レビュー
「純粋なRomer-Gキーボード」は,あえて“らしさ”を切り捨て,万人受けを目指した意欲作だった
G810 Orion Spectrum RGB Gaming Keyboard
4Gamerでは,発表に合わせて,ハードウェアのみ製品版を入手することができた。G810に対応するバージョンの「Logicoolゲームソフトウェア」(日本以外では「Logitech Gaming Software」,以下 LGS)は,テスト開始時点で未公開だった――北米市場では2月12日に公開となったが,日本語版はまだだ――ため,今回はあくまでもハードウェアのみを,速報的に評価してみたいと思う。
Romer-G搭載キーボードで初めて「万人受けしそうな見た目」を採用したG810
G810については,2月4日の記事で,世界市場におけるLogitechからの発表内容をお伝えしているが,その最大の特徴は,Logitechと日本のオムロン スイッチアンドデバイスが共同で開発したキースイッチ「Romer-G」を搭載するキーボードとして初めて,シンプルな外観を採用した点にある。
キーのLEDイルミネーションを約1677万色から選択できる点や,ホイール式の音量コントローラを搭載する点もポイントといえるだろう。
国内未発売の製品として,G310のLEDを1677万色対応とした「G410 Atlas Spectrum TKL Mechanical Gaming Keyboard」(以下,G410)も登場したが,LED以外の仕様は(試していないので,おそらくだが)共通だ。
Logitech G/Logicool Gキーボードというと,本体のどこかが妙な傾斜になっていたり,謎のギザギザや窪みが入っていたりと,外見のどこかに“クセ”があるのだが,G810には,そういうものがまったく見当たらず,あまりにも普通なフルキーボードに仕上がっている。
主なスペックは下にまとめたが,机上を占める面積は,一般的なフルキーボードとほとんど同じである。
●G810の主なスペック
- 型番:G810
- キー配列:日本語108配列+追加ボタン7(Game/Windows key,Backlight key,Mute Key,Media Conrol Key×4)+音量調節ホイール
- キースイッチ:メカニカル(Romer-G)
- キー耐久性:7000万回(キーごと)
- キーピッチ:19mm
- キーストローク:3±0.2mm
- 押下圧:45.0±0.2mm
- キーボードバックライト:フルカラーLED搭載(※Romer-Gに統合)
- 複数キー同時押し対応:最大26
- Anti-Ghosting:対応(全キー)
- キーカスタマイズ:[F1]〜[F12]キーが対応
- 実測本体サイズ:443.5(W)×153(D)×34.3〜46(H)mm
- 実測本体重量:1.22kg(ケーブル込み),1.2kg弱(ケーブルを重量計からどかした参考値)
- ケーブル長:1.8m
- 対応OS:Windows 10・8.x・7
- 発売予定日:2016年2月26日
- 保証期間:2年
今回,LGSを導入できていないため,これら操作系がG910とまったく同じかどうか,断言まではできないが,いずれもいわゆるドライバレスで動作することを確認できたので,おそらく,挙動はG910と同じだろう。
出力音量調整用ホイールは,直感的な操作が可能で,個人的にはかなり気に入っている。少なくともよくある「[Fn]キーと何かのキー」による実装と比べると,ゲーム中の使いやすさは圧倒的に上だ。
チルトスタンドの1段めを立てると,筐体の奥側は実測約30mmまで高くなり,2段めも立てると同40mmまで高くなる。1段めの高さが「一般的なキーボードのチルトスタンドを立てた傾斜」に相当しており,2段めも立てると,傾斜はかなりきつくなる印象だ。
筆者はこれまでも「使う使わないは別として,チルトスタンドで傾斜を変更できるのはよいことだ」と書いてきたが,傾斜の選択肢が3段階に増えるのは,さらによいことだと思う。
先ほど示したとおり,重量はケーブル込みで1.2kg超級と,かなりの重量感がある。しかも,底面には幅広の滑り止めゴムが奥側2か所,手前側3か所に貼ってあり,キーボードの安定性は極めて高い。チルトスタンドを立てても手前側3か所のゴムが“効いて”くれるので,ゲームプレイ時の手荒な操作でも本体がガタつく心配はまったく無用である。
よくも悪くも普通になったキーキャップ
キーが反応する深さ,いわゆるアクチュエーションポイント(Actuation Point,作動点)は,そんなCherry MXよりも25%短い約1.5mmで,そのポイントに,音を伴わないレベルの,軽いクリック感がある。
また,Cherry MXやその互換キースイッチの場合,メカニカルキースイッチを完全に押し込んだとき,固い底突き感があるのに対し,Romer-Gにはそれがないのも特徴だ。底突き感の柔らかさはメンブレンスイッチに似ており,その点ではメンブレンスイッチ採用キーボードからの乗り換えに向くともいえるだろう。
Facet Keycapは,そのキーキャップ形状でゲームプレイ中でも指の感触によって[W/A/S/D]キーを中心としたキー配置が分かるため,左手のポジションを適切に保ちやすいという利点があり,G910やG310を使うと,確かにその効果を体感できる。ただ,エッジが直線的に立つ,独特の形状でもあるため,使い始めは指がエッジに当たる感触が強く,違和感を覚えるのも事実だ。
それに対してG810のキーキャップは,言葉は悪いが「ありきたり」な形状なので,使い始めの違和感はまったくない。あまりにも普通になってしまったキーキャップをどう評価するかは難しいところで,正直,Facet Keycapの際立った特徴が失われてしまったという,残念な思いはある。ただ,Facet Keycapに違和感を覚えていた人からすると,G810の“標準キーキャップ”採用は歓迎だろう。
ゲームにおいて重要な仕様でいうと,G810は,G910やG310と同じく,26キーロールオーバーをサポートしている。搭載するコントローラやキーボードマトリックスは従来どおりということなのだろう。
今回はMicrosoftが公開しているWebアプリ「Keyboard Ghosting Demonstration」を使ってテストしてみたが,下のスクリーンショットでも分かるように,カタログスペックどおり,26キーの同時押し対応を実現できていることが確認できた。両手の指の数と比べて2倍以上の数の同時入力に対応している以上,事実上のNキーロールオーバー仕様だと言ってしまっても問題はないはずだ。
ブランドの“らしさ”をばっさり切り捨てたG810は,純粋にRomer-Gを味わいたい人向け
また,尖ったデザインだけに,うまくいかない部分もある。たとえばG310のパームレストは宙に浮いたような形状になっていて,ゲームはともかく,文字の打鍵時はてこの原理で本体が浮き上がってしまう問題を抱えていた(関連記事)。ゲーム用途にはよいキーボードだが,日常使いまで考えると,ユーザー側で対策が必要な製品だったのである。
また前述のとおり,Facet Keycapも賛否の分かれるキートップであったわけだが,今回のG810は,そうしたLogitech G/Logicool Gのキーボード製品に見られるさまざまな「クセ」を,バッサリと捨て去ってきた。Ujesh Desai(ユージャッシュ・デサイ)氏が率いるようになってからのLogitech G/Logicool Gは,ある製品をリリースしてから,そのフィードバックを受けて対応したと思われる新製品を投入するということがけっこうあるので,今回のG810も,G910とG310に対するフィードバックから生まれた製品という可能性はあるだろう。
実際のところ,「Fallout 4」のクエストを進めてみると,ゲームにおける使い勝手はG910やG310と変わらない。それでいて,左右非対称のパームレストがないことや,「Facet Keycap採用キーボードで左手側の指に感じる引っかかり」がなくなることは,日常使いの違和感を露骨になくしてくれている。机上にキーボードを2台も3台も置ける人はまれだと思うので,ゲーム以外でも違和感なく使えるのは,G810の大きな魅力ということになるはずである。
問題があるとすると,税込の予想実売価格で2万2410円(※2016年2月17日現在)という,決して安くはない価格だろうか。純粋にRomer-Gの打鍵感を味わえるキーボードで,1677万色のカラーLEDイルミネーションも備えることも加味するに,決して高すぎはしないが,国内では「フルカラーLEDいらないからもっと安くしてくれよ」という声も多く挙がりそうな気はする。
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- 関連タイトル:
Logitech G/Logicool G
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