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[GDC 2011]これが次世代ゲームのグラフィックス新基準!Epic Games,最新版「Unreal Technology」のデモムービーを公開
こう語るのは,Game Developers Conference 2011(以下,GDC 2011)会場にて「Unreal Technology」の最新デモを公開したEpic Games社長Michael Capps(マイケル・キャップス)氏とビジネス開発部門副社長のMark rein(マーク・レイン)氏である。
Xbox 360の登場は2005年,PS3の発売が2006年と,現世代のゲーム機は,据え置き型ハードウェアの寿命と言われる登場から5年が経過する時期にさしかかった。一方で初代「iPad」に比べ9倍の描画能力を持つという「iPad 2」が登場するなどモバイル機の進化が目立つ。
このようにハードウェアの3年後がどうなるのかも想像できない革新の時代において,新たなスタンダードとなるべく発表を行ったEpic Gamesの最新型ゲームエンジンには,もはやゲーム業界を自ら誘導していこうという気心さえ感じられる。
Epic Gamesは,このところ「Unreal Engine」という呼称をやめて,Unreal Technologyという名称で統一している。これはなぜかという筆者の質問に対し,「今回のアップデートは,旧式の呼び方で呼ぶならばUnreal Engine 3.9xxとなるだろう。だが,iOSやAndroidなどの様々なプラットフォームをサポートしている現在においては,継続的にテクノロジーのアップデートを行っており,数字を付けることに意味がなくなっている」とRain氏は語っていた。
さてGDC 2011の会場では,そんな最新版Unreal Technologyのデモが行なわれた。このデモは,12人のアニメーターが2か月かけて作成したというリアルタイムレンダリングムービー「Samaritan」を使ったものだという。デモに使われたムービーは,来週中にも一般公開されるとのことなので,期待して待っていてほしい。
ここでムービーの内容を簡単に説明しておこう。ムービーの舞台は,抑圧された未来都市。レジスタンスのように活動する主人公は,武装警官に路上で暴行されている市民を解放するべく,自らの変身能力を使って戦うというものだ。
デモムービーの公開に先駆けてスクリーンショットが数点公開されているので,これを元に簡単な説明を加えておこう。下に掲載した画像は,プリレンダーされているように見えるかもしれないが,1080pの高解像度でリアルタイムに映し出されていたデモムービーと同等のものだ。ちなみにムービーは,どのタイミングでも再生中にワイヤーフレームへと切り替えることができた。
「Bokeh Depth of Field」:“Bokeh”というのは,色彩用語の「ボケ」のことだろうか。リアルタイムで演算されるDepth of Field(被写界深度)が強調されてなんとも幻想的で写実的な雰囲気だ |
「Billboard Reflection」:濡れた路面にネオンサインが反射する高度な照明効果。道路を人が通ると,正しい影が投影される |
「Dynamic Tessellation and Displacement」:DirecX 11最大の特徴ともいえる最新技術。リアルタイムでポリゴンを細かく砕いていくDynamic Tessellationと,高さの情報を持つDisplacement Mappingを融合することで,高度にリアルなモデルを実現する |
「Shadowed Point Light Reflection」:車のヘッドライトによるブルーム効果は,これまで以上に範囲が広く,そして際立って表現できるようになる |
「Subsurface Scattering」:特定のテクスチャに光を浸透させることで繊細な質感を表現する |
このほかUnreal Technologyは,NVIDIAの「APEX Technology」をサポートすることにより,衣服の動きや髪の動きなどがよりリアルに表現できるとしている。ムービーの主人公をクロースアップで見ると,1本1本のヒゲを確認できるだけでなく,実際にクシを当てるような動きまでもシミュレートされているのが細かい。
今回のデモは,NVIDIAの「GeForce GTX 580」を3枚差したハイエンドPCで行われた。「UnrealEngine 2」の発表時に非売品のNVIDIA製グラフィックスカードを使用していたということを考えれば,今回のデモは,「市場に出回っている製品で行っている」ことも大きなポイントだといえるだろう。
もちろんこのクオリティのゲームがすぐにリリースされるということではない。Epic Gamesは,このSamaritanがゲームのために製作されたわけでなく,あくまでテクノロジーショーケースとしてのアピールが目的だと念を押す。
しかし冒頭でも述べたように,今後のハードウェアの進化が不鮮明であるなか,ソフトウェアベンダーであるEpic Gamesが先陣を切って新世代ゲームのあるべき姿を提示したというのは意義深いものがある。
“ラブレター”というよりも“催促状”といったほうが正しいかもしれないが,Michael Capps氏は,「もし数年後に向けて新しいAAAタイトルを企画している開発会社があるのなら,我々のテクノロジーを使う使わないは別として,この程度のクオリティを確保することは念頭に置くべきだ」と述べている。
数年後に登場するであろう最新鋭のUnreal Technology対応ゲームを,今から楽しみに待ちたい。
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