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「HyperX Cloud Alpha」ヘッドセットを試す。見た目こそ地味ながら,完成度はシリーズ史上最高だ
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印刷2017/09/19 00:00

レビュー

見た目こそ地味ながら,完成度はシリーズ史上最高だ

HyperX Cloud Alpha

Text by 榎本 涼


 最近,世界だけでなく日本のゲーマー向け市場でも存在感を増しつつあるゲーマー向け製品ブランド「HyperX」。そんなHyperXを展開するKingston Technology(以下,Kingston)から2017年9月21日に発売予定となっている最新のアナログ接続型ヘッドセットが,今回取り上げる「HyperX Cloud Alpha」(以下,Cloud Alpha)である。

HyperX Cloud Alpha
メーカー:Kingston Technology
問い合わせ先:カスタマーサービス 00531-88-0018(平日8:00〜18:00)
実勢価格:1万3000円前後(※2017年9月19日現在)
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 世界市場におけるメーカー想定売価は99.99ドル(税別)で,これはLogitech G(日本ではLogicool G)の「G433 7.1 Wired Surround Gaming Headset」(以下,G433)や,SteelSeriesの「Arctis 5」といった,定評あるUSB&アナログ接続両対応ヘッドセットと同じわけだが,そこにアナログ接続一本で攻め込んできたHyperXの新製品は,競合製品に対する優位性を見せることができるのか? HyperX Cloud Alpha,じっくり見ていこう。

 あらかじめお伝えしておくと,スペックは以下のとおりである。

●HyperX Cloud Alphaの主なスペック
  • 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ,密閉型エンクロージャ採用
  • 公称本体サイズ:未公開
  • 実測重量:約306g(※マイクブーム含む,ケーブル含まず)
  • 実測ケーブル長:約1.4m(着脱インラインリモコン付き4極3.5mmミニピンケーブル),約2m(4極3.5mm×1→3極3.5mm×2変換ピンケーブル)
  • 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン×1(※標準アナログケーブル利用時),3極3.5mmミニピン×2(※4極→3極変換アナログケーブル利用時)
  • 搭載ボタン/スイッチ:ヘッドフォン出力音量調整,マイクミュート
  • 主な付属品:インラインリモコン4極3.5mmミニピンケーブル,4極×1→3極×2の3.5mmミニピン変換ケーブル,キャリングケース
  • 対応ハードウェア:PC,Mac,PlayStation 4,Xbox One,Nintendo Switch,Wii U,アナログ接続対応モバイルデバイス
  • 保証期間:2年間
  • メーカー想定売価:1万2981円(税込)
  • 発売予定時期:2017年9月21日
《ヘッドフォン部》
  • 周波数特性:13Hz〜27kHz
  • インピーダンス:65Ω
  • 出力音圧レベル:98dB SPL/mW(@1kHz)
  • スピーカードライバー:50mm径ネオジムマグネット,ダイナミック型
《マイク部》
  • 方式:コンデンサ型
  • 周波数特性:50Hz〜18kHz
  • 感度:−43dBV(0dB=1V/Pa,@1kHz)
  • インピーダンス:未公開
  • S/N比:未公開
  • 指向性:未公開
  • ノイズキャンセリング機能:あり


HyperX Cloudの伝統を踏襲したデザインとなるCloud Alpha


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 さて,そんなHyperX Cloudだが,その外観は「いかにもHyperX Cloudシリーズの新製品」といったものになっている。
 つや消しのマットな黒と,メタリックな赤を基調としたツートーンは,ゲーマー向けヘッドセットとしてとても分かりやすい色使いだ。シリーズを通じてあまり変わり映えしないとも言えるが,ただ,そういう指摘を想定してかどうか,Kingstonは「エンクロージャ部のプレートには,通常,150ドル以上の製品にしか採用されていない,サンドブラスト加工を施してある」とアピールしていたりする。

アーム部の内側に目盛りがある。ヘッドバンド側には左右を間違えないようにするためのガイドも
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 全体の作りは従来製品同様かっちりとしており,とくにアルミ製とされる,エンクロージャ(=ハウジング)とヘッドバンドをつなぐ赤いアーム部は見た目どおり非常に頑丈。簡単に曲がってしまうような心配は無用である。
 長さ調整用として,アーム部の内側に数字なしの目盛りが打ってあるので,装着時の長さ調整ではここを頼ることになるだろう。なお,目盛りのクリック感は弱めだ。

長さ調整のイメージ。調整自体は片手でさっと行える
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バスレフポートと見られる空気孔。穴が空いている以上,音は漏れるが,その量はわずかだ。見た目どおりの密閉型,もしくは密閉型に近いセミオープン型と呼んで差し支えない
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 さて,そんなCloud Alphaにおいて興味深いのは音響設計で,G433やArctis 5が採用するものよりも大きな50mm径のスピーカードライバーを,いわゆるデュアルチャンバー構造の複雑なエンクロージャで囲ってあるというのが大きな特徴となっている。
 左右エンクロージャの上部にそれぞれ5つずつ空気孔があるが,これは低域を増強するためのバスレフポートという理解でいい。

 Kingstonによると,エンクロージャ内部にあるチャンバー(chamber,空間)の一層めを低域用,二層めを中域&高域用とすることにより,「音の違いが際立ち,歪みを最小限に抑えられる」そうだ。そのためか,仕様上の周波数特性は13Hz〜27kHzとかなり広い。
 競合のLogitech G/Logicool Gがスピーカードライバーの自社設計にこだわっているのに対し,HyperXが「ドライバーをいい音で鳴らすためのエンクロージャ音響設計」にこだわって音響特性を向上させようとしていることは興味深い。

HyperXによるデュアルチャンバー構造の解説図。上が装着時の耳側で,音の出口に近いほうのチャンバーが低域,遠いほうが中域と高域を担当しているのが見てとれる。上で示した空気孔は図で「チャンバー1」の文字がかかっているところにあるので,やはり低域用のいわゆるバスレフポートという理解でいいだろう
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 取り外してクリーニングしたり,場合によっては交換したりできるイヤーパッドは,これまたHyperX Cloudシリーズ伝統の合皮製。スピーカーネットはストッキングのような柔らかい素材だ。
 イヤーパッドのサイズは縦方向が実測最大約100mm,横方向が同80mmで,厚みが同15mm。十分な大きさが確保できていると言っていい。クッションはとても柔らかく,かつ弾力性のあるもので,しっかりホールドしつつも,側圧が強いとは感じさせないような配慮がある。

イヤーパッドに寄ったカット(左)と,イヤーパッドを取り外した状態(右)。Logitech G/Logicool Gはスピーカードライバーに角度を付けたりしているが,HyperXはその点オーソドックスに見える
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 ちなみに,クッションの話が出たので続けておくると,ヘッドバンド部のそれは,イヤーパッド部と比べて少し弾力性が高くなっていた。

外周部にエンボス加工でHyperXロゴが入っているヘッドバンド(左)。赤い糸でステッチ縫いされた見た目からは,シリーズとしての統一性が感じられる。内側はほぼ全体がクッションで,厚みは実測約15mmだった
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Cloud Alphaでは,マイクブームも,PC(など)との接続に使うアナログケーブルも着脱可能だ。いずれもロック機構はない
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ブーム部分の長さは実測約110mm。標準で取り付けられているウインドスクリーンはけっこう大きく,視界に入りやすいので,設置時は口元より低めにしたほうがいいだろう
 着脱可能なマイクブームは柔らかく,しかも曲げたときの“戻り”も少ないため,とても設置しやすい。一方で気になるのは,とくにロック機構などがないことで,ごくごく一般的な4極3.5mmミニピン端子を左耳用エンクロージャ側に「カチッ」というまで差し込むだけの仕様になっている。
 少なくとも筆者がテストに使っている最中はしっかり填まるものの,仮に頻繁に抜き差しするような運用において,どのくらいで緩み出すのかまではなんとも言えないところだ。早々に抜け落ちたりはしないだろうが……。

 先端のマイクは喫煙具のパイプを小さくしたような,よくあるタイプで,先端部は実測で直径15mm,長さ15mmくらいの大きさである。口の側とその反対側の両方に空気孔らしきものが見える。
 コンデンサ型で指向性があるとされるマイクは,仕様上の周波数特性が50Hz〜18kHzと,これまた広い。

よく見かける大型のパイプ型をしたマイク部分。口に来る側と反対側両方に空気孔らしきものが見えるが,反対側が有効な2マイクかどうかは後段で検証したい
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ケーブル接続のイメージ。デスクトップPCと接続するときは延長ケーブルの利用がほぼ必須だが,最近のゲーマー向けノートPCだと,メインのケーブル1本で済むケースも少なくないだろう
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 付属のアナログケーブルはゴミの付きにくいメッシュ素材で覆われており,端的に述べて,柔らかく取り回しやすい。それでいて直径は実測約4mmとけっこう太いので,ついうっかり椅子のキャスターなどで踏んでしまったという場合でも,何回かは耐えてくれるだろうと期待できる。
 ちなみにケーブルは,ヘッドセット本体と直接接続する仕様で,インラインリモコン付き,かつ両端が4極3.5mmミニピンのものと,4極3.5mmミニピン×1から3極3.5mmミニピン×2へ変換するものの2本が標準で付属する。長さは実測で,順に約1.4m,約2mだ。

 インラインリモコンは,出力音量調整ダイヤルと,マイクミュートの有効/無効切り替えスライドスイッチを利用可能という,アナログ接続型ヘッドセットでお馴染みのもの。サイズは実測で長さ約50mm,直径約15mm程度と小さいが,それゆえ(?)クリップなどはない。

つや消しの黒色を採用したインラインリモコン(左)。マイクミュートを有効化すると,赤色がチラ見せ気味に現れる(中央)。反対側にはHyperXロゴがある一方,クリップはなし(右)
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 総合的な装着感はまずまずで,クッションが柔らかく,かつ柔軟性もあるので,かっちり装着可能な割に,側圧も頭頂部への圧力も強いとは感じない。肌への当たりもいい。
 ただ,イヤーパッドのカバーが合皮なので,布系素材と比べると汗は吸わず,通気性の点で不利なのも事実だ。音響的には音漏れの少ない合皮製カバーのほうが低域再生において有利なのは確かなので,HyperXがエンクロージャだけでなくイヤーパッドも込みで音響特性を優先している可能性はあるだろう。

マネキンを用いた,装着時のイメージ。ヘッドフォン部は標準的なサイズで,それほど大きくはない。一方,マイクの先端部はけっこう大きいのが分かる
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 ちなみに本体重量はマイクブーム付き,ケーブル抜きの条件で実測約306g。G433より若干重く,Arctis 5とはほぼ同じくらいだ。少なくとも重すぎるということは全然ない。


かなりスムーズな周波数特性。低弱高強型だが,「単なる低弱高強」ではない!?


 というわけで,テストである。
 2017年9月時点において,4Gamerのヘッドセットレビューでは,

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによる測定と試聴
  • マイク入力テスト:測定と入力データの試聴

を行うようになっている。ヘッドフォン出力時の測定対象は周波数特性と位相特性,そして出力遅延だが,アナログ接続型ヘッドセットで遅延計測はほぼ意味がないので,今回は周波数特性と位相特性を計測することになる。具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」のとおりだ。
 一方,マイク入力の測定対象は周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとまっているので,それぞれ参考にしてほしい。基本的には,それらを読まずともなんとなくは理解できるよう配慮しているつもりだ。

 さて,いつものようにヘッドフォン出力から見ていきたい。ここではCreative Technology製サウンドカード「Sound Blaster ZxR」と組み合わせた状態の出力波形をダミーヘッドで出力することになる。

こちらがリファレンス波形
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 本稿で示すテスト結果において,波形スクリーンショットの右に示した画像は,それぞれ「得られた周波数特性の波形がリファレンスとどれくらい異なるか」を見たものだ。これは4Gamer独自ツールでリファレンスと測定結果の差分を取った結果で,リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

 さて,結果は下に示したとおりだ。60Hzくらいよりも低い帯域と,11kHzくらいよりも高い帯域でロールオフしているものの,重低域,超高域のいずれも−20dBくらいのところで持ちこたえている。その意味では,公称値で13Hz〜27kHzという周波数特性を反映したものだと言える。だが,Cloud Alphaで重要なのはそこよりも,8kHzを頂点とした5〜11kHzで大体10dBの乖離があり,そこを除くと60Hz〜5kHzと広範囲の帯域で高低差が非常に少なく,極端かつ狭小な凹凸がほぼないことのほうだ。
 その意味において,「(エンクロージャの)アコースティックチャンバーを低域用と中域以上用とで分け,音響特性の向上を図る」というHyperXの目標が,少なくともグラフ上は達成できていると言える。歴代のHyperX Cloudシリーズ中,最も優れた周波数特性ではなかろうか。

 一方,5〜11kHzの山があることからも分かるように,音質傾向自体はあくまでも低弱高強型だ。ゲームにおいて定位情報を得ることにフォーカスしたタイプであることが,波形からは読み取れる。

1.5kHz〜5kHzくらいのプレゼンス帯域(※)が相対的にやや強め。ただ,それよりも5kHz〜11kHzの高域のほうがずっと強い。1.5kHzより低い周波数帯はほんのわずかにドンシャリ傾向が見えなくもないが,方向性としては「フラット+高域の山」という印象がある
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※ 2kHz〜4kHz付近の周波数帯域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

画像集 No.035のサムネイル画像 / 「HyperX Cloud Alpha」ヘッドセットを試す。見た目こそ地味ながら,完成度はシリーズ史上最高だ
 以上のテスト結果を踏まえ,ステレオ音楽ソースによる音質傾向チェックを行うと,やはりと言うかなんというか,「音楽を楽しむ」場合には,コンテンツと音量次第で高域が強すぎると感じる可能性がある。また,50mmドライバーを採用採用するヘッドフォンやヘッドセットでよくアピールされる「低域の豊かさ」のようなものも感じられない。
 ただ,高域に歪んだ印象まではなく,強調がかなり大きい割にはスムーズに聞こえる。ステレオの分離感や定位感も良好だ。音量も十分にある。

 そんなわけで,50mmドライバーは,一般的にイメージされる低域の豊かさではなく,歪みのなさという名の余裕をCloud Alphaに与えているとまとめられるだろう。
 計測結果どおりの低弱高強型である……というか,まず高域に“耳が行く”。位置を把握するのに重要な高域が強いので,3Dゲームにおいて音の聞こえる方向を把握したい人向けと言い換えることもできそうだ。

フロントLRを前寄りにしているのは恒例。今回はリアLRも少し後方寄りとした。なお,センターがズレるのは,その日の耳の具合によるという理解で構わない
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 ではバーチャルサラウンドサウンド出力との相性はどうか。4Gamerのリファレンスである「Razer Surround Pro」を有効にして,分かりやすいサラウンドサウンドコンテンツとして,「Fallout 4」と「Project CARS」で視聴を行ってみたが,Fallout 4では,真後ろを含む後方とそこから左右側面くらいまでの定位が良好なだけでなく,前方の定位もまずまずだ。
 テストに使っているシーンでは右フロントスピーカーあたりでヘリコプターのローター音が鳴るのだが,その音も割と前で定位しているように聞こえる。

 後方から側面くらいまでの定位が優秀なのはProject CARSも同様。後方のガヤ音はもちろんのこと,とくに敵車をパスするときの音源移動がとても分かりやすい。
 音楽だとコンテンツによっては強すぎるきらいもある高域は,ゲームタイトルだと「鳴りっぱなし」にならないうえ,最近のRazer Surround Proでは仕様変更が入ったようで高域が若干落ちるため,耳に痛い感じがなくなって,とてもいい塩梅だ。

 低域も要所要所でしっかり鳴り,とくにLFEチャネルで再生されるような重低域もかなりしっかり出てくる。先ほど示した計測結果で,確かに60Hzくらいから落ち込んでいるが,30Hzくらいでも依然として60Hz比で6〜7dB程度低いところに留まっているためだろう。
 なので,音楽でよいとされる低域から中低域が強いわけではないものの,ゲームや映画の効果音に多く含まれるLFEチャンネルの帯域である重低域の再生はきちんとしてくれる出力特性だと言える。単なる低弱高強型ではない。


マイク入力も広帯域対応。ノイズは拾うのでユーザー側での対策を行いたい


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 続いてはマイク入力である。ここでは周波数特性だけでなく位相特性も計測することから,リファレンス波形と計測結果の波形を重ねて下に示しているが,ものの見事に「人が何を言っているのかを聴き取るために必要な周波数帯域」が他の帯域と比べてガッツリ約20dBくらい強調されている。なので,狭いネットワーク帯域を使うボイスチャットシステムでも,会話相手はCloud Alphaのユーザーが何を言っているのかを聞き取りやすいはずだ。

黄緑がリファレンス,橙が計測結果で,上段が周波数特性,下段が位相特性を示す
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こちらは参考までに周波数特性の差分を取ってみたところ。差分にすると,上の解説がより分かりやすいと思う
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 細かく見てみると,まず1.8kHz〜12kHz付近にかけて,エアーズロックのように“台地”が持ち上がっている。頂上部はかなりフラットだが,強いて言えばピークは5.5kHz付近か。
 台地の下では低域も超高域も下がっていくが,全体としてはなだらかに落ちていく印象。低域で勾配が強くなるのは70Hz付近からだ。この帯域はルームノイズも多いのでこのアプローチになっているのだろう。
 超高域は15kHz以上でも大きくは落ち込まない,優秀な周波数特性で,結果として低域,高域とも仕様上の公称値である50Hz〜18kHzに近い。ただ,ここまできちんと超高域を拾う以上,エアコンなどのヒスノイズを多く拾う可能性も高い。

 なお,位相は完璧なので,モノラルマイクと考えていいだろう。

 実際にヘッドセットを装着した状態で自分の声を録音し,聞いてみると,全体的にクリアで,聞き取りやすい音が得られていた。わずかに鼻詰まるものの,全体的にはクリアで聞き取りやすい。

 仕様上はノイズキャンセリングありとなっているが,これは指向性マイクのことをそう言っているだけのようで,エコーはけっこう入る。
 また,上で指摘したとおり高域まで拾うため,ヒスノイズは多い。ボイスチャットシステム側の帯域が狭い場合はそのままでいいかもしれないが,基本的にはPCまたはサウンドデバイス側でノイズキャンセリング機能を有効化したほうがいいだろう。


よくも悪くも外観が地味だが,完成度はHyperX Cloudシリーズ史上最高


製品ボックス(上)と主な内容物一覧(下)。下で左上に見えるのは簡易的なポーチだ
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 極論,音質のためであればコスト度外視も認められるオーディオ用ヘッドフォンの世界では,エンクロージャ設計の最適化による音響特性の最適化というのはよくある話だが,必ずしもそうではないゲーマー向けヘッドセットの世界では,どこにコストをかけるかというのが重要な話になる。
 ゲーマー向け製品を本気で展開しているブランドのうち,スピーカードライバーの開発までできるような予算を持っているところが,Logitech G/Logicool GやSennheiserなど,数えるほどしかないであろう状況にあって,HyperXがエンクロージャの改良という,一定レベルまで知恵とアイデアで勝負できるところへ打って出て,低弱高強の音響特性を持つヘッドセットのなかでも高域の歪みが非常に少ないという「結果」を出せた点は,とても印象的だ。

 G433やArctis 5といった競合製品では,スマートフォンなどと組み合わせて音楽再生する用途も想定した音質傾向チューニングが入り,屋外での見栄えを意識した外観デザインも採用されている。それと比べると,従来からのコアゲーマー路線で,音楽再生ではなくゲーム用途の使い勝手をひたすらに追求し,デザインも分かりやすい黒と赤ベースとなるCloud Alphaは,よりゲーム向けとして尖った仕様と言える。

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 頑丈さや耐久性の高さを追求したその外観は,よくも悪くもこれまでのHyperX路線であり,見た目の新鮮さは欠いている。音質を含む中身は意欲的なのだが,このルックスだと,従来製品との違いがゲーマーに伝わりにくい懸念は拭えない。
 ただもちろんこれは,ゲーム特化型ヘッドセットらしい「分かりやすさ」を好むような人にとって,Cloud Alphaが有力な選択肢になるということでもある。よい品質のサウンドデバイスと組み合わせる限り,ゲーム用途を前提にしたときの音質傾向は1万円台前半で購入できるアナログ接続型ヘッドセットとして屈指なので,「低域がしっかり出ないのはダメ」という人を除けば,選択して後悔することだけはないだろう。

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