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[NVISION 08#06]現役のNASCARドライバー,カイル・ブッシュがドライブシムを採点。現行世代のゲームはどこまで来たのか?
火星で水を発見する偉業に
ビジュアルコンピューティングが深く関わる
Colins氏は「1990年に初めてNASAのプロジェクトに参加したときは,すべての操作を座標軸情報(※x,y,zの座標値)だけで判断しなければならなかった。しかし,いまではビジュアルコンピューティングのおかげでグラフィックスを見ながら操作できるようになった。これは,大きな助けになる」と語る。
今回,火星探査機「フェニックス」が永久凍土から水を検出したときも,探査機「フェニックス・マーズ・ランダー」に搭載したステレオカメラの映像から算出した地形データをリアルタイムで3Dレンダリング。掘削した地点に現われた白い部分の深さと位置を正確に割り出すことで,マニュピレータを地球から操作し,水を含んだ土の採取に成功したとのこと。Colins氏は,NASAが計画している月の有人探査計画やスペースステーション活動においても,ビジュアルコンピューティングの発展が不可欠であるとし,基調講演会場を埋めた開発者やデザイナー達に,いっそうの活躍を求めた。
工業製品開発やデジタルアートの世界でも
ビジュアルコンピューティングは必須に
氏は「今日(こんにち)の工業製品開発において,3Dビジュアルコンピューティングは不可欠。Web 2.0時代の到来により,エンドユーザーコミュニティと密接な情報共有をすることで,市場性の高い製品開発ができるようになるはずだ」と主張する。業界全体がこれまで以上に3Dグラフィックスを積極活用し,「現在のGPUが持つ3Dパワーを製品開発やサービスに活かさない手はない」(同氏)と呼びかけた。
また,高性能なビジュアルコンピューティング環境が普及したことにより,今後はゲームタイトルも映画品質のものへ変化していくとし,その例としてUbisoft Entertainmentが開発中のゲームタイトルから1シーン「Chapter.1 The Pig」を披露した。
Lanning氏は,「ビジュアルコンピューティングの進化によって,ゲーム開発に使われるツールがそのまま映画制作に使われるなど,ゲームと映画のシームレスな関係が築き上げられている」とし,ゲームのグラフィックス品質は,今後も加速的に向上していくとの見込みを示している。
現役NASCARドライバーが
現行世代のドライブシムを評価
レース以外でも,Xbox 360でNASCARゲームを楽しむというBusch氏は,「現在のゲーム環境はビジュアル的に美しく,楽しいが,しかしクルマの挙動やスピード感,コントローラの反応は,実車のドライビングからかけ離れている」と,辛口の指摘から入る。
しかしその一方,現在のレーシングカー開発はビジュアルコンピューティングなしに考えられず,レースのシミュレーションやトレーニングにおいても,3Dグラフィックスは日常的に用いられると説明した。
ファンには説明するまでもないが,同タイトルは,バンクにおける車の挙動やサスペンションの動き,コックピットの振動,空気抵抗における車の挙動などを物理シミュレーションでで処理しているのがウリだが,果たしてBusch氏をして「レースカーの挙動を,95%くらいは再現している。本当のレースをしているみたいだ」と言わしめた。グラフィックス品質の向上と物理シミュレーションの応用が,リアル指向のゲームにおける醍醐味をいっそう増すことは,間違いないようだ。
Budman氏は,「ビジュアルコンピューティングの進化は,宇宙開発からゲームタイトルまで,新しい可能性を拡げるカギとなっている。産業全体がビジュアルコンピューティングの活用を推進していくことが,ユーザーのメリットにもつながる」として,基調講演を締めくくっている。
- 関連タイトル:
ARCA Sim Racing '08
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