースイッチを完全に押し込んだとき,固い底突き感があるのに対し,Romer-Gにはそれがないのも特徴だ。底突き感の柔らかさはメンブレンスイッチに似ており,その点ではメンブレンスイッチ採用キーボードからの乗り換えに向くともいえるだろう。

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 ……と,Romer-Gキースイッチの特徴を振り返ってみたが,実際にキータイプを行ってみると,G910やG310とはかなり異なる印象を受ける。なぜかというとその理由は簡単で,前段で紹介したとおり,G810がFacet Keycapを採用していないためだ。
 Facet Keycapは,そのキーキャップ形状でゲームプレイ中でも指の感触によって[W/A/S/D]キーを中心としたキー配置が分かるため,左手のポジションを適切に保ちやすいという利点があり,G910やG310を使うと,確かにその効果を体感できる。ただ,エッジが直線的に立つ,独特の形状でもあるため,使い始めは指がエッジに当たる感触が強く,違和感を覚えるのも事実だ。

 それに対してG810のキーキャップは,言葉は悪いが「ありきたり」な形状なので,使い始めの違和感はまったくない。あまりにも普通になってしまったキーキャップをどう評価するかは難しいところで,正直,Facet Keycapの際立った特徴が失われてしまったという,残念な思いはある。ただ,Facet Keycapに違和感を覚えていた人からすると,G810の“標準キーキャップ”採用は歓迎だろう。


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 なお,G810は横から見るとキートップ面が湾曲した仕様なので,キーキャップの高さは,最も手前側にある列で実測約9mm,最も奥側のキーで同10mmといった具合に異なる。キーボード筐体自体の高さがある一方で,G910のように着脱式のパームレストが付属していたりはしないため,高さ調整はユーザー側で行う必要があるわけだ。このあたりも普通といえば普通になったといった感じだろうか。

 ゲームにおいて重要な仕様でいうと,G810は,G910やG310と同じく,26キーロールオーバーをサポートしている。搭載するコントローラやキーボードマトリックスは従来どおりということなのだろう。
 今回はMicrosoftが公開しているWebアプリ「Keyboard Ghosting Demonstration」を使ってテストしてみたが,下のスクリーンショットでも分かるように,カタログスペックどおり,26キーの同時押し対応を実現できていることが確認できた。両手の指の数と比べて2倍以上の数の同時入力に対応している以上,事実上のNキーロールオーバー仕様だと言ってしまっても問題はないはずだ。

26キーまでの同時押しにG810は対応している
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ブランドの“らしさ”をばっさり切り捨てたG810は,純粋にRomer-Gを味わいたい人向け


製品ボックス(上)と,そこから取り出した状態(下)。側面のピアノブラック加工を傷から守るためか,G810は薄手のカバーに覆われた状態で製品ボックスに入っている
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 Logitech G/Logicool Gのゲーマー向けキーボード製品は,そのブランド名が誕生する前から,奇抜な本体デザインが特徴だった。G910のパームレストで左手で覆われる部分にある溝と凹みは,単なるデザインではなく,エアフローを生んで蒸れを防ぐとされているなど,設計上の意図もあったりするのだが,いずれにせよ,近未来的とも子供っぽいとも言われるデザインだけに,見た目の好みは分かれるところだ。
 また,尖ったデザインだけに,うまくいかない部分もある。たとえばG310のパームレストは宙に浮いたような形状になっていて,ゲームはともかく,文字の打鍵時はてこの原理で本体が浮き上がってしまう問題を抱えていた(関連記事)。ゲーム用途にはよいキーボードだが,日常使いまで考えると,ユーザー側で対策が必要な製品だったのである。

 また前述のとおり,Facet Keycapも賛否の分かれるキートップであったわけだが,今回のG810は,そうしたLogitech G/Logicool Gのキーボード製品に見られるさまざまな「クセ」を,バッサリと捨て去ってきた。Ujesh Desai(ユージャッシュ・デサイ)氏が率いるようになってからのLogitech G/Logicool Gは,ある製品をリリースしてから,そのフィードバックを受けて対応したと思われる新製品を投入するということがけっこうあるので,今回のG810も,G910とG310に対するフィードバックから生まれた製品という可能性はあるだろう。

LEDが青く光る写真だけだと,誤解を招くかもしれないということで,最後の最後に,16日時点で担当編集が撮影したカットを載せておきたい。ご覧のとおり,G810は,LGSを使うことで,キーごとに異なる色を設定できる。LEDやLGS周りは,追って紹介するつもりだ
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 ごく普通のデザインとなったことで,G810の特徴はRomer-Gキースイッチの搭載に絞り込まれたともいえる。ソフトなキータッチのメカニカルキースイッチは,今のところRomer-Gしかないわけだが,Logitech G/Logicool Gらしい,クセのある外観や設計を理由に,これまでRomer-Gキースイッチ搭載キーボードに手を出せなかった人にこそ,G810は勧められそうだ。
 実際のところ,「Fallout 4」のクエストを進めてみると,ゲームにおける使い勝手はG910やG310と変わらない。それでいて,左右非対称のパームレストがないことや,「Facet Keycap採用キーボードで左手側の指に感じる引っかかり」がなくなることは,日常使いの違和感を露骨になくしてくれている。机上にキーボードを2台も3台も置ける人はまれだと思うので,ゲーム以外でも違和感なく使えるのは,G810の大きな魅力ということになるはずである。

 問題があるとすると,税込の予想実売価格で2万2410円(※2016年2月17日現在)という,決して安くはない価格だろうか。純粋にRomer-Gの打鍵感を味わえるキーボードで,1677万色のカラーLEDイルミネーションも備えることも加味するに,決して高すぎはしないが,国内では「フルカラーLEDいらないからもっと安くしてくれよ」という声も多く挙がりそうな気はする。

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  • 関連タイトル:

    Logitech G/Logicool G

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