レビュー
Logicool G初の「IE3.0クローン」は,完成度が非常に高い
G403 Prodigy Wireless Gaming Mouse,G403 Prodigy Gaming Mouse
本稿では,そんなG403 Prodigyシリーズのレビューをお届けしたい。
G403WL |
G403 |
なお,筆者はファーストインプレッション記事で,Logitech G/Logicool G初の「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE 3.0)クローンといえる両製品が「どれだけIE 3.0クローンか」といった話題や,握りやすさといった話題は済ませているため,本稿においてそれらを繰り返すことはしない。
G403WLとG403の製品概要,そして見た目の特徴が気になるという人は,まずファーストインプレッションをチェックしたうえで,本稿に戻ってきてもらえれば幸いだ。
[TGS 2016]Logicool G「G403 Prodigy」ファーストインプレッション。これは見事なIE3.0クローンだ
関連記事:Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
LGSの使い勝手は変わらず。センサー出力調整機能は利用可能
これまで筆者のレビューでは再三にわたり,LGSの取っつきにくさを指摘しているのだが,結論から先に言えば「相変わらず」である。何も知らない状態で起動して,最初にいきなり「自動ゲーム検出」か「オンボードメモリ」のどちらかを選択せよと補足説明なしで言われる,このアレさ加減だけでも改善してくれれば,ずいぶんマシになるはずなのだが,どうだろうか?
ちなみに下に示したのが自動ゲーム検出選択時の主要な設定項目で,ボタンへの機能割り当てでは,左右メインボタンとホイールの上下回転を除くすべてのボタンをカスタマイズでき,変更内容は,「プロファイル」として保存すると,exeファイルとの割り当て次第で,ゲーム(などのアプリケーション)が起動したら自動的に当該プロファイルへ切り換え,終了したら標準プロファイルへ戻るような挙動に設定することも可能だ。
また,センサー設定メニューでは,200〜12000DPIの範囲から50DPIで最大5つのDPI値を,125/250/500/1000Hzからレポートレート(≒ポーリングレート)をそれぞれ指定でき,いわゆる「加速」の無効化/有効化も行える。
もう1つ,初期のβ版LGSと組み合わせたときには非対応だった,「マウスパッドごとにセンサー出力をキャリブレートできる機能」が,製品版で無事,使えるようになったことも報告しておきたい。設定周りの挙動は初採用となった「G502 Proteus Core Tunable Gaming Mouse」(以下,G502),あるいはG403WLの上位モデルという扱いになる「G900 Chaos Spectrum Professional Grade Wired/Wireless Gaming Mouse」(以下,G900)と変わっていないが,G502のレビューでも指摘したとおり,本機能だけはやたらと親切で分かりやすいため,設定で迷うことはないだろう。
残る項目は,画像とキャプションで紹介しておきたい。
LEDイルミネーション関連の設定メニュー。G403WLの場合,LEDの発光度合いによってバッテリー駆動時間が変わってくるので,気になる人は無効化するのもアリだろう |
バッテリー関連のインジケータ。G403WLはG900の25時間から延びて28時間の連続駆動が可能(※LEDを無効化すれば33時間!)で,バッテリー残量が10%を下回れば通知もしてくれるので,この画面を見ることはあまりないかも |
相変わらず謎の「ヒートマップ」。用途がまったく思いつかないので,いつかこれがなんのためにあるのかLogitech G/Logicool Gに聞いてみたいと考えている |
LGSの歯車アイコンを選んだ先にある「G403」タブに,アングルスナップ(=直線補正)の有効/無効切り換え項目あり。標準設定である無効のままで問題ないとは思うが |
以上,変わっていないので当然と言えばそれまでだが,ゲーマー向けマウスの設定ソフトウェアに必要な項目はすべて揃っている。とにかく取っつきにくいが,慣れれば相応に使えるようにもなるので,最初は我慢して使い倒すのが肝要だ。
「無線周りの性能はG900と同じ」は本当か?
10月19日掲載のインタビュー記事にもあるとおり,G403WLが採用する無線技術は,G900と基本的に同じものとなっている。となると,その実力には大いに期待できるところだが,実際のところはどうか。G403WLではワイヤレスとワイヤードの両方,G403では(当たり前だが)ワイヤードで,その反応を計測してみよう。
テストで使用したシステムとテスト条件は以下のとおりだ。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(4C8T,定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:MSI GTX 970 GAMING 4G (GeForce GTX 970,グラフィックスメモリ容量4GB)
- ストレージ:SSD(東芝「HG6」(THNSNJ256GCSU,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows 10 Pro
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:3.1.7
- LGSバージョン:8.87.116
- DPI設定:200〜12000 DPI(主にデフォルト設定の800 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
テスト方法はG900のときと同じで,「マウスクリックをしてから音楽制作ソフト上のシンセサイザーが音を鳴らすまでの遅延」をチェックすることで簡易的に割り出している。細かい手順は下記のとおりだ。
- テスト対象のマウスを定位置で固定
- マイクスタンドに吊したRazer製マイク「Razer Seirēn」を,マウスの左メインボタンすぐ近くに置く
- Windowsから音楽制作ソフト「Fruityloops」を起動。本アプリ上にあるソフトウェアシンセサイザーの鍵盤をクリック
- クリック音をRazer Seirēnで集音しつつ,「XSplit Gamecaster」を使って,「Razer Seirēnで集音した音」と「Fruityloops上の鍵盤で鳴った音」をミックスし,映像として録画
- 動画編集ソフト「AviUtl」で,音声をWaveファイルとして切り出し
- サウンド編集ソフト「Audacity」でWaveファイルを開き,クリック音と6.シンセサイザーの音が出るまでの時間を計測
今回のテストにあたって,比較対象としては以下の製品を用意した。
- G900(ワイヤレス接続,ファームウェアバージョン1.3.21,LGSバージョン8.87.116,レポートレート1000Hz)
- G900(ワイヤード接続,ファームウェアバージョン1.3.21,LGSバージョン8.87.116,レポートレート1000Hz)
- Razer DeathAdder Chroma(Razer製2015年モデル,ワイヤード接続,統合ソフトウェア2.20,レポートレート1000Hz)
その結果が表1だ。G900のテスト時と同様,スコアはRazer SeirēnとFruitlyloopsの遅延を踏まえた相対的なものである点に注意してほしい。
結論から述べると,G403WLのワイヤレス接続時がG900のワイヤレス接続時をわずかに上回って最速という結果を叩き出した。平均値で比較して0.8msなので,個体差という可能性もあり得るが,いずれにせよLogitech G/Logicool Gの「G403WLとG900でワイヤレス周りの仕様は同じ」に誇張はないという理解でいいだろう。G900に引き続き,「ワイヤレス速ぇ!」といった印象である。
また,G403WLのワイヤード接続時と,G403とで,見事にスコアが揃った点も興味深い。こちらもLogitech G/Logicool Gの主張する内容そのままといったところだが,G900のワイヤード接続時と比べて1ms以上速い点にも注目しておくべきだろう。
続いては,「MouseTester」を用いたセンサー性能の検証を行っていこうと思う。ここではG403WLをARTISAN製マウスパッド「飛燕 MID」と組み合わせたうえで,センサー解像度は400
グラフはY軸のプラス方向が左方向への振り,マイナス方向が右方向への振り,横軸がms(ミリ秒)単位での時間経過を示す。青い点が実際のセンサーのカウント,青い波線はそれを正規化したものであり,波線の上に青い点が並んでいるほどセンサー性能が良好ということになる。それを踏まえて,下のスクリーンショットをチェックしてほしい。
今回からマウスパッドを変更したが,挙動自体はG900とそう大きくは変わっていない。マウスが変わり,マウスパッドが変わっても似たようなテスト結果が出るというのは,PMW3366とキャリブレーション機能の「らしい」ところと言えそうだ。
計測方法は至って単純で,厚さの異なるステンレスプレートを重ね,マウスの反応がなくなった時点の値を0.1ミリ単位で計測する。ここではG403WLのワイヤレス接続時とワイヤード接続時,そしてG403のすべてでテストを行う。
その結果をまとめたものが表2だが,数値が完全に一致するという,衝撃的な内容となっている。センサーが同じなので妥当と言えばそれまでかもしれないが,やはりここでも,サーフェスに対するキャリブレーション機能が有効に機能しているのだろう。
実スコアも,4Gamerで基準とする最大値の2mmを大幅に下回っており,非常に信頼度が高いと言える結果である。
センサー周りの最後テストは「直線補正の有無」の確認である。ここではLGSの「設定」からアングルスナップから,標準設定である無効時と,チェックを入れた有効時とで,それぞれWindows標準の「ペイント」から線を引いて,補正の有無があるかを確認していく。その結果が下の画像だ。
内部構造はワイヤード版とワイヤレス版で細々と異なる
ここからは簡単に内部構造をチェックしておこう。
本体は,ソールを剥がすと露出するネジを外せば,簡単に上面カバー部と底面部を分離できるようになっていた。
というわけで,下に示したのがメイン基板である。同じ基板を使い回しているのかと思っていたのだが,基板自体は似て非なるものになっているのが興味深い。ちなみに,センタークリック用を除き,基板上にボタンスイッチはないという,けっこうユニークな作りだ。
もう1つは,マウスのセンサーがほんの少しだけ左に傾いた格好になっていることだ。
ファーストインプレッションの時点では気付かなかったが,これはおそらく,右手用のマウスを使用するときに生じる手首の傾き具合を考慮してのものだろう。ただのIE3.0クローンにはしないのだというLogitech G/Logicool Gの想いを感じるポイントだ。いやあ,割と驚きました。
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
「IE3.0クローン市場」にくさびを打ち込む,ハイグレードな右手用マウス
G30x系のサイズでないと絶対にダメだという人にとっては厳しいだろうが,そうでもないなら,「IE3.0クローンはデカい」という先入観をひとまず横に置いて,触ってみる価値があると思う。
また,センサーは定評あるPMW3366で,サーフェスに対するキャリブレーション機能があり,また,ワイヤレス,ワイヤードとも高速な応答性が,G403WLとG403にはある。とくにG403WLは,重量を気にしないならワイヤレスでいいんじゃない? と思わせられるデキのよさだ。
一方,ここまであえて書いてはこなかったが,G900と比べて露骨に「落ちた」と感じられる部分もある。それはメインボタンのクリック感で,G403WLとG403は,押下時の抵抗と,指を離したときの返力が,G900と比べて弱まっている印象なのだ。
G303と同等のテンションシステムは決して悪くないというか,一般的なゲーマー向けマウスと比べると十分に良好で,そこは勘違いしてほしくないのだが,G900と比べると物足りなさが否めないのも確かだった。
前者は「IE3.0クローン」としては屈指の高価格ながら,依然として1万円台半ば〜後半の実勢価格を保っているG900と比べれば間違いなくお手頃で,しかも無線周りの挙動は確かに変わっていないため,「圧倒的に高性能なワイヤレスマウス」を探しているなら有力な候補になるはずだ。
一方のG403は,より上位Tier(≒ランク)に属する「G502 Proteus Spectrum RGB Tunable Gaming Mouse」の実勢価格が税込7800〜8800円程度という現実があるのでやや悩ましいが,良質なIE3.0クローンを探しているならアリだ。もう少し時間が経って価格が落ち着いてくると,こちらはもっと魅力が増すだろう。
LGSが相変わらずな感じなので,「Logitech G/Logicool GがついにIE3.0クローンを出したから,初めて買ってみました!」という場合は,使い始めに難儀するかもしれないが,ゲーマー向けマウスとしての完成度はどちらも非常に高い。オススメできる製品だ。
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ロジクールのG403WL製品情報ページ
ロジクールのG403製品情報ページ
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